バースデイ・ガール

バースデイ・ガール

この映画を見に行ったのはベン・チャップリンに興味があったから。「ロスト・ソウルズ」もそうだが、彼っていかにも巻き込まれ型。ごく普通の善人なのに災いが向こうからやってくる。銀行員のジョンがロシアから花嫁を呼び寄せるとこれがすごい美人。タバコを吸うとか英語がダメとか話が違うぞと不審に思うところはあるけれど、だんだん仲良くなって、そしてある日・・という使い古されたネタ。空港から車で帰る途中気分が悪くなったナディア。彼女が妊娠しているってのはこの時点でバレバレ。カモであるはずのジョンを好きになっちゃうのもお約束。こういった見え見えのストーリーをけっこう豪華な配役で見せてくれるわけだが、例えばヴァンサン・カッセルみたいな大物がこんなケチな役をやっても似合わないのよね。あるいは登場人物のロシア語が気になり始めると、うそくさい話がもっとうそくさく思えてきてしまうとか。そのうちに大スターでもなくハンサムでもなく筋肉隆々でもないぱっとしないベンが一番本当らしく見えてきて、彼に目が行ってしまうこととなるわけよ。ジョンは職場では金庫の鍵をまかされるほど信用されているが、出世コースからははずれている。内気で真面目で何の害もなさそうだが、家捜ししたナディアは隠してあったビデオや雑誌を見つけてジョンの裏の顔を知る。早速それらでお勉強し、うまく利用してジョンの心をつかむ。ポルノを隠していたって別に変態ではないが、緊縛マニアってのは予想外。他にも何か気に入らないことがあると何時間もトイレに閉じこもるとか、道端に座り込むとか、こういうところがひねりがきいていてありきたりの映画でなくしている。ナディアと同じくジョンにも裏があるのだ。裏のない人間なんていない。だまされたことがわかった時にはナディアを思いっきりひっぱたく。でも小心者のジョンはやったとしてもそこまで。身重のナディアに同情し、お金ごとロシアに帰ることができるよう手助けする。しかし現実的なナディアは悪事から足を洗い、ジョンと一緒にロシアへ行きたい。・・でお決まりのハッピーエンド。お客は皆ニコニコ顔で気分よく帰る。・・ってちょっと待ってよ。あんな大金をあんな方法でロシアには持ち込めないと思うよ。それに言葉もわからない仕事もないロシアで他人の子供を身ごもった女性と暮らしていくわけ?ジョン君のお人好し。でも私の顔もゆるみっぱなしだったのだ、実は。