容疑者Xの献身 、真夏の方程式、沈黙のパレード

容疑者Xの献身

原作を読んでからだいぶたつので、細かい内容は忘れてしまったが、愛する人を助けるために何の関係もない人を殺すという身勝手さは印象に残っている。冒頭びっくりするのは、浜町公園が出てくること。この中にある中央区総合スポーツセンターには講習や発表会で何度も通っているから。朝にはあんな屋台が出るのか。まあ私は平日には行ったことないからな。高校で数学を教える石神(堤真一氏)は、生きることに絶望し、自殺を考えていたが、隣りに越してきた靖子(松雪泰子さん)、美里母娘のおかげで思いとどまる。毎朝靖子がやっている店で弁当を買ってお礼言われたり、美里にあいさつされたりするのがうれしい。ある晩靖子の元夫富樫が現われ、暴力をふるうが、娘と二人がかりで殺してしまう。アパートのこととて音は筒抜け。現われた石神は自分の言う通りにするようにと指示を出し始める。死体が見つかり、身元が割れると、当然のことながら靖子のところへ刑事が来る。帝都大学で物理を教える湯川(福山雅治氏)は、刑事の草薙(北村一輝氏)と同期。湯川は石神とも同期で、17年ぶりの再会となる。草薙と組むのが内海(柴咲コウさん)。今回警察の描写を見ていていくつか印象に残った。死体を調べる前に手を合わせるところ、捜査会議の最後に「気を付け、礼」とやってから解散するところ。海外の警察物ではまずお目にかからないシーンだ。あと葛城が内海に「そこのお嬢さん、お茶、コーヒー」と言いつけるところ。名前を呼ばないところや女性イコールお茶くみというのは前時代的。一度石神をストーカーと思わせるところや、彼の立てた計画などなかなか新鮮だ。時計をわざわざうつして犯行時刻を見せたのに、その時刻の母娘のアリバイがあるなどおかしいなとは思ったけど・・気持ちよくだまされた。クライマックスが涙、涙なのはお約束。しかし靖子と石神の慟哭は相手に向けられたものだけ。ホームレスの存在が抜け落ちているせいで、見ている人は違和感覚える。特にこれでいいのだと満足している時の石神の心理は理解に苦しむ。福山氏の演技見るのは初めて。まあ確かにステキでした。柴咲さんのキリッとした感じもいい。「インソムニア」のヒラリー・スワンク思い出した。まあ比重のかかり具合はだいぶ違うけど。富樫の死体が見つかったらしいラストシーンもいい。

真夏の方程式

こちらはまだ原作読んでいない。「容疑者Xの献身」は冬で寒そうだったが、こちらは夏で暑そう。あちらは都会だけど、こちらは海辺。玻璃ヶ浦ってどこにあるのだろう。電車に乗ってやってきた湯川。デスメックという会社が海底からレアメタルを採掘しようとしている。その前に調査が必要だが、住民は賛成派と反対派に分かれている。湯川はこの調査に協力してるらしい。彼が泊った緑岩荘をやっているのは重治(前田吟氏)、節子(風吹ジュンさん)の夫婦と娘の成実(杏さん)。東京から夫婦の甥恭平が一人で来ている。客は湯川の他に塚原という男。その彼が変死。彼は元刑事で、過去の事件のことで節子に話があるようだが拒否される。冒頭ホステスの伸子殺しで仙波(白竜氏)が逮捕されるが、犯人は節子のように見える。仙波を逮捕した塚原は間違いだったのではと悔やみ、真相を明らかにしたいのか。「容疑者Xの献身」では犯人は最初からわかっているが、それ以外のことで見る者の興味を最後までつなぐ。今回も伸子殺しは成実というのはあっさり明かされるし、彼女の父親が仙波というのも予想がつく。彼は娘のために喜んで犠牲になったのだ。それは30年たった今も変わらない。病で先は長くないし、秘密を明かす気はない。重治が塚原を殺したのも成実を守るためだ。一酸化炭素中毒で殺すのだが、何も知らない恭平に煙突をふさがせる。死体の始末に節子を巻き込む。前作同様、犯罪を犯した側の都合だけが取り上げられ、警察は蚊帳の外だ。ウソや沈黙で真相は隠され、結論は先送りにされる。見ている人のほとんどは、子供の恭平に重荷を負わせたことに違和感や怒りを感じると思う。成実が初対面の伸子を刺し殺すシーンには首を傾げる。そんなに瞬間的に殺意をいだき、しかも実行するか?15年くらいたって採掘反対派の成実は、会社側の説明を全く聞かず、執拗に妨害し続ける。それを見て思う。そうか、この攻撃的な性格は今も続いているのか・・と。こういう彼女に恭平の将来を任せられるのか。殺された塚原や残された妻はどうでもいいのか。まあ私の目的は湯川役福山氏だからいいですけどさ。ロケットの実験もよかったけど、ずーっと扇風機の前で涼んでいるのがとってもかわいくてよかったです。それと恭平役山崎光君が演技自然でとってもよかった。澤穂希さんに似てるよな。他に岸谷役で吉高由里子さん。北村一輝氏の出番少ないのは残念。

沈黙のパレード

2017年、佐織はきくのという町ののど自慢大会で音楽家新倉の目にまり、歌手としてデビューすることに。高垣とは恋仲になって、幸せいっぱい。ところが突然失踪し、数年後200キロも離れた静岡で白骨死体で見つかる。頭部には鈍器で殴られたあと。放火の焼け跡からは老女の死体も。老女の息子寛一(村上淳氏)は15年前、草薙が優奈という少女殺しの犯人として逮捕したものの、立件できずに終わった男。寛一は完全黙秘を貫き、無罪になると今度は賠償金をせしめた。絶望した優奈の母由美子は自殺。今回も寛一は自信満々。わざわざきくのへ越してきて、佐織の両親祐一郎らが営む食堂へ現われ、人々の憎悪をあおる。最初湯川に協力を求めてきたのは内海。草薙を心配してのことだ。湯川は興味を示さなかったが、寛一が食堂へ現われた時ちょうど居合わせた。寛一の不敵な態度や、人々の反応を見ることとなる。一ヶ月後、きくの恒例の仮装大会が行なわれるが、その間に寛一は殺されてしまう。液体窒素が使われたのだが、疑われるのは当然祐一郎や高垣や、佐織を赤ん坊の頃からかわいがっていた戸島達。彼らにはそれぞれアリバイがあるが、単独ではなく複数の人間が協力し合ったのであれば犯行は可能。新倉役が椎名桔平氏なので、見ている人は彼を疑う。そしたら案の定自白。元々は寛一を脅して自白を引き出すのが目的。まわりも(殺しではなく)脅すだけならと協力した。祐一郎が脅すはずだったが、店に来た客が腹痛を起こしたため、計画が狂ってしまった。彼の代わりに行ったのが新倉。寛一が死んだため佐織殺しの立件はできなくなったが、事件は片づき、復讐もできた。ただ、草薙には引っかかるものがある。湯川は寛一殺しや佐織殺しの裏にあるものをさらりと暴き出す。のど自慢や仮装大会にはずいぶん時間や手間をかけてるが、事件が起きることはわかっているので、にぎやかなシーンを見てもちっとも興味わかない。湯川はいつでもどこでもさらりと涼しげだが、草薙の方は疲労やあせりで憔悴し、不精ヒゲに汗とあぶらでテカテカの肌と対照的。見ていて気の毒になっちゃう。内海役柴咲さんはきれいだしスマートだし、「容疑者X」から十数年たってるのに不思議な若さ保ってるし。脱帽。