ワイルド・タウン 英雄伝説

ワイルド・タウン 英雄伝説

ザ・ロックの「ランダウン」はいつ公開されたの?って感じで見逃したんだけれど、今回はちゃんと見ましたよ。別にファンというわけでもないんだけど、そこらへんのカメラの細切れ撮影アンド編集技術でそれらしく見えるアクション映画にはうんざりしているもんで・・。彼ならアクションちゃんとやってくれるだろうって、そういう期待で見に行きました。それともう一つは・・どうせお客さん入らないだろうから見に行ってあげようかと・・。予想通り誰もいなくて、こりゃ念願の貸し切りだとほくそえんでいたら・・二人入ってきて、結局三人でした。ところでこの映画どういうわけかキャンペーンやってて、応募したらTシャツ当たりました、うれぴー!きっと誰も応募する人いなかったんだと思うわ。もらったのが応募用紙だって気づいたのは家に帰ってきてから。応募してやれと思って次の日また映画館へ行ったのよ。そのかいがあったわ。Tシャツには「WALKING TALL」という文字だけ入っている。そう、この映画70年代に作られた「ウォーキング・トール」のリメイクなのよ。私は見たことないけど、題名だけは昔から知ってるの。さて内容ですけど・・映画館で見るより東京12チャンネルの「午後のロードショー」で吹き替えで見るのが似合いそうな感じ。見ていて「あッ、CMの間に話が飛んだぞ、カットしたな」って想像する。でも実はカットしてなくてそのままなのよ。つまり「ワイルド・タウン」という映画は途中で堂々と話が飛んじゃっているのよ。ザ・ロック扮する主人公クリスは除隊して故郷に戻ってくるが、高校の同級生だったジェイがカジノを作ったため、町の雰囲気が悪くなっているのに心を痛める。カジノでいかさまをやっているのに気づいた彼は大あばれをするが、逆に重傷を負わされる。治ってやれやれと思ったのもつかの間、甥がクスリのせいで命を落とすところだったのを怒ってまたまた大あばれ。逆に警察につかまって裁判にかけられる。存在そのものが凶器だと最初は不利な形勢だったが、頼りにならない弁護士をクビにして自分で自分を弁護し、逆に保安官の選挙に出馬すると宣言。見事無罪を勝ち取る。・・てなわけで、逆に逆にの連続。無罪になった次の瞬間にはもう保安官になっていて、今までの署員全員をクビにしているのよ。ワープしたのかしら?

ワイルド・タウン 英雄伝説2

彼が選挙に勝ったということは、カジノや麻薬に反対する心ある人達が町の中にもいて、彼に味方したということだけど、後半は町の人誰も出てこない。腐敗した署員全員クビにして、保安官補に友人のレイを据えて、それはいいけど警察の仕事って他にもいろいろあると思うんですけど。つまり二人じゃ足りないと思うんですけど。カジノつぶすのに反対の人もいると思うんですけど完全無視。何て言うか見ていてお尻がムズムズしてくるようなストーリー。何の新鮮味もひねりもなくてそのまんま、ストレート。主演もザ・ロックでなくてもいいの。スティーブン・セガールあたりでもいっこうにかまわないの。ストーリーも「沈黙の断崖」と似ているし。害毒を流す悪者と正義に立ち上がる勇者。最後には正義が勝つ。ザ・ロックは演技という柄じゃない。存在そのものがもうケチをつけられない特別な人。彼は怒ったり笑ったり決意したりがまんしたりするのだが、ザ・ロックの表情は演技と言うよりは百面相。もうちょっと鈍い感じでもいいと思うのだが・・。例えばカジノの個室で色っぽいショーを見せられる。このシーンもあんな目を白黒させるような百面相ではなくて、ずっととまどった表情をしていた方がリアルだと思うのだが・・。彼は踊り子が幼なじみのデニであることに気づいてショックを受けているのだから・・。それにしてもこの個室、「ザ・クロウ」の覗き小屋と同じですな。さてこういうタイプの映画は、クリスの家族が狙われ、家族の保護を頼まれたレイは奮闘空しく無残に殺され・・となるのが定石。麻薬密売の容疑者を留置所に入れたため、クリスは署に泊まり込まなくてはならなくなる。一方で家族のことが心配なのでレイを行かせる。これってつまり二人しかいないからこういうことになるのよ。二人を二手に分けたら一人じゃん!他に頼む人いるだろーが!高校時代の友人とか町の人とか・・。彼らが推してくれたから選挙に勝ったんでしょーが。投票だけして後は知らんぷりかよッ!お約束通りデニが手料理持参で訪ねてくる。料理なんか口実で、早速いちゃいちゃムード。この部分は余計ですな。何たって麻薬のことがばれたら困るジェイは、密売人を取り返しに(あるいは口をふさぎに)来るはずなのだ。だからクリスは泊まり込んだのだ。いちゃいちゃしている場合ではないのだ。

ワイルド・タウン 英雄伝説3

しかもお二人さん、隣りに人がいるのによく平気でやってられますねえ・・(何を?)。全くやってらんねーぜ!(←密売人談)ところでこの人若い頃のデビッド・キャラダインに似てますな。朝になって襲撃受けて、助けが来たと喜んでいたのに殺されちゃった。気の毒に・・。そう、なぜか朝になって明るくなってから襲撃されるんですよ。何で夜じゃないの?これはつまりクリスとデニのいちゃいちゃシーンを入れるためでしょ?警察署と同時にクリスの家も襲撃されるんだけど、レイが死ななかったのでこっちもホッとしましたぜ。レイが死んじゃうとクリスの怒りは倍増するけど、後味は悪くなる。何たってクリスはレイを行かせといて自分はデニといちゃいちゃ・・ってもういいがな!とにかくレイのキャラはなかなかよかった。それにしてもこの時も、署にいたはずのクリスがあっという間に自宅へかけつけてますな。ワープしたんですか?敵役ジェイをやっているのは「タイムライン」などでおなじみのニール・マクドノー。彼こんな役ばっかですな。ジェイはカジノで儲けるだけではあき足らず、閉鎖した製材工場を利用して麻薬を製造している。冒頭帰郷したクリスはまず製材工場に立ち寄る。父親と同様ここで働くのが彼の夢だったからだ。ところが工場は閉鎖されており、パトカーが近づいてきて声をかけられる。工場はジェイの父親がやっていたのだが、交通事故で死に、あとを継いだジェイは閉鎖してしまったのだ。おそらくは野心家のジェイはカジノや麻薬で大儲けしようと、邪魔な父親を事故に見せかけて殺してしまったのだろう。警察もぐるになっているからばれる心配はない。工場を見に来たクリスにパトカーが近寄ってきたのは、もちろん中を覗いたりされては困るからだ。誰かが入り込んで麻薬製造に気づかれたりしないよう、普段から見張っているのだ。こういったことは映画の中で説明されるわけではない。私の想像である。前にも書いたようにこの映画は話が飛んでおり、説明する努力もつじつまを合わせる努力もなーんもしていない。言わなくたってわかるだろ・・って感じ。このあまりにもな部分(単純・そのまんま・ストレート)のせいで、私はお尻がムズムズして居心地が悪かったわけよ。別に見なくたっていっこうに差し支えない映画なのよ。でもさすがにアクションシーンは迫力があった。甥のことがあって、カジノに殴り込むのに角材を使う。

ワイルド・タウン 英雄伝説4

最初は頭に血が上って銃を持っていたのよ。でも直前に思い直して角材にする。クリスの父親の言葉「銃を使ったら取り返しのつかないことになる」が印象的。確かにあそこで銃を使っていたらその後の彼はだいぶ違った状況に置かれたはず。いくら裁判で正義を訴えても、銃と角材とでは陪審員の心証も違う。その銃の威力もこの映画では十分感じることができた。一発の威力、音がすごくてあんなので撃たれたらひとたまりもないだろうな・・って。大きな穴が開くんだろうな・・って。ホントあんなの使ったら「取り返しがつかない」。でも使うのよね・・今さえよけりゃいいとばかりに。最後のクリスとジェイの戦いは斧VS.太い枝(?)。まあハラハラさせるし、迫力あったし、ちゃんとやってるしよかったと思う。でも物足りなく思う人もいるんだろうな。ラストシーンは再び稼動し始めた製材工場。カジノや麻薬のような汚れたお金や人の道にはずれた快楽とは無縁。自然とのつながりを表わす心休まる風景。・・てなわけでどうってことないけど、途中でムズムズするけど、でも見終わってみればそれなりに満足できる映画だった。しかしクリスみたいな人は長生きできないし、家族や友人は彼のせいで危険にさらされることもあるだろう。正義の味方、ヒーローはスクリーンで見てるぶんにはいいが、身内にあるいは近くにいられても困る。でもってザ・ロックですけど、彼とヴィン・ディーゼルの二人が今を代表する肉体派アクションスターってことになるのかな。ザ・ロックのいいところはさほど強調しないってことかな。つまり「コマンドー」のようにのっけから、にく・ニク・29・肉・肉のかたまり・肉の山盛り・肉の盛り合わせ・肉の輸入自由化・肉の郵政民営化!みたいな登場の仕方されても困るわけよ。筋肉がすごいのはわかる。わかるけどあまりにも強調しすぎでかえっていやみ。悪趣味。ものすごく鍛えられた鋼鉄の体持ってるけど、普通に袖のあるTシャツ着てますってのがいい。二の腕の力こぶ強調するランニングでは決してない。ザ・ロックはこれからもこういう映画に出るんでしょうね。演技がうまいってわけでもないから高尚な映画には向かないし、そんな映画での彼を見たいとも思わない。ただ私としては、百面相見るくらいならポーカーフェイスで無口な、「レッドブル」のダンコみたいな役をやって欲しいと思っている。