TATARI タタリ

TATARI タタリ

「ホーンティング」はテレビで盛んに宣伝していたけど、こっちはあんまり話題にもならなかったのでは?でも私はこちらの方が断然好きです!オリジナルは見たことないし、見る機会もないだろう。白黒で、リチャード・ロングが出ているようだ。私にはヴィンセント・プライスよりロングの方がなじみがある。「サンセット77」とか(古!)。遊園地の仕かけ人プライス(ジェフリー・ラッシュ)と、妻エヴリン(ファムケ・ヤンセン)の仲は冷えきっている。お互い憎み合っていて、どっちかが、あるいは両方がくたばるまで争うのをやめなさそう。いちおうプライスの方は憎みながらも愛しているのだが、エヴリンの方はもらうものもらったら即離婚したい。今のところ成功していないが、ナイフやら毒やらいろいろやっているようだ。プライスはエヴリンの誕生日パーティの招待客リストを勝手に変更してしまう。しかしそのリストがまた勝手に変更され・・。何かがパソコンに入り込み・・。招待に応じ、館で一晩過ごして無事朝を迎えられたら100万ドルあげるという・・そんなエサに釣られてやってきた四人。医師のブラックバーン(ピーター・ギャラガー)、タレントのメリッサ(ブリジット・ウィルソン)、元プロ野球選手のエディー(テイ・ディグス)、映画会社の執行副社長ジャンセン・・実はクビになった腹いせに本人になりすましてやってきたサラ(アリ・ラーター)。四人を出迎えたのは現在の家主プリチェット(クリス・カタン)。大広間に通されてもみんな何となく落ち着かない。なぜ自分達が招待されたのか。ホントにお金くれるのか。遅れて登場したエヴリンは「あなたたち誰?」と不審顔。夫がいやがらせしてるに違いない。現われたプライスも、エヴリンが何か企んでいるのだと思ってる。この後いろいろなことが起きるが、プライスがシェクターに命じてやらせていることもあれば、プリチェットが言うように館がやってることもあるしで、一回見ただけじゃよくわからない。途中でいろいろ引っくり返るし。四人の過去はあまり詳しくは説明されない。後でブラックバーンはエヴリンの浮気相手だとわかる。コメンタリーでは、彼が招待されたのはそのせいと言っている。

TATARI タタリ2

つまり彼は1931年にここで起きた忌わしい事件とは無関係なのだ。ここは以前精神病院だった。院長のヴァナカットは麻酔なしで生体解剖をするなど狂っていて、ある時患者が暴動を起こす。その際火災が起きるが、院長が扉や窓を閉めたせいで多くの焼死者が出る。患者に殺された者も多数。生存者は職員五人で、その子孫が今回のメンバー。コメンタリーによればプライスとエヴリン、メリッサ、エディー、ジャンセンがその五人のようだ。関係のないブラックバーンの名前をなぜリストに入れたのかは、パソコンをハックした悪霊に聞くしかないが(←?)、浮気を知っているプライスがわざと招いた、あるいは彼だけはエヴリンのリストにあったというふうにすればスジが通ったと思う。でないと、後で出てくる電気ショック関係の細工や薬の用意をいつしたの?となる。サラも実際はなりすましだから無関係。エディーはラストの方で自分は養子だと言っている(ここは笑いどころか)。悪霊が区別してくれるとも思えんが。プライスは一人あたり100万ドル、人数が減ればその分取り分が増えるとメンバーをそそのかす。メリッサは落ち目で、衝撃映像をとって返り咲こうと、ビデオカメラを手にしている。サラはクビになったばかりだし、エディーもたぶん仕事にあぶれていそう。映画を見ていてもプリチェットの境遇ははっきりしないが、コメンタリーによると、彼は館を相続したものの、税金が払えず、車で暮らしているのだそうな。祖父がここを建て、父親が改修したが、いずれも変死。館が人を殺すと信じているから、プライスが賃貸料を払ったらさっさと立ち去りたい。ところが人の気も知らずプライスはのらりくらりと引き延ばすので、プリチェットもいら立つ。やっと小切手を受け取っておさらばしようとしたら・・次々に扉や窓が閉まってしまい、どうしても開かない。ケータイも通じない。コメンタリーによれば監督は昔見た「ピラミッド」のシーンが印象に残り、ぜひ使ってみたかったのだそうな。確かにあのシーンは強烈で忘れられない。今でもあの後どうなったのだろう・・と気にかかるもん。さて、館に閉じ込められてしまった人々。集まってじっとしていたのでは映画にならないので、あちこち動き回り、ぺちゃくちゃしゃべる。

TATARI タタリ3

エヴリンはどうせプライスの仕業と悠然としている。プライスもシェクターの死体を見るまではそうだった。サラとエディーの血のタンク事件、メリッサは一人でふらふら歩き回って、誰もいないのにビデオにはうつってる事件、プライスは飽和療養室監禁事件、エヴリンの電気ショックで死亡事件。エヴリンのは芝居で、ブラックバーンに蘇生してもらうけど、死者を増やさなきゃ・・とブラックバーンを刺殺。サラは恐怖のあまりプライスを撃ち殺すけど、防弾ベストを着ていたので死なない。ま、あれこれやってくれるけど、私が注目していたのはカタン。彼を見る機会はあまりないので、この映画は貴重。この館の怖さを知っているのは彼だけ。彼はプライスに「あと100万手に入るのに」と言われても聞かない。いくらお金くれるったって死んでしまったのでは何にもならない。いつも入口近くにいるし、みんなのあとからついていくなど用心している。閉じ込められると、もうだめだと酒を飲む。あるいはここを一番よく知っているからと案内させられる。朝まで生き残ったのはサラとエディー。エディーを助けてくれたのはプリチェットの幽霊。コメンタリーによれば彼だけ悪霊にならずにすんだのだそうな。どこらへんに基準があるのか不明だが、カタンファンとしてはうれしい。と言うか、プリチェットも助かって欲しかったが・・。サラとエディーがいるところからはどこへも行けないけど、時間になれば掃除の人が来るらしいから何とかなりそう。おまけにプライスの切った小切手が・・プリチェットは拒否したから400万ドル分か?・・ある!プライス死んじゃったけど大丈夫なのかな。それとサラはジャンセンじゃないけどいいのかな。てなわけで何度見ても楽しめる作品。「ホーンティング」のような豪華な屋敷もいいけど、こういう廃墟病院の冷たく荒れた感じも好み。最初に見た時はジェフリー・ラッシュのことも知らなくて。今考えるとよくこういうのに出てくれたよなあ。ヤンセンの悪女ぶりもすごい。天井からステンドグラスが落ちた時かばってくれたエディーに礼を言うどころか「どいて、変態!」と毒づく。サラやメリッサの方が若いのに、男どもがみんな彼女から目が離せないってのが笑える。ピーター・グレーブスが本人の役で出ていた。監督のウィリアム・マローンは「フィアー・ドット・コム」をとった人。