OSIRIS/オシリス

OSIRIS/オシリス

これはなかなかよくできていると思う。表面的なものは・・今までろくにかまってやれなかった娘を、命をかけて救い出そうとする父親。あるいは、罪を犯してこの星に送り込まれたけど、ピュアな部分は失っていない元医師。冷酷な司令官に刑務所長、囚人達の暴動、密かに行なわれていた人体実験。「マッドマックス」ばりの爆走シーン(と言っても私は「マッドマックス」は一作も見たことないんだけど)。もちろん目の回るような空中戦、銃撃戦に爆発。安くておなかいっぱいになる平日限定食べ放題ランチってとこですかね。これで怪物の造形が独創的なら言うことなしですが、そこまで要求するのは無理ってもんでしょう。食べ放題にアルコール飲み放題つけろと言うようなもんです・・って何のこっちゃ。主人公はいちおうケインなんだろうけど、存在感があるのはサイの方。ケイン役ダニエル・マクファーソンは、刈り上げたヘアスタイルとかトム・クルーズ風。でも性格はあんまり・・。あれこれ欠点も目立つ、まあ普通のおっちゃん。優秀な戦闘機パイロットだったが、ささいなミスで多くの仲間を死なせてしまい、そのせいでクスリに依存?妻ともうまくいかなくなったが、いちおう未練はあるらしい。妻が新しい彼氏とヨーロッパ旅行に・・と娘から聞いて、そのトッドとかいう男を調べようとしたり。娘のインディは父親を心配したのか、惑星エクソールまで一人でやってきた。エクソールと地球の距離は不明。インディが年も取らずに来れたってことは、ワープしたのか。そういうことはいっさいスルー。それにしても・・ここのコンピューターにトッドのデータが入ってるとは思えんが。それとも地球とこことネットでつながっているのか。ケインがいるのはエクソール上空に浮かぶ宇宙船フローティア。インディがいるオシリスはエクソールの首都らしい。離れたところにあるのがおビール・・じゃない、オビール刑務所。一部の者しか知らないけど、ここでは囚人を使ってある実験を行ない、ラグドという怪物を作っていた。ラグドールならかわいいけどねニャンニャン。宇宙に進出すると、先住民との戦いがある。植民地化のためには邪魔者は排除しなければならない。そのためには人間以上のものが必要で、それがラグドということらしい。あらま、宇宙の果てまで来て侵略に余念がない人類・・。私は地球からつかわされた軍隊だと思っていたけど(司令官とか中尉とか言ってるから)、軍事産業ということらしい。

OSIRIS/オシリス2

まあラグドを見て、そうかああいうのが必要なのかと納得する人はあんまりいないと思う。何であんなカメ男なんだ?としか思わない。爪で刺されると、その人間もラグドになってしまう。元々が終身刑食らってここへ送り込まれたような凶悪犯ばかりだから、あまり頭がいいとは思えない。普通の人間より力が強いのは確かだが、不死身というわけでもない。彼らに有利な点は?天候の激変に耐えられるとか、空気がなくても、水の中でも平気とか?でもそういうのはあまりはっきりしなかったな。所長のモーディンは冷酷なやつ。権力が集中しているから、ますます冷酷になる。エクソールが開発されたのは、囚人達の重労働によって。たぶん他の惑星でも同じことが行なわれているのだろう。事件が起きるまでのケインは、それが当然・・悪いことをしたのだから罰を受けて当然・・と、何の疑問も持たなかった。先住民も、制圧されて当然と思っていたことだろう。人間はこんなことしてていいのか?と、普通のSF映画の主人公なら思うだろうに。フローティアの司令官リネックスも冷たい女。刑務所で暴動が起き、囚人だけでなく怪物も解き放たれたと知ると、隠蔽にかかる。ウイルスが蔓延したことにする。手を尽くしてもだめなら、核で一掃する。何も知らないオシリス住民は見捨てる。怪物を作っていたなんてヒミツ。手を尽くすなんてのもウソ。ケインは居ても立ってもいられない。インディを救出しなくては。彼はシェルターのメンテナンスが仕事。娘をあそこへ連れていけば助かる!残された時間は23時間。他の人にもオシリスに家族がいるのだが、そういうのは眼中にない。自分の娘のことだけ。インディと同じアパートで生き残っていた老夫婦くらいは連れて行くかと思ったら・・あらら、スルーですか。あんたらバスに乗ってるんですぜ。座席いっぱいあいてるんですぜ。まあバスに乗っていても死んじゃっただろうけど、一声かけるくらいは・・。あるいはシェルターに避難しろと呼びかけるとか。シェルターは一つだけじゃないはず。それとも一つなのかな?軍用シェルター・・お偉いさん用のだけ?

OSIRIS/オシリス3

話は前後するけど、何とか追っ手を逃れ、エクソールに不時着したケインが出会ったのがサイ。刑務所の看護士と言ってるけど、もちろん囚人。途中でビルとジプという兄妹(と言っても血はつながっていないらしい)と交渉して、バスでオシリスを目指す。アルコールとクスリでイカレてるかと思ったらこの二人、意外とまともで。途中で武器を仕入れ、インディ救出に向かう。やっと着いたが、市街戦の真っ最中。しかも形勢が悪い。あたしゃ絶対インディはいないと思ってた。だって遠足へ行くとか言っていたじゃん。でもちゃんといて。戦いの中でビルが死亡。シェルターへ向かう途中ジプとケインが死亡。この二人は司令官の放った戦闘機にやられます。あのクソ女!・・と言うか、見ているこっちはびっくり、口あんぐりです。主役が死んじまったぞ!!悲しみに泣きわめくインディだけど、もう時間がない。シェルターに・・そこでサイが怪物に襲われ・・あらッ、サイまで!神も仏もないこの展開!ここらでサイの過去が明らかになる。なるほどそんなことがあったのか。そんなことをしてしまった気持ちはよ~くわかる。でもって半分は見せしめのためにここへ送られたのね。それに当時の彼にはすべてがどうでもよく思われて。刑の軽減なんて・・。彼は、カメ男にはなりたくない・・と自殺しようとするけど、インディが泣いて止める。で、一年後救助隊が来るんだけど、私にはインディの取った行動が吉と出るとは思わない。上の者が彼女の言うことを真に受けるとは思わない。かえってまたまた隠蔽工作に走ると思う。ラグドになったサイは、研究・実験のために切り刻まれるのがオチ。第一救助隊の一人を殺してる。と言うか、あの人もラグドになるのかな?ああいうファンタジーっぽい終わり方ではなく、もっと・・。例えば10年後・・インディはラグドを従える女王になっていた!・・とか。次の人間達がまたぞろ植民地化を企んでも、ラグド軍団がかたっぱしから追い払うとか。今ではラグドはサイのおかげで知能も高くなってるとか。全滅したと思われたラグドや人間住民は意外と生き残っていたとか。人間も今ではラグドの味方だとか。だってあいつら核で一掃しようとしたんぜ!信用できるかっての!・・などと妄想は尽きませんが、要するにおもしろかったです。たぶんサイのキャラのせいだと思う。すべてを失った孤独な男。あまりにも過酷な運命。サイ役ケラン・ラッツはヒゲのせいで40くらいに見えるけど、まだ若い。「トワイライト」シリーズに出ていたらしい。