Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼

Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼

この映画は見たかったのだけど、公開はこっちへ引越してしまってから。田舎でかかるような映画ではなく、DVD待ち。それも準新作になるまで待ってレンタル。その後中古DVDを手に入れた。こういうのが私の好み・・なんて言うと異常じゃないかなんて思われそうだけど、私に言わせれば嫁姑のいびり合いだの、三角関係だの、不倫だのを手に汗握ってテレビやスクリーンや週刊誌にかぶりついている人達の方がよっぽど異常に見えるんですけど。この映画は以前「ハリウッド・エクスプレス」で紹介していて、その頃から興味持っていた。ケヴィン・コスナーが殺人鬼なんて意外でいいじゃん。ウィリアム・ハートもいかにもうさんくさい。紙箱メーカーの社長で商工会議所の「今年の顔」にも選ばれるなど信頼され、業績好調で、美しい妻エマ(マージ・ヘルゲンバーガー)とはラブラブで、申しぶんなしの生活を送るブルックス(コスナー)。だが彼にあの渇きが二年ぶりに戻ってきた。抵抗するものの彼の分身マーシャル(ハート)の執拗な誘いに負け、カップルを惨殺。でもまあ今夜ふらりと・・というわけではあるまい。前々からあの二人には目をつけていたのだ。住所、家の間取り、行動パターン・・下調べは十分してあるのだ。ブランクも感じさせないスムーズな仕事ぶり・・自分の手際のよさと殺人の快感に酔いしれるブルックス。窓のカーテンが開いているのに気づくが、それさえも気にならない。・・殺人を犯す者の頭の中にはああやってささやきが聞こえる場合もあるのかもしれない。ブルックスに対するマーシャルのように彼だけに見える姿かたちを取っているのかもしれないし、形はなく頭の中に声が響くだけかもしれない。「ミディアム」だと悪霊が取りついて殺せ殺せと耳元でささやき続ける。悪霊は時間はたっぷりあるから(本人死んでるから)、何年も何年もささやき続ける。もしあれが本当なら、ささやかれてる人はさぞ辛いだろう。誰かに相談すれば必ず頭がおかしいと思われる。今回のマーシャルは悪霊ではない。悪霊ならそそのかす相手がつかまったり死んだりすればまた別の人間に取りつけばいいが、マーシャルの場合はブルックスと同じ運命たどる。だからブルックスをそそのかす一方で保身もはかる。ミスキャストと書いてる人もいるが、私は二人とも適役だと思う。

Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼2

外見は全然似てないし、二人の中年男がやり取りするのはわびしくもあり、おかしくもある。ブルックスにとってはせっぱつまった状況なのだが、いざとなると立場が逆転したりする。懇願していたのが懇願される側になったり、びくびくしていたのが突然ふてぶてしくなったりと、なかなかおもしろかった。ブルックスは真面目で誠実、誰からも信用される。仕事やつき合いが忙しいだろうにああやってあれこれやるヒマがあるのは、普段の生活がきちんとしているからだ。仕事だと言われれば仕事をしているのだ。工房にいると言われれば器を焼いているのだ。妻も全く疑っていない。彼がこの二年間がまんできたのは、教会での依存症の会に出ていたかららしい。我々にはあまりなじみがないが(「断酒会」くらいは聞いたことがある)、向こうはいろんな依存症の人が集まって告白する。映画にもよく出てくる。さすがに殺人依存症とは言えないから、薬物依存症とウソをつく。でもそういうのってどこからか妻の耳に入ってきたりしないものなのかしら。彼は(殺人は)中毒であり、楽しくないと言いつつ、どう見たって楽しそうだ。しきりに神への祈りを口にするが、あれで救われるとは思えない。彼にはサムプリント・キラーという名がついているらしい。前にも捜査していた女刑事アトウッド(デミ・ムーア)は、二年ぶりの犯行に驚く。きびきびと働くいかにも負けん気の強そうな彼女だが、私生活では大きなトラブルをかかえている。この映画を見た人はたいていデミをほめている。人の助けを借りない意地っ張りのかわいげのない女だが、一生懸命生きてる。不器用なのだ。夫ジェシーとは離婚調停中。高額の慰謝料を請求されている。アメリカではどう見たって非のある方が罰せられず、その上高額の金せしめるなど不思議なことが多い。裁判にしたって真実かどうかより弁護士の腕次第。アトウッドはブルックス以上に興味深いキャラだ。父親は資産家で、アトウッド自身6000万ドルの財産があるらしい。経営管理学修士を取ったということは、父親の期待にこたえようとがんばったのだろう。でも警官に・・。そもそも彼女は女であるということで父親の期待裏切っただろうし。警察に入ってからはどんどん犯人つかまえ、刑務所へ送り込みもう12年たつ。医師と結婚したが離婚・・おそらく仕事に打ち込みすぎ、家庭は二の次だったのだろう。

Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼3

離婚後の心のすきま・・そこに登場したのが年下のハンサムなジェシー。これらの情報をブルックス(とマーシャル)は警察のコンピューターにやすやすと侵入し、集めるのだ。おりしもアトウッドが逮捕したミークス(「トランスポーター」などのマット・シュルツ)という凶悪犯が脱獄し、彼女にとってはそっちも悩みの種だ。おそらく彼女に復讐しようと企んでいるだろう。その通り、現われて彼女を拉致しようとするが失敗する。その際彼女は頭を縫うケガをするが、あとは何も残らないし顔も腫れていない。打撲だって相当なものだがピンピンしている。そこらへんちょっと描写が雑である。でもって要するに彼女は年下のイケメンに弱いのである。やさしくされるとつい・・。いつもまわりに対し肩肘張って弱み見せまいとする。まわりが助けようとしても断る。その反動が出てしまうのだ。DVDには未公開シーンも入っている。恋に落ちた頃のアトウッドとジェシー。しかしカットして正解である。こういうのが入っていないので本編でのアトウッドは強がってばかりになるが、それでいいのである。こんなのいちいち見なくたって彼女の弱点はちゃんとわかる。前は娘として父親の期待にこたえられず、最初の結婚では妻として失格の烙印押され(描写はされないがたぶん)・・自信なくして心にぽっかり穴があき・・。これだけはいくら犯人検挙しても埋められない。そこへ輝くようなハンサムが現われ、ニッコリされれば・・そりゃフラッとするわな。もちろん男は金目当て。いちおう金が目的じゃないというそぶりはしているが・・最初のうちは本当に愛していたのかもしれないが・・アトウッドの方でお金は私が出すから・・なんて当然のことのように言っていて。彼女自身ものの考え方が普通の人とは違うのだ。でもってこういうことのあれこれが、デミの私生活と重なって見えてしまうのだ。ジェシーがアシュトン・カッチャーに見えてしまうのだ。もちろんカッチャーはジェシーのような不実野郎ではないだろうが。生涯添い遂げ、まわりの期待裏切ってちょ。アトウッドは父親のことを金が絡まなきゃ動かないと言っているが、彼女自身そういうところがある。金で解決・・今度の離婚のことも・・。合理的に見えるがかえって損をしている。捜査には合理性が役に立ったろうが、夫婦関係はそうはいかない。

Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼4

彼女の弱点の一つは待てないこと。いやだとなったらすぐ別れたい。ジェシーと女弁護士の態度見れば、二人が仕事以上の関係なのはすぐわかる。こちらもじっくりかまえて挑発に乗らなければ向こうも考える。あせって早くかたをつけようとすれば相手の思うつぼ。とたんに金額吊り上げてくる。アトウッドの方の弁護士は「ミディアム」に出ていた。丸坊主の女弁護士は珍しいが、それもありだと思わせてしまうのがすごい。ジェシーの弁護士シェイラ役は「エイリアンズVS.プレデター」のレイコ・エイルスワース。正直言って演技は今いち。さてブルックスは、あのカーテンの引かれていなかった窓のせいで写真をとられてしまう。スミスと名乗る男が会社へ訪ねてくる。普通は写真を元にゆするが、この男の要求は何と殺人に自分も同行しろというもの。自分で計画したり、抜かりなく後始末したりということが苦手なのだこのスミス君。あんまり頭よくないのだ。誰かがやるのに自分も便乗したい。それで自分がやったように錯覚し、自分が偉くなったように感じるタイプ。逆に言うとカップルの部屋を覗き、エッチな写真とって、それをまわりに吹聴して終わり。直接人を傷つけたり殺したりなんてしない小物。それでおさまっていた。ところが今回いつも通り写真とってたら男がうつった。それだって知らない男だからそのまま通り過ぎるはずだったが、商工会議所の「今年の顔」として新聞に顔が載っていた。身元がわかったのだ。今回のことがチャンスに思え、のこのこやってきたのだ。相手は連続殺人鬼・・人を殺すことなど何とも思っていない。しかしおバカなスミスは自分は大丈夫と考える。抜け目なく手を打っている・・でも実際は穴だらけ。あまりにもこのスミスがおバカなので、登場した時はめんくらった。ブルックスの華麗で完璧な殺人鬼ぶり見るはずがこんなのにつきまとわれ・・。いろいろバカな指図受けるのか、それともブルックスが彼を弟子として育てるのか。でも幸い違った。夜・・早速スミスの家に忍び込み、寝ている彼を起こし、考え違いしてることを・・つまりどっちがボスかを身にしみてわからせる。後で勇気をふりしぼって家の中調べても侵入された形跡はなし。夢なのか現実なのかおバカなスミス君にはいくら考えてもわからなかっただろう。

Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼5

この時点でブルックスにはスミスの本名がバファートだということもわかってたのだろうな。殺人はいやだ神よ・・なんて言ってるくせにブルックスはかなりイッちゃってることがわかる。マーシャルに対しても主導権取られているように見えて実は主導権握っていて、そういうところはうまい作り。マーシャルにしても常に強制するわけじゃない。時に忠告し、時に制止し、時にそそのかす。二人(?)してあわてることはなく、片方は必ず冷静だから行動にミスがない(カーテンの件は別だが)。準備は周到で後始末も完璧、表情やしぐさに出さないからまわりの者誰も気づいていない。こういうことは単独でやるからかえってミスをしないのだが、スミスがかかわるとそうもいかなくなる。二人いればどっちかがリーダーシップ取りたがる。会話が多くなるし、スピードが鈍るし、秘密も保ちにくい。スミスは「よし、やろうぜ!」の次は「ついにやったぜ!」が来る。準備も後始末も気にかけないタイプ。もっともこれくらい不注意で単純だからブルックスにも簡単にあやつれるのだが。スミスは仕事もちゃんとしてるし、いい暮らししてるし、顔だって悪くない。美人と結婚して息子とキャッチボールして・・なんていう幸せな家庭築いていてもおかしくないのに、どこかがずれてる。そのせいで家庭も持たずさえない毎日送ってる。今までは覗きくらいですんでいたのが、変なチャンスめぐってきたせいで大きく道を踏みはずす。演じているデイン・クックがスミスのことを「常に選択を誤る」と評していたが、確かにそうだ。誤りまくるのだ。いよいよ決行・・となって忍び込んだとたん、トイレに行きたい・・となる。がまんできずもらしてしまうし、おそらく後始末もしないから現場には彼のDNAが残る。ジェシーとシェイラがいちゃつき始めると、もっとよく見えるようにと場所を移動。とにかくオマヌケなのだ。この映画シリアスに見えてけっこう笑わせる部分もあるのだ。ブルックスにとっては、警察へ行く気はないとわかった時点でもうスミスの脅威はほとんどなくなる。彼をうまくじらし、時間を稼ぎ、その間に準備整える。スミスがブルックスを始末しようとしたとたん返り討ちにされてしまう。スミスは彼について何の手立ても打たない。とにかく自分では何の計画も予想も立てられない想像力ゼロの男なのだ。

Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼6

スミスのアパートは例のカップルの向かいだからアトウッドが聞き込みに来る。彼はそのことをブルックスに話す。それでブルックスはアトウッドのことを調べる。調べていたので夜の街で見かけたミークスにも気づく。そうやって話はつながっていく。今ブルックスの頭を悩ませているのは、突然大学を退学して家に戻ってきた娘ジェーン(ダニエル・パナベイカー)のことである。この映画はブルックスとマーシャル、ブルックスとスミス、アトウッドとジェシー、アトウッドとミークス・・と、いろんな関係が入り乱れるが、さほど煩雑な感じはしない。だが、ことジェーンに関しては中途はんぱで、うまくいっていない。後で大学の寮で殺人事件が起こったことがわかる。ブルックスにはそれが娘の仕業だと本能的にわかる。彼女も頭はあまりよくなく、凶器の斧を隠す知恵もなく、実家へ行けば何とかなる・・とあわてて帰ってきたのだ。殺人の理由は明らかにされないが、ブルックスの嗜好が彼女にも遺伝しているのだ。理由なんぞ必要ないだろう。いくら殺人鬼でもブルックスは娘を愛している。娘を助けるにはどうすればいいか。地元の警察から大勢やってきて、聞き取りをしていった。容疑が固まり次第逮捕されるだろう。彼らの目をそらすにはどうすればいい?答は簡単、ジェーンがこちらにいる間にブルックスが向こうへ行き、斧で誰か殺せばいいのだ。ブルックスにしては非常に浅はかな考え。ばかばかしい変装をし、寮のある町へ飛び・・。この部分は映画の流れから浮いている。自分の悪い部分を受けついだという苦悩をくっつければストーリーに深みが出るとでも思ったのか。この映画がヒットしたら次はジェーンをメインに続編を・・という色気が作り手にはある。ラストの夢落ちもそうだ。ブルックスの未来暗示しようという魂胆。さもしさがぷんぷん漂う。だいたいジェーンは登場した時から何やら自信満々である。大学だって入るのにブルックスが手を回したようだ。元々ブルックスは娘には大甘なのだ。でも自分で努力して入ったわけじゃないからやめるのもすぐ。大学なんて時間の無駄、会社に入ってパパの元で仕事覚えて手伝ってあげる。あとを継いであげる。パパだって何があるかわからないし、その方が安心できるでしょ・・とか何とか何寝ぼけたこと言ってるんだと呆れるくらい好きかってなことを言う。

Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼7

彼女もまたそれに伴う準備とか努力見逃していて・・こりゃスミスといい勝負だ、何で彼女とスミスが出会うシーン作らなかったんだろう。後で彼女は妊娠している・・と告白するが、本当かどうかは不明。大学をやめて突然戻った理由を聞かれるわけだが、妊娠したから・・と答えればブルックスもエマもショックを受けてそれ以上うるさいことは言えなくなる。相手は・・結婚してる人・・そう答えればこちらもあまり追究できない。産むかどうか・・まだ決めてない・・そりゃそうだ産むかどうかより本当に妊娠してるのかどうかでしょ。あたしゃ絶対ウソついているんだと思う。何でエマは病院へ行こうとか言わないのかな。産むかどうかは私のかってとか言われてエマもブルックスも何となくそれ以上のことが言えず引き下がってしまう。私達に孫ができるのか・・なんて早くもそっちの方へ思いはせる。私のかってとか言いつつ、親の庇護はしっかり受けるつもりのジェーンに二人とも利用されまくりなんだけど、それに気づいているのやら(しっかりしろよッ!)。しばらくして警察来て殺されたのはフィリップとかいう学生で、見ている人全員彼がおなかの子の父親?って思うはずだが、ちゃんと説明されない。何でこんなふうにあいまいなままにするんだろう。学生寮でのブルックスの殺人も描写されない。と言うか、どうやって描写するっての!見せれば見せるほどバカバカしくなるに決まってる。かと言って見せないからウソっぽくなるし。ブルックスの苦悩も我々には伝わってこない。自分の娘のためなら誰かの娘か息子殺してもかまわないのか。第一そんなふうに娘のこと思うのならなぜ今まで人を殺すことができたのか。後でとうとうスミスを殺し、サムプリント・キラーになる前も無数の人を殺してる・・とすごむシーンがあって、ここがまあこの映画の一番ショックなシーンだけど(ジェーンにハサミでずぶりとやられ、血だらけになって死んでいくシーンは、夢だというのがバレバレだから全然ショックではない)、彼は神に祈りささげても自分を救ってもらうことばかり訴えていて、犠牲者のことなんか全く気にかけていない。まあホント自分のことばっかなのだ。それでも娘となると話は別なのか。この先娘が不始末しでかしたら尻ぬぐいするのか。と言うか、今度のことでもうジェーンは父親が何をしたかわかってるからますます図に乗るだろう。

Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼8

ジェーンの異常さが浮かび上がって来始めると、「悪い種子」みたいになってくる。悪いのは娘じゃない、遺伝子伝えた自分だ・・。でもあちらのような苦悩は伝わってこない。ブルックスとジェーンに焦点しぼったら、それはまた別の映画になる。この映画はブルックスとマーシャルとスミス、アトウッドとジェシーとミークスという二つのグループのかかわり合いがテーマである。ブルックスにとってはマーシャルとスミスが悩みの種であり、アトウッドにとってはジェシーとミークスが悩みの種である。両者ともにトラブルをかかえ、その中でブルックスは追われ、アトウッドは追う。きちんとしていてわかりやすい構図。でもジェーンが出てくるとこんがらかってくる。ブルックスがスミスに自分を殺させようと遺書を用意するくだりの説得力のなさ。遺書の内容もお粗末で・・。この映画練られた部分が大半で見ごたえあるけどジェーンに関しては穴だらけだな。私だったら一番最後にジェーン登場させる。事件がかたづいてほっと一息、そこへ娘が突然帰ってくる。わけを聞いても何も言わないが、そのうち妊娠したと言い出すが、どうもはぐらかされているような気も・・。とりあえずエマがジェーンを部屋へ連れて行く。その時表に数台の車が・・。下りたのは明らかに警察関係でブルックスは直感でジェーンが何かやらかしたと感じる。マーシャルも同意見だ。天を仰いで「神よ・・」で終わり。因果はめぐる糸車・・シンプルでいいと思うんですけど。話を戻してブルックスがアトウッドに加勢する気になった理由もはっきりしない。前にも書いたがアトウッドが捜査していると聞き、経歴調べ(二年前もアトウッドがサムプリント・キラー担当していたんだから、今ここで初めて調べるのもおかしいのだが)、なぜ警官になったのか興味を持つ。ジェシーのこともブルックスにはすぐからくりがわかる。金目当て、今は弁護士と共謀して・・と言うより弁護士の方が入れ知恵しているのだ。一方でミークスも見つけた。本職の警官より夜の街をうろつき、さまよっているブルックス達の方が先に脱獄犯に行き着くなんて皮肉だが、いかにもありそうなことだ。それも常にあたりに気を配っているからこそ。ボーッとしているスミスじゃムリ。ミークスには情婦がいる。彼女の車のナンバーを手がかりに居どころ突きとめたのだろうが、警察は情婦をマークしていないのかという疑問は残る。

Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼9

アトウッドがスミスに目をつけたのも勘というアバウトな理由。彼のアパートを再訪するともぬけのカラで、さては高跳びしたのか。しかしなぜか運送会社の伝票が落ちていてこんなことありえないけどアホなスミスならやりかねない。そこへアトウッドの相棒が現われてジェシーと弁護士が殺された、署で事情を聞きたいと言ってくる。サムプリント・キラーの仕業と見せかけてアトウッドが二人を殺したのかも。それくらい調停はもめていたし、アトウッドはジェシーに暴言吐いてた。アトウッドは突然のことに驚くが、こんなばかなことにかかわっていたのではスミスを取り逃がしてしまう。相棒を振り切って伝票の住所にかけつけてみると、スミスではなくミークスとばったり。ここらへんは最初に見た時は偶然に頼りすぎと思ったが、ブルックスが皆手を回していたのね。彼はスミスを始末し、死体は見つからないようにしてある。スミスはこのままサムプリント・キラーとして追われるだろう。アトウッドはあそこでミークスと出くわしたのは偶然だと思っている。撃ち合いの末ミークスは自殺したからこっちの件は解決。ジェシー達の死もサムプリント・キラーのスミスの仕業、ジェシー達が狙われたのはたまたまだろう。そうやってみんな解決し、アトウッドもすっきりするが・・男の声で電話がかかってくる。几帳面なブルックスはどうしてもアトウッドが警官になった理由を知りたいのだ。と言って理由ったってありきたりである。父親との確執・・でもここで我々は気づく。ブルックスとアトウッドが直接接触するのはこれが初めてだと。アトウッドはスミスの声でないことに気づく。では本当のサムプリント・キラーは別にいるのか。しかし顔はわからない。二人はまだ会ったことがないからだ。この先会う機会はある。今回は父親に尻ぬぐいしてもらったジェーン・・絶対また事件起こす。ブルックスほど利口でも注意深くもない彼女は、警察の目を引きつけるだろう。まあこんなこと妄想したってきりがないからもうやめますね。エマ役ヘルゲンバーガーはカエルのような顔立ちで、どこかで見たような・・と思ったら「沈黙の断崖」に出ていた。近頃ではテレビの「CSI:科学捜査班」で人気らしい。監督が「結婚したい」などと言ってるのがおかしかった。それにしても殺人は忌むべきこととは言え、憎ったらしいジェシーとシェイラが殺されるところは溜飲が下がった。これ本音。