私がクマにキレた理由(わけ)

私がクマにキレた理由(わけ)

この題名何とかしろッ!「映画の日」だがお客は九人。男性が一人いたけどラストシーンの途中で出て行っちゃった。そりゃこの後何も起こりそうにないけどさぁ・・こんなに早く出て行く人も珍しいな。「プラダを着た悪魔」ナニー版という批評はその通りだと思うけど、私は「ラスベガスをぶっつぶせ」女性版だと思ったな。主人公アニー(スカーレット・ヨハンソン)は21歳。わりと頭がよく真面目な性格。母親ジュディ(ドナ・マーフィ)はシングルマザー。苦労して娘を育てた。娘には金融界に入り、エリートコースを歩んで欲しい。でもアニーは自分が何になりたいのか今いちよくわからない。母親の希望をかなえたいとは思うけど・・。ほらほらここらへん「ラスベガス」のベンと同じじゃん。その後の展開は違うけどラストまた同じ路線に戻ってくる。私はこういう得難い体験をしました。競争率の高い奨学金だけど、私にはもらう資格十分あるでしょ?ほらほらここもベンと同じ。・・ナニーという言葉を知ったのはNHKでやった「ぼくらのナニー」を見て。ジュリエット・ミルズがちょっと不思議なナニーをやってた。就活に失敗し(卒業してから面接受けに行くなんて日本とは違うね)、ひょんなことから上流階級の家にナニーとして住み込むことになったアニー。ひょんなことと言うのは、ミセスX(ローラ・リニー)が彼女の名前をナニーと聞き違えたため。自分のことしか考えず人の話を聞かないミセスXはアニーの名前を知っているかどうかも怪しい。ミスターX(ポール・ジアマッティ)は、アニーがあいさつしても顔も向けない。いつも仕事のことで忙しがっているが、どこまで事実かは不明。それというのも浮気しているからだ。そのうちアニーにも目をつける。夫婦揃っていやな人間だが、ミセスXの方には同情の余地がある。彼女は何とか夫を自分に振り向かせようと努力している。この映画はヨハンソンが主役だが、リニーの圧倒的な存在感のせいでカゲがうすくなってしまっている。ヨハンソンは若くてかわいいが見かけが重い。動きもしゃべり方も重い。小柄で胴が太く短い。足は長いが全体のバランスが悪い。走るシーンなど足がもつれるようだ(卒業式でころぶシーンはうまかったけど)。面接に行く時もサイズが合っていないみたいなきっちきちのスーツ姿。口が半開き、あごが前に出ていて猫背に見える。田舎くさいイモ姉ちゃん。

私がクマにキレた理由(わけ)2

それに対しリニーは一分のすきもない。すらっと均整の取れた体つき、流れるような金髪、上手な化粧、高価なドレスを完璧に着こなす。アニーとミセスXとではミセスXの方が圧倒的に有利なのだが、その彼女にも弱点や悩みがあるというのがミソ。しかし見ていて感じるのは物足りなさだ。アニーはそれなりに苦労して育ってきていると思うけど、基本的にはのんびりやで世間知らず。これは母親のせいもあるだろう。彼女は看護師として娘の将来だけを楽しみに一生懸命働いている。娘には自分のような苦労はさせまいとかばい、保護し続けてきただろう。アニーには母親の期待は重荷だが、根が素直なので表立って反抗もできない。だから就職を機に親元を離れることができたのがうれしくてうれしくて・・。独立するということは親に秘密を持ち始めることでもある。面接に失敗したこと、ナニーとして働いていることは隠している。しかし絶体絶命のピンチ(子供グレイヤーの急な病気)に陥ると頼るのは母親。このシーンは見ていてちょっと理解に苦しむ。X夫妻が不在なのだが、いくら何でも緊急時の対処は決められているはず。消防や警察と並んで主治医の連絡先くらい・・。わからなければ電話帳で調べるとか。でもアニーが助けを求めるのは親友のリネット(アリシア・キーズ)、その後で母親。ジュディは本職だからすぐ適切な処置を取るが、リネットに電話するなどまわり道をしている間にグレイヤーに何かあったらどうするのかね。さて、隠していたことがみんなばれてしまったアニー。母親を失望させてしまったが今更引き返せない。グレイヤーのことが気になる。素人であるアニーにとってナニーの仕事は大変だが、描写は偏っている。見ばえのいい部分だけ見せる。例えば料理をしていて不器用な彼女はなかみを床にぶちまけてしまう。しかしそれをかたづけるシーンはなし。何かあっても始末する部分は省略されるか、あったとしてもいいかげん。ぶちまけるなどはでな部分だけ観客に見せ、次に行ってしまう。でもそれってリアルじゃない。床はひとりでにきれいになるわけじゃない。アニーはふとしたことから上の階に住むハーバード大生(クリス・エヴァンス)と知り合い、恋に落ちる。自分とは身分違いだし、ミセスXにばれたら即クビだ・・と自制するが、ハーバードの方はおかまいなし。彼はいい人なので観客は二人が結ばれて欲しいと思う。

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でも彼には何の不自由もない金持ちのお坊ちゃまであって欲しくないとも思う。そりゃ子供の頃ナニーが九人も替わってさびしい思いをしたことになってるけど、それだけじゃ不十分。親の金を当てにせず、アルバイトしながら苦学・・とかそういう部分があって欲しい。でも彼がアニーに言うのは仕事がいやならやめればいい・・とか、別荘だかどこだかに遊びに来いとか、そういった類のこと。結局裕福な暮らしをすんなり受け入れているんだよな。そこらへんが何とも物足りない。アニーがどこか甘ったれているのと同じでハーバードも甘い。二人にはもっと観客が応援したくなるような設定くっつけて欲しかったな。まあホント見ていてあれこれ不満のつのる映画なのよ。アニーが傘を持って空を飛ぶシーンがあるが、夢のある楽しいシーンと言うより時間と金のムダ。特撮使ってこんなの見せる必要どこにあるの?「メリー・ポピンズ」意識しているのかな。壁面に傘のマークがあるビルを見た時には、わぁキュート!なんて思ったりしませんてば。ムッ、アンブレラ社だ、このビルの中では人類を滅亡させるような企みが・・、アニーはこんなところに面接に行くのかジャジャーン!なんて妄想してしまいましたってば。エヴァンスは甘いハンサムぶりをいかんなく発揮していてうれしかったけど、どうしても彼でなくちゃというような役でもないなあ・・と思えてしまうのが残念。ハーバードのキャラってほんの一面しか描写されてない。都合のいい部分だけ。グレイヤー役ニコラス・リース・アートはダニエル・クレイグそっくり。ボンドの子供時代はぜひ彼で!!ジアマッティのミスターXもなあ・・。こういう映画なら金髪で背が高くてがっしりしていてハンサムな夫の方がいいと思うが。元スポーツマンでモテモテ、冷酷で計算高いけどその一方で母親に頭が上がらない小心者とか。ジアマッティじゃリニーと釣り合いが取れない。ミセスXがこんなボウリングのピンみたいな小男と結婚するか?ミスターXの母親役の人は「デッド・サイレンス」のメアリー・ショウだな。大きな口で思い出した。もっと活躍させればいいのに。・・とまあ不満ばっかり書いてきたけどリニーの美しさ(特に真っ赤なドレスを着た時のゴージャスな美しさときたら!!)や演技(自分本位で、相手の話にスッと割り込むタイミングの巧みさときたら!!)は堪能できた。