88ミニッツ

88ミニッツ

前「やわらかい手」を見た時予告をやって、えッ!アル・パチーノの映画がシネパトスだけで?・・ってびっくりしたのよ。だって・・アルですぜ。大スターですぜ。公開一週目のレディス・デー。でも男性も多かったな。予告でウェス・ベントリーの「P2」やって、見たいんだよなあこういうの。ウェスって一癖ありげな顔してるじゃん。気になって気になって。でも5月じゃあなあ・・見ることできんとほほ。さて、ジェイニーとジョーニーという双子の姉妹が襲われる。ジェイニーの方は運良く助かったがジョーニーは・・。犯人として逮捕されたフォースターは、ジェーニーの目撃証言と、FBIの異常犯罪分析医ジャックの証言により、有罪を宣告される。フォースターは無実を主張し、若くて美人で攻撃的な弁護士も熱弁をふるうが、ジャックの敵ではない。9年後とうとうフォースターの死刑執行日が来る。ジャックは(処刑の)お祝いパーティで知り合ったサラという女性と一夜を過ごしたところ。そこへフォースターそっくりの手口の殺人事件が起きる。それを聞いてもジャックの信念はゆるがないが、検事局やFBIの捜査官フランク(ジャックの親友)は別の可能性も考えざるをえない。コピーキャットの仕業だろうが、真犯人の仕業かもしれない。そうなるとフォースターは・・。今回の被害者は何とジャックの教え子デイル。昨夜のパーティにも出ていた。ジャックには「おまえの命はあと88分だ」という謎の電話が入る。いったい誰が電話を?フォースターは本当に犯人なのか。ジャックには何か後ろ暗いところがあるのでは?またなぜ88分なのか。88分後には何が起きるのか。いろんなことが起きるので見ていてめまぐるしい。みんな怪しく見える。ジャック本人さえ怪しい。スリルとサスペンス、心臓バクバク、先の読めない娯楽大作、アル・パチーノの目玉演技を堪能せよ・・。とまあそういう感じに持っていきたいんだろう。でも最初アルが登場したとたんあれ?となるのよ。ピンチに陥るジャックには好意を持たなきゃならないのに・・助かって欲しい・・と思わなくちゃいけないのに、どうもそんな気になれない。もったいぶっていて一癖も二癖もありげ。この映画ではほとんどの人はわりとシンプルな演技しているのに、パチーノだけひねくってる。どうだ俺様の演技は・・。他の連中とは違うだろう。

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ジャックがいやなやつに見えてしまう。偉そうにふんぞり返っているような。もちろんジャックにはジャックなりの信念・正義があって、それはゆるがないものなんだけど、見てくれはいかにも俗物・・なの。後でフランクが「大酒飲みで女たらしで」とか言うの。フランクにはできないことをジャックはみんなやってる。すごく有能だけどそのぶん敵も多い。家庭的なこととは無縁で結婚したこともないらしい。でも女達はみんな彼に夢中なの。FBIはやめたらしく、今は大学で教えている。助手のキム、教え子のデイル、ローレン。学生部長のキャロルはそっけない。パンフによれば過去ジャックと関係があったらしい。おそらくジャックが若い女性と浮気ばかりするので別れたのだろう。秘書のシェリーはジャックのよき片腕だがレズである。まあジャックがやたらめったら女性にもて、ハグするシーンが何度も出てくるので見ていて?だった。ジャックってそんなに魅力的ですか?不健康そうで目をしょぼしょぼさせていると「インソムニア」の不眠刑事思い出す。撮影は2005年頃だからパチーノは65歳くらい。老人くさくて当然なのよね。走るシーンなどはわりとしっかりしていて老人くささはないけど顔つきはどうしてもね。とは言えあの大げさな演技は鼻につく。あと88分って宣告されてもあんまりこたえていないみたい。おびえるどころか逆に返り討ちにしてやる・・みたいな自信満々な態度。悲壮感ゼロ。で、とにかく脅迫者の正体はわからないし、誰を信じていいのかもわからない。88分後に自分が具体的にどうなるのかも不明。だからジャックが真相を解明しようとやっていくことの中には無駄なことも間違いもあるわけ。例えば皮ジャン着てオートバイに乗ってる男が怪しい。ジャックをつけ回し、犯人のように思える。でも実際は彼はキムの元夫。仮出所中だが、彼が服役していたのはフォースターと同じ刑務所。では彼はフォースターから何か指示を受けているのか。いやいや彼はただのストーカー。キムがジャックに熱を上げてるのを知って嫉妬して追いかけ回しているのだ。大学の警備員のドゥフランコという男が怪しい。フランクに頼んでしょっぴいてもらう。でも彼はただのオタク。ローレンを襲ったのは誰か。デイルの次は彼女が犠牲者になるところだったのか。それとも彼女は本当に襲われたのか。勘のいい人はこの段階で妙だぞ・・と思うかも。

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ジャックが過去、証拠を捏造とか何とかって出てくると、またまた「インソムニア」めいてくる。フォースターを有罪にするために彼もジェーニーも偽証したのか。それらのことにいちいち回答は与えられない。88分というリミットがあるから、そこへ向かって一直線。多くのことは通り過ぎ、振り返って検討されることはない。映画の作りがずさんだということではなくて、そういう内容なのだ。しかし現実にはこんなことはとうていムリだ。どんなに周到に計画し、用意し、相手の出方を熟知していてもハプニングは起きる。全部は予知できない。例えばジャックが自分のケータイ壊してしまいキムのを借りるとか。とは言えありそうにない話でも私はこの映画を大いに楽しんだ。パチーノの大げさな演技も二回目は慣れたのかそれほど気にならない。まあパチーノの眼力も年のせいか少し弱まってきたな。タイムリミットが短いので次から次へと何かが起こり、だれるヒマがない。ジャックとキムがそれぞれの過去を話すシーンはある。普通ならここでだれる。でも二人とも順序立てて効率よく話す。普通あんな効率のよい話し方なんてしない、不自然だ・・となるけど、この映画はそうでもない。それぞれが心の中で何度も告白の練習をしていたに違いないから。キムはこんな事態でも(デイルが殺されたと言うのに、元夫につけ回されていると言うのに)、すぐにでもジャックに体を投げ与えるつもりでいる。それほどジャックに熱を上げている。取りあえず元カレとウソをついたけど、すぐにでも真実話すつもりでいたはず。告白の予行練習は頭の中で何度もしていたはず。ジャックだって殺された妹ケイトのことは片時も忘れたことはない。あの時幼い妹を一人で留守番させたばっかりに・・。そのことを頭の中でくり返しくり返し・・。さて、うまくできているなと思いつつも、気になる部分はある。冒頭双子が襲われる事件から今回の事件まで9年もたっていること。ダイアナ妃の死亡記事の載った新聞が出てきて、それから9年ということは2006年か。撮影されたのが2005年で、2006年には公開するつもりだったろうから別におかしくないが、2008年の今見るとちょっとあれ?と思う。アメリカでは日本より遅く、現在公開中。何で遅れたのかな。それと9年もあける必要あったのかな。二回目は結末知った上で見てるから9年前の裁判のシーン見るとなるほど・・と思う。

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途中の、ある人物のあるセリフも、うん、確かにそうでしょ・・と思う。ただ、なるほどとは思うけど、一方で年齢的におかしいでしょ・・とも思ってしまう。法律勉強して弁護士になって、9年たってあの若さ?整形手術したの?クライマックスで衝撃の事実(いちおう)明かされる時、ちらりとでも回想シーン入れるべきだったのに、なしで終わってしまったのも変。それまではすっ飛ばしてきても、謎解きの要となるシーンはちゃんと見せなきゃ。あれじゃほとんどのお客、えッ結局○○は誰だったの?・・とわけがわからないまま取り残されるはず。私みたいに二回も見る物好きは別として、みんな9年前の裁判シーンなんか忘れてる。それから、謎の電話がかかってきた時、ジャックはシェリーに発信元を調べさせるんだけど、それが何とケイトのケータイ。ケイトはジャックが28歳の時に殺されている。今のジャックがいくつなのかは不明だが、その頃にケータイなんかあるはずがない。あったとしてもトランクくらいの大きさのはず。だから誰かがケイトの名前使ってケータイ取得したってことなんでしょ?そこらへんも映画はすっ飛ばしてしまう。ケイトを殺した犯人は他にも六人くらい殺してるけど死刑にはならなくて、今も服役中。私も含めてほとんどの人はその犯人がフォースターで、だからジャックはフォースターを死刑にしようと・・と、勘違いしたはず。でもケイトを殺したのはフォースターじゃなくて、そっちの犯人は結局映画には出てこないのよ。で、88分というのはケイトが殺されるまでの時間。犯人はケイトを88分かけて切り刻み、しかもそれを録音していたの。そのテープは二本あって、一つはニューヨーク警察に厳重に保管されてる。もう一つはジャックの保管庫の中。持ち出されたとしたらこっちからだから、犯人は近くにいる誰か・・となって、これが犯人の目星につながっていくわけ。何で88分なのかと言うことでは、パンフにコラムが載っているんだけど、私自身は冒頭スクリーンに大きく88ってうつった瞬間、8から無限大(∞)、あるいはメビウスの環を連想した。事件が解決してもジャックの後悔・苦悩は死ぬまで(無限に)続く。また、人間がどこまでは正気でどこからが狂気なのか、その境界のつけにくさを表わしているのではないか。まあそんなことを思ったりもしましたな。

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まあとにかく見てよかった。パチーノだからハズレ映画じゃないとは思っていたけど、こんなに楽しめるとはね。音楽もよかったし。まあ、やたらめったらケータイをやり取りしていて、こんな瞬間にもケータイかよ!・・と、呆れたのは確かだけどね。キャストはキムがアリシア・ウィット。「ルール」のヒロイン役の人だけど、今回は髪を短くしていて、パンフ見るまで彼女だと気づかなかった。ローレン役はリリー・ソビエスキー。小柄というイメージを持っていたけど、意外に背が高いのね彼女(178センチ)。それにしてもこういう役ばっかやってて大丈夫なんですかね。キャロル役はデボラ・カーラ・アンガー。フランク役はウィリアム・フォーサイス。名前を聞いてもぴんとこないが、パンフを見たら「赤ちゃん泥棒」に出ていた・・とある。それで納得がいった。どこかで見た顔だなーってずっと思っていたのよ。フランクとジャックの友情(腐れ縁とも言う)がなかなかいいのよ。フランクはいつもジャックに振り回されていておもしろくないの。デイルに続いてサラが殺され、ジャックが犯人だと指し示す証拠がいっぱい発見されるので、友情か仕事かどちらを取るか辛い立場なのよ。でも88分たって、あわや・・という時、フランクは・・。まあこれはぜひ映画を見てくださいませ。フォースター役はニール・マクドノー。唐突ですけど引越す前にぜひもう一度シネパトスへ行きたかったの。これを見に行って、お客さんがたくさん入っていたのがとてもうれしかった。一回目を終わって出てくると、次の回を待つ人がいっぱいいて、二回目終わって出ると、さらにたくさんの人が並んでいて、うーん、さすがアル・パチーノ・・って思ったの。ニール・マクドノー目当てです・・なんてのは私だけでしょう。ニールって変わった顔してる・・といつも思う。若いんだか年くってんだかよくわからない。「サンダーバード」に出てくる人形みたいな顔立ち。「ヒドゥン」のリメイクに出るらしい・・って前書いたけど、作られるとしてどっちの役かしら。彼なら宇宙人でも違和感ないと思うけど。は~でも見れるのはいつかしら。まあとにかくシネパトスにはお世話になりました。いろいろ楽しませてもらいました。ありがとうございました。できれば「P2」で終わりにしたかったです。それだけが心残りですぅ。