ツイステッド

ツイステッド

平日の昼間にしてはお客さんはけっこう入っていた。年配の夫婦、年配の男性が多い。私はアシュレイ・ジャドはけっこう好きである。この人は大変な美女だ・・とも思う。ただものすごく演技がうまい・・とは思わない。まあ彼女の作品は今回のを含めて五つしか見ていないんだけどね。それも全部サスペンスもの。コメディーとか感動ものは未見。彼女のいいところは大変な美女でエレガントなのに体を張って動くところ。顔が小さくてきゃしゃなイメージがあるけど、体つきはがっしりしている。走るところなど体が重そうで、もたついた感じがあるんだけど、でも体力があってたくましいの。「ダブル・ジョパディー」なんか特にそう。さて冒頭の霧のシーン、これが非常によろしい。ぐっと来る。「つかみはOK!」って感じ。映画を見ている時には気がつかなかったけど、舞台はサンフランシスコなのね。サンフランシスコと言えば霧だけど、実際目にするのは初めて。全然ロマンチックじゃなくて、何か怖い感じ。音もなく、いつの間にか忍び寄ってきて・・。画面中央に吊り橋。画面下部は深い霧で何にも見えなくて、橋を渡る車がちらちらと見え隠れする。画面上部には霧はないの。よくこんなところ撮影したな・・と感心してしまった。ゆっくり走る船、スローモーションみたいに見える飛んでいる鳥の群れ・・。アシュレイ・ジャド扮するヒロインジェシカの顔がうつって、上を向いているからその目には空がうつっている。鳥の群れが片方の目からもう片方の目へと横切る。ま、滑り出しは上々というところですな。少し後の方で公園がうつる。剣術や槍術の練習をしている。その時は何とも場違いな感じがしたが、ふと気がついた。サンフランシスコということはチャイナタウンがあるってことだ。ブルース・リーもここの生まれじゃないか・・ってね。だから公園で中国人が武術の練習をしているのは場違いでも何でもないのだ。それにしてもジェシカの練習している柔スティックなるものは初めて見たな。NHKの「道中でござる」に出てくるおみくじせんべいみたいだな。さて港にはアシカがいる。船のスクリューに巻き込まれたりしないのかな、大丈夫かな。最後の方で海に浮かぶ死体のそばでアシカがもぐるシーンが出てくるけど、あそこはよくとったな。暗い話だけどまあハッピーエンドだし、後味は悪くない。

ツイステッド2

パンフレットでははっきりとネタばらしをしていて、これにはびっくりしたな。いちおう注意書きはしてあるけど、普通はここまではっきりとは書かないでしょう。まあ私は家に帰ってから読んだんだけどさ。ライターの音には全然気がつかなかったな。一回目見てストーリーも犯人もわかって、二回目見る時には見落としたところはないかな・・なんてじっくり見ていたのよ。でも音に関しては全然注意をはらっていなかったの。タバコに火をつけるのにライターを使うかマッチを使うかなんてことより、この映画ではみんなよくタバコを吸うなあ・・なんて思っていたわけ。特にアンディ・ガルシア(いい俳優さんですな)扮するマイクはタバコ吸いすぎ。あの灰皿見ました?体に悪いってば。ジェシカはお酒飲みすぎ。普通あの状況であんなに飲みます?殺人の犠牲者がみんな知っている男性で、自分は誰かに見張られているようだし・・となれば、いざという時のためにシラフでいようとは思わないのかしらね。酔って記憶をなくして、起きてみたら殺人事件があったというのであれば、飲まないで様子を見ようとか、友人に泊まってもらって自分が夜ちゃんと家で寝ているかどうか確かめてもらうとかさ。・・お酒を飲んで寝てしまって記憶が抜け落ちている時に限って殺人事件が起きる。もしかしたら自分が犯人なのではないか・・とジェシカは思い悩む。三人目の犠牲者が出た頃には自分が犯人なのだ・・と本気で思い込んでいた。勾留された時にはかえってホッとした。ところが彼女の血液からドラッグが検出される。知らないうちにお酒に薬がまぜられていたのだ。真犯人はお酒に薬を入れた人間、ジェシカははめられたのだ・・てなわけでこの映画ではお酒が重要なカギ。でもだからって彼女がお酒飲むシーンをやたらに入れて、毎晩酔って昏倒し、起きたら事件みたいな描写をするのは・・。てっきり毎晩だと思っていたら事件と事件の間には一週間くらいの間隔があるんじゃん。てことはどういうことなの?ジェシカは事件の起こらない夜も飲んではぶっ倒れていたの?→体が持たん。実は事件が起こらなかった夜は彼女は禁酒していたとか・・→あの飲みっぷりからしてありえない。事件が起きる夜と起きない夜とでは同じお酒のビンでもなかみが違っていた→そんなメンドーなことできるか!まああの几帳面な犯人ならやりそうだが・・。

ツイステッド3

この映画の内容を額面通りに受け取ると、犯人は忙しい自分の仕事をこなし、ジェシカを見張り、ついでに殺す相手にも目を配っていたことになる。きっと分身の術を心得ているのだろう!お酒のことも犯人の動機も理屈に合わず、したがってサスペンス映画としてはあんまり出来はよくない。ジェシカには飲みすぎの他にポイ捨て注意も忠告しておきたい。「ツイステッド」という題名から、パンフレットにはまあいろいろ書いてあるわけよ、トレンディドラマの宣伝文句みたいなのが。「ツイステッド・エクスタシー」とか(目が回るってことだんべ)、「記憶の罠」とか(ボケの始まりってことだんべ)、「仰天のクライマックス」とか(そりゃ仰天するわな、また犯人が○○かよー!って)、それらしい軽い文章が連なっているけどさ、要するに「ツイステちゃいましたー」ってことでしょ?この場合ゴミとかスイガラじゃなくて男を・・なんだけどさ。ジェシカが男をポイ捨てしなけりゃあんな事件は起こらなかったのよ。心に傷を負った女性が夜な夜な男あさり・・というのは「ミスター・グッドバーを探して」を思い出させるな。私映画を見て、その後原作も読んだけど正直言って意味がさっぱりわからなかったわ。ヒロインの心理が理解できないの。思ったことはただ一つ「体力あるなあ・・」ってこと。この映画のジェシカもそう。捜査官の仕事って教師以上に大変だと思うけど。私が印象的だったのは男社会で生きていくことの大変さ。男どうしで結束してねちねちと・・。でもそういう職場でもマイクのような人はいて・・。あるいは警官時代の相棒ウィルソンとか。人が生きていく時には味方もいれば敵もいて。それだけじゃなく味方の顔をした敵とか、敵だと思っていたら味方してくれたりとか。ここで思い出すのが冒頭の吊り橋。霧で何も見えない部分と霧のない部分。橋は、走っている車はジェシカ自身である。善と悪のはざまでゆれ動き、でも生きている以上は前に向かって走り続けるしかない。そのうちには霧も晴れるだろう。橋は(マイクやウィルソンのような味方に)しっかり吊られているしね。・・ああ、はいもちろん私の妄想でーす。てなわけで巻きつき、ゆがみ、曲げられ、ひねられ・・いろいろ宣伝してるけど、この映画の「ツイステッ度」はせいぜいソフトクリームの渦巻き程度。でも音楽よし、ムードよしで私は十分楽しめた。