タワーリング・インフェルノ

タワーリング・インフェルノ

こういう超大作ってほとんど見たことがない。スティーヴ・マックイーンとポール・ニューマンとでは、マックイーンの方が好きかな。ニューマンには全然興味なし。日本でも大人気だったマックイーンだが、実物は普段我々が抱いてるイメージとはちょっと違っているんだろうな。庶民的で気さくで・・それだけじゃないと思うな。当時彼はアリ・マッグローと結婚していたが、「タワーリング」の記事はないかと古い「スクリーン」や「ロードショー」を引っくり返していたら・・「マックイーンの嫉妬でカゴの鳥にされたマックグロー」という記事が。異常に嫉妬深く、彼女に仕事をさせないとか、使用人をみんなクビにするとか。ホントかいな・・と思うけど、そういうことは別にしても50歳での死は早すぎるな。さて、この作品の原作は二つあるらしい。本屋で文庫を見かけた気もするが(どっちかはわからんが)買っときゃよかったな。今見るとすごいキャストだ。上の二人だけでもすごいけど、いろんなテレビシリーズの主役達がずらり。リチャード・チェンバレンは「ドクター・キルデア」。これは見たことなし。この頃の彼はちょっとベネディクト・カンバーバッチに似ている。ロバート・ヴォーンは「0011ナポレオン・ソロ」。ロバート・ワグナーとフレッド・アステアは「プロ・スパイ(スパイのライセンス)」で父子役。冒頭・・ダンカン建設のヘリがサンフランシスコの上空を飛ぶ。社長のダンカンがウィリアム・ホールデンで、チェンバレンは娘婿シモンズ役。ヘリに乗って砂漠から帰ってきたのは設計士のロバーツ(ニューマン)。今夜は138階建ての超高層ビル、グラス・タワーの落成記念パーティが135階で行なわれる。ロバーツは都会を離れ、砂漠で第二の人生始めるらしい。彼の帰りを待ちかねていたのが雑誌の編集長か何かのスーザン(フェイ・ダナウェイ)。タワーを設計したのはロバーツだが、シモンズは彼の図面通りにはせず、仕様を変えてその分ぴんはね。どうせ何も起きるわけないと思ってる。それにしてもなぜあんな高いビルを建てるのだろう。後でマックイーン扮するオハラハンが「確実に消せるのは7階まで」とか言っていて。日本でも高層ビルがじゃんじゃん建って、いったい何を考えているのかね。いくら免震だの耐震だの言われていても、本当に地震が来たらどうなるか。まわりのビルとの関係もあるし、それでなくてもあのガラスの多用・・下を通るのさえ恐怖だ。

タワーリング・インフェルノ2

話を戻して、ロバーツが少々浮かれ気味なのは確かだ。オフィスの奥は住居なのか、早速スーザンとイチャイチャ。シモンズの不正には全く気づいておらず、いい気なものだ。電気系統や防災設備の不備(スプリンクラーが作動しないなど)のせいで、81階の倉庫で起きた火災は広がり始める。135階でのパーティには300人も出席している上、ロバーツが中止を要求してもダンカンが渋るなどして手遅れになる。で、天にも届こうかという(高さは520メートルらしい)夢のタワーが、一転そびえ立つ地獄となるわけだ。パニックだけでなく、人間ドラマも描かれる。クレイボーン(アステア)は大金持ち装っているけど、実は三流の詐欺師。未亡人リゾレット(ジェニファー・ジョーンズ)に偽造株券売りつけようと企んでいるが、生来の人のよさで正体はばればれ。このたそがれカップルのエピソードをほめている人も多いけど、私はねえ・・。70過ぎてまだケチな犯罪続けているのか、何てバカなんだ・・としか思えないし、リゾレットも人がよすぎる。金持ちらしい彼女はわかるが、クレイボーンはなぜここに入居できたのだろう。障害のある母親と、二人の子供の三人家族もなぜ入れたのか。最新式だし、家賃ものすごく高いと思うが・・。リゾレットは途中で死んでしまい、クレイボーンはガックリ。彼女の飼い猫が残されるけど、ちゃんと世話できるのかいな。猫の方が長生きしそうだ。広報係のビグロー(ワグナー)も仕事の合間に秘書のローリーとイチャイチャ。何か公私混同が多い。その間に火が回ってきて・・でも、彼は火に気づいても何もしない。ローリーにウソをついて安心させるが、何もしなさすぎる。ローリーもローリーで、火事がわかった後もスカートもズボンもはかない。あと、定時に帰って命拾いする秘書はメリル・ストリープらしい。他にダブニー・コールマン、O・J・シンプソン(猫を助けた後はラストまで出てこなかったようだが)、ドン・ゴードン(地味なので誰も覚えていないだろう)、フェルトン・ペリー(目玉ギョロギョロで頼もしい、「ロボコップ」シリーズに出ていた人)。招待客パーカー議員役はヴォーンだが、いつもなら不正まみれとか悪徳の化身となるところだ。あたしゃてっきりシモンズが、ちょろまかした金を彼に貢いでいるのだと・・。何かと便宜図ってもらうため、賄賂渡しているのだと。

タワーリング・インフェルノ3

でもそういうことはなくてわりとまとも。騒ぎになってもしゃしゃり出て事態を悪化させるとか、そういうこともなし。冷静で協力的。だから途中で死んじゃったのは気の毒だった。パーティのシーンで歌ってるのはモーリン・マクガヴァン。私はてっきり「モーニング・アフター」歌うんだと思ってたけど、あれは「ポセイドン・アドベンチャー」の方なのね。彼女はテレビで一度見たことがある。確か東京音楽祭だったと思う。声も歌い方もすばらしかった。アグネス・チャン嬢も出ていたが、プロの一流歌手と学芸会くらいの差があって、見ているのが恥ずかしくなるほどだった。マックイーンが出てくるのは40分以上もたってから。ニューマンより若いが、彼の方が老けて見える。オハラハンは、こんな高層ビルなんて建てるべきじゃないと思ってる。消防隊の能力をはるかに超える高さ。途中で二回ほど疲れ切って休んでいるシーンがある。装備は重いし危険だし、救出はなかなかはかどらないし。最後の手段として、屋上に設置してある貯水タンクを爆破することに。猛火の後は大洪水・・まあサービス満点だ。爆薬をセットしているオハラハンの手には結婚指輪が・・。家庭があり、職場では頼れる隊長として慕われているのだ。決して派手でもスーパーマンでもないけど、人間的な魅力にあふれている。ラスト・・何とか鎮火して・・後始末の活気と長い夜の疲労感が漂う。ロバーツはあのビルは記念に残すかとか何とか早くもお気楽ムード。緊張がゆるんでいるのはわかるが、無責任すぎないか?ここを離れてスーザンと第二の人生ってか?オハラハンの方は、部下を失い、多くの犠牲者が出たことに心を痛めている。こんなことが起きる原因を作った連中に怒りを覚えている。彼が何を言ったって、設計士や建築主はこれからも上を目指すのだろう。ロバーツとは一緒にピンチをくぐり抜けた仲だが、それでも反発心は拭えない。で、見ている我々は彼に深く共感するのだ。超高層ビルの火災と言うと、「サンダーバード」の「世界一のビルの大火災」がすでにあるので、さほど新鮮味はない。展開も、上に行ったり下へ行ったりで、今どこにいるのかわかりにくい。パーティ出席者の救助も、もう少し何とかならなかったのかという気も。