タイムマシン

タイム・マシン/80万年後の世界へ

2002年のリメイク版公開の影響で、オリジナルも見てみようという気になった人も多いのでは?私がこれを最初に見たのは数十年前・・たぶん「月曜ロードショー」あたりだろう。と言うことは全部は見なかったかも・・例によって。カラフルできれいだったことと、ウィーナ役イヴェット・ミミューがかわいいこと・・覚えているのはそれくらいか。1899年のロンドン。発明家のジョージ(ロッド・テイラー)は、自作のタイムマシンで未来へ旅立つ。映画はその数日後、彼が戻ってきたところから始まる。友人達は、食事に呼んでおきながら遅れるとは何事だと怒っている。そこへ現われたのが、薄汚れ、疲労困憊という感じのジョージ。そこで彼が自らの体験を語って聞かせるのだが、80万年後の世界へ着くまでに45分くらい・・映画の半分くらいかけてる。思索的な映画ではなく、娯楽映画だから、あまり難しいことは入れない。だからあいまいなところ、つじつまの合わないことがいっぱいある。ジョージは裕福そうだが、親が遺産残したのか。何かの発明で大儲けし、一生遊んで暮らせる身分なのか。なぜタイムマシンなのか。ボーア戦争のことが会話の中に出てくるが、彼はこの時代が好きじゃないらしい。なぜ戦争はなくならないのか。自分は別の時代に生きてるのが自然なのでは?どうやってマシンを作れたのか不明。動力も不明だが、幸いDVDにはドキュメンタリーがついていて、説明してくれる。それによると水晶の力を利用しているのだそうな。友人の一人フィリップ博士は、「未来は変えられない」と言うんだけど、我々の感覚からすると、変えられないのは過去の方でしょ?・・と思ってしまう。マシンはどちらにでも行けるのだが、ジョージは過去へ行こうとは思っていないようで。いつものことだが、何でキリストに会いに行かないんだろう・・と、不思議。三次元だの四次元だの、わかったようなわからないようなセリフがやり取りされるが、要するにマシンは完成し、それなのに誰も信じようとしない・・と。話を聞かせられ、ミニチュアを見せられ、それがこつぜんと消え失せても信じない。マジックに決まってるし、過去や未来へ行く必要も感じてない。完成した実物を見せろと言い出す者もいない。おっそろしく好奇心・想像力に欠けた連中だ(これって80万年後のエロイ族と同じなんだけど、別に意図してはいない?)。

タイム・マシン/80万年後の世界へ2

時間を旅するシーンは、特撮を駆使している。今ならCGだが、当時はアニメやコマ撮り。でもこれでいいのだ。マネキンを使ってファッションの変遷を見せ、時間の経過を表わすが、1960年製作なのでミニスカートは出てこない。1917年、1940年、1966年と、ジョージがマシンを止めて様子をうかがうのは、戦争の時ばかり。66年のは核戦争で、そのせいで地球は天変地異続き。地殻の変動で閉じ込められたジョージとマシンは、浸食によって再び外へ出られるまで待つしかない。80万年後に一気に飛ぶが、さほどはしょった感じはしない。とは言え80万年もたってるのに、人間が今と同じ体格をし、英語をしゃべるというのは、いくら何でもおかしいよな。人類は遠い昔に地上に住むエロイと、地下に住むモーロックとに枝分かれした。エロイは全員金髪で白い肌、若者ばかりで仕事らしきものは何もしない。ウィーナが川で溺れても、誰も助けず無関心。力を合わせる、努力するという感覚がなく、その代わりケンカも競争もない。一方モーロックは目が光り、皮膚は緑色っぽい腐ったような色で、(着ぐるみのせいもあるが)ブヨブヨしている。言葉はなくうなり声だけ。エロイが何もしなくてすむのは、モーロックが彼らを餌として管理しているから・・というのはムチャな設定だ。衣類や食器、テーブル、クッションを用意し、建物の中を掃除してくれるのか。果物だって置いてあるのではなく、ちゃんと彩りよく盛りつけてあるし、ゴミもない。エロイに若者しかいないのは、食べられてしまうから年を取るまで生きていられないというのはわかるが、赤ん坊も子供もいない。育児はモーロックが?でもそんなことはどうでもいい。ジョージはいろいろ勘違いする。豊かな自然、楽しそうに集う美しい若者達を見て、楽園が実現したのだと喜ぶ。しかしそれもつかの間、文化も思考もなく、ボーッと生きてるだけと知って失望する。彼は歯がゆく思い、何とかしなければ・・と自分の・・19世紀末の知識人としての規範で行動する。80万年たって、環境や生態が変化していても、それに合わせる気はない。自分の方が正しい。自分が新しい世界を作ってやる。思い上がりもいいとこだが、片方が美しく片方が醜い、人間が人間を食べるとなれば、黙っていられなくなるのも当然か。映画には動物は出てこない。原作だとフクロウとか蝶とか少しは出てくる。エロイは身長が4フィートくらいと小柄で、男女の性差が薄れ、好奇心に乏しく、ひ弱ですぐ疲れてしまう。

タイム・マシン/80万年後の世界へ3

家畜や野菜のこと考えれば、それもそうだな・・と思う。形が揃っていて、やわらかく新鮮なものを求めるじゃないか。映画ではモーロックには狩る必要がない。サイレンを鳴らせばいいだけになってる。サイレンを聞くとエロイは集まってきて地下へ入る。大昔戦争の度にサイレンが鳴り響き、人々は地下へ避難した。その記憶が脳のどこかに刻まれているのだ。サイレンがやむと入口は閉まり、入れなかったエロイ達は帰っていく。モーロックはあらいざらいつかまえて食べてしまうようなことはしないし、エロイはこの次は用心しようとか備えたりしない。それで自然にバランスが取れているのだ。でもジョージはウィーナが地下へ入ってしまったため、助けようと奮闘する。エロイ達をどやしつけ、目を覚まさせようとする。映画で80万年後がどう描かれるのか期待して見ていると、金髪の若者達が出てくるので、正直言ってがっかりする。80万年もたって、今と同じであるはずがない。でも・・何回か見て・・読んで思う。彼らの魯鈍ぶり、無害さは筋が通っているのだ。いろいろ聞きたい、自分のことも話したいジョージに、彼らは無関心。質問をうるさがるわけではなく、聞かれれば答える。でもその先がない。敵意も警戒心もない。すべて揃っていて・・着るもの、食べるもの、寝るところ・・何も心配する必要がない。考える必要もない。と言って全く脳が退化しているわけでもない。刺激を受ければそのうち反応し始める。ジョージが強引な手段取れば、引きずられて何となく協力するような感じになる。彼がモーロックと戦っている時、エロイの一人は見よう見まねでモーロックを殴ってみる。すると意外にも簡単に相手は血を流し、死んでしまう。今までエロイの反撃にあったことはなく、従って自分を鍛える必要もなかった。身を守る必要もなかったのだ。たぶんこの地下での乱闘がこの映画のクライマックス。ちょいとなまぬるいが、派生していろんなこと考えてしまった。人を殺すことを覚えた若者はどうなる?今までは全く平等で、何の争いもなかったけど、これからは?それとたぶんジョージは19世紀末の細菌やらウイルスやらをたっぷり持ち込んだだろう。彼によって人類の滅亡は・・モーロックがエロイを食べ尽くすのより・・ずっと早まったはずだ。原作だとエロイは、タイムトラベラー(原作では主人公に名前はない)の行動に嫌悪・困惑・恐怖の念を示す。それらは長続きせず、すぐに忘れてしまうが、タイムトラベラーは自分の乱暴なふるまいを、恥ずかしく思ったりする。

タイム・マシン/80万年後の世界へ4

この・・自分の意見ややり方を強引に押しつけてくる相手への嫌悪感のようなものは、すごく共感できる。大声や威圧的な態度には私も恐怖を感じる。映画での何も感じないエロイ達が、ある意味うらやましい。さて、原作ではウィーナは死んでしまう。傷心のタイムトラベラーは再びマシンに乗って未来へ飛ぶ。いったい地球は最後にはどうなってしまうのかという、もっともな興味である。映画はオリジナルもリメイクも一人の女性の登場で旅の目的は果たされてしまう。時間を越えるマシンを作り出したのも、結局は運命の女性と出会うため。果てしない時間も太陽系の滅亡もどうでもよく、一組のカップルが誕生してそれでよしとなる。映画だから仕方ないが、私は不満。原作で描かれる終末世界はなかなか興味深い。ずっと昔に書かれた作品なのに、現代の科学番組でやるのとほぼ同じ内容なのには驚く。太陽も星も様子が変わり、大気の成分も違う。人類はとうの昔に滅び、得体のしれない生物が時折姿を見せるだけ。すべては無に向かっている。そんなところを旅すれば人生観も変わってしまうだろうが、映画の主人公はそんなことに思いをはせる必要なし。ウィーナと一緒になるにはどうすればいいんだろう・・あッ、戻ればいいんだ!テイラーはこの映画の頃は30歳くらいか。それにしては老けてるな。ミミューは1942年生まれだから17か18だ。朝起きたばかり・・みたいな腫れぼったい目をしていて、そこがかわいいが、こういうタイプは老けるのも早い。「ジグザグ」というテレビシリーズがあって、私はジョージ・マハリス目当てで見ていたが、そこでのミミューはそばかすが散り、全体的にくすんだ印象。1970年と言えばまだ28かそこらで、それで何でこうも輝きが失せてしまうのかと不思議だった。フィリップ役はセバスチャン・キャボット。「ニューヨーク・パパ」というテレビシリーズに出ていた人。主演はブライアン・キースだが、ギョロ目で肥満体のキャボットの方が目立ってた。もう一人ウィット・ビセルは見た顔だ。「タイム・トンネル」のカーク所長だ。「タイム・トンネル」と言えばDVDが出るようで。昔毎週夢中になって見ていたけど、今見るとどうなのかな。白黒で見ていたから、カラーで見たらさぞ印象が違うだろうな。

タイムマシン(2002)

これは前に一度WOWOWで見た。その時は全然おもしろくなかった。すべてが悪い方向へ行っちゃってる気がした。公開当時いろいろ宣伝していたし、8000万ドルもかけてるし、原作の知名度もあるし、かなり意気込んで作ったんだろうなあ。でもヒットはしなかったようで。オリジナルだと主人公は発明家で、何となくマシンできちゃうけど、こちらはそれではまずいとでも思ったのか、アレクサンダー(ガイ・ピアース)はコロンビア大学の助教授。つまりちゃんと職業持ってる。舞台はロンドンからニューヨークへ移ってる。彼がマシン作ったのは、恋人エマ(シエンナ・ギロリー)が目の前で死んでしまったから。過去に戻って別な行動取れば、運命は変わって死なずにすむのでは?でもやっぱり死んでしまう。前に見た時は何度かトライしてたように思ったが、今回見たら戻ったのは一度だけだったな。私の記憶も当てにならない・・と言うか、あきらめるの早すぎ。アレクサンダーは次に未来へ飛ぶ。2030年で出会う女性はなかなかきれいだ。その30年で予告されていた、爆弾を使った月の開発が原因で、2037年には滅亡に近い状態に陥る。人類ってそんなにバカなのかね・・何をやるにも爆弾て・・。気がつくと80万年以上たってる。いよいよ美しいエロイ族の登場だ・・とワクワクするが・・ありゃりゃ?美しくカラフルな楽園も、無邪気で可憐なウィーナも登場しない。何となく「猿の惑星」みたいな感じになる。茶色っぽく、くすんだ印象。地底人モーロックは・・ドナルド・サザーランドをモデルにしたのかな・・似ていたぞ。モーロックはエロイを狩る。オリジナルのようなサイレンで集める省エネ方式ではなく、さんざん暴れ回る。たぶんCG駆使したダイナミックさを狙ったのだろう。「プレデターズ」みたいだ。モーロックを支配してるのがウーバー・モーロック(ジェレミー・アイアンズ)。一種のミュータントらしい。彼が制御しないと、モーロックはエロイを全部食べてしまう。アレクサンダーはウーバー・モーロックを非難し、やっつけちゃう。モーロックを全滅させちゃう(たぶん)。マシンを爆破したので、もう過去へは戻れないが、これからやることあるし、親しくなったマーラもいるし、心残りはない。ピアースはあんまり見たことがない。「メメント」が有名だが、おもしろくなかった。「プロメテウス」にも出てたっけ、忘れてた。

タイムマシン2

前はよくクリスチャン・ベールとごっちゃになった。この作品では、最初出てきた時は、何かつまんない男・・って感じで、ぱっとしない。顔が整ってないと言うか、ゆがんでると言うか。エマをなくし、四年間研究に没頭。不精ヒゲを生やし、髪もなでつけず・・すると何だか魅力的に見えてくる。ガタピシしているような顔立ちも、場面によっては精悍で魅力的に見える。ただ、息の漏れるようなしゃべり方は最後まで気に食わなかったけど。ギロリーは「バイオハザード2 アポカリプス」のインパクトが強すぎて。他の作品見ても同じ人だとは思えなくて。アレクサンダーの友人フィルビー役はマーク・アディ。「悪霊喰」に出ていた人だ。オリジナルでフィルビーを演じたアラン・ヤングが出ているらしい。たぶん最初の方の、花屋で働く老人だろうが、はっきりとはうつさない。何で?ちゃんとうつしてあげればいいのに。IMDbによるとヤングは1919年生まれで、まだ(2013年11月現在)生きてるようだ。2030年、アレクサンダーはニューヨーク市立図書館に入る。そこでは案内装置フォトニックが現われる。文学作品も含め、すべての知識を蓄えているという設定。一台だけ残っているということで、80万年後にも登場し、モーロックとエロイの関係を説明する。いまだに新しい知識を仕入れ続けているのか。そのわりにはウーバー・モーロックのことは知らないようだが。フォトニック役はオーランド・ジョーンズ。マーラ役サマンサ・ムンバは知らない人。本業は歌手か。弟ケイレン役のオメロ・ムンバは実の弟らしい。彼女は何か・・ムンバという名前がぴったりに思えるアフリカンな顔立ち。鼻の穴が目立って・・あ、そうか、だから「猿の惑星」連想したのか。80万年たって英語しゃべるのはおかしいという指摘避けるためか、エロイは子供の頃いちおう英語を習うという設定。フォトニックから習うのだ。大人になると忘れてしまうが、マーラは先生なので流暢に話す。普段は今の・・エロイの言語話す。オリジナルではおおらかにすっ飛ばすところも、リメイクでは律儀にフォロー。だからってこっちの方が出来がいいとはならないのが辛いところ。モーロックより上のを出してくるのも、あのモーロックじゃ低能すぎるというもっともな指摘避けるためだろう。アイアンズは女形か舞妓さんみたいに真っ白けに塗って登場。「いけず」とか言いそう。

タイムマシン3

何でこんなのにこんな役で出たのかと書いてる人もいるが、彼のおかげで少しはマシになった部分もあるのでは?ちょっと気になったのは、彼のような支配者が他にもいると言っていたこと。そりゃあ地球上で人類がここだけということはないだろうけど。他にも地上にいて、地下にいて、それを制御するのがいて。支配者が超能力者なら、こっちがやられたのに気づいて攻めてくるかも・・。と言うか、他にも仲間がいる、エロイのコロニーがあるって聞いた時には、わたしゃ続編作る気かよ・・って思っちゃった。それはともかく私はウーバー・モーロックの言うことにも一理あると思ったわけで。増えすぎないように、減りすぎないように。アレクサンダーにもちゃんと説明する。いきなりガブリでも、いきなりズドンでもなく。人類が生き残っていくための一つの方策。もちろんアレクサンダーには受け入れられないけど。エロイの住居は変な形。モロCGで、壮大と言うよりうそっぽさぷんぷん。彼らが作っている風車みたいなのは何?わたしゃウィッカーマンかと。モーロックに対する見張りとか全然してなくて、襲われてパニックに。初めて襲われるわけじゃあるまいし・・。オリジナルのように家畜化して全く無防備という方がまだリアル。金髪の白人ばかりというのを変更し、黒人とかメキシコ系、東洋系っぽい人ばかり。中に一人見覚えのあるのがいて・・「メンタリスト」に出ていたヤンシー・アリアスだ!寺脇康文氏そっくりの人。ダイアナ・リー・イノサントなんてのも出ている。もちろんダニー・イノサントの娘だ。日系の名前も何人か。でも誰が誰だかわからないけど。てなわけで、前に見た時よりは印象は確実によくなった。すべてをぶち壊しにする駄作というわけでもない。プチ壊しか。音楽もとてもいい。他の番組でも使われているのか、聞き覚えのあるメロディーだ。時々うるさすぎるのがたまにきず。でもこうやって・・ちゃんと理由をくっつけ、特撮駆使してるのに、オリジナルをしのげない。80万年より先をなぜ描かない?描いてこそ新しく作った意味があるというのに、6億年後を背景程度でオワリ。マシンは惜しげもなく爆破される。爆発前に地下から脱出できるか・・地下道を走るシーンが延々と続き、これがこの映画のクライマックスか。テレビゲームみたいじゃん。こんなの見てワクワクドキドキしろと?