ターミナル

ターミナル

去年の夏から12月までいったい何度この映画の予告編を見たんだろう。30数回は見ている。最初はドタバタコメディーだと思った。そのうちに笑いあり涙ありの感動巨編ぽくなってきた。目をうるませたトム・ハンクスばかり見せられて、何だか押しつけがましい。ごていねいにパンフにも同じ写真が二枚も載ってて(普通は一枚だろ!)。日本人向けに感傷的な部分を強調しているのだろう。それにしても約束っていったい何だろう。九ヶ月も待ち続けた理由って・・。ムム、気になる。結局それに釣られて行ったわけよ。私もバカよね。まあトム・ハンクスも好きなんだけどさ。映画館で見たのは「ユー・ガット・メール」だけだけど。スピルバーグは別にどうでもいいわ。テレビで「激突!」と「ジュラシック・パーク」シリーズしか見たことないの。「E.T.」も「ジョーズ」もその他モロモロも未体験という非国民なのよ。さてお正月なので館内はこんでた。私あんまりこみそうな時は避けるんだけど、正月ったって見るテレビもなし、ダンナはコタツにへばりついて仕事してるし、ヒマだから出かけたわけよ。年配の夫婦連れが多かったな。まあ安心して見ていられるからね。いやらしいところとかどぎついところがないし、笑わせるにしても人をおとしめるとかそういう笑いじゃないし、寅さん映画のようなもので・・。正月くらいは不健全さから離れていたい。もっとも予告で「ブリジット・ジョーンズの日記2」とかいうのがかかって、「あちゃー」と思ったけどさ。さて「ターミナル」、出演者はみんなよかった。キャラ設定もいくつかのエピソードもよかった(だらだらモタモタしたのもあったけど)。うーん、でも見終わって感じるこの物足りなさはいったい・・。この映画はターミナルのセットを実際に作ってしまったというのがウリである。だが話題になり強調されればされるほど、画面にうつる度に「これはセットなのだ」と自分に言い聞かせてしまう。こぢんまりとしたストーリーなのに、こんなに大がかりにお金をかけて作る必要があったのだろうか・・と思ってしまう。さて、モロモロの事情で空港から出られなくなってしまったビクター。いや、出ようと思えば方法はあるのだが、彼は「待つ」ことにした。外国人である彼が、言葉もわからないまま空港内で暮らしていくにはさまざまな障害がある。そのいくつかは描写され、いくつかは省略される。

ターミナル2

それはいいとして例えば英語を学ぶところ。英語版と母国語版のガイドブックを見くらべて練習していたけど、英語の文章(単語)見ただけで発音するのはムリでしょ?発音記号が書いてなきゃどう発音するかわからないし、どう発音するかは実際に耳で聞かなきゃわかんないでしょ。それと故郷とのつながりはどうなっているのかね。仕事のこととか家族・友人のこと全然気にしてないでしょ。一番がっかりさせられたのはラスト。ビクターがいよいよ空港から出ることになって、すっかりなじみになった友人達が競ってものをくれたり激励してくれるわけだけど、あんなに騒いでいるけど数時間後にはまた戻ってくるのよ。アメリアが手に入れてくれたのは一日限りのパスポートなんだから。その時はみんなどうするのかね。ディクソンは意地悪だから書類にサインしてくれなくて、だから違法なんだけどビクターは強引に外に出ちゃう。初めて空港の外に出て、自由な空気を吸って、タクシーに乗り込もうとして、恋しいアメリアの姿を見つけて・・。やっと決心をしたのね、ああ君のおかげだありがとう・・言葉はかわさずとも目と目で会話はできる。万感の思い、降りしきる雪・・ああもうロマンチック!感動的!雰囲気最高!・・おいおい何でそこで終わりにしないんだ、こらッ!ディクソン達が追いかけてきて通報しますか、いやいいだろう、仕事に戻ろう・・人情たっぷり、泣かせるぜベイビー・・おいおい何でそこで終わりにしないんだあぁ・・。今年の書初めのお題「蛇足」!、今年の歌会始めのお題「蛇足」!、今年の流行語大賞「蛇足」!・・くそッ何だこりゃ、あれじゃ回送電車が車庫に入るようなもんだろッ、そこまでうつしてどーする!しかも約束のなかみがあれかよッ!もうちっとマシなプロミス思いつかなかったのかよッ!はーなんなんだこの中途はんぱなラストは・・。「人生は待つこと」・・待って待って・・次の一歩を踏み出す瞬間が「待つこと」の終わりだ。それは同時に次の「待つこと」の始まりでもある。そういうことで終わるはずだったんでしょ?ムム罵詈雑言の嵐になってしまったぞ。ホントはこんなこと書きたくないけどそう思ったんだもーん。それにしてもビクターが技術系じゃなくて事務系の人間(役人とかさ)だったらこの映画成り立たないな。それとハデにすっころんでいたアメリア、顔見せなくてスタントウーマンだってことバレバレよーん。