ドラゴン・タトゥーの女、ミレニアムシリーズ

ドラゴン・タトゥーの女(2011)

少し前まではWOWOWでしばしば放映していたが、当時は興味がなく、見なかった。原作を読んで、映画も見たいなあと思った時にはもうやらなくなって。でも今回久しぶりにやってくれたので、やっと見ることができた。まずオープニングのところでグイッと心をつかまれる。聞いたことのある音楽・・今回初めて「移民の歌」だと知ったが・・が流れ、力強い映像が画面から飛び出さんばかりに躍動する。まるで007のオープニングを見ているようだ(見たことないけどさ)。159分と長いが、原作も長い。当然のことながら登場人物は削られ、ハリエットを見つけるのはオーストラリアではなくロンドンに変更されている。「2」と「3」が作られなかったのはなぜなんだろう。日本でも思ったほどヒットしなかったようだが。ダニエル・クレイグがミカエルというのはぴんとこなかった。私は007は見てないからそっちの方でのイメージは持っていないが、ミカエル役にはカッコよすぎる気はしないでもない。もっとも見始めるとそんなことは忘れたが。クレイグは少々カッコ悪い役もちゃんとできるのだ。リスベット役ルーニー・マーラはアカデミー賞にノミネートされたが、受賞してもおかしくないほどの好演だ。歴史上の誰かにそっくりに演じれば受賞するなんてのはそろそろやめにしたら?エリカ役はロビン・ライト。ペンがなくなったのね。ヘンリック役がクリストファー・プラマー。若い時はジュリアン・サンズ。弁護士フルーデがスティーヴン・バーコフ。バーコフも元気だな。「謎の円盤UFO」から40年たってる。そう言えば数日前新聞にシルビア・アンダーソンの訃報が載っていたな。マルティン役はステラン・スカルスガルド、ハリエット役はジョエリー・リチャードソン。あとジョエル・キナマンはどこに出ているんだろうと思いながら見ていたら・・ミレニアム誌の社員の一人だった。本当にちょこっと。他に印象に残るのは、リスベットの後見人弁護士ビュルマン(ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン)。すべての女性の敵と言うか、変態と言うか、こういう最低なやつの役をよく引き受けたなあと、ある意味感心しちゃう。でも、クレイグみたいなカッコいい人だけじゃ映画は作れないんだけどさ。オープニングのダイナミックさはどこへやら、映画は寒々しく、でも普通に手堅く作ってあった。最後の方はわかりにくいけど、変装したリスベットの意外な美人ぶりはよかった。

ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女

こちらは劇場版より30分ほど長いようだ。ハリウッド版よりは原作に忠実。でも私はあちらの方が好みかな。こちらの出来が悪いわけでは決してないけど。向こうのように豪華キャストを楽しむということはなし。知ってるのはノオミ・ラパスだけで、あとは知らない人ばかり。登場人物は多いが、原作は読んであるし、金田一シリーズとかで複雑な相関図には慣れてる。混乱はしないが、みんな同じ顔に見えるのは確か。エリカに夫がいることは描かれず、ヘンリックがミカエルに依頼承諾させるためつくウソもなし。それはいいけど猫ちゃん出してこないのはなぜなのか。ハリウッド版はちゃんと出してきて、こちらでもと待っていたのに。ミカエルのやさしい性格表わすのに・・と、私は大いに不満でした!それと、突然灰色の雲の塊がボワンと出現するのはやめて欲しいんだけどな。何事が起きたのかとびっくりするじゃないの。ボカシなんか入れなくたって・・どうせ見えないのに。失踪したハリエットの美しい写真が何回もうつる。手がかりとなるパレードの写真も何回もうつる。見物しているハリエットの目のあたりは、遠くから撮影したせいもあって黒くなっている。彼女はパレードの最中に何かを見、そのせいで失踪したのだ。いったい何を見たのか。でもそれを見ている彼女の目は黒い穴のようで・・ここらへんはホラー映画のようで不気味。自分の正体を暴かれそうになったマルティンは、地下室でミカエルを殺そうとする。彼は今でも殺人を続けており、少し前にミカエルとセシリアを食事に呼んだ時も一人監禁していた。ここらへんはその異常さにぞっとする。原作やハリウッド版にはあったミカエルの貞操の危機(←?)はなし。その代わりちゃんとオーストラリアまでハリエットに会いに行く。全体的にハリウッド版のような手際のよさ、省略されたり別の描き方されてるけどそれがかえってくっきりと効果的とか、そういうのはない。不器用とまではいかないけど、普通にやってますって感じ。リスベットはもっさりしているし、ミカエルは四角いジャン・レノって感じ。気になったのは・・この作品だけじゃないけど・・喫煙シーンの多さ。俳優達の健康が心配になる。

ミレニアム2 火と戯れる女

二作目はどうせ三作目への繋ぎ・・と、あまり期待せずに見ていたが、別に手抜きも感じられず、普通に見ていた。一作目のラストで大金を手に入れたリスベットはあちこち旅行するが、ほとんど省略されている。彼女が数学に興味を持つことや、ミカエルがハリエットと関係を持つのも。まあ本編には無関係だからね。で、戻ってきて広いマンションぽんと手に入れて、ビュルマンの前に現われて脅す。その時彼の銃に指紋残したせいで、後で警察に追われるはめに。ここらへんは、ビュルマンが殺されるとは予期していなかったとは言え、かなり不注意。ミレニアム誌に人身売買の記事を売り込んできたのがダグとミア。買春客の中には大物もいるから、公表されれば大反響間違いなし。女性を集める組織、麻薬組織、名前を出されては困る客からの反撃をもっと警戒するべきじゃないのかと、見ているこっちは思うけど、案の定二人は殺されてしまう。そのうちビュルマンも殺され、みんなリスベットのせいにされてしまう。今回は警察側も登場。ブブランスキーはあんまり鋭い方じゃないけど、その代わり暴走もしない。ハンスは女性を蔑視し、思い込みの激しいタイプ。ソーニャは腹が立って仕方がない。途中で警察の情報が外部に漏れ、しかも女性の仕業となって、ソーニャは悔しい思いをする。見ている誰もがハンスの仕業と思うが、実際はエリクソンの仕業。ミカエルはダグやミアのためにもと調査を続けるが、そのうちザラという人物に行きあたる。このザラは実はリスベットの父で、ダグ達を殺したニーダーマンは異母兄。今回はリスベットの過去が明らかに。映像化されたらニーダーマンはどんな感じになるのかなと原作を読みながら思ったのは私だけではあるまい。金髪の巨人・・痛みを感じないモンスター。まあ確かに見かけは合ってる。ミカエルとリスベットが顔を合わせるのはラスト近く。リスベットが心を許すのは同性の恋人ミリアムだけだ。彼女からプレゼントされたシガレットケースが、生き埋めにされたリスベットを助けた。ザラを見つけたものの、銃で撃たれ、生き埋めにされたが自力で生還したというのは原作通りだが、手をケガしているニーダーマンが、いいかげんなところで埋めるのをやめた・・どうせもう死んでると思って・・というふうにした方がよかった。あれだとリスベットは超人すぎる。

ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士

三作目の興味は何たってモニカ。身長184センチ、ブロンドの短髪、筋肉モリモリの美女。しかも頭がいい。もちろんミカエルとは引かれ合い、ラストではエリカに代わるくらいの存在に。でも、深い仲になればなるほどモニカの印象は薄くなる。恋に悩んだりエリカに嫉妬したのでは、彼女も普通の女性と変わらない。映画では二人の仲は深まらない。モニカは長い髪が広がり、大女でもない。ジムでのトレーニングはなく、ランニングくらい。エリカの転職もなし。そう言えば彼女の夫は最後まで出てこなかったな。裁判のシーンはハラハラしない。どんなに不利な状況でも、形勢を引っくり返せる切り札がある。二作目のラストで瀕死の重傷を負ったリスベットとザラは、皮肉にも同じ病院へ運び込まれる。ザラはリスベットを殺そうとするが、失敗する。一方ザラの存在が明らかになったことで、以前彼がソ連から亡命した時面倒を見た、公安警察の秘密グループの連中が危機感を覚える。グルベリという男がザラを殺すが、リスベットの始末には失敗して自殺する。それにしてもザラはケガで満足に動けないのにグルベリ達を脅す。自分は始末されないと自信持ってるのが私には不思議。その後ブブランスキーやソーニャの警察グループ、エドクリントやモニカの公安警察グループ、ミカエルやエリカのミレニアムグループ、クリントンらの秘密グループが入り乱れ、何が何だかよくわからなくなる。特に次から次へと似たような顔をしたじいちゃんが出てくるのにはまいった。このじいちゃんは誰だ?あらまた別のじいちゃんが出てきたぞ。一番アレなのは、透析受けてるクリントンのところへホルムベリだかが逮捕しにくるところ。どっちも同じ顔してる~。見ていて思うのは、リスベットの味方が(彼女が思っているより)多いこと。例えばアルマンスキー。冷たく事務的に見えて、やることはちゃんとやってくれる。演じているミカリス・コウトソグイアナキスは大柄で鼻が大きい。目のあたりはロディ・マクドウォール風味。ヨナソン医師もリスベットの味方。権力に屈しない。ハンスは憎まれ役だが演じているマグヌス・クレッペルはデヴィッド・シューリスとピーター・サースガードをミックスしたような感じ。途中から出てこなくなるのが残念。エクストレム検事役ニクラス・ユールストレムはビリー・ボブ・ソーントン風味。顔が似てると声まで似ている。ラストは意外とあっさり。

蜘蛛の巣を払う女

こちらまだ原作は読んでない。本は売れたのか。映画はヒットしたのか。リスベットもミカエルも俳優さんは交代。ミカエル役ニクヴィストさん死んじゃったし。今回のミカエルは少し若くなっていて、少しハンサムになっていて。でも存在感が薄いなあ。バルデルという男が開発したファイヤーフォールというプログラムをめぐっての争奪戦。彼はこのプログラムを消去するようリスベットに依頼。作ったのは間違いだったと。リスベットはNSAをハッキング。こちとらこういうのにはうといもんで、見ていても何が何だかさっぱりわからん。リスベットは侵入してきた男にプログラムを奪われ、住居を爆破される。バルデルは殺され、リスベットが犯人にされる。また、プログラムを開くにはキーが必要で、それを知っているのはバルデルの息子アウグストだけ。しかし彼も敵の手に。敵はスパイダースという組織で、我々の年代(GS世代)だと戦慄するより笑っちゃうんだけど。組織のボスは何とリスベットの双子の妹カミラ。あれこれあるけどどうもねえ。サッサカサッサカ進んでいくけど、私なんか入口付近で取り残されてますがな。最初の方はまるでSF映画みたいな映像。その後もずっと青白い、あるいはグレーがかった色彩が続く。カミラの赤い服が際立つが、温かみは感じられない。リスベットは全然笑わず、カミラとの対決やその死に涙を流す。それにしてもこのリスベットを演じているクレア・フォイとかいう女優さん、クリフトン・コリンズ・ジュニアによく似てるな。公安警察の副局長グラーネは長身で、背筋がスッと伸びていて冷たく美しい。顔立ちはちょっとジョディ・フォスター風味。最初の方から情報漏れてるみたいだし、ミカエルが手がかりになりそうな男(例の侵入男)の写真見せても興味示さないしで、何となく怪しい。後でやっぱり・・となる。元軍人で伝説的なハッカーで今はNSAのセキュリティ特別顧問のニーダムがストックホルムへやってくる。身のこなしが軽快で、そのせいでミカエルの存在感はますます薄くなる。一時出てこなくなるので、どこへ行ったのかと思っていたら、組織の連中を次々に撃ち殺し、とらわれていたリスベット、ミカエル、アウグストを助ける。何だか彼にいいとこ全部持ってかれてまっせ。演じているラキース・スタンフィールドはラッパーでもあるらしい。カミラ役はシルヴィア・フークス、ミカエル役はスヴェリル・グドナソン。