断崖

断崖

これは大昔に一度見たが、「はあ?」という感じだった。ものすごく怪しく思えたけど、結局は何でもなくて、そうなるといったい何のために見ていたのかわからなくなって。リナ(ジョーン・フォンティン)がジョン(ケイリー・グラント)に出会ったのは列車の中。変になれなれしいし、三等の切符なのに一等に乗って、しかも車掌を言いくるめちゃうし。とにかく調子のいい男。次にジョンが彼女を見たのは馬に乗っているところ。列車でのメガネをかけたお堅い感じとは打って変わって美しく生き生きとしていて。しかも箱入りのお嬢様。これなら楽勝だ。一度夢中にさせといて、しばらくぷっつりと連絡を絶ち、リナをさんざん悩ませる。で、颯爽と登場。博打やら女やら悪いうわさがあるが、恋は盲目。家出同然で式を挙げ、パリやらベニスやら新婚旅行で回り、家も手に入れ、豪華な内装。さすがのリナもお金が気になるが、ジョンは一文無し。働くなんてとんでもない。今が楽しけりゃいい。愕然とするリナだが、何度裏切られ、ウソをつかれても離れられない。あたしゃ何度も心の中でつぶやいていました。何で別れないの?何で譲歩するの?印象的なのはリナの父。結婚祝いに時代物の椅子を二脚贈る。お金を期待していたジョンはがっくり。次は父親が死んだ時。愛する一人娘にはさぞや・・と思ったら全部妻へ。リナにはその中から年に決まった額だけ。金を渡せばすぐ競馬ですってしまうとわかっているから。ジョンはいとこのメルベック(レオ・G・キャロル)の不動産会社に勤めているはずが、2000ポンドちょろまかす。大量のプレゼントや、一度は売り飛ばした椅子を買い戻してリナを感激させたのはたぶんこのお金で。そのうちジョンの親友ビーキーがパリで急死。リナは一緒にいたという英国人の連れがジョンなのではと疑い出す。リナにかけられた保険金から前借りしようとして断られたこともわかる。殺してもばれない毒について推理作家のイザベルにしつこく聞くし、やさしいかと思えば急に冷たくなるし。彼は私を殺すつもりなのでは・・。そうやってさんざんあおっておいて・・。そりゃ別にすべては私の思い込みでしたとなってもいいけど、問題は・・。私が悪かった、これからは変わるからってそういう問題じゃないでしょ。金が工面できないから楽に死ねる方法を・・って、そこが問題でしょ。心を入れ替えるべきはリナではなくてジョンの方でしょ。全く見ていて腹の立つ映画でした。フォンティンの美しさは際立っているけどね。