デビルスピーク

デビルスピーク

この映画が作られた1981年頃は、わりとよく映画を見ていた時期だ。私の場合、同じ映画を何度も・・時には10回以上見るので、あれも見たこれも見たとはならないけど。この頃だと「少林寺」とか「ランボー」をくり返し見ていた。「デビルスピーク」もそう。見に行く気になったのは、ホラーだからだろう。コンピューターのこともクリント・ハワードのことも知らなかった。この映画は、「男性版キャリー」とか「豚が美女を食う!」とか「コンピューターで悪魔を呼び出す!」とか、そういうのが売りなんだろうけど、私自身は別の理由で映画館に通うこととなった。それは後で書く。その後「月曜ロードショー」で放映されたそうで、それはたぶん見ている。すでにビデオデッキを持っていたはずだが、何で録画しなかったのかな。その後レンタルビデオ店で見つけて借りたと思う。画質はよくなかったような・・。そんなふうに記憶がおぼろ昆布になるほど間があいて・・今回やっとDVDが発売され、即購入。コメンタリーやクリントのインタビューまでついてる。待たされたけど許す!発売してくれてありがとう!画質もいい。兄のロン・ハワードと違い、クリントは地味な存在。テレビの「クマとマーク少年」、映画の「赤い仔馬」など、子役から出発。成長してからは兄の作品やアダム・サンドラーの作品に小さな役で出ている。「デビル」のように、主演した映画ってあるのかな。何となくゆがんだような顔立ちで、普通の子役のような愛くるしいという感じじゃない。「デビル」の頃は20歳過ぎたばっかりだというのにもう髪が後退気味。小さなヘアピースつけさせられたそうな。しかも太って鈍重そうな体形。撮影はハードスケジュールだったようで、いつも疲れていて。それが画面・・表情に出ている。腋の下が汗で濡れていて、いかにも女の子にもてないタイプ。でもインタビューでの彼は、ハゲとヒゲで何やら味のある風貌になっている。二枚目だったのにシワとたるみで見る影もない・・なんていう悲劇とは無縁だ。監督はエリック・ウェストンで、知らない人。「デビル」以外はあまりぱっとしなさそうな作品ばかり。と言うか、このDVD・・メニュー画面やスタッフ&キャストの紹介文が非常に読みにくい。そこだけはバツ。

デビルスピーク2

16世紀のスペイン・・異端の神父エステバン(リチャード・モール)は、教会から破門され、新大陸へ追放となる。このエステバンの、いかにも狂った目つきがなかなかよろしい。なぜか彼に心酔する人々もいて。当時の教会に不満や失望を感じている人々が多かったのか。中に美しい女性がいて、パンフによれば妊婦だそうな。黒ミサ(たぶん)が行なわれ、彼女は進んで生贄となる。首をはねられるシーンはモロ人形だが、だからと言って欠点にはならない。今ならCG等でもっとリアルに表現されるだろうが、こちらはこちらで工夫してやってる。インタビュー等でさんざん低予算と言ってる。その中での努力・・認めてあげよう!儀式は、スペインでやってるのか、アメリカへ来てからなのか、よくわからない。生贄になる女性は清純な美しさで、印象的。はねられて飛んだ首がサッカーのボールになって、舞台は現代に。陸軍と海軍の士官学校によるサッカーの試合。ドジでのろまな生徒スタンリー・クーパースミス(クリント)のせいで、陸軍チームは負けてしまう。負け試合~シャワー室への流れは「キャリー」と同じ。あいつがチームにいたのでは勝てるわけがない。次の試合も今から負けって決まってるようなもの。ババ(トム・スターク)達がくさるのも無理はない。コーチ(クロード・アール・ジョーンズ)だって思いは同じだが、校長(チャールズ・タイナー)の「スポーツは全員参加」の方針には逆らえない。空気の読めないクーパースミス(本来ならスタンリーと書くところだが、ここはやっぱりクーパースミス!)は、次も出る気でいる。ちょっかい出すババ達を、コーチは「女みたいなマネはするな!」と一喝。女みたいな・・って「キャリー」のシャワー室のシーン意識しているのかな。流れは確かに似ている。でもこちらは最初にエステバン出し、悪魔崇拝を強調している。「キャリー」ではシャワー室で初潮を迎え、何も知らなかったせいでパニクる。それ以外にも異性への憧れとか、お化粧とか、女性としての体の変化、心の変化も描かれる。ホラーやオカルト以外の面も比重がかかってる。クーパースミスにはそういうのはほとんどない。キャリーのように一瞬とは言えスポットライトが当たり、幸せの絶頂を感じることもない。

デビルスピーク3

また彼にはキャリーのように束縛する家族はいない。両親は交通事故で死んでしまった。彼には帰る家はない。さて校長は、コールドウェル夫人(ババの母親)に学校の財政難を訴える。昔は良家の子弟しか取らなかったが、今では福祉入学・・クーパースミスのような・・の者も受け入れなければならない。つまり良家・・金持ちの親による寄付が減り、議会の予算頼みになったということか。校長の狙いは夫人、あるいは夫による議員への口添え。ババにはこういう有力者の親がついてる。自分でも自覚している。で、こういうのにくっついておこぼれにあずかろうというのが集まる。彼らはいつも四人でクーパースミスをいじめる。一人ではできなくても四人ならできる。クーパースミスは礼拝堂の地下の掃除の罰を受ける。なぜ罰を受けるのか・・サッカーの試合のせいかな・・なんて。でも今回見直してわかった。クーパースミスは豚小屋の掃除の罰も受ける。何だか罰ばっかり受けてる。ある時寝過ごして授業に遅刻する。目覚まし時計が止められ、制服が紐できつく縛ってある。ババ達の仕業だ。教室へ急ぐ途中滑って転ぶ、痛そうなシーンもある。で、ラテン語教師ハウプトマン(ハミルトン・キャンプ)は、今週これで二度目だと言う。ああそれで・・一回目の罰が地下の掃除、二回目の罰が豚小屋の掃除・・。彼は投石機の模型を作っている。コンピューターを使って設計した自信作だ。ドジな一方で、そういう器用なところもある。でも模型は連中によって壊されてしまう。廊下を歩けば帽子を外へ投げられる。散水機のそばに落ちたせいで、校長室に出頭した時にはずぶぬれだ。そうやって彼をいじめ続けるババ達には、何か長所はあるのだろうか。クライマックスで惨殺される時、かわいそうに・・とか、ここまでやらなくても・・とか、同情できるだろうか。答はノーである。全く・・これっぽっちも同情できないのが、ある意味すごい。彼らの取り柄は、試合の時のチームワークのよさくらいなもの。あとはいじめや悪巧みに団結する。インタビューによるとクリントとスタークは、撮影中親しくならないよう距離を置いていたらしい。いかにも若手俳優らしい一途さだ。

デビルスピーク4

話を戻して授業中の彼らは、ある者は居眠りし、ある者は鼻をほじり、ババはエロ雑誌を広げる。真面目に勉強するなんてアホくさい。戦争も人生もうまくやったもん勝ち。生徒の中で親切にしてくれるのはコワルスキー(ヘイウッド・ネルソン)だけだ。クライマックスでババ達が惨殺されるのはざまあ見ろだが、コワルスキーまで犠牲になるのはなぜなんだろう。彼は姿の見えないクーパースミスを心配し、捜し回っていたから、礼拝堂には来ず、難を逃れることができた・・となってもおかしくないのに。「キャリー」だってスーは助かったじゃないか。でもこっちはそういう例外はなし。凄まじい憎悪、悪魔の力の前では悪いやつも善人も一緒くた。コワルスキーは何事にも消極的である。いいやつだが、彼のおかげで事態が好転するわけでもない。地下の掃除を手伝ってくれるわけでもない。ほぼ傍観者。積極的にいじめたりはしないが、何もしようとしない他の連中と同じ。とは言え、彼が犠牲になるのは気の毒だ。さて、では大人達はどういう描かれ方をしているのだろう。さすがにババ達のような単純な描かれ方はしていない。校長は・・前に書いたように、スポーツは全員参加という主義である。普通ならメンツ・・海軍に勝つ方を優先させるところだが、それをしない。クーパースミスがもっと協調性のある、しっかりした生徒だったら・・福祉入学だろうが何だろうが、よさを認めてもらえただろう。でも彼は何をやってもドジばかり。服装も何となくだらしがなく、イライラさせられる。きつい説教も彼のためを思えばこそ・・と、ここらへんまではいい。校長としてそれもありかな・・と。でも尻をムチで打つとなると・・。しかも明らかに楽しんでる。こうなるとサディストにしか見えず、クライマックスで頭かち割られても仕方ないわな。なぜか秘書のミス・フリードメイヤー(リン・ハンコック)は、場違いなほどセクシー。聞こえてくるムチの音に、表情は変えないものの、何やら妄想してるのは確か。かたやムチ打ちを楽しみ、かたや打たれている自分を想像して(クーパースミスの汚いお尻を想像するわけがない)楽しむ。まあ変態コンビですな、この二人。ヤローばっかし出てくるこの映画で、ハンコックはかなりがんばっている。

デビルスピーク5

オフロで豚に食い殺される全裸美女!空中浮揚するクーパースミスより、こっちの方がお客呼べるのは確か。お色気シーンとしては、水着のピチピチギャルによる「ミス重砲コンテスト」があるが、あっちがしごく健康的なのに対し、こちらは不健康。フリードメイヤーは、クーパースミスが落としていった古い本を盗む。後であわてて捜しにきたクーパースミスには、しれっとウソをつく。彼女は本のなかみなんか興味ない。スペイン語かラテン語か、どちらにせよ読めない。彼女が目を付けたのは、表紙にはめ込まれた宝石。エステバンの紋章。ナイフでつつくけど取れない。つつく度に豚どもが騒ぎ出す。もう将来襲われるって見え見え。仕事が終わると家に帰って再びつつき出す。その執念深さ。そのうちあきらめて全裸になってオフロ。パンフにもちゃんとヌード写真載ってる。しかも四枚も(そのうち二枚は豚に襲われているところ)。普通の映画ならセクシーな彼女と男前の牧師(ジョセフ・コーテス)の間に何かありそうに描く。でなきゃ彼女がこんな職場にいるはずがない(年下が好みなら別だが)。でも何も描かれない。若く美しいが、貪欲で冷酷でウソつき。豚に食われるだけの女。それにしてもどうなんですかねえ彼女のヌード。私から見ると変な形のオッパイだなあ・・と。それしか感じない。この頃はまだ若いから右と左に向いてるけど、今は両方うなだれているんだろうなあ・・(何のこっちゃ)。人を襲う時の豚はモロ作り物。今ならもうちょっとリアルに精巧に動かすだろう。腸を振り回しているシーンは悪趣味?いやいや人間だって生レバーがどうのって騒ぐじゃん。ついでに水着美女の方だけど、16歳とか17歳の設定で、体の方ははち切れんばかりに発達してるけど、顔の方は・・。特にクーパースミスがポーッとなるギャラガーは、すでに小ジワとかありそうで。肌が疲れている感じ。もう一人のベイカーの方はそうでもない。ベイカー役キャサリン・ケリー・ラングはテレビで活躍しているらしい。50歳くらいだろうが、なかなかの美人だ。さて・・女性には縁のないクーパースミスだが、(ババにはない)誠実さでギャラガーのハートをとらえるか。

デビルスピーク6

いや、ババ達が早速邪魔をする。ズボンを脱がせ、大恥をかかせる。その後ババ達と少女二人は、ビール持って地下へくり出すが、そこでクーパースミスの秘密の場所を見つけ、子犬も見つけ・・。少女達はもちろん止めるが、ババは子犬を殺してしまう。あの後二人はどうしたのか。いくら何でもひどすぎる・・とショックを受けて帰ってしまったのか。いずれにせよ二人は惨劇には巻き込まれずにすむ。次にコーチ。前にも書いたが、校長の方針のせいでみすみす負けてしまう悔しさ・・これはよくわかる。また、彼は先頭に立ってクーパースミスをなじるようなこともしない。ここまではいい。その代わりクーパースミスが出られなくなるようにしたい。で、ババにほのめかす。で、ババ達はいっそういじめに精を出す・・と。いじめるにしても自分の手は汚さず、他の者にやらせるという巧妙さ。次に牧師。コーテスは「エミリーの窓」に出ている。男前だが、やや冷たい感じのするジェームソン牧師。校長からさりげなくコールドウェル夫人の相手を引き継ぐ。礼拝堂を案内し、歴史を語る。今学校の立っている場所は、宗教裁判で国を追われた人々が住みついた場所。礼拝堂を立てたのはエステバンか。古い建物に興味があるという牧師だが、そのわりには礼拝堂の地下はほったらかし。何と言うか、肉体的にも精神的にも汚れるのが嫌なタイプに思える。ホコリやクモの巣で汚れたくないから、クーパースミスにやらせる。彼に対しては他の人同様いら立ちを覚え、どなりつけたくなることもあるが、そんなことをすれば自分まで精神的に汚れたような気になってしまう。だから怒りを押さえ込む。ババ達が自分達大人をバカにし、なめてかかっているのもわかってるが、寛大にふるまう。声を荒げたりしたら自分も彼らと同じクズになってしまう。自分だけは清く正しく美しく。彼はサッカーの試合を前に、礼拝堂で説教をする。サッカーの審判の目を盗むことはできても、神の目を欺くことはできない。神の前に立った時、悪行より善行の方が多いように、今から心がけておくことだ。日本人なら閻魔様だな。とにかく牧師は、暗に神(つまり自分)はおまえ達のことはお見通しだ・・と、脅しをかけているのだ。教師のハウプトマンに関しては、ざまあ見ろという感情は抱きにくい。彼は小柄でメガネをかけ、足が少し不自由なようだ。

デビルスピーク7

遅刻したクーパースミスをねちねちいびり、一見意地が悪そう。でもクーパースミスのことを心配してると思う。学校が一番でも試合に勝つのが一番でも自分の清潔さが一番でもない。彼はどうすればクーパースミスがもっとちゃんとできるのか案じている。頭は悪くないし、もう少し落ち着いて行動すれば・・。でも彼の助言もクーパースミスには通じない。常にいじめられ、自信をなくし、その場を逃げ出すことばかり考えている彼は、今も他のことに気を取られていて、ハウプトマンを失望させる。さて、永久に太陽が差さない地下で飲んだくれる落伍者サージ(軍曹)。なぜこうなったかは不明だが、今の彼はすべてを憎んでいる。彼のゆがんだ感情や欲望は、自分より弱い者へ向けられる。クーパースミスや子犬に。クーパースミスはそれでも彼のバールを盗んだり、ウソをついたり、掃除の代わりに悪魔を呼び出したりしてるのだから怒られても仕方ないが、子犬に関しては・・。何の罪もないのにひねり潰そうとするのだから許せん!必殺シリーズみたいにコンピューター画面に背骨がうつり、グギグギとなって、ポッキリ折れてしまうのは笑えるが、いいアイデア(と言うかパクリ?)。サージ役R・G・アームストロングを見たのは、たぶんこの映画が初めて。一度見たら忘れられない悪党ヅラ。その後テレビ放映された「プレデター」で見かけた時はうれしかった。あ、あのジイさんだ、生きてるぞ(←?)。コンピューターに殺されるってのは珍しいが、クライマックスでもう一度現われて、見ている我々をうれしがらせ・・いや、怖がらせてくれる。命からがら地下へ逃げ込んだババの背後にぬーっと現われ・・。首が180度回転して死んだはずなのに元に戻ってるぞ。スタークのインタビューで、質問者が、ババが心臓をつかみ出される時、肋骨がないのはミスじゃないのかと言っていて。言われてみりゃそうなんだけど、全然気がつかなかったな。ドクドク動いている心臓の凄まじさの前では肋骨がどうのなんてアンタ・・。この心臓も実は誰かが後ろから空気を送り込んでいるんだなんて・・そんな種明かしはしないでよろし。この時のスタークの、(肋骨のことより)ババに心臓(ハート)があったことの方が驚きだという言葉が印象的。

デビルスピーク8

さて・・あれこれ書いてきたけど、私がこの映画にはまったのは、コンピューターとか、首をぶった切るとか、頭かち割るとか、美女が豚に食われて腸がヒラヒラとか、そういうことのせいではないんですの。食堂のオヤジ、ジェイク(レニー・モンタナ)と、子犬のフレッドのせいなんですの。地下にいたクーパースミスは、牧師に食堂が閉まるぞと注意され(わざわざ知らせに来てくれたのだから親切だと思う)、あわてて駆けつける。ジェイクはそれを見てため息をつく。トレイの中はほとんどカラ。それを何とかかき集めようとするクーパースミス。かき集めようにもスプーンはトレイの底をこするだけ。腹ペコなのに・・何て悲しい、みじめな・・。私これを見て鼻の奥がツーンとしてしまって。ジェイクに声をかけられた時のクーパースミスの表情・・。モンタナは「ゴッドファーザー」で有名なのだそうな。身長198センチ、ドスのきいた声も恐ろしげ。でも次のシーン・・ジュウジュウと煙を立て、焼かれる肉。おいしそうな匂いまで伝わってきて、クーパースミスでなくても舌なめずりしちゃう。この映画で初めての、人の情けや温もりの感じられるシーン。どうもジェイクは前からクーパースミスのことが気になっていたらしい。いつも一人だし、いじめられているようだ。他の連中とはどこか違ってるし、ここが向いてるようにも思えない。家族に嫌われ、ここに入れられたのか。温かい言葉かけられ、思わず笑顔のクーパースミスに、「初めて笑ったな」。ここでまた鼻の奥がツーン。ところでここらへんは、自分が記憶していたのより短い気がする。そう思って調べてみたら・・映画サイト等では104分になってるのに、DVDは92分。あわてて駆けつけ、ジェイクがため息をつくところや、ジェイクの人間クリーニングの話・・これらは公開時にあったと思う。ありがたいことに削除シーンとしてDVDにおさめられていた。IMDbではさらに短く、89分になってる。殺戮シーンはカットしてもいいけど、こういういいシーンはカットしちゃだめよ!ホラーでありながら、それ以上のものを感じさせてくれるのは・・感動させてくれるのはジェイクと子犬のおかげ。ジェイクは何を思ったのか奥で飼っている犬の母子を見せる。

デビルスピーク9

中に母乳にありつけず、弱っているのがいるが、母犬は知らんぷり。弱い者は生き残れない厳しい世界。クーパースミス自身両親をなくし、世間がどんなに冷たいものか身にしみてわかった。弱い者を押しのけるやつが成功するのさ。彼はぐったりしている子犬を自分で飼うことにする。地下に隠しておけば大丈夫だ。この子犬があ~、哀れでかわいくて無力でえ~。次にジェイクが出てきた時には、子犬にやれと骨をくれる。母乳から即骨かよ・・と思うけど。ぐったりしてたのにいつの間にか元気になってるけど・・まあ細かいことはいいや。猫派の私だけど、このコだけは別。コメンタリーとかインタビューでも言ってるけど、ホント名演技(演技してるわけじゃないけど)。サージに首をひねられそうになるところでは本気で心配しちゃった。だってアームストロングならやりかねない。それくらい怖い顔してる。ババに押さえつけられているところでは、その無力さに・・逆にババには限りない憎悪をいだき・・。いくらババ達でもクーパースミスを殺すことはできない。そこまではしない。でもクーパースミスより弱い子犬は殺しちゃうのだ。さすがに殺すシーンそのものは見せない。コメンタリーによると、クリントは仕事で泣くシーンがあると、いつもこの死んだ子犬を抱くシーンを思い浮かべるのだそうな。するとすぐ涙が出てくるんだそうな。とにかくこのワンコ・・無力で無邪気で大人しくて・・アカデミーワンコ賞あげてください!ワンコと言えば、骨を持ってきてくれて、仕事は代わってやるから早く行けと言ってくれるジェイクに向ける、クーパースミスの感謝に満ちた表情も忘れがたい。クリントだから口元がでれ~っとして、締まりがなくて。尻尾があったらちぎれんばかりに振ってるだろう。この時のクーパースミスはモロワンコ。彼を見送るジェイクの後ろ姿・・その前にまがまがしくそびえる礼拝堂・・いいシーンです。この映画は、見ている者がクーパースミスに同情し、応援したくなるよう、うまく作られている。子犬を殺された彼は、悪魔に魂を渡し、復讐させてくれるよう願い、それがかなえられる。少しはいいところもある者も、容赦なく殺される。究極の憎悪ってそういうことだと思う。敵も味方も自分さえも滅ぼす。

デビルスピーク10

すべてが終わった時、炎に包まれた礼拝堂の中で、巨大な十字架が倒れる。ダメ押しと言うところか。その後は無である。たった一人生き残ったクーパースミスは精神病院へ送られ、今もそこにいる・・。DVDのラストだと、いつかクーパースミスは戻ってくる・・みたいな感じだけど、公開時もこうだったっけ?私はエステバンが戻ってくるって記憶してたけど。続編もリメイクもされないまま30年たったけど、「メンタリスト」の「火の玉」見ていて、リメイクするならサージ役はスティーヴ・レイルズバックがいいな・・なんて。リメイクして欲しくないけど、もしどうしてもやるならさ。コンピューターは時代を感じさせる。グリーンの画面に白い文字。シンプルだ。自習室では思うように使えない・・と、クーパースミスはコンピューターを地下に持ってくる。あの~盗んだの?なくなってるのに気づかれないの?電源繋ぐだけで使えるの?って思ったけど、考えてみりゃネットには繋がってない。あの中に情報が詰まっているのね(悪魔の呼び出し方も?)。エステバンの手記を英訳してたけど、あんなふうにちゃんとした文章に翻訳できるの?30年後の今でさえ英語を日本語に訳して、ちゃんと意味が通る文章になってること全然ないじゃん。コンピューターの文字が赤くなるところもよかった。こういうシンプルなところが逆に怖かったりして。データ入力完了の時点で、誰か(たぶんエステバン)がこっちへぐいっと手を伸ばすシーンがあるけど、これもいい。こういうのってどうしても「2001年宇宙の旅」のチカチカシーン思い出すけど、全裸の女性が出てくるのは意味不明。また、この映画では音楽が重要な役割果たす。「オーメン」系統のおどろおどろしい歌が、くり返し流れる。迫力があって荘重で、でもちょっと安っぽい。「キャリー」のような美しいメロディーもなし。そう言えば画面分割なんていう凝ったこともせず、わりとシンプル。低予算だけどそれがあまり感じられず、ちゃんと作ってある。このチャンスをものにしようと全力投球の若手と、地味だが実力のあるベテランがうまくかみ合ってる。ビン詰めの胎児など、小道具もマル。ホラーお約束の残酷シーンではなく、胸がキューンとなるシーン(しかも恋愛とは無関係の!)で、私のハートをわしづかみという珍しい映画。「デビルスピーク」は、クーパースミスは永遠に不滅です!