沈黙の執行人(リターンド・ソルジャー 正義執行人)

沈黙の執行人

今回のセガールはヒゲを生やしている。それも口のまわりに丸く。カールのCMに出てくるオジサンのようだ。なぜ生やしたのか不明だが、似合わない。冒頭・・ダゲスタン共和国での任務。チームなのに二人しかいないとかブチブチ文句垂れてるオッサン。何だかよくわからんが、やってることは「ザ・マークスマン」の主人公とよく似ている。ターゲットのアジトに近づき、誘導装置みたいなのを壁にくっつける。最初は爆弾くっつけてるのかなと思ったけど。たぶんその装置から出る信号をキャッチしてミサイルが飛来。ロックされてるからはずすことはない。でも、気づかれてしまい、ターゲットは車で逃げようとする。それは撃ち殺したものの、もう一人のターゲット・・武器商人のチェン(ツィ・マー)には逃げられてしまった。おまけに攻撃を中止しろと連絡したのにミサイルは発射され、盾代わりに集められていた女子供が犠牲になる。ゴーストことアレクサンダー(セガール)が助けようとした少女も死んでしまう。二年後・・東欧のどこかの町でひっそり暮らすアレクサンダー。今でもあの時のことを夢に見る。さて、セガールファンの「いつもよりよく動いている」とか、そういう書き込みをネットでよく見る。やはりよく動いていればうれしいし、全然動かないと心配したり、手抜きだ・・と残念に思ったり。あと、冒頭部分が、後の部分にあまり関係してこないと書いてる人もいて、そう感じているのは私だけじゃないんだ、冒頭が意味不明なのはセガール映画ではごく普通のことなんだ・・と納得してみたり。冒頭行動を共にする相棒ムービースターは、なかなか頼りになるやつだが、あれっきり出てこない。代わりに登場するのがサーシャ。金の取り立てをなりわいとしているので、ありゃ今回の敵はこの男かいな・・と、少々残念に思う。と言うのも、セガールより若くて、セガールよりハンサムで、セガールより均整の取れた体形をしているからだ。せっかくイケメンが出てきても、ほとんど何もできずにやられてしまうのではもったいない。今回のセガールは、ヒゲが見苦しいだけでなく、皮(たぶん)の上着がパンパンにはち切れそう。普通なら絶対若くて動ける方が勝つけど、セガール映画では動かない・・動けないのかもしれないが・・オッサンが勝つのだ。普段何もしなくても・・鍛練しなくても、飲み放題食い放題でも!

沈黙の執行人2

そんなこと思いながら見ているわけだが、どうもこのサーシャ・・あまり悪党でもないようで。自分の仕事と、温情とのバランス取りに苦心しているような。さて、アレクサンダーは、鍵をなくして困っている隣りの住人レナを助けてやる。小さな女の子を連れているので、てっきり親子かと思ったら、姉妹だと言う。妹のミアを見ると、アレクサンダーはどうしてもあの時の少女を思い出してしまう。一方レナはそんなことには気づかず、私の好み・・とばかりに目を輝かせる。こんな年寄りの、ふくれ上がった、むさくるしいヒゲ男にポーッとなるはずないが、そこは映画ですから。彼女はウラジミールの店で働いている。サーシャとは異母兄妹。彼らの父親が借金を残したまま死んだため、返済するまでは嫌でもウラジミールの言うことを聞かなければならない。サーシャの心配は、美人のレナに目をつける男の多いこと。今までは大丈夫だったが、ウラジミールの気がいつ変わるか。その頃町では凄惨な殺人事件が起きていた。被害者達はロシア人で、刺青からみてどこかの組織の下っ端か。凶器は刃物で、ばっさり斬られている。手には線香を握らされ、”鬼佬”という文字が残されている。後でこれはアレクサンダーの仕業とわかる。やっぱり数人の男を斬り殺し、線香を残していたから。これがわかった時にはちょっとびっくりした。と言うことは今回のキャラは敵方とあらば、問答無用で殺すタイプなのだ。峰打ちでこらしめるにとどめる・・は、なしなのだ。彼は男達を殺した後、金の入ったカバンを持ち去る。そのせいでウラジミールはピンチに陥る。彼の店はチェンの資金洗浄の場として使われている。チェンに渡すはずの30万ドルが消え、取引があるのにどうしてくれると脅されたウラジミールは、サーシャのせいにしようとする。金が用意できないなら、顧客のために女を用意しろと言われ、ミアをさらってきて差し出す。ここらへんのウラジミールの行動は支離滅裂だ。サーシャを殺して、こいつが裏切ったとでっちあげ、その場をしのごうとするのはわかる。でも、なぜレナではなくミアを連れていくのか。彼女を差し出すのは惜しかった?チャンが呆れるのも無理はない。いくら若い方がいいからってミアは10歳かそこら。もっと下かも。後でミアはチェンの顧客ロベルトに渡されるけど、ロベルト役の人も複雑な心境だったでしょうね。俺のキャラは少女趣味かよ!

沈黙の執行人3

一方ウラジミールの手下に襲われたサーシャ。何とか撃退するものの、何で自分がこんな目に会うのかさっぱりわからない。金のことなんか何も知らない。兄妹の災難はみんなアレクサンダーのせいなんだけど、彼は何とも思ってなくて説明もしない。そこがすごい!殺人にしても別に隠そうとも思ってない。レナは、自分が去った後、アレクサンダーと一緒にいた男達が惨殺されたと知ったはずだが。彼のこと疑わないのかな。セガール映画のお約束として、彼はピンチにはならない。ピンチは彼をよける。ピンチになるのはサーシャの方ばかり。また、警察にもつかまらない。警察が目をつけるのはサーシャの方。ヒゲを生やした見慣れぬ怪しいオッサンがうろついていても、警察は気づかない。サーシャは昼飯を買いに出ただけで呼びつけられる。見ている我々は、いつサーシャがやられるか、そっちの方でハラハラする。サーシャ役はヴィクター・ウェブスター。「サロゲート」に出ていたらしいが、記憶なし。他には「スコーピオン・キング」の3や4に出ているらしい。ということは肉体派か。IMDbによると身長196センチ。セガールと同じくらい大きい。テコンドーとかブラックベルトといった単語がバイオグラフィーにあるから、そっちの方の下地はあるってことだ。大柄でちゃんと体が動き、セガールより20歳ほど若く、ハンサム。この作品ではセガールとウェブスターが戦うシーンはないが、それは当然だろう。わざわざ引き立て役に回るバカはいない。と言うか、もしそんなシーンとるとしたら、セガールの方はスタントマンを多用するしかないだろう。飛び蹴りとか無理そうだし・・。何度も危ない目に会いながら生き延びるサーシャ。セガール初期の映画なら、サーシャは途中退場。アレクサンダーは彼の仇を討つべく暴れる。でも今はそうならない。手下に襲われたサーシャを見て、私は彼はここで死ぬのだと思ったけど、そうならなかった。次にピンチになった時も心配したけど生き延びた。と言うことは最後まで大丈夫なんだろう。それはもちろんうれしいことではあるけれど、セガール一人では持たないということでもある。サーシャがいればアレクサンダーは出てこなくてすむ。サーシャがピンチになっても、出て来ずにすませる。所在不明。

沈黙の執行人4

週休二日ならぬ、実働週二日なんだろう。怠けてるなんて言っちゃいけない。労働基準法でそうなってるのだ。彼も年には勝てない。体や顔の膨張が止まらない。教会で十字架をあおぐシーンがあるが、悔い改めよ・・じゃなくて、食い改めよ・・だよな。もう少し体しぼれよ、動ける程度に。とは言え、セガールとウェブスターのアクションの違いは興味深い。ウェブスターは体全体を使い、動きが大きい。若くて体力があるからこれができる。セガールの方は省エネ型だ。動きは小さく、無駄がない。手の動きの速さはさすがだ。もっとも彼が何もしなくても、相手は自動的に吹っ飛んでくれる。ピンチになりようがない。今回の武器は鬼包丁。アレクサンダーは自分では便利屋と称している。でもチェンにはプロの殺し屋と言っていたな。結局よくわからないんだけど。この二年、チェンを追って世界中を転々としている。その間に別の殺しもやって小遣い稼ぎ?チェンを追ってたわりには彼の住所知らなくて、ウラジミール拷問して案内させてたような・・。まあ働いていないのにゆうゆうと暮らしているってのは、いつものセガールのキャラだな。今回よかったのは、アレクサンダーが時々吐く一言。クラブでレナにしつこく絡む男を撃退。「映画みたい」と目を丸くするレナに「すべてやらせさ」とクールに一言。チェンが「これで安らかに死ねる」と言うと、「何よりだ」とドライな一言。彼は自分では普通の人間だと思っている。でもその普通というのは、「悪党どもを許さない普通の人間」という意味で。悪を懲らすのは、普通の人間なら当然やるべきことと主張しているみたいな。いちおうこれがこの映画の言いたいことだと思うんですけど。さて、アレクサンダーの不在を埋めるべく奮闘するサーシャ。「何だよ」とか「参ったな」とぼやくのがおかしい。自分のピンチがアレクサンダーのせいと気づくはずもなく、振り回されっぱなし。途中で連続殺人を捜査する刑事二人が出てくる。そのうち男の方はいかにもやる気なさそうで、それもそのはずこいつはチェンと繋がっているのだ。もう一人の女性刑事の方はまともで、真相に近づいたため、相棒に殺されそうになるが、サーシャに助けられる。

沈黙の執行人5

どの映画もそうだが、女性刑事を出してきても、生かされずに終わる。その他の女性となるとお色気サービス担当で、余計なシーンが入る。さて、姿の見えなかったアレクサンダーだが、何をやってるかと言えば金を用意しているだけ。力を貸してくれた神父だか牧師だかが襲われ、倒れていても何もしない。手も差し伸べないし、大丈夫かとも聞かない。だから・・エネルギー切れなんだってば!クライマックスはアレクサンダーとチェンの対決だが、勝負は決まっている。常識的に考えればチェンは銃を持ってるし、ミアを盾にしているから有利なはず。でも常識が通じないのがセガール映画ですから。何と言うかセガール映画という一つの映画ジャンルが存在するようです。ところで、凄惨な殺し合いをミアに見せるというのはどうなんですかね。拝一刀でさえ「大五郎、目を閉じよ」とか言ってたと思うが。ラストは前代未聞のアホラストですな。ウラジミールはどうなった?お金はどうなった?そういうのは全く無視してサーシャとミアはアメリカへ旅立つ。アレクサンダーはここへ残る。ウ~ン、でもアンタ連続殺人犯ですぜ自覚してないようだけど。逃げなくていいの?(いいんでしょう)レナもここに残る。最初会った時からビビビッときてたんだもん!面倒なこと・・ミアの世話はサーシャに押しつけて。普通は姉妹が旅立ち、サーシャがここに残ると思うが・・。ウラジミールの店を継ぐとか。まともな商売するとか。彼に好意持ってるダンサーもいるようだし。パッションとかいうコで、サーシャを襲った男の頭をバケツ(←?)で殴るなど、加勢していたのが微笑ましかった。それにレナさんよ、相手はプロの殺し屋ですぜ、いいんですか?(いいんでしょう)と言うわけで、サーシャ達を見送って、アレクサンダーがレナをハグして、くっつくにしてもそこでやめときゃいいものを・・。その後何で続きをうつすのかいな。誰もセガールのラブシーン見たいと思ってませんぜ(本人が見たいのか?)。せっかく彼の映画ではまあまあの出来かな~って好意的な評価下そうとした矢先に・・やらかしてくれました。蛇足。