沈黙の聖戦
前にもどこかで書いたが、私はヴァン・ダムとセガールの作品は全制覇したいと思っているのよ。まあほんのちょっとしか出てなくて、見るほどのこともない・・って作品は別だけどさ。この「聖戦」は、「午後のロードショー」でもやったし、WOWOWでもやった。短いからカットもされてないだろうし、吹き替えでもいいんだけど、いちおうWOWOWの字幕版の方を見た。ジャッキー・チェンとかセガールは、吹き替えでもあんまり気にならんのよ。セガールの声は何人かやってるけど、私には区別つかないな。みんな本人よりいい声してる。製作は2003年で、セガールも少しはマシかな。1994年のタイ・・何やら悪党どもが密談してる。おや、今回のセガールは悪者か?いやいや、例によってCIA。その後なぜか銃撃戦になる。混乱の中でスンティ(バイロン・マン)は誤って子供を抱いた女性を撃ってしまう。男が何やらわめいていたから、この男の妻と子供とか?スンティは撃たれるが、ジェイク(セガール)が男を撃ち、そのおかげで命拾いをする。いきなり銃撃戦やら格闘になり、スローモーションも多用されている。誰なのか、なぜなのか説明なしなので、何が何だかわからない。出てくる連中も意味不明な行動取る。壁か何かぶち破って吹っ飛ばされてきても、廊下を歩いている連中は無反応。普通はびっくりするとか、そっちを見るとか。でも前を見たままだし、誰かが吹っ飛んでくるとあらかじめわかってるとしか思えない。全編おびただしい数の男が殺されるが、死ぬために出てきているような。ただ撃ちまくり、ただ死にまくる。こういう時、こういうふうに突っ立ってるとは思えんが・・てな連中ばっか。たぶんおんなじ人が何度も出てきて死んでるんだろうな。この頃のセガールは少しは動いている。シュッシュッと、手の動きは速い。飛び上がったりするところは顔が見えないし、体形も少し細いからスタントマンとすぐわかる。別にいいですけどね。セガールに飛び上がれとは言わない。そんな無理は言わない。と言うか飛び上がる必要もないんだけど、やっぱりこういうの入れないと・・と、思うんでしょうなあ。それにしてもセガールの顔はでかい!何度も大うつしになるけど、画面におさまりきれない。はみ出している。重力に負けている。この顔見ただけで、飛び上がるのは無理・・ってわかる。
沈黙の聖戦2
今回の相棒はバイロン・マン。彼を初めて見たのは「キャットウーマン」。目がギョロッとしていて悪党ヅラ。でも「山猫3」でイメージ変わった。ぶよんとたるんだトム・ベレンジャーや、たるんでぶよんとなったセガールの隣りに彼がいると、それだけで空気が変わる。澄んできれいになったような気がする。血管のドロドロが洗い流され、詰まっていたのが通じるようになる。頭痛がなくなり、耳鳴りがやみ、呼吸が楽になる。ふくれて張ったセガールの顔見たって便秘になるだけなのに・・。スンティは僧侶になっている。丸坊主で袈裟を着、裸足だ。体の傷は癒えた。でも心の傷は・・。ジェイクの方はCIAをやめて10年たつ。妻をなくし、冥福を祈る日々。娘ジェシカは彼の宝。年頃ということもあって、心配は尽きない。その彼女が旅行先のタイで友人と共に誘拐されてしまう。友人サラはアメリカの上院議員の娘で、たぶんそっちが本命。ジェシカは巻き添えを食ったのだ。でも彼女はまだいい。それぞれのボーイフレンドは用なしとばかりにあっさり殺されてしまう。アメリカもタイもそれぞれのおもわくがあり、頼りにはならない。と言うわけでジェイクはスンティを訪ねるわけだ。彼はジェイクに借りがある。あの時ジェイクがいなければ、スンティは撃ち殺されていた。出家したはずなのにずいぶん簡単に戻っちゃうのね・・とは思うけど、スンティがいないと・・セガールだけじゃだめなのだ。誰か軽快に動ける者が必要なのだ。思えばセガールの相棒として、ヒップホップのアンチャン達を出してきたことがあったが、とんでもない間違いで。あいつら動くのは口だけ、アクションなんかカッコつけてるだけ。プラス動かない・・動けないセガールじゃあどうしようもないのよ。舞台が現在に移って、なぜかハワイ。見張りがうようよいるのにジェイクはゆうゆうと豪邸へ忍び込み、何かを盗み出す。ついでに冷蔵庫の中を見たりする。床を滑って移動するシーンは笑いどころでしょうか。あらまあ・・歩くのも面倒なのね。ドスンと着地してもあら不思議誰も気づかない。映画を見ながら時々こりゃいったい何なのだ?と思うことがある。このハワイの一件も、後で何か関係してくるのかと思うが、それっきり。見終わった後で考えた。これってジェイクの今の仕事なのかしら・・って。CIAを退職して10年、何もしないで遊んでいるわけにもいくまい?
沈黙の聖戦3
忍び込んで何か盗むところしかうつらないので、何を盗んだのか、誰に頼まれたのかは不明。泥棒かもしれんな、今の職業・・。市場での戦いの最中、妙な出来事が起きるけど、その説明もずっと後になるまでされないので、あのじいちゃんは何なのだ?と、ずっと思い続けるはめになる。あと、スンティが誤って撃ち殺してしまった女性が抱いていた子供。ジェシカが出てきた時は、あの子をジェイクが引き取って育てているのかな・・なんて思った。そしたら奥さんがいて、もう亡くなっていて、ジェシカはその間にできた娘だから、あの子とは無関係。じゃあ後で出てくるクラブで働く女性ルルがジェイクに心を寄せるので、もしかしたら彼女が・・と思うけど、年齢的に違う。結局あの子はあれっきりなのかしら。何と言うか、一つの映画見ていながら、中にもう一つ別の映画がまじってるみたいな感じ。描写されてるのに、映画の筋に関係ないシーンが多い。ジェイクのバッグを開けて、中を探り、Tシャツか何か出す手がうつるシーンがある。彼への恋心が押さえきれないルルかな?と思ったが、男の手のように見える。誰だかわからないが、別にあいまいにする理由はないと思うが。ルルの同居女性が殺されるのも唐突だ。駅での取引に、ジェイクとスンティが現われたのは、ルルがファクスを盗み見たからだとフィッチが気づいたから?だったらなぜルルではなく、別の女性を殺すのか。話が前後するけど、娘が誘拐されたと知ったジェイクは、タイへ飛ぶ。ん?それまでどこにいたんだっけ?アメリカ?空港からタクシーに乗るけど、運ちゃんは「いいコを紹介しますぜ」と、しつこい。こういうのは「山猫3」でもあったな。白人で、一人で、東南アジアと来ると、目的はそれしかないってか?もちろんジェイクは興味示さない。そうでしょ、そうでしょ、亡くなった奥さんは美人だし、毎日朝晩お線香上げて冥福祈ってるのよ。他の女性が入り込む余地なんてないのよ!いや、そう思った私はバカでしたけどさ。ふん、男なんてきっかけさえあれば・・。さて、タクシーで連れていかれたのは・・。何で来る早々こんなことになるの?この連中どこの所属?誘拐した連中は、ビデオを送りつけてくる。アブ・カラフとかいう組織で、人質を解放して欲しければメンバーを釈放しろ・・と言ってくる。でもアメリカは人質テロには屈しないというのが建前だからね。
沈黙の聖戦4
ジェイクも元CIAだから、それくらい承知している。当てにはしない。しない代わりに自分が動く。誰の言うことも聞かない。アメリカやタイの政府、軍隊、警察・・邪魔するやつは全部敵とみなす!と言って、一人じゃ無理だからスンティを引きずり出す。娘が誘拐された・・と言うだけで、それ以上言う必要はない。裏には、あの時命を救ってやったのだから、今度は力を貸してくれるよな・・という意味が込められている。無言の圧力、体重。ジェイクは、質素な暮らしはいいものだ・・とか、私もそんな暮らしがしたいとか言うけど、この時点で生活習慣を改めていればねえ・・。たるみやぶよぶよが食い止められたのに・・。世間にとどまって飲み放題、食い放題。おかげで今のセガール体形になりましたとさ。とは言え、この頃のセガールは、少しはマシなのだ。作務衣とか中国風の服を着て髪はポニーテール。怪しくもいかがわしい求道者風味。いつでもどこでもまわりの連中より頭一つでかいから、人込みにまぎれるとか、気配を消すってのは不可能。でもそんな大きな体してて、怪しげな感じなのに、背中丸めて両手合わせてニコニコしてコチョコチョ何か(タイ語?)言ってるのが妙にかわいい。老師とかには礼儀正しい。こういうのがセガールであって、「激突」みたいに横柄だと、もうセガールじゃないってことになっちゃう。これって大事なことよ。ジェイクはCIA時代の友人フィッチの協力も求める。フィッチのクラブを始め、あっちこっちで若い女性出してきてお色気サービス。若い女性がジェイクに胸を見せる意味不明のシーンもある。メモ用紙なかったんかい!ジェイクが渋面作ってるのが笑いどころか。いや、見てない人には何のことやらわからんだろうけど。しつこい男を追っ払ってくれたというだけで、ルルはもうジェイクにモーレツにアタックしてくる。いちおう彼女がこの映画のヒロインだろうが、いかんせん魅力がない。しつこくまとわりついてくるのがうざい。途中でレナという謎めいた女性が出てくるが、これは一目で男性とわかる。いちおう美人だけど顔が角ばっている。後でジェイクと戦うけど、ハイヒールはいてる時点でもうだめだよね。勝つとか負けるとかの前の段階。骨折するかねんざするかでしょ。あと、伸ばした爪が凶器らしいが、何をやってるんだか(やってないんだか)全然わからないのよ。
沈黙の聖戦5
うつるのは髪の毛とか爪だけ。まともなうつし方してるとこ全くなくて、いつの間にかやられたようで。セガール何もしてないんじゃないの?レナの胸がうつって、あら男なんだ・・と気づいた人もいたようだけど、私はあら胸の手術はまだなのね・・なんて思っていましたとさ。こういう珍妙なアクションで思い出すのは、「Gメン82」だったか、江波杏子さんが着物着て、飛び蹴りするシーン。もちろん顔は髪で見えないから江波さんがやってるんじゃないけど、着物ですぜ。しかもスソの乱れゼロ。ありえね~!これを見てるからどんな珍アクションもオーケーよ。さて、あれこれあるけど、ちゃんとした相談・会話はほとんどない。ちょっと調べてみてくれ、ちょっと調べてみたんだが、そんな感じ。そんなのじゃ話通じてないだろ・・と思うが、それですんじゃう・・と言うか、すませちゃう。描写されないがテレパシーか?セガールの映画である以上、ジェイクは絶体死なないし、ケガもしない。娘を助けるためには無数の人々を犠牲にする。ジェイクの銃は弾切れにならない。無限に撃てる。飛んできた弾は彼をよける。彼がよけなくても・・よけられなくても・・。矢を射られても、ジェイクには刺さらない。のけぞってよけるのはさすがに難しい。腰を痛める。いろいろアホなシーンを見せられるが、セガールファンはもう免疫ができているから、いちいち驚いたり怒ったりしない。驚くとすれば、ジェイクではなく、お坊さん達の活躍。呪術師のじいちゃんが人形にピン(←?)を刺して、ジェイクがピンチになった時・・救ってくれたのがお坊さん合唱団。・・いや、お祈りですけどさ。そのシーン・・風が吹いて、紙くずみたいなのが舞って、おどろおどろしいムード。呪術師のじいちゃんは強力な力持ってるけど、残念なことに一人だから、結局目から血流して死んじゃう。人形で呪い・・というのは日本でもおなじみだが、タイでもやってるのか。ホテルのジェイクの部屋から衣類盗んだのはこのためか。どうせならまだ洗濯してないの盗めばいいのに。ついでに髪の毛とか。そうすればもっと効果あっただろうに。荷物かき回すシーン入れるならそれくらい考えろよ。こういう呪いめいたことはミャンマーで盛んという新聞記事を読んだことはある。だから生年月日を秘密にしておくとかさ。この、呪いめいたシーンも、セガール作品では珍しいのかな。
沈黙の聖戦6
それとお待たせしました、セガールのイチャイチャシーンね。何でこんなの入れたのかな。自分の娘が誘拐されたんですぜ。その娘と年もそう違わない、しかも会ったばかりの女性とイチャつきます?外国へ行ったとたん、奥さんのこと忘れちゃったみたい。ここでもう好感度大暴落。仲良くなるにしても、ハグするくらいでやめときゃまだ節度も感じられるけど、その先までうつすなよ。しかも何がうつっているのか(うつってないのか)、何をしてるのか(してないのか)、何も見えません。中国から黄砂が飛来したようです!視界ゼロです!沈黙の性戦です!ありがたいことにスンティはこういうこととは無縁です。彼が何を考えているのかは描写されない。ジェイクのために動いているだけ。はっきりしているのは、10年のブランクがあったけど、前と同様に体が動くということ。たぶん修行中も鍛練は欠かさなかったのだろう。一番鮮やかなのは、実は裏切り者だったフィッチの銃を奪うところ。今まで銃を突きつけていたのに、一瞬の後には突きつけられる側になってるという。これが普通のハリウッド映画だったら、あっちうつしてこっちうつして細切れにして繋いでごまかす。でもこの映画ではまっさらに、小細工なしに見せる。このシーンだけで、この映画見てよかった・・と思える。結局アブ・カラフは無関係だったようだ。黒幕はタイのジャンタパン将軍(トム・ウー)。アブ・カラフのため、軍隊に多数の死傷者が出ていることを怒り、誘拐をでっち上げ、アメリカ政府の協力で倒そうということらしい。誘拐のお膳立てしたのはフィッチか。彼はアブ・カラフと取引のある武器商人サディールが商売の邪魔なので、始末したい。サディールは将軍の手下のレナに始末され・・。あら?でも将軍はアブ・カラフを潰したいんだよね?う~ん、何が何だか・・。とにかく誘拐した娘の一人がジェイクの娘だったというのはフィッチの計算違いだったかも。上院議員の娘だけならジェイクは乗り出さないのに。と言うか、ジェシカだけさっさと解放すればよかったのに。駅での取引は何だったのかな。あのお金はどうなったのかな。とにかく何が何やらさっぱりわからん。作ってる方も演じてる方もそれは同じだと思うが。クライマックスは銃撃戦が主体で、マンのアクションは思ったより少なく、そこは残念だった。え?セガールの銃VS将軍の弓のシーン?あれってお笑いシーンでしょ?
沈黙の聖戦7
この映画・・何と言うか、やられ役の方を念入りに、存分にうつすんだよな。あっちでもこっちでも人が吹っ飛ぶ。でも正確に言うと、吹っ飛ぶと言うより、後ろから引っ張られているように見えるんだよな。セガールが目にも止まらぬ速さで何かする・・いや、してなくても自動的に相手は吹っ飛ぶ。吹っ飛んでくれる。しかも必ずスローモーションで。シュシュッ、スローモーション、シュシュッ、スローモーション、そのくり返し。セガールは手をひらひらさせて、いかにも何かやったように見せる。手つきだけ見れば鳥のように軽快だけどね。たまに片手は内向き、片手は外向きで相手を吹っ飛ばし、おおッ太極拳の擠(ジー)ではないかッ!と思ったりするんだけどさ。さてセガールは将軍を倒してから、のん気に階段下りてきたりするわけです。その間スンティは何十人という敵と戦い、しかも娘二人を連れている。こりゃあまりにも不公平です。ところで、見ている間中ずっと思っていたのですが、彼らは誰と戦っていたのでしょう?将軍の個人的な手下というなら悪党だから始末してもかまわないけど、軍隊の兵士だったらまずいよな。悪党じゃないんだから。見ていてもよくわからんのよ。で、ジェイクはジェシカと抱き合ってめでたしめでたしムード。それを見届けたスンティはくずおれる。実は彼は撃たれていたのだ。気力だけで持ちこたえていたのだろう。ジェイクが将軍と弓VS銃で遊んでいるからこういうことになるんでしょ!スンティはずっと罪悪感にさいなまれて生きてきたのよ。出家して一度は平安な日々が送れたけど、今度のことで還俗して。後悔はないけど、再び人を撃った時は、あの時の感触が蘇ったりして。さんざん戦って、もうジェイクへの借りは返した。寡黙な彼はジェイクに「また会おう」と言ってこときれる。真っ直ぐでぶれてなくて清らかで潔くて。こういうキャラを相棒に持ってきたからこそ、この映画はクズ映画にはならずにすんだ(断言)。ラスト・・ジェイクはルルとジェシカを引き連れて歩く。スンティのお葬式だ。ジェイクは川に入り、遺灰をまく。いいラストだが、スンティが死なず、また特別に許されて再出家するとか、そういうのでもよかったのに・・とは思う。