ディナーラッシュ
こちとらそもそもイタリアンやらフレンチとは無縁の生活ですってば。何たって節約のトップは食費。あ~こんなこと書くような私にはこういう映画は向かない。私だってエドアルド・バレリーニやジョン・コーベット出てるんじゃなきゃ見ませんてば。エド君来日までしたのね知らなかったわ。私が彼を初めて見たのは「ミディアム」の「暗闇の向こう」。とってもよかったのよ。「ディナー」はDVDレンタルして見たんだけど、特典がついていて、素顔の彼は目の整形手術に失敗したブラッド・ピットみたいなんだわ。すっごく腫れぼったい目をしていて。イチローに似ていると書いてる人もいるけど、確かに。若々しくて(実際若いんだけど)、セクシーと言うよりかわいい。内容は・・繁盛しているレストランの混乱の一夜。店は満員、厨房は戦場のような有様。従業員もお客もそれぞれ問題抱えていて。要するに群像劇。オーナー、ルイス役ダニー・アイエロは「月の輝く夜に」に出ていた。エド君は息子でシェフのウード役。でも副シェフ、ダンカン(カーク・アセヴェド)の方が目立つ。「月」にはニコラス・ケイジが出ていたけど、このアセヴェドもケイジに似ている。ダンカンはギャンブル狂で借金抱えていて、そのせいでギャングが店に。取り立て兼店の乗っ取り。ダンカンは仕事そっちのけでラジオにかじりつき、抜け出してはタバコ吸ったりニコーレ(ヴィヴィアン・ウー)といちゃついたり。もうホントダメ人間で、見ていていらつく。料理はおいしくなさそうだし、第一こんな店で食べたくない。スタッフの多くは必死で働いてるけど、主要なキャラが揃いも揃って魅力に乏しい。ダンカンは・・ちゃんと手を洗ったのかよッ!モテモテのニコーレも、とてもそうは思えなくて薄汚い感じ。ウードと関係する一方ダンカンのダメ男ぶりにもほだされつい・・という状態。「愛する人のために一緒に悩ませて」なんていうセリフにはオエ~ッ。おまえら二人して地獄へ落ちろッ!ダンカンはいちかばちかの賭けも負け、一晩で借金は二倍に。でもルイスはその借金を肩代わりするの。で、おまけに明日から休みを取れと言うの。おまけのおまけにニコーレにも休みをやって、二人で過ごすよう言うの。この信じられないほどの心遣い、うまくいくと思います皆さん?心入れ替えギャンブルからきっぱり足を洗うと思います皆さん?
ディナーラッシュ2
ルイスの相棒エンリコが殺されたのも、店を乗っ取られそうなのも、ダンカンのせいなんだけど、彼は「なぜ俺を責める?」なんて言うの。絶対あやまらない。ダンカンはウードと違ってルイス好みの料理作ってくれるので、そのせいで手放したくないんだけど、だからって甘やかしすぎもいいとこ。さて、店の中でもバーのあたりはちょっと雰囲気が違う。若くて生意気な連中が質問を出し、バーテンのショーンが答えるという、ひとときの盛り上がりがある。たぶんこのひとときは店の名物で、毎晩くり返されるのだろう。そういうのがいなくなった、エアポケットのようなひとときもある。ふらりと現われる場違いな女。私はネットで調べるまでこの女性が娼婦だとは気がつかなくて。いかにもありそうなことだけど、三ヶ月先まで予約でいっぱいでもすんなり入れるのはなぜ?バーなら予約なしでもOK?ルイスは店の他にノミ屋もやっていて、でもそっちの方はやめにしたい。エンリコを殺したギャング二人に復讐したいが表立ってはできない。二人は店の乗っ取りも企んでいる。経営のことは何も知らないが、自分達はギャングではなく、いっぱしの起業家のつもり。たぶんルイスにとっては彼らもウードもダンカンもヒヨッコ。彼だって若い頃はさんざん後ろ暗いことやったはず。苦労して今の自分がある。あの連中は苦労が足りない。と言って昔のやり方が今でも通用するとも思っていない。インタビューでアイエロやエド君は、テーマは世代交代、世代間の衝突とか言っていて。この映画に限らず、「昔はこうだったのに」「昔には戻れない」というのはよくある。若いウードだってそれなりに苦悩し、前へ進もうと模索している。”母さんの手作り料理”だけじゃ競争に勝てない。批評家のご機嫌を取り、時には寝て・・。批評一つで店が潰れるなんておかしいと思うけど、それが現実。この映画で印象に残るのは・・ウードでもダンカンでもニコーレでもなく・・まず、ゲイリー。この映画は省略が多く、想像するしかないんだけど、彼はたぶん法律とか税務とかそういう面でルイスを助けているんだと思う。たぶん後ろ暗いことも。冷静で余計なことはしゃべらず、表情もやわらか。演じているジョン・ロスマンは「コピーキャット」でゲイのアンディやってた。
ディナーラッシュ3
次にショーン。演じているジェイミー・ハリスは何とリチャード・ハリスの息子。おやじよりハンサム。ショーンはどんな質問にも答える博学で機転のきく男。賭け金はほとんど彼のものになるが、みんなに一杯サービスとか客あしらいがうまい。こんなに頭がよく、記憶力抜群で、それで何でバーテンなんかやってるんだろうと思うが、彼の能力を一番生かせるのがこの職場なんだろう。博学だからって学者や教授になれるわけじゃない。彼は自分をよく知ってる。いや、こういうのも皆私の妄想だけど。さてそしていよいよコーベット扮するケン。ふらっと入ってきてバーに直行。一人だし長っ尻なのでショーンはいぶかしむが、そういう客もいないわけじゃない。人物ウォッチングとか(有名人も来るし)。女が近づいてくるのもよくあること。結局この娼婦めいた女性とはどうなったのか不明。脈なしと見て離れたか。ずっと正体不明で、羽振りのいいビジネスマンに見えるので、私はこの店を買い取りたくて下見に来てるのかな・・と。ルイスは引退しそうに見えるし、ウードは料理の腕はいいが人間的にまだ未熟(いちおう25歳という設定)。こういう物慣れた人物がパートナーになれば・・。そしたら意外や意外。にっこり笑ってプスッ、プスッ。あっという間にギャングかたづけちゃった。ゲイリーが手配した今回限りのヒットマンということだが、私にはとてもそうは思えない。女性との会話でウォール街、投資家、株・・ってのは出てくるけど、それ以外は不明。この何もわからないってのがまた魅力。多額の報酬手に入れてこの後どうするんだろう。このキャラをこの映画だけで終わらせるなんてもったいない。ショーンとケンで一本作れそう。でもそうやって妄想して楽しむにとどめておいた方がいいんだろうな。ウードもダンカンも魅力ないし、DVDには料理のレシピついてるけどちっともおいしそうじゃない。映画を見終わるとおなかがすいて何か食べに行きたくなるとか書いてる人もいるが、私はぜ~んぜん。まあ冒頭出てくる昔ながらのこってり料理はおいしそうだったけど。ギャングのうち若い方のマイク・マッグローンは、マット・デイモンに似ていてなかなかよかった。彼は奥さんがいる。でもケンに殺されてしまった。奥さんはどうなる?アホなダンカンの行く末より、こっちの方がよっぽど気にかかる。