手紙は憶えている

手紙は憶えている

これはけっこう驚きの結末だった。グットマン(クリストファー・プラマー)は90歳で、一週間前に妻のルースをなくしたばかり。認知症のせいで、物忘れがひどい。同じ老人ホームにいるマックス(マーティン・ランドー)は、彼に手紙を渡す。二人はアウシュヴィッツの生き残りで、家族を殺したヴァリッシュを見つけ出し、復讐しようとしている。マックスは車椅子なので、切符やホテルの手配などを担当。グットマンが行動する。ただ、すぐ記憶があやふやになるので、みんな手紙に書いてもらって、その都度読んで思い出す。終戦後、捕虜の身分を盗んで四人の男がドイツからアメリカへ渡った。四人ともルディ・コランダーと名乗っているが、そのうちの一人がヴァリッシュ。てなわけでグットマンは老人ホームを抜け出し、列車や長距離バスを利用してあちこちへ。途中で銃も買う。一人目(ブルーノ・ガンツ)は北アフリカにいたから別人。二人目は収容されていた方、三人目は三ヶ月前に死亡。しかしグットマンはその息子と飼い犬を撃ち殺してしまう。巡礼風だったムードが、ここで一気に血なまぐさくなる。四人目のコランダー(ユルゲン・プロホノフ)は声でわかった。こいつこそヴァリッシュ。ところが・・とんでもないことがわかる。頭のいい人には途中でわかるようだが、私は普通に驚いた。プラマーは出ずっぱりだが、高齢なので時々心配になった。ランドーは・・これが遺作なのかな。変装こそしないものの、裏で糸を操っていて、まるで「スパイ大作戦」だ。グットマンの息子チャールズ役はヘンリー・ツェーニー。グットマンに殺されるジョン役はディーン・ノリス。最初の方に出てくるタイラーという少年が途轍もなくかわいい。演じているのはピーター・ダクーニャ。すべすべの肌につぶらな瞳。まるで天使だ。「汚れなき悪戯」のパブリート・カルヴォ君みたい。さて昔はナチの残党狩り物はよくあったけど、今は作りにくくなっている。設定を現代にすると70年以上たっているから、追う方も追われる方もよぼよぼ。手はふるえ、車椅子だったり認知症だったり。へたすりゃコメディーだ。今回のは途中でいきなり血なまぐさくなって、ラストも悲惨。それを中和するためか、景色は非常に美しく、家の内装などもきれいだ。