デス・レース(2008)

デス・レース(2008)

こっちでは見られないかな~と思っていたら、期間限定で遅れてやってくれた。公開二週目、平日昼間でお客は九人。オリジナルの「デス・レース2000年」は見たことなし。フランケンシュタインの声をオリジナルの主役デヴィッド・キャラダインがやっていたらしい。じゃあフランケンシュタイン本体は誰がやっていたの?今回見たのはジェイソン・ステイサム、ジョアン・アレン、ポール・W・S・アンダーソン・・この三人が好きだから。特にアレンは今回悪役のようで、どんなかな~と期待大。アメリカでの成績はふるわなかったようだ。何でかな~。かなり実写にこだわった作りで、そのぶん製作費はふくらんだことだろう。結論から言うと私にはおもしろかった。内容はゲームとあんまり変わらないと思う。私はゲームを一度もしたことはないけど、レースのルールを見てそう感じた。いつも書いてるけど私はカーチェイスにはうんざりしている。早く終わらないかな~って思ってる。でも今回は違った。同じようなものを三回見せられるわけだが、全然あきない。ストーリーはいたってシンプル。レースが三回。最初の方で、何で主人公がレースに出るはめになったかいきさつを描く。最後の方でシャバに出てどうなったかくっつけ、それで終わり。見終わって、さてどうだったかと振り返ってみても何も出てこない。車がはでに引っくり返って炎上して・・それだけだったような。確かにそれだけだけど、私はレースのシーンでは椅子の中で身をすくませたり、そらせたりしていた。私まで(敵の車や障害)よけてた。アンダーソンの作品はいくつか見てるけど、これははずれだ・・と思ったことはまだない。いつもそれなりのもの見せてもらってる。今回もゲームそのものじゃん・・と思うけど、それだけじゃない。うまく表現できないけど心意気と言うかそういうものを感じる。実写にこだわってそのぶん大変な思いしてるけど、その大変さを楽しんでいるんじゃないかという気がする。例えばクリストファー・ノーランだと「ダークナイト」を見て、こんな超々大作作っちゃって次はどうするの?これ以上のもの作れるの?でもそのわりには私はそんなに感銘も受けなかったな・・なんて思うけど、アンダーソンだとまだそこまでいかなくて「デス・レース」も中大作(?)くらいだけど、彼の方に未来を感じる。まだまだこれから大いに進歩しそうだ。

デス・レース2

さて、ステイサム主演だからてっきり刑務所の中から始まるかと思ったら違った。ステイサム扮するエイムズは元レーサー。若い頃は刑務所のお世話になったこともあるけど、一人の女性とめぐり合ったことで人生が変わる。かわいい女の子も生まれた。仕事の方は勤めていた製鉄所が閉鎖され、明日から職捜し。でも愛する妻子のためなら・・。ところが妻は殺され、エイムズは無実の罪でつかまる。6ヶ月後刑務所ターミナル・アイランドへ。ここまでを手際よく見せる。裁判とかは全く見せない。失業したその日、これからの生活をめぐって夫婦の間でいさかいが起き、それが高じて妻殺し・・ということになったのだろう。彼が頭を殴られて失神していたことは無視されたのか。誰かがウソの証言でもしたのか。そもそも誰が警察に通報したのか。そこらへんぜーんぶ省略。ま、いいけどさ。とにかくエイムズがターミナル・アイランドへ来なくちゃ話が始まらない。所長はヘネシーという女性。2012年、アメリカ経済は崩壊し刑務所の運営も営利目的に。デス・レースを有料でネット配信し、儲けている。2012年を待たずにアメリカ経済がすでに崩壊しちゃったのが何とも皮肉。この映画を製作している時点では、こんな金融危機が起きるなんて予想していなかっただろうけど。近未来の、今とは形態が変わった刑務所・・というのは「ニューヨーク1997」連想させる。さて6ヶ月前のレースでフランク(フランケンシュタイン)というレーサーが死んでしまった。デス・レースで5勝すると自由の身になれるのだが、フランクはあと1勝・・というところまで来ていた。いつもマスクをかぶっていたので、彼の素顔は知られていない。死亡したことも・・。ヘネシーは、フランクになりすましてレースに出るようエイムズに持ちかける。もちろん彼は断るが、自由の身になれば娘に会える。このままでは娘は誰かの養女になってしまう。それを防ぐには・・。もう一つ、妻を殺した犯人捜しもある。別に頭を働かせなくたって、フランクの代役欲しさにヘネシーがエイムズを陥れたのだということはわかる。フランクがいないと売り上げが激減なのだ。妻殺しの犯人捜しも単純でひねりがない。味方の中に裏切り者が・・なんて一時期待したけど全然。とにかくエイムズが出場を承知するよう話が進んでいく。

デス・レース3

エイムズはレーサーやめてからかなりたってるし、特にこの6ヶ月は全く運転していないのにいきなりレース。手ならしも何にもなしのぶっつけ本番。ムチャな展開だけど、ま、いいか。それにしてもヘネシー役アレンはどうしちゃったの?顔が絶対おかしい。セロテープかラップでシワのばししているような、ノリづけしたような不自然な顔。ただし演技はよかった。うまい人はどんな役でもこなせる・・という見本みたい。ヘネシーはエレガントでしかもすご腕。言葉づかいもていねいで上品だが、時々化けの皮がはがれる。ごていねいにエンドクレジットの一番最後にヘネシーのののしり言葉が流れる。本編でアレンのイメージをぶち壊しておいて、最後にダメ押し。作り手の遊び心(おふざけ?)が感じられる。他の出演はマシンガン・ジョー役でタイリース・ギブソン、コーチ役がイアン・マクシェーン。レース時のナビゲーター、ケース役はナタリー・マルティネス。彼女は仲間由紀恵さんそっくりだ。この映画には余計なロマンスなどなし。エイムズにとって愛する女性は妻だけ、娘だけ。ケースは相棒、ヘネシーは敵だ。他にも何人か女性は出てくる。ナビ役として女子刑務所から連れてくる。いちおう髪をばさっと振るとかわざとらしくスローモーションでうつすが、アンダーソンはそういうのは重視していない。いちおううつす・・その程度。何しろ彼の頭の中はミラ・ミラ・ミラ・・じゃない、車・車・車。レース・レース・レース。考えてみりゃ車がぶっ壊れる度に、ドライバーだけでなくナビゲーターも死ぬんでしょ?5勝すれば自由の身になれるとは言え、そんな危ないことによく志願者がいるねえ(それとも無理やり?)。クライマックスでエイムズがケースを見捨てて脱獄成功・・というのは、確かに盛り上がらないな。見てる人全員エイムズは戻って戦い、ケースを救い出す・・と思ったはず。それがないのでハッピーエンドになってもぴりっとしない。そんな不満は残るが、ステイサムはとにかくはまり役でカッコよかった。鋭い眼光、恐ろしいほど盛り上がった筋肉・・まるで仁王さんだ。パンフには映画と全く関係のないカワイコちゃんの写真も載ってる。車にカワイコちゃんはつきもの・・ということか。てなわけで内容に深みはあまりないけど、大迫力を体験するにはやっぱ映画館だぜ!・・と痛感させられた映画でした。わざわざ足を運んでよかった!