特捜部Q

檻の中の女

WOWOWでもやっていたと思うけど見逃して。その頃は原作も読んでなくて。読んでからだいぶたつから細かいことは忘れたが、ほぼ原作に沿っていると思う。原作ではメインの事件以外にもあれこれあって、それこそフロスト警部みたいによれよれになってるけど、こっちは一つの事件にしぼってる。だから地味で起伏がないと感じる人もいるようだが、私はその方がいいです。あっちにもこっちにもというめまぐるしいのはどうもね。冒頭、その後ずっとカールを悩ませることになるあの事件から始まる。アンカーは死亡、ハーディは全身マヒの生き地獄。三ヶ月たって職場に復帰したけど、誰もカールとは組みたがらない。ボスの提案で特捜部Qという新しくできた部署へ。助手としてアサドという男がつく。殺人課から地下のこんなところへ回され、過去の未解決事件の整理。当然やる気は起こらない。しかしアサドが壁に貼った資料の一つ、議員のミレーデ失踪事件に目を止める。五年前フェリーから海に飛び込んで自殺したと思われているが、引っかかるところがある。彼女は交通事故で両親をなくした。弟のウフェは事故のせいで脳に障害を負い、言葉を発しない。ミレーデに浮いた話がないのは、弟の世話のためだ。スウェーデンの会議でミレーデが親しくなったというダニエルは、彼女の失踪後に死亡。しかもどうやらその男性は彼女が親しくなったのとは別人で。誰かがダニエルの名をかたってミレーデに近づいたのか。一方彼女は狭い空間に閉じ込められながらも生き延びていた。一年ごとに1気圧加圧される。途中でカールは勝手に捜査するなと停職になる。果たしてカールはミレーデを助け出せるのか。カール役はニコライ・リー・コス。原作のカールよりはたぶんハンサム。若い頃のデニス・クエイドとかルーカス・ブラックに似ているかな。ミレーデとウフェの運命を変えたように、あの事故はラースの運命も狂わせた。ラースが成人し、孤児院や養父母との生活から抜け出すまでには五年以上かかった。それと同じ期間ミレーデを閉じ込め、苦しめてやれというわけだが、映画を見ただけでは何で五年も生かしておくのかが伝わってこなかったような。ラースの母親ウラはラース以上にミレーデを憎んでいる。原作での彼女はもっと鬼ばばあだ。ミレーデがあの時ふざけて運転中の父親の目をふさがなければねえ。

キジ殺し

北欧が舞台と言うとスウェーデン製・・って自動的に思っちゃうけど、これはデンマーク製らしい。でもみんな同じに見えちゃうんだよな。要するに遠い国。ミレーデ救出のおかげで、特捜部Qの存在も知られるようになったけど、カールにとってはお祝いのパーティも他人事。女性と知り合うチャンスかな・・とちょっと期待したけど、それもダメなのがさびしくもわびしくも気の毒。帰ろうとして老人に呼びとめられるが、無視する。再捜査してくれるよう手紙を書いたと言うけど、覚えがない。その老人は元警部のヤーアンスン。カール宛ての段ボールいっぱいの資料残して自殺する。彼の双子の子供・・トーマスとマリーが殺された事件。マリーはレイプもされていた。ヤーアンスンは解雇された後も独自に捜査していたらしい。ビャーネという少年が自首し、刑期も務め上げ、この事件は解決ずみになっているが・・。カールが再捜査し始めたのはもちろんあの時無視したという後悔のせいだ。今回秘書のローセが登場するが、イメージが違う。もっとどぎついメイクして変わった服装して・・こちらはちょっとまともすぎる。イメージが違うと言えばアサドもそうだけど。ファラン・ファランのアサドはカッコよすぎるね。20年前の寄宿学校。ほとんどが金持ちの子弟で、自分達は何をやっても許されるとうぬぼれている。学校が休みの日曜日ごとに少女や老人を襲う。キミーは女生徒の憧れの的ディトリウとカップルに。彼の頼みで教師のクラウスを誘惑し、破滅させたことも。彼女が変わったのは妊娠したため。それとトーマスとマリーが殺されたため。おなかの子供もディトリウらのせいで流産。彼女は胎児をバッグに入れて話しかけ、浮浪者のような暮らしをしている。カールがビャーネを訪ねたことから、ディトリウ達もキミーを捜し始める。彼らは社会的に成功した後も変わっていない。ディトリウは妻の愛人フランクを袋だたきにし、金をちらつかせて黙らせたりする。影響力は本部長にまで及び、カールの捜査は妨害される。ディトリウ達もそうだが、キミーも相当なもので、気の毒だなんていう気は全く起こらない。相変わらずカールは仕事漬けの毎日。イェスパは別居中の妻ヴェガの連れ子で、血のつながりはない。何とかコミュニケーションを取ろうとするが、食事の約束を忘れたりする。男はつらいよ・・だ。

Pからのメッセージ

今のところ映画化はこの三作目までか。内容は暗く、見ていて決して楽しくはないが、カールとアサドのコンビはもっと見たい。原作でのカールは別居中の妻ヴェガに悩まされているが、こちらでは離婚したことになってるようだ。罪悪感からハーディを引き取ってもいないし、カウンセラーのモーナにメロメロになってもいない。アサドの正体に疑問を持ってもいないし、ローセの二重人格もなし。シンプルなものだ。さて浜辺で見つかったビンに入った手紙。何年もたっていて判読困難だが、映画ではわりと簡単に。信心深い一家から子供を二人誘拐し、身代金を要求する。払うと一人だけ戻され、もう一人は殺される。口外すると残った子供を殺すぞと脅され、親は警察にも届けず隠し続ける。彼らは自分達だけが被害者と思っているが、他にも何件も起きている。今回標的になったのはイーリアスの子供マウダリーナとセームエル。隠そうとするイーリアスを説き伏せ、多くの警官が身代金受け渡し場所の列車に乗り込む。一方であの手紙から割り出した・・生き残ったトレクヴェの協力で、監禁されていた場所を特定する努力が続けられる。犯人は人あたりのいい伝道師ヨハネス。家族との会話からその一家の財政状態をつかむ。イーリアスは決して金持ちではなく普通の農夫。しかしヨハネスはあらいざらいしぼり取る。彼の本当の目的は信仰心を奪うこと。こんな状態になっても神は助けてくれないじゃないか・・というわけ。もちろん彼がこんな悪魔のような人間になったのは母親のせいだ。狂信的な母親は彼と姉のレベッカを脅し続けた。ある日レベッカは母親のせいで失明。ヨハネスは母親を殺す。今の彼はドイツの製薬会社のCEOとレベッカには偽り、奪った金で世話をしているようだ。今回はあれこれ省略、整理され、カールの神を信じないという信念が、ギリギリの状態で試されるというか、そんな感じ。アサドの信仰は明確で、平和を目指していると言いつつ今回も犯人を殺すのは彼だ。カールの孤独が印象的。ピーヴォ署の魅力的な刑事リーサに好意持たれても反応しない。手のふるえも目立つ。セームエルが溺れさせられた時にはこのまま死んでしまうのか・・と心配した。助かってホッとした。若手刑事のパスゴーは死んじゃったのかしら。有能そうだったのに。課長ヤコプソン役の人はジョン・ソウに似てるな。ヨハネス役の人はルーク・ウィルソン似。

カルテ番号64

久しぶりの「Q」だ。まず映像のきれいさ、くっきりさに驚く。ケーブルで見た時はこんなにきれいじゃなかった。内容は相も変わらず重くて悲惨。見ていて苦しくなる。新聞で見かけるようなことが、デンマークでも行なわれていたのだ。原作は読んだけど、だいぶ前なのでほとんど忘れてしまった。アサドは異動を申し出ている。Qにいるのもあと一週間だ。あるアパートの、封印された部屋からミイラ化した死体が三つ発見される。テーブルを囲んでおり、お茶でも飲んでいたような。そのうち死体はリタ、ニーデ、弁護士のフィリップとわかる。部屋の持ち主は元看護師のギデで、消息不明だが家賃だけは払い込んでいたらしい。時々1961年の、いとこのテーイと愛し合ったため、スプロー島の女子収容所へ入れられたニーデの苦難が描写される。同室になったのがリタで、ニーデが島から逃げようとしたことや、妊娠していることを医師ヴァズに密告し、その見返りに家へ戻してもらう。現代ではアサドの知人の娘ヌールが中絶手術を受ける。担当したのはヴァズで、ヌールは知らないうちに不妊手術をされていた。かつてのニーデも同様で、後にテーイと結婚したが、不妊のせいで別れるはめに。60年後のヴァズは、不妊治療で名を成す一方、一部の女性・・移民など・・に勝手に不妊手術をしていた。彼は賛同する仲間と共に”寒い冬”という組織を作って活動。メンバーには医師だけでなく警官も。収容所が閉鎖されると、犠牲者の中には裁判を起こす者も。その際ヴァズ側の弁護をしていたのがフィリップ。結局証拠不十分で裁判には至らなかったようだが。ヌールもそうだが、妊娠や中絶を親に知られることを恐れる。多くの女性は泣き寝入りするしかなかったのではないか。優れた遺伝子を持つ者は子孫を残せるよう治療し、そうでない者は子孫を残さないよう強制的に処置する。それが使命だと信じている者が現実に存在する。思い上がりもいいとこだ。さて、相手を思いやる気持ちゼロのカールに、さすがのアサドも呆れ果てる。異動する気になったのもそのせいだが、その彼は大ケガをして生死の境をさまよう。それで少しはカールも考えを改めたが、しばらくするとまたアサドを呆れさせるんだろう。結局三人を殺したのはニーデ。ニーデと思われた死体はギデ。ニーデはカールに見つかった後、入水自殺したと思ったら、ちゃんと生きていたな。意外としぶとい。

知りすぎたマルコ

原作を読んでからだいぶたつので、内容はすっかり忘れてしまった。あんまりおもしろくなかった気がする。今作から出演者は一新され、そりゃウルリッヒ・トムセンの方が原作のカールに近いのだろうが、見ていてもつまらないのだ。それでなくても内容は暗く重苦しいのだから、見続けるためにはカールくらいは若くてハンサムでいて欲しいわけよ。さてデンマークの国境でつかまったロマ人の少年マルコ。彼が持っていたのが四年前に行方不明になったスタークのパスポート。彼は少女をレイプし、パソコンには児童ポルノ。妻は無実を訴えたが・・。マルコは何を聞かれてもしゃべらず、そのうち脱走。彼は母親が死んだため、父親に会おうとチェコからデンマークへ来たのだ。再会はできたが、マルコの出現で父親は困ったことに。スタークは以前外務省にいたが、途上国への寄付金がちゃんと使われず、消えてしまうなどの不正を暴こうとしていた。それで無実の罪を着せられ、たぶんもう殺されているだろう。不正そのものは秘密にされた。公になってしまうと、誰も寄付してくれなくなるからだ。カールはスタークの娘ティルダの描いた絵から、一人の子供の存在に気づく。それがマルコで・・と、ここらへんはちょっとゾクゾクさせられる。四年前にはマルコもここに住んでいたのだ。彼はスタークが殺されるのを目撃し、彼の証言から白骨化した死体も見つかる。殺したのはゾーラで、今まではマルコは国外にいたからよかったけど、戻ってきたとなると話は別だ。ゾーラを雇ったのがスナプで、その後ろには外務省のエリクセン、さらにその後ろには・・。後でカールは死体が見つかった森の所有者は・・となって、老人に行きつく。アサドと共に屋敷へ向かうが、すでに火に包まれ・・。あたしゃてっきりスナプが老人殺そうとした時にカールとアサドが飛び出してくると思ったけど、違いましたな。スナプも殺されちゃう。でも現場に向かう途中すれ違った車がエリクセンのものとわかり・・。今はドライブレコーダーという便利なものがありますからな。マルコと父親は国外へ。これからは二人で暮らせる。でも・・父親はスタークの死体隠しとか関わっていそうだが・・。トムセンはプーチン似、ハーディはシーンによってはフセイン似。普段は穏やかだが、びっくりするような行動取るアサド(ザキ・ユーセフ)がいい感じ。