閉ざされた森

閉ざされた森

この映画の売り物は、あっと驚くどんでん返し。二転、三転、四転し・・って別に数える必要もないんだけど・・。でもね、ウフフ・・「フレイルティー/妄執」を見た後ではね、だめなのよーん。「アザーズ」もそうだったけれど、たいていのことでは驚かないのよーん。エンドロールになったとたん、後ろで「全然わからないわー」という女性の声。わかるわかるその気持ち。でもエンドロールも映画の一部、静かにしましょうね。映画の中で何度か「うまくつじつまを合わせれば」というセリフがあるんだけど、肝腎の映画の内容は全然つじつまが合っていないのよね。パナマの米陸軍基地が舞台。鬼軍曹ウエストと兵士6人がハリケーンの中での訓練の途中行方不明になる。基地の責任者スタイルズがヘリで捜索していると、負傷したケンドルを背負ったダンガーがミュラーと撃ち合っているのを発見する。ミュラーは死亡、ケンドルは病院へ、ダンガーは尋問を受ける。しかしダンガーは担当のオズボーンが何を聞いても答えない。スタイルズは知人のトムに助けを求める。トムは麻薬捜査官で尋問の名人だが、収賄容疑をかけられている。オズボーンは仕事を取られておもしろくないが、トムの巧みなやり方を見ているうちにだんだん協力するようになる。部下に憎まれているウエストは訓練の最中に殺されたらしいが、ケンドルとダンガーの証言には食い違いがあり、何が起こったのかはよくわからない。そのうちに医師のヴィルマーが麻薬の横流しをし、兵士達の間で売買が行なわれていたことがわかってくる。ウエストはこれに気づいてスタイルズに報告したが、実はスタイルズが悪の元締め。ミュラーとケンドルに訓練の最中に事故に見せかけてウエストを殺すよう命じる。犯人が必要ならパイクに罪をなすりつければいい。パイクは何かとウエストに目の仇にされしごかれていたから、ウエストが殺されたとなれば誰もが彼の仕業だと思う。オズボーンはヴィルマーと前につき合っていたのでショックを受ける。そのうちにケンドルはスタイルズに毒殺され、彼が元締めだということが明らかになる。スタイルズは自分の正体がばれてもトムを買収できると考えていたが(何しろトムは収賄の容疑をかけられていて、この先出世は望めない)、断られたので撃ち殺そうとする。それを救ったのはオズボーン。ウエスト達の死体は発見されないが、スタイルズは死に、事件はいちおう解決する。

閉ざされた森2

その後また話が引っくり返るのだがまあ詳しく書いても仕方がない。結局何があったかははっきりしないのよね。再現ドラマが三種類くらい流されるけどケンドルもダンガーもウソついてるし。見ている方は謎めいた事件が起きれば真実は・・真犯人は・・と当然知りたくなる。答が知りたくて集中して見るのだ。でも答はわからない。ミュラーとケンドル以外は全員ぐるなのだから、嵐の中で起こったのはウエスト殺しという事件ではなく、ウエストが殺されたと二人に思わせるためのお芝居である。ミュラーとケンドルは自分達が手を下す前にウエストが死んでさぞびっくりしたことだろう。さて10月になってやっと映画館に行けるようになった。夏の間はたいてい超大作をやるから、見たいけれども冷房が入っているから見に行けない・・と残念がることもない。こちとら超大作には興味なし。・・でウキウキ気分で行ったこの映画。一回目は15人くらいでほとんどが女性。二回目は20人あまりでほとんどが男性。どっちにしろがらがらでした。冒頭「ボレロ」が流れてきて「おおっ」と思った。でも何でこの曲?その後は使われずちょっと残念。この曲って最初に踊り始めた時には誰も気づかなくて、踊っているうちにだんだんみんなが注目し始めて、最高潮に達した時にいきなり踊りが終わるというような内容の曲らしい。レコードのジャケットにそんな説明が書いてあった。第8特殊班の存在を表わしているのかな。ダンガーが尋問されている時「8」という数字を書いて、それを見たスタイルズがこりゃオズボーンの手には負えない、トムを呼ぼう・・となるのだが、見ている方には映画の中盤まで8の意味はわからないままだ。で、だんだん「8」の存在が大きくなってきて最高潮に達するのは、オズボーンがトムが第8特殊班の一員で、真犯人はトムなのでは・・と疑うところ。それが引っくり返ってチャンチャン・・となって映画は終わってしまう。後に残された空虚な気分はまさに「ボレロ」がいきなり終わった時の気分そのまま・・なんちゃって。それにしてもどんでん返しもあんまりやりすぎると逆効果になるといういい見本がこの映画。脚本を書いた人は「フレイルティー」を見て勉強しなさい!でもまあ私はジョン・トラボルタ目当てで行ったのでけっこう楽しんだ。トムは「将軍の娘」のポールと似たキャラクターで、トラボルタはこういう役がぴったり。

閉ざされた森3

オズボーン役のコニー・ニールセンは「ソルジャー」で見て、何てきれいな人なんだろう・・と注目していた。「ディアボロス」では「コニーさん、服着てください・・」っていう感じだったけど、今回は髪をばっさり切ってすっきりといい感じだった。出てくる人はみんな何かを隠したり、ウソをついたりしているけど、オズボーンだけは真っ正直に生きている。トムとダンガーが仲間なのにああやって芝居をしたのは、結局は誰も信用できないから。オズボーンはヴィルマーとつき合っていたので、トムも彼女が潔白かどうか確信が持てなかったのだ。ヴィルマー役はハリー・コニック・Jrで、彼が出ているとは知らなかったのでびっくりした。彼の言葉からダンガーが実はパイクであることがわかるが、あれって何の意味もないどんでん返しだよね。パイクと言えば、ダンガーの証言を再現しているところでちょっと引っかかるところがあった。小屋に一人でいたミュラーに「パイクはどこだ?」とかって聞いていなかった?ミュラーはダンガーと組んでいたのになぜ一人?証言しているダンガー(実はパイク)がパイクとダンガーを言い間違えた・・ように私には思えたのよね、どういうわけか。でもまあどっちにしろこの証言もウソなんだけど。ウエスト役はサミュエル・L・ジャクソンで、例によってがなりたてて・・うるさい。ヴィルマーはトムに会ったとたん「院長になるんだ」と独立をほのめかす。スタイルズも「基地閉鎖まで」とここでの仕事が長くないことをほのめかすし、二人ともそろそろ潮時だと考えていたようだ。新しい場所でどうせまた再開するんだろうけど。そういう時にウエストに秘密を嗅ぎつけられてしまったというわけ。スタイルズは秘密がもれるのを恐れてケンドルを毒殺したけど、ヴィルマーの方から悪事がばれてしまうはず。またケンドルも死ぬ間際にオズボーンの手に血で「8」と記すけど、スタイルズの「S」を書くのが普通じゃない?「8」と言えば最初の方でトムが窓から通りを見下ろす時、横に玉がぶら下がっている。終わりの方でオズボーンが見上げた時にはちゃんと8の字が見えているけど、最初の時はおおいがしてあるみたいで、8は見えなくなっているのよ。それにしてもおもしろいことはおもしろいんだけれど、何とも言い様のない映画だなあ。内容が破綻していると言うか。やる必要のないことをやって、出す必要のない死者を出して・・。