ドント・ブリーズ

ドント・ブリーズ

これは劇場でも公開されたようだ。批評はおおむね好評。これを見る気になったのは、ディラン・ミネット君が出ているから。「メンタリスト」での、そばかすだらけの思いつめたような顔つきが印象に残って・・。「ミディアム」の方はなぜか思い出せないんだけど。その彼も大きくなって・・短いさっぱりした髪に、小さくて腫れぼったい目と大きめの鼻・・子供っぽさを残しつつ、たくましさも。この先どう成長していくのか楽しみ。ジェーン・レヴィは知らない人。最初は「ブラッドウルフ」の人かな・・って思ったけど、あっちはアグネス・ブルックナー。でも似ている。ダイアン・レインにも似ている。ミネット君より7歳ほど年上で、どうりでシーンによってはシワが・・。盲目の男はノーマンという名前らしいが、あえてジジイと呼ばせてもらうぜ!クソジジイでもいいけど。スティーブン・ラングは「スティーヴン・キングのファミリーシークレット」で見た時は老けたな・・と思ったけど、病人の役だったしな。こっちではだいぶがんばってる。アイデアや見せ方で一本作っちゃったというタイプの映画。出演者は数人で小粒、舞台のほとんどはジジイの家。時間も短い。三人の若者がいる。マニー(ダニエル・ゾヴァット)はおしゃべりで見るからに軽薄な性格。忍び込んだ先で放尿・・こりゃだめだ。犠牲者第一号だ。こんなやつと組むこと自体間違ってる。ロッキー(レヴィ)は身持ちの悪い母親との暮らしから抜け出したい。妹を連れてこの町・・デトロイトから出るのだ。そのためには金が必要。マニーは彼女の恋人らしいが、何であんなアホと付き合うんだ?母親を軽蔑しているくせに、自分もろくでなしと付き合う。彼女自身男を見る目がない。アレックスはロッキーが好きだ。マニーよりずっとマシなタイプだが、だからって相手にされるとは限らない。女はすぐ目の前に善良な男がいても、おおむねろくでなしの男とくっつく。アレックスの父親はセキュリティ会社に勤めているらしい。目当ての家に簡単に侵入できるのは、自宅に顧客のカギを保管してあるからだ。簡単に持ち出せるなんて・・これじゃセキュリティもへったくれもない。

ドント・ブリーズ2

侵入先では現金は盗まず、物品、それもお金に換算して1万ドル以内におさめる。それ以上になると重罪になる。そのため故買屋に売ってもさほど金にはならず、マニーはおもしろくない。それで彼はある男に目をつける。退役軍人で一人暮らし。娘を交通事故でなくし、金額は不明だが高額の示談金が入った。しかもアレックスの父の会社の顧客。下見に行ってみると、獰猛な犬がいるのはちと面倒だが、まわりは空き家だらけだし、ジジイは盲目だ。こりゃちょろいもんよと早速忍び込む。薬の入った食べ物で犬を眠らせ、ジジイの寝室にガスをまいて眠らせ、あとは金を捜すだけ。ところがジジイの思わぬ反撃にあって、三人は恐怖のズンドコ・・いや、どん底に・・。愚かな若者達が屈強のじいさんにさんざんな目にあわされるという痛快さを、心のどこかでは期待している。まずマニーが殺されるけど、たぶん誰も気の毒だとは思わない。彼が銃を持っているのを見て、アレックスは抜ける決心をする。アメリカでは銃を持って侵入すれば、返り討ちにされても仕方ないようだ。もちろんアレックスは決心をするのが遅すぎた。ロッキーのことが気になるからだ。彼女は金のことしか考えてないって、何でわからないのかね。他の二人とは違い、アレックスは金に困っているわけでもないようだ。たぶんある時、家に顧客のカギを保管していることをポロッとしゃべっちゃったんだと思う。それで仲間に引き入れられたんだと思う。父親を困らせてやれと思ってやっているとは思えないから、仲間から抜け出せないのはロッキーのそばにいたいからだろう。ロッキーはそんな彼の恋心を利用しているような感じ。この後あれこれあるのだが、マニーが早い段階で退場して、さて次は誰かということになる。普通ホラー映画には若者が五、六人出てくる。で、いろいろ時間稼ぎする。でもこちらは三人で始まって、すぐ二人だけに。たいていの映画では女性が生き残るから、たぶん次にやられるのはアレックス。でもミネット君目当てで見ている私はそれじゃあ困るのだ。彼に生き残って欲しい。そう思っているといきなりとんでもない展開になる。ジジイの娘を死なせた金持ちの令嬢シンディが地下室に監禁されていたのだ。

ドント・ブリーズ3

いったいどうやって誘拐したのだろう・・なんて考えちゃいけない。いや、考えるよな。盲目でも車の運転はできる・・って、それじゃあ「ブラインド・フューリー」だけど、たぶんこっそりシンディを呼び出したのだろう。過去は水に流すとか殊勝なこと言って。近くまで呼び出せればあとは簡単。犬で脅せば言いなりにできる。ああ、何でこんな妄想を・・。でも描写されないからこそそうやって想像するわけで。他にも妄想源はいっぱいある。マニーやロッキーは何の仕事をしているのだろう。泥棒が職業?アレックスは学生だろうな、たぶん。ロッキーは自立したいのなら妹を連れて家を出ればいいじゃん。あるいは数年の辛抱と一人で出て一生懸命働き、金をためて迎えにくるとか。娘をなくした盲目のジジイから金を奪う方が手っ取り早いってか?あたしゃその時点でもうロッキーに共感できません。いくら悲惨な境遇見せられたってだめ。アレックスは何度か刺されたり撃たれたり落ちたり、あたしゃそのたんびにああこれでミネット君の出番終わりだ・・とがっくりしたんだけど、少したつとまた出てきて・・喜んだらいいのか首を傾げるべきなのか・・。彼にも何度か助かるチャンスはあったのよ。でもそのたんびにロッキーが邪魔する。クローゼットの中の隠し金庫に気づき、金を持ち出す(ジジイの怒り倍憎・・じゃない、倍増)。シンディを見て、ほっとけなくなる。ほっときゃシンディは死ななくてすんだかも。まあこのシンディの登場で、ジジイへの同情ムードは一気にダウン。そりゃ事故を起こしたのに親の金の力で無罪放免、ジジイが恨んでも当然だけど、だからって誘拐して監禁して亡くなった娘の代わりにするため、自分の子供を産ませようなんてアンタ。それじゃあ異常もいいとこ。死んだ娘さんはホントに事故にあったんですかね。父親の異常な愛から逃れるため、自分から事故にあいにいったんじゃないの?ジジイの奥さんのことは不明だけど、たぶん異常さに逃げ出したんだろうな。ジジイは誤ってシンディを撃ち殺してしまう。「ベイビー」とか言って悲しんでいたけど、シンディのことじゃなくておなかの赤ん坊のことなんだよな、たぶん。子供を産んだら解放すると約束していたらしいけど、そんなの信じられないな。

ドント・ブリーズ4

つついてはいけないと思いつつ、ついつついてしまう私。でもこういった・・欠点でもあることが、その一方では魅力でもあったりして。不明なことはいっぱいあるんだけど、かえってそれがおもしろいという・・。見ている時はある程度ハラハラするし、ドキドキもする。でも終わった時には余韻も感動もない。後味もいいような悪いような。若者側にもジジイ側にも感情移入できない。どっちがどうなろうが知ったこっちゃない。ラスト・・ロッキーは金を手に入れ、妹と二人デトロイトを離れる。報道ではマニーとアレックスは強盗で、ジジイは被害者。重傷を負いながらも泥棒を返り討ちにしたと。マニーはともかく、アレックスまで強盗の汚名を着せられる。確かに片棒はかついだけど、彼女を助けるため命を落として・・。それにマニーはろくでなしとは言え恋人だったし、ジジイに彼女の存在が気づかれないようウソをついてくれたではないか。アレックスの父親は失職するだろうし、シンディの死は闇に葬られる。それにしても彼女の失踪でジジイは疑われなかったのか。一番恨んでるのは・・動機があるのは彼。でも、盲目だから誘拐なんかできるはずないと?でも、警察がそうだったとしても彼女の両親くらいは探偵雇って調べさせそうなもので・・。まあとにかくラストのロッキーを見て、「よかったね」とか「これからは幸せにね」とか思う人いるとは思えない。こんな呪われた金持っていたら待っているのは不幸だけ・・。ところで「ドント・ブリーズ2」の計画があるらしい。だからジジイを生き延びさせたのね。でも作らない方がいいと思うよ。この作品でジジイのことはあらかたわかったわけで、更にパワーアップするにはもう超自然的な存在になるしかない。スーパージジイ、超能力ジジイ、デビルジジイ。でもこの作品がおもしろくて怖いのは、ジジイが人間だからで。人間はここまで異常になれるのかという怖さ。悪霊の仕業でも呪いのせいでもない。人間のやることだからCGとか使って見せる必要もない。これがアナタいつものパッパッ、シュバッ、ヒュードロドロだったら・・なんだ結局はこれかよとなって興味半減。アイデアのよさ、俳優(やワンコ)の演技、見せ方の工夫。これですがな。