奪還 DAKKAN アルカトラズ

奪還 DAKKAN アルカトラズ

スティーヴン・セガールは一時よく黒人のラッパーと組んでいたが、こいつら(←?)と組むとろくな出来にならないね。ただでさえ落ち目なのに・・(おいおい)。DVDのコメンタリーで言っていたけど、当時はヒップホップとアクションの共演は目新しかったんだよな、確かに。私には彼らは口だけ達者な、なかみからっぽのアンチャンにしか見えない。みんな同じに見える。みんな同じに聞こえる。ああいう音楽好きじゃない。もちろん演技もうまくない(ボロクソ)。ノリだけじゃ演技はムリ。今回はサーシャ(セガール)の相棒ニック役ジャルールと囚人トウィッチ役クルプトの二人。人気ラッパーらしいがホントかね。ジャルールはどこかで見たような・・「アサルト13 要塞警察」に出ていたようだ。いつも目をすがめ、口をとんがらせ、鼻の下が長く、首を傾げている。常に体のどこかが傾いていて、まっすぐ立っていられない。・・要するにカッコつけてる。スカしてる。流れてくる音楽ももちろんラップとか、要するにやかまし系。ノリノリだぜ~ってノレないよこちとら。ガンガンいこうぜ~ってガンガンするのは頭だぜ!最初サーシャの正体はよくわからない。45分くらいたってFBIの潜入捜査官だとわかる。いやもちろん冒頭すぐわかるけどさ、見てる方としてはひねり期待するわけよいちおう。今回くらいFBIでもCIAでもなく、悪党だろう・・って。ソニーというボスがいて、ニックはその手下。ジャガーなど高級車を盗んで売り飛ばすのが仕事らしい。サーシャはニックとはもう二年半も組んでる。ある日FBIに踏み込まれるが、8ヶ月して二人はアルカトラズで再会する。サーシャは死んだと思っていたニックは喜ぶが、サーシャには目的があった。彼はどうしてもソニーの悪事の証拠をつかみ、逮捕したい。ニックから情報引き出したい。今のところニックはソニーに不利な証言はいっさいしていない。変に義理堅いところがあるのだ。彼はサーシャのことも信頼している。したがって後でサーシャの正体を知ると、だましていたな・・とショックを受け、怒る。お約束通りの展開だ。1時間10分過ぎくらいというのも時間通り(イチャイチャや告白、思い出話で映画がだれるのはたいていこの時間帯・・統計課の報告より・・ってウソウソ)。サーシャもバカだね、黙ってりゃいいのに。沈黙の告白・・ってあれ?今回は沈黙ついてないぞ。

奪還 DAKKAN アルカトラズ2

・・と言うか、そんなシーンあっても、見ている者にとってはどうでもいいのよね。信頼してたのにぃ・・裏切ったのねぇ・・おらおらこんなとこでもたもたしてないで次行ってみよ~って感じ?話を戻して二人が再会した日は死刑囚レスター(ブルース・ワイツ)の刑の執行日でもあった。立ち会うため彼に判決くだした女判事(リンダ・ソーソン)や記者達も到着する。レスターはなぜか最後の面会人にサーシャを指定してきた。レスターは2億ドル相当の金を盗み、そのとばっちりで四人ほど犠牲者が出た。それで死刑宣告をされたのだが、サーシャにとってはそんなことはどうでもいいことだ。後でわかるが、彼は最愛の妻をソニーの手下によって殺されていた。DVDにはそのシーンが収録されている。手下はサーシャの高級車が狙いだった。サーシャも、自分一人ならともかく妻がそばにいるのだから大人しくしていればよかったのだ。なまじ銃を持ってるから逃げる犯人を撃つ。相手も銃を持っており、妻が撃たれ・・。セガールの顔がいやにふくれているのは、たまりにたまった復讐心のせいだろう(違うって!)。まあこのシーンはカットして正解。奥さん恋しいの女々しいセガールなんぞ見せなくていい。セリフだけで十分。・・とにかくサーシャはソニーをぶち込みたい。その気持ちはわかる。わかるけどニックと組んで二年半、再会するまで8ヶ月・・要するに三年以上捜査していて、いまだに尻尾つかめないってどういうことよ。それと・・奥さんを撃ち殺したやつはどうしたの?あの時なぜFBIが踏み込んできたの?サーシャが負傷したいきさつも(落ち着きのないうつし方のせいで)よくわからん。22分も心臓が停止して、その後生き返ったことになってるけど、そんなに長く停止して生き返ることなんてあるんですか?レスターがサーシャ見初めたのは・・もとい、目にとめたのは、一度死んであの世を見てきたに違いないと思ったから。あの世がどんな感じなのか知りたい。・・ここらへんはいちおう筋が通っている。覚悟はできているから死ぬのは怖くないが、刑を執行されて死ぬのはいやだと思っている。死を他人に決められるのはいやだ(これがラストの伏線)。この後すぐ電気椅子の運命なのに何で今更サーシャに聞くのか。すぐ自分でいやというほど体験できるじゃん・・って気もするけど、知りたい聞きたいという気持ちもよ~くわかるのよ。

奪還 DAKKAN アルカトラズ3

そりゃ誰だって天国行きたいし、前もって知っときたいし。でも前に書いたようにサーシャにはそんなことどうでもいいことだから、ちゃんと答えたようにも見えなくて・・それがちょっと残念だった。光も何も見えなかった、何も覚えていない、ただの無だった・・何でもいいじゃないの。大事なのは正直に話すってこと。自分には全く関係のないことでも、相手にどう接するかによって印象が変わってくる。あの描写だとセガールらしいキャラ期待して見ている我々は肩透かしを食う。もうちょっと親切に・・それともそのシーンカットされたとか?実際はサーシャは妻のことを夢に見ていたようだ。さて、レスターは金の隠し場所は言わずじまい。警察だかFBIだかが10何年も捜し続けたが見つかっていない。彼が処刑されれば金は永久に・・。何で言わなかったのかな・・つかまった頃のレスターは脱走してやるとか思っていたのかな。レスターは小柄でやせた初老の男。凶悪犯だからさぞすごい人相してるだろう体つきしてるだろうと思ったら、ただのそこらにいるような平凡な小男だった・・なんてことがよくあるけど、彼もそう。坊主頭のせいでお坊さんのようにも見える。今回はこのレスター役ワイツ、刑務所所長フエゴ役トニー・プラナ、女判事役ソーソンなど脇役陣が皆しっかりしているのがよかった。囚人役の多くは現地(ドイツ)調達のエキストラ。言葉がわからないから顔つきもぼーっとしている。コメンタリーによればどういうセリフがやり取りされているのか通訳した上で撮影したそうだが、画面で見る限り彼ら何もわかってないのがありあり。もっと重要な役・・例えばリトル・ジョー役の黒人の巨漢にしたって、何か見る時視線を一度下に落としてそれからまた上げて見るとか演技がわざとらしいし、テンポも悪い。こう言っちゃアレだけど本職の役者でもへたな人っているんだよなあ。話を戻して所長はてっきり囚人をいたぶる冷酷な変態かと思ったら職務に忠実な常識人だし、女判事は知的で品がいい。死刑執行を前に刑務所の中では静かで厳粛な時間が流れる。レスターと女判事の間にも何のわだかまりもない(死刑決めたのは陪審員だしね)。ここらへんはとてもよかったと思う。ところが突然外部から謎の一味が侵入する。元々アルカトラズはずっと前に閉鎖され、観光名所か何かになってる。

奪還 DAKKAN アルカトラズ4

しかし犯罪は増え続けている。最新の設備で再び刑務所に・・今は一部だけ稼働中・・そんな設定らしい。コメンタリーによれば、この映画元々は「ザ・ロック」というタイトルだったのだそうな。しかし先に同じタイトルで別のができてしまった。なるほどねえ・・あっちの「ザ・ロック」にくらべるとこっちはすべての点でしょぼい。でも作り手の熱意は感じるな。資金のなさや、同時多発テロによる影響とか障害はいっぱいあったけど、とにかく作り上げたという・・。アルカトラズの外観シーンは「ザ・ロック」の撮影分から使わせてもらったのもあるとか。そういう助け合いの精神もいいね。またまた話を戻して・・一味のリーダーはそのアルカトラズの職員ジョンソン(モリス・チェスナット)。狙いはもちろんレスターの頭の中。金の隠し場所。一味の飛行機が雲の上にぽこっと顔を出すシーンがいい。「ドラキュリア」もそうだったけど、飛行機のチャーター代とか、金かけてるね。泥棒するにも資金が必要なのね。病院で診察受けるには体力必要なのと同じね・・って何のこっちゃ。雲の下は嵐。侵入すると次々に職員殺し、島を占拠する。「沈黙の警報装置」というセリフが笑える。途中までは手際よく進んだが、嵐のせいで脱出用ヘリが墜落・・帰りの足がなくなるなど計画が狂い始める。おまけに中にはセガールが・・いや、サーシャがいる。ジョンソンは女判事の命と引き換えにFBIにヘリを要求。FBI捜査官ウィリアム役は「ヒドゥン」のクローディア・クリスチャン・・ちょっと老けたがなかなかさっそうとしている。チェスナットは珍しく悪役。そこらのラッパーとは違う存在感見せるのはさすが。それにしても一味はなぜ囚人監房のカギを開けたのか。何で閉じ込めたままにしておかないのか。制御室とかむやみに壊したせいで開いてしまったのか。野放しにしたせいで、そのうち武器庫に入り込み、一味と戦い始めることとなる。もっとも最初のうちはカギが開いて外に出ても何をしていいのかわからない。バスケットをして遊んでいるのには呆れ返った。そんな知能しかないのかよ。アルカトラズに連れてこられるのは凶悪犯でも知能犯でもなく、そこらのチンピラらしい。サーシャに指示されてやっと彼らは動き始める。セガールのアクションは手技主体で、見ている人には物足りないかも。今のでーんとして動こうとしない(動けない?)セガールよりはマシだけど。

奪還 DAKKAN アルカトラズ5

その代わり・・と言っては何だが、一味の紅一点6番役ニア・ピープルズがキレのいいアクション見せる。知らない人だが、この人この作品の頃は40過ぎてるはず。なのに「アンダーワールド」のセリーン顔負けのアクション。さすがのセガールもかすんで見える。セガールは193センチ、ニアは157センチ。でも全く小ささを感じさせない。アクションは全部本人がやってるのだそうでホントすばらしい。変なメイクをしているが元々はかわいらしい顔立ち。何と言うか・・彼女を見るだけでこの映画元が取れる。さて・・一味は名前を呼び合わず、1番とか6番とか言っている。フォーティナイナー・ワンとか。何のことかと思ったらコメンタリーで説明していた。カリフォルニアでゴールドラッシュが起き、人々がやってきたのが1849年。それと、レスターが隠した金を狙ってやってきた自分達とを引っかけているのだ、なるほどねえ・・。まあ「M:i:3」みたいに不用心に名前呼び合ったりしないのはプロっぽくてよかったけど、FBIとの交渉にケータイ使ったせいでジョンソンの身元がすぐ割れてしまうのはバツ。ケータイなんて人質や職員皆持ってるはずで、何でそれを使わないのかな。クライマックスに限らず銃撃戦はやたらハデだが、ちっともあたっていない。バズーカを撃ったトウィッチが反動で後ろにふっ飛ぶのはお約束だが笑える。島での戦いからなぜか舞台が空に移り、スカイダイビング。こんなの必要ないじゃん・・と思うが、レスターの行動見せるため無理やり・・。ラストはサーシャがニックに面会に来る。彼の証言のおかげでやっとソニーをつかまえることができたのだ。ニックは元々は死ぬ設定だったが、不評なので変更したらしい。そりゃその方が受けはいいだろうけど、こういうのが出所したとしてまともな仕事につけるかなあ・・。と言うわけで決して出来のいい作品ではないけれど、一部いいムードのところもあり、好意的な評価するつもりでいたら・・ドッカーン、エンドクレジットでやっちまいました。トウィッチと、面会に来た奥さんとの会話・・だんだん下品に、えげつなくなり・・。こういうの他の作品でもあったな。作品の質を一気に落とす余計なしゃべくり。こういうの見て確かに一部の客は喜ぶんだろう。作る方もあいつらバカだからこの程度のギャグで笑ってくれるさ・・とか。バカにされてるんだぞ、気づけよ!怒れよ!