チェーン・リアクション
これを最初に見たのはたぶん「午後のロードショー」だったと思うが、だいぶ前のことなのではっきりしない。どこの古本屋にもノベライズがあって、私も買ったけどほったらかし。DVDを買ったけどやっぱりほったらかし。今回やっと思い立って文庫を読んで、内容忘れないうちに・・と、DVDも見る。テレビを見たのはもちろんキアヌ・リーブス目当て。でも、出来は大したことなかった。わりとちゃんとした人が出ていて、爆発とかお金もかけてそつなく作ってある。でも・・心に残るものがない。まあ見直すまでに時間かかったのはそのせいもある。今回もさほど期待していなかった。本を読んでいて感じるのはありきたり感。水を水素と酸素に分解することによって得られるエネルギー・・もし成功すれば人類にとって画期的。水は無限にあるし、石油と違って環境にもやさしい。問題は、得られるエネルギーよりも分解するのに必要なエネルギーの方が大きいこと。つまり採算が取れないのだ。しかしシカゴ大学の水素エネルギープロジェクトチームは、ついに実験に成功する。資金を提供しているムーア財団のシャノン(モーガン・フリーマン)は反対しているが、リーダーのバークレー教授はデータをネットで無償公開するつもり。みんなが帰った後、チェン(ツィ・マー)と二人で作業しているところへ男達が現われ・・。たまたま戻ってきたエディ(キアヌ)は、バークレーの死体を発見。その後の大爆発からからくも逃れる。FBIが動き出すが、何者かの罠により、エディと物理学者リリー(レイチェル・ワイズ)はテロリストとして追われることに。姿を消したチェンも疑われる。ノベライズにはそれなりにいろいろ書いてあるが、映画はそのほとんどをすっ飛ばしている。これはこういう理由でとか、あることに付随して起きるエピソードなどがみんなカットされている。例えばコリアー(ブライアン・コックス)は、スケープゴートとしてエディを選ぶ。彼が逮捕されそうになったら、ちょうどいいタイミングで殺せるよう・・つまり犯人として死ぬよう・・殺し屋を差し向ける。しかしシャノンは止める。なぜなら実験が成功したのはエディが設計図なしで作った部品のおかげ。装置は爆破してしまったから、エディが死んだら部品は作れず、実験を再現できない。う~ん、と言うかそもそも何で爆破したのかね。後先考えない連中だぜ!
チェーン・リアクション2
我々はエディが部品作るところを見ているから、彼の重要性はわかる。でも、コリアーにはわからない。シャノンがなぜこれこれこういうわけでエディが必要とはっきり言わないのか不思議。エディがホームレスにまじることで警察をやり過ごすというのも、わりとサラッと通り過ぎる。エディは学生になっているが、ノベライズでは機械工。リリーとは立場に違いがあり、彼女がエディに目を止めることはない。しかし彼のおかげで実験が成功したとなると、彼を見る目も違ってくる。しかも何だか知らないうちに二人して罠にはまり、逃げ回ることに。ノベライズでは、かくまってもらおうと思っているマギーが、エディと以前一緒に暮らしたと聞いたリリーが、嫉妬めいた表情をするところがある。ところが会ってみるとマギーは60過ぎの女性で、しかも一緒に暮らしたのは南極基地だったとわかる。映画ではそういうの・・嫉妬も南極もなし。凍えて低体温症になりかけているリリーと一緒に風呂へ入るシーンも、リリーだけに変更。エディだって腰まで氷水に浸かって凍えているはずだが・・。とにかく最後まで清い関係のまま。ラスト・・命拾いしてキスくらいするのかな~と思ったら、それすらもなし。ずいぶん珍しい映画だ。まあとにかく描写も内容もすっ飛ばしているから深みも何もなくなっちゃったんだけど、ではちゃんと書いてあるノベライズは深みがあるかと言うと・・そうでもないのが不思議なところ。本の方はピンチになるけど切り抜け、またピンチになるけど切り抜けのくり返し。逆に言うと、警察もFBIも殺し屋達も二人をつかまえ損ねてばかりということ。あまり何度も続くと現実味がない。そんなに都合よく逃げられるか?また逃げられるなんていったい何をしてるんだ?となる。本を読んでいて気になるのは(エディではなくて)シャノン。敵なのか味方なのか、善人なのか悪人なのか。シャノンは、フリーエネルギーは人類を幸せにするとは思っていない。多くの企業が倒産し、多数の失業者が出る。産油国は抵抗し、果ては戦争が起きるだろう。確かに本で描かれるバークレーはある意味愚かである。彼の行為は一見純粋に見えるが、無責任でもある。莫大な研究資金を提供してもらっていながら、なぜそこまでしてくれるのか考えたことはなかった。でも実験に成功し、シャノンにクギをさされて初めて不安になる。データを全部コピーしておこうとしている時に襲われる。
チェーン・リアクション3
映画ではそれもなし。シャノンとの約束を破り、データを公開しようとする。いったい何を考えているのかね。いやもちろんだからと言って殺されても仕方がないとは言わないけどさ。殺し屋はバークレーを窒息させるのに使ったビニール袋をそのままにしておく。どうせ吹っ飛ぶから関係ないと思ったのか。でもそのせいでエディに殺人だとわかってしまった。コリアーも余計なことばかりしている。シャノンになじられると、自分のせいじゃないおまえのせいだと責任転嫁。悪の大ボスがそれじゃあだめじゃん。最後の方になると、本でのシャノンはほとんど悪人になっちゃってるけど、映画ではモーガン・フリーマンだからそこまで行かない。どこかに善の部分を残しておく。あのままだとエディとリリーは助からなかったけど、シャノンのおかげで少なくとも脱出のいとぐちはつかめた。と言っても、そもそも地下での爆発をセットしたのはエディなんだけど。ルーカスが実験に成功した・・となるくだりはよくわからない。エディがセットしておいたのを、自分の発見のように見せかけたのか。本ではすでに殺されているチェンが、映画では再登場するが、すぐ殺されるってのは見え見え。こういう映画のお約束で、助かるのは主演の(白人の)美男美女カップルだけと決まってる。案の定大した理由もなく殺される。前に見た時の記憶は薄れているものの、本に載ってる写真でのキアヌは長髪で不精ヒゲで厚着で顔はぽっちゃり。メイキング見ると、厳寒の中での大変な撮影だったようだ。長髪も厚着も仕方ないだろう。でも脂肪はなあ・・。誰だって「スピード」でのすっきりと、きりっとしたキアヌの再登場期待していたはず。ぷよんぽよんじゃだめなのよ。しかも・・エディのキャラが今いち。まあ今回見直して思ったほどぶよんぽよんでもないな・・とわかったけど。見慣れてきたせいか?FBIのフォード捜査官がフレッド・ウォード、ドイルがケヴィン・ダン。ニセの情報つかまされ、エディ達には逃げられてばかり。そのうち、彼らは無実なんじゃないか・・となるのもお約束。CIAが何だ、人殺しは許さんとすごむのもお約束。この映画の売りは大爆発。メイキングで言っていたけど、ほんの少しずつ時間をずらして爆発させるのだそうで。そう思って見ていると、なるほどいっぺんではなく少しずつずれて爆発しているな・・とわかる。