禅 ZEN

禅 ZEN

こちらでは少し遅れて公開された。感想は大幅に遅れて書いてま~す。公開一週目、平日午前でお客は七人。こういうタイプの映画(「日蓮」「空海」など)には特撮がつきもの。こういう奇跡が起こったとかこうして悟りを開いたとか。今回も蓮の花とか砂糖でできているみたいで笑っちゃった。自然の描写は美しいけど巨大な月は?だった。地球に落ちてきそう。見ていていろんなアラが目立つ。幼い道元と若くして亡くなった母。でも高橋惠子さんじゃ若いとは言えない。火葬のシーンは何じゃこりゃ。入宋して師を求める青年期の道元。中国でのシーンはちゃんと中国語で通す。普通中国でも日本語で通すけどこの映画はこだわる。役者さんは大変だったろう。でも一方では・・。例えば途中で出会い、道元に影響を与えた老典座役の笹野高史氏。シワが寄り、しなびた顔の笹野氏はこの役にぴったりだ。老典座はすべてを受け入れ迷いがなく満たされている。対する道元は若くぱんぱんに張ったツルツル肌をしている。しかし迷っており満たされていない。この対比はうまいと思う。でもその一方で考えてしまう。日本人が中国人を「演じて」いるのだ。中国語の「セリフ」をしゃべっているのだ。そんな雑念だらけで映画見るなんてよくないことだとわかってる。でもなまじ知っている人だけに。中国人の役には(日本では知られていなくてもいいから)ちゃんと中国人を持ってきて欲しかった。如浄役鄭天庸氏みたいに。ああこの人は中国人だ・・ってすぐわかる。道元がこの如浄を手本に・・と決心するのも納得のりっぱさ。ただ座禅中居眠りをした僧を靴(?)で何度もたたくシーンを入れたのはどうかな。それくらい修行が厳しいのはわかるけど印象は悪い。道元役は中村勘太郎氏。歌舞伎は見たことがなく、「ターン」で知ってる程度。あの頃にくらべるといちだんとたくましさが増した。骨太という形容がぴったりで、一般の俳優にはこういう人はあまりいない。見た目、動作、発声の確かさ、余計なもののない単純さ、清らかさ。この上ないはまり役だと思う。映画そのものはぐいぐい迫ってくるものがなく、流れていくよう。それでいてクライマックスの死の場面はやたら長く、「いつ死ぬの?」状態。そりゃ一番大事なシーンなのはわかるけど。ラストの少女の手のシーンには心がじわっとあったかくなった。とてもいいシーン。アラはあるけど心をこめて誠実に作られた映画だと思う。