死にたいほどの夜

死にたいほどの夜

ついでにT・ジェーン君の作品をもう一つ。これってキアヌ・リーブス主演かと思ってたら違うのね。でもビデオのカバーはキアヌのことしか書いてなくて、ほとんど主役扱い。この映画の評価はほめているのとけなしているのと両方だが、私にはよくわからん。クレア・フォラーニ扮するジョーンが自殺をはかった理由が不明なままなので、映画全体があいまいな感じ。クレアは美人で理知的、冷静なタイプなので何が理由かもわからずに自殺をはかり、二ヶ月ほどたってまた現われて、主人公とよりを戻そうとする女性には見えない。別の女優がこの役をやっていればもっと説得力があったかも。まあ自殺の原因がはっきりしないというのは別に珍しいことではない。原因があるのなら解決方法もあるが、原因がないってことは解決方法もないってことよ。ただ映画だとそれでは困るわけ。あいまいすぎて。さてトーマスだが19歳役はないんじゃない?グレッチェン・モルが16~17歳役でこれもキツイ。キアヌだけが年相応の役。ぶよぶよしてたるんでいて友達の一生をだいなしにする男。不健康でしつこくてトイレでゲロを吐く文字通りの汚れ役。私が彼をすばらしいと思ったのは「リトル・ブッダ」で木の下に座って瞑想するシーンだけ。あのシーンでのこの世の者とは思われないような美しさは彼でなければ出せないもの。それがこんなにぶよぶよになっちゃって・・。主人公は決して悪人ではないのに、どんどん人生が横道にそれていってしまう運の悪い男。見ていてああすればいいのにこうすればいいのにと歯がゆい。でも考えてみれば彼はまだたったの19歳。悪友に引き止められてぐずぐずと酒場にいるのも、ちょっとだけのつもりのオンナのコとの電話が長引いてしまうのもそっちの方が気持ちいいから。ジョーンが待っているというのにオンナのコの甘い言葉にその場に釘づけ。まだしっかり固まっていない自己はあっちへふらふらこっちへふらふら。タイヤ工場で一緒に働いているおっさんの人生への金言も素直に聞くけど心の中には根づかない。ビールとタバコとビリヤードとオンナのコがすべて。見ていて楽しい映画ではないが、若さの持つあらゆる面が見られる映画だと思う。まだドラッグがない時代だからさほど陰鬱な感じにもならない。さてトーマスにはGWに「ドリームキャッチャー」という映画で会えそうだ。S・キング原作だから大きな館でやってくれるだろうし。