スーパー・マグナム

スーパー・マグナム

チャールズ・ブロンソンの主演映画を見るなんて、ずいぶん久しぶりな気がする。彼はたいてい何人かの中の一人。1985年と言うと、すでに60をいくつか過ぎてる。でもまだ何とか動けるという段階。監督はマイケル・ウィナー、音楽担当は・・おやまあジミー・ペイジだ。そりゃ私だって名前や顔くらいは知ってますよ。三大ロック・ギタリストの一人だもん。でも曲はじぇんじぇん知りましぇん。デス・ウィッシュシリーズとか言って、全部で五作あるらしい。本作は「狼よさらば」「ロサンゼルス」に続く三作目。でもどれも見たことなし。長距離バスでニューヨークに着いたばかりのポール(ブロンソン)。友人チャーリーを訪ねてきたのだが、彼は殺され、ポールは犯人扱い。彼はあんまり警官には抵抗しない。弁護士キャサリンは告訴すべきとやきもきするが、無駄なことはしないのだ。シュライカー警視は彼の前歴を知っていて、保釈と引き換えにウジ虫退治を持ちかける。自分は立場上行動できないが、ポールなら自由に動ける。こういうタイプは、表では取り締まれ~逮捕しろ~と言いつつ、裏ではワルと手を組んでいるのが普通。その気になれば銃や麻薬で大儲けできる。命をすり減らし、悪党との果てしないいたちごっこに明け暮れるなんて、バカのすることだ。だから彼もてっきり・・と思ったら、意外なことにまともで。クライマックスではポールと並んで敵と撃ち合ってるし、お互い相手の命救うしで・・男の友情が熱いぜ!!ここらへんはちょっと(いい意味で)はずされた。チャーリーの住んでいるアパートのあるベルモント地区をシマにしているのが、フレーカーをボスとするギャング。最初はてっきり再開発が絡んでいるのだと・・。古い街並みを壊して新しく蘇らせたいが、老人連中や低所得者連中は立ち退きに応じない。そこでギャングを使ってあの手この手で嫌がらせ。強盗にレイプ、果ては殺人・・手段を選ばず暴れ回る。バックアップする開発業者や政治家などの黒幕。そしたら・・違った。ギャングどもはただ金が欲しいだけ。自分より弱いから老人を襲うだけ。裏には何もありゃしませんでしたとさ。まあとにかくまさにダニ、ゴキブリ、ウジ虫。前の二作を見ていないので、ポールの背景はよくわからないが、あんまりくよくよしても始まらないというふうに見える。

スーパー・マグナム2

死ぬ間際のチャーリーに頼まれたから、住民を守る。ウジ虫退治に乗り出す。怒りにふるえたり、悲しみにうちひしがれるという段階はすでに卒業し、わりとたんたんと行動する。車を買い、ニコンを肩からぶら下げる。わざと目に付くようにする。寄ってきたのをやっつける。私書箱を利用して強力な武器を取り寄せる。ブロンソンだからいいけど(←?)、今だったらテロリストだ。おまけにこっちにはその気もないのに美女が寄ってくる。そりゃあ・・ヒゲの初老男やら結婚うん十年の老夫婦、クスリでハイになってるイカレギャング・・そんなのしか出てこないから、どうしても殺風景になる。豊かな金髪波打たせたグレースフルな美女・・デボラ・ラフィンでも出してこなきゃやってらんない。などと作り手が考えたかどうかは不明だが、ブロンソンとラフィンじゃ30歳も違う。ちょいとムリがあるんだけど、ラブシーンなどさらりと通り過ぎてくれるので、余計なこと考えずにすむ。ただその後さらりと退場してしまったのにはびっくり。いちおうヒロインなのに・・。ポールもあっさりあきらめるし・・やっぱ無駄なことはしないと・・。気違い集団を相手にしているって時に、美女とフォーリンラブってのがそもそも間違い。と言うか、ポールの方にはさほど差し迫ったものはなくて。キャサリンの方が、現実の醜さに嫌気がさし、自分の無力さを痛感し。で、仕事もどうでもよくなって、この町を離れようと考え始めた。でも離れるにしても一人じゃ嫌で・・。ポールと一緒に再出発したい。辛い過去のせいで、恋愛には消極的になっている彼だけど、私の魅力で変えさせてみせる!のこのこ姿現わしたせいでフレーカー達に目を付けられ、命を奪われ・・。運が悪いと言うか、注意が足りないと言うか。何となく彼女の一人相撲っぽいのが気の毒でもある。他にゴンザレスという青年の、若くて美しい妻マリアも犠牲になる。出てきた時からこりゃ犠牲になるなって見え見えの美女。引越しできる連中はすでにみんないなくなった。残っている連中には、それなりの事情や意地がある。でも・・命のこと考えたら、無理してでも引越すべきだったかも。死んでしまったのでは何にもならない。あれやこれやあって、クライマックスは市街戦。フレーカーは他のグループにも声をかけ、人数をかき集めるし、ポールはマグナムやらマシンガンで撃ちまくる。

スーパー・マグナム3

それまでにも何人か撃ち殺し、シュライカーが検視局が満杯だ少し休めと言いに来るほど。銃撃戦が始まると、普段はおびえて縮こまっている住民達が、ちゃんと銃を持ってて反撃する。誰かきっかけを作ってくれる者が必要だったと言うことか。チャーリーの友人ベネットが、戦時中のマシンガン持ち出すが、いざという時に故障。そのせいで連中にひどい目に会わされ、入院するが、見舞いに来たポールに「まだ別のがある・・」。で、そっちの方はりっぱに機能しましたとさ。大がかりな銃撃戦、爆破は、住民の方にも大きな被害を出す。命を落とす者、建物を吹っ飛ばされる者。警官も多数撃たれるが、何で防弾チョッキ着ていないのか。フレーカーがやられると、あとは烏合の衆だから、事態は沈静化に向かう。・・と言うか、初めからフレーカー狙えばいいのに。憎たらしかったシュライカーが妙にいいやつになって。警察の手が回る前にポールを逃がす。来た時同様二つの大トランクを提げ、ポールはどこへともなく去っていく。シュレイカー役エド・ローターはどこかで見た顔だ。「青春の輝き」でブレンの父親やってた人かな。ラフィンは2012年に白血病か何かで59歳で亡くなったようだ。フレーカー役ギャヴァン・オハーリヒーは、名前でわかるがダン・オハーリヒーの息子。私初めはウィリアム・アザートンかと思ってた。「コブラ」などのブライアン・トンプソンにもよく似ている。テレビのニュースキャスター役でちらりとうつるのがリー・パターソンらしい。「サーフサイド6」に出ていた人だが、古すぎて誰も知らないか。私も見たことなし。他にロン・ヘイズの名前があるが、エンドクレジットではポリス関係、ギャング関係などに分けて出てきて、彼はギャング関係になってる。でもギャングってみんな若者で・・。ヘイズと言えば「ジャングル・パトロール」に「カウボーイ野郎」。こちらも古すぎて見たかどうかも記憶にございませんが、85年なら56歳くらいだから、ギャングのはずないし・・。役名がルーテナント・・警部補の方か、副官の方か。いやまあ・・どうでもいいことなんですけどね、何か気になる。ベネット役がマーティン・バルサム。スミズミまで効く!ゴキブリにバルサン♪・・ここではちょっと太り気味で、アーネスト・ボーグナイン風味。

スーパー・マグナム4

ある人が指摘している通り、1時間21分くらいのところで、画面にカメラマンなどのカゲがばっちりうつり込んでいる。全体的にムチャクチャな映画で、悪党とは言え、若者達がばんばん始末され、文字通りゴキブリ扱い。映画の観客は若者が多いと思うけど、映画館ではどんな雰囲気だったのかね。だって普通は若者が正義の立場、応援すべき共感すべき存在のはず。中年以上の客には受けるかも。俺達は第二次大戦に朝鮮戦争と、二つの戦争経験している。今こうやってのうのうと生きてられるのも、我々が苦労したから、犠牲になったおかげだ。それなのにあいつらときたら働きもせんと。車やバイクを乗り回し、女や老人を襲い、盗みはするわ殺しはするわのやりたい放題。元々頭空っぽなところへきて、アルコールやクスリでますますいかれ、ぶっ飛ぶ。こんなやつら退治するに限る。害虫だから人権もへったくれもなし。駆除しろ!ブロンソンに拍手!中年老年の星!まあ・・こういう感じだったんじゃないの?あまりにも簡単に殺し、しかも何も感じていなさそうなポールには違和感感じるけど、ブロンソン映画だから堅いこと言いっこなし。気軽に見てりゃいいんだろう。彼がここまで来るには、それなりのもの乗り越えてきているはず。殺すからには、自分もいつそうなってもいいように覚悟決めてる。ただ、防弾チョッキ着用するなど、それなりのことはする。無駄死にはしない。あとよかったのは、老夫婦に食事に招かれた時など、きちんとした礼儀正しいふるまいができること。ただの単純で粗暴な男ではないのだ。あるサイトでは、ポールのことを「ダイ・ハード」のマクレーン刑事以上の運の悪い男と形容しているが、彼とマクレーンの決定的な違いは、泣き言を言わないこと。彼は黙っている時は、本当に黙っている。ラスト近くになると、シュライカーとは目で会話。俺の目を見ろ何にも言うな、ウ~ン、マンダムの世界。・・てなわけで何でこんなに長くなったんだろう。一回で終わると思っていたのに。医師・・インターンか・・が二人出てくる。マリアを担当した方も渋いが、ベネットをタフだと感心する若い方の男性が気になる。ちょっと変わった顔つきで、私はこういうタイプに弱い。こういうちょっとしたところがあると、それでもう見てよかった、ダビングして保存しようという気になる。