ぺネロープが語るトレーシー兄弟

ここでちょっと一休み。自称「口の堅い」ペネロープさんが、五兄弟について語ります。・・ジェフの長男スコットは父親の冒険心を受けついでいるの。さっそうとした美貌ももちろんね。スコットは常に現場に一番乗りするけど、それが彼の好みなの!早口だし頭の回転は速いしすばやく決断を下す大胆さもあるし、自分の考えに忠実。それと彼には話のつぎほがなくなるなんてことはなくて、すごくおもしろい話し相手でもあるの。スコットと一緒にいるとウイットに富んだジョークが次々にわいてくるのが私にもわかる。スコットはエールの他にオックスフォードで教育を受けたけど、その間に彼はイギリス風に磨かれたんだと思う。オックスフォードの舞踏会に出席した時、このハンサムで自信たっぷりのアメリカ人学生は誰かしら・・って不思議に思ったわ。いつか彼のそばで働く日が来るなんて夢にも思わなかった!スコットは長男として、いつか国際救助隊の活動が自分の肩にかかってくるだろうということはわかっていた。それとジェフが不在の時は指揮を取るのが自分だってことも。こんな若者が背負うには重すぎる責任だけど、でも彼ならその仕事に耐えられるわ。いつかスコットが申しぶんのない女性を見つけるよう願っているわ。彼女は彼を支えてくれる元気のいい女性でなければだめよ。でもきっと見つかるわ!スコットは生まれながらのリーダーで、しばしば救助の指揮を取る。でも彼には尊大なところはなくて、チームの他の人と一緒に汚れ仕事もするし、時にはサンダーバード5号での任務にもつく。実際彼はどんな男の子も女の子もいたらいいなあと思うようなお兄さんなんでしょうね。

スコットが若い頃のジェフに生き写しなら、バージルの方は母親の洗練された美貌を受けついでいる。彼女の多くの資質と一緒にね。トレーシー夫人は美しくて感受性の豊かな女性で、ピアノ演奏家として将来を嘱望されていたけどあきらめたの。彼女の熱愛する夫と子供達の世話をするためにね。おばあちゃまが私に話してくれたわ。彼女に似てバージルは思慮深くて創造的な性格。すぐれたピアニストでもあるわ。私はいつもバージルと音楽界で起こっていることを話すようにしている。彼の意見はとっても信頼できるから。バージルはまた画家としても相当なもので、私の家族が長年にわたって収集した作品を楽しむためにクレイトン・ワード邸を訪れるのがとても好きなの。彼は感受性豊かには違いないけれど、他の兄弟同様大胆で勇敢でもある。サンダーバード2号のパイロットとしてどの救助でも重要な役割を果たすし、彼の度胸のよさ、何でもこなす器用さは疑いようがないわね。彼って本当にルネッサンス風の男性よね。聡明で高潔で、栄光にあふれた人。彼のハートを射止めたラッキーレディにとって、バージルはすばらしい夫となることでしょうね。

ああアラン、ジョークのかたまりみたいな人。もし自分が彼のいたずらの犠牲者だって気がついたとしても、あなたはきっと微笑んでしまうに違いないわ。国際救助隊以前、彼はフォーミュラーワンのレーサーとして有名だった。向こう見ずな運転だけでなく、ブロンドでベビーフェイスの美男としてもね。大勢の女性の追っかけファンがいたものよ。この頃では彼はサンダーバード3号で宇宙空間に飛び出すことにスリルを感じているみたい。レースでいつも見せていたような度胸のよさを、今では救助活動で見せているってわけ。私時々今のアランはフォーミュラーワンで感じていたような魅力や興奮を取り逃がしているんじゃないかと思ってしまう。だから機会があるといつでも彼をロンドンへ招待して最新流行のアナ場へ連れていってあげるの。クラブで一晩遊び明かすことほど好きなことは彼にはないのよ。何て元気のいい21歳じゃないこと?でもアランがトレーシー島から離れてふらふら迷い出ないようにしているものがあって、それがミンミン・キラノ。もちろん彼らは私達が二人の仲に気がついていないと思っている。でも二人の若い恋人達の間でかわされる恋の火花に気がつかない人はいないわよ。盲目でもない限りね。と言うことで、アランの頭は時にはロンドンの美女<自分のことらしい>の方に向いているかもしれないわ。でも彼のハートは家にいる本当の恋人に常に忠実なの。

ゴードンはアランのジョークを真っ先に理解できる人。時々彼らは非常に仲良く一緒になって何かをやっているわ。彼のにぎやかな性格は彼をとてもすてきな人に見せているけど、元気さの裏のより深い部分には消えることのない傷があると思う。たぶんそれはスピードボートの衝突事故で危うく死ぬところを助かったということだと思うけど。それでもゴードンがいつでも一座の人気者だということは間違いないわ。もしホットに盛り上がりたいんなら彼がいつでも力を貸してくれるわ。

ジョンはトレーシー兄弟の中では一番大人しい人。遠く離れた宇宙を運行するサンダーバード5号で大部分の時を過ごすからというわけでもないんでしょうけど。ジョンは本当に知的で行動の人と言うよりは思索の人。体つきも他の兄弟よりほっそりしているし、母親を思い出させるようなとほうもないしなやかさと、並はずれた優雅さ、落ち着きがある。ジョンはサンダーバード5号での瞑想的な生活を愛しているけれど、時には兄弟達のように行動を伴う役割を演じてみたいとあこがれている。でももちろん世界中からの緊急コールのモニターとして、ジョンほど国際救助隊の中で重要な役割を果たしている人はいないのだけれどね。隠された深い内面を持つ神秘の人。ジョンは本当に難しい人で、私のいろんな技をもってしても彼の表面下にあるものが探り出せないの!でも彼は努力のしがいのある人よ。彼って知り始めると本当に魅力的な男性だと思うわ。

・・以上ペネロープさんの談話でした。ただし通訳の誤訳(捏造とも言う)があると思われますので頭から信じ込まないように。・・莫大な財産を持ち、一人で生きている強い女性だけあって、ペネロープの観察眼はなかなか鋭い。まあスコットの男っぷりのよさや、バージルの芸術への造詣の深さに多少くらくらしているところなきにしもあらず・・ですが。二人の幸せな結婚を願いつつも自分をその女性になぞらえているところがある。二人に、いえジェフも含めて三人にプロポーズされたらどうしよう・・なんて考えているんでしょうな、きっと。その点アランに対しては余裕たっぷり。彼女にあこがれているアランの存在は、彼女の自尊心をほどよくくすぐることでしょう。ゴードンに関しては誰もが見落としている彼の心の傷を正確に見抜いていてさすが。トレーシー家に欠けているものは母親の行き届いた愛情だけれど、母親なら決して見逃さないであろうゴードンの内面を、成熟した女性であるペネロープは理解した上で接している。そんな彼女もジョンにはお手上げ。家族がいない孤独をいやというほど感じているはずなのに、家族がいても孤独の影を宿すジョンにはどう接していいかわからない。持てあましながらもそんなところが神秘的だし魅力的なのよ・・と負け惜しみを言っております。彼女のあふれる才気や社交的な性格がそもそもジョンとは異質なものなのだ。無理に探ろうとするより全部を受け入れた方がいいと思うよ。