26 海上ステーションの危機

26話の原題を直訳すると「大西洋の地獄」である。「太平洋の地獄」という映画があったよな、昔。日本だと「海上ステーションの危機」という題がついているけど、ホントは違うのよー。正しくは「はじめてのおつかい」・・じゃない「はじめてのおるすばん」なのー。信じられます?ジェフが島を離れて兄弟だけでおるすばんするの初めてなんだってー。あんたらいったいいくつなのよ。もっともジェフは前に航空ショーか何か見に行ってるよな。モノレールにも乗ったし。まあ指揮権を完全に誰かに預けたのは初めてという意味なんだろうな。トレーシー家の場合、子供達が親離れできないのではなくて、ジェフが子離れできないでいる。彼は宇宙飛行士だったから、若い頃は訓練やら何やらでほとんど家にいなかった。たまに家に帰ると息子の数が増えてるわけ。おや?いつの間にこんなに増えたんだろう・・って、息子はバクテリアか、おい。製造責任者はおまえだろーが。いちいち名前考えるの面倒くさいから、宇宙飛行士の中からてきとーに選んでつけとけって言ったのアンタじゃん。でもルシルは一言も文句を言わず、しっかり留守宅を守り、子供達をいつくしみ、そして疲れ果てて死んでしまったわけよ。そうなるとジェフは今更のように仕事人間であった自分を反省し(時すでに遅し・・だけどね)、よしこれからはちゃんと息子達の面倒を見るぞ(えーと、どの子が長男でどの子が次男だったっけ、その前に最終的には何人いるんだ?・・番号つけとこ)と引退し、かねてからの念願であった国際救助隊の準備にかかり・・で、いつの間にかまたモーレツ仕事人間になっていたってわけよ。

だからぺネロープからのお誘いがあった時には断固断るつもりでいたわけ。「緊急連絡が来るかもしれない」ってね。でもスコット達にすれば、たまには息抜きしたいわけよ。救助活動だって1年半もやって慣れちゃったし、ボク達だけでもやれるもんねー。「おまえ達、私を邪魔者扱いかね」ハイ、当たりー、自分でもわかってるじゃん、ケムたがられているってこと。けしかけるスコットとバージル。話をそらすアラン、「これからミンミンとテニスをいたしますので」と軽井沢モード。ジェフをしかとするゴードンとブレインズ。一番しゃべりそうなゴードンが一言もしゃべらないし、ジェフの方を見ようともしない。謎の円盤UFO・・じゃなくて、謎の四男GDN、いいわあ。ジェフは休暇を取ることをジョンにまで連絡する。もしかしたら世界のどこかで何か起こってるかも・・。そうすれば行かなくてすむかも・・。みんなして私に休みを取れと言うのだ。「ああそれはいいですね(私には「そりゃ」と聞こえるぞ)」他の息子達には文句をたれたジェフだが、ジョンにそう言われた時にはぐっと言葉に詰まってしまう。なぜかって?ジョンはほとんどいつも家族と離れて5号にいる。ジェフが島にへばりついていようがいまいが彼には関係ない。他の四人みたいに「少しは休みを取ってボク達に息抜きさせてくれないかなー」なんて思う必要はない。彼はいつだってひとりぼっちなのだから。彼が「今のままじゃ体が持ちませんよ」と言ったとしたら、それは彼がジェフのことを思って心から言っているのである。ジェフにもそれがわかるから「うんまあね・・ゴニョゴニョ」と言うしかないのだ。

ジェフは元々農家の生まれのはずだが、ぺネロープに「農場でのんびり・・」なんて言われても食指が動かないようだ。冒頭ぺネロープが道路工事の起工式に招かれ、山を爆破するんだけれど、そういうのはストーリーとは無関係。海での災害のはずなのに山を出して、視聴者をめんくらわせようという魂胆かな。こういうどうでもいいのが入っていて、重要なシーン(つまりトレーシー兄弟が出ているシーン)がカットされるわけよ。許せん!ぺネロープからの連絡があった時、バージルは絵を描いている。応答するジェフの後ろにバージルがいるのだが、ずっと背を向けている。ぺネロープから連絡が入ったら何だろう・・って振り向くでしょ、普通は。でもずーっと絵を描いているってことは、彼はそんなにぺネロープに気があるってわけでもないのかな・・なんちゃって。彼のシャツは絵の具でベタベタ。子供じゃあるまいし普通はそんなに汚さないぞ。まるでパレット代わりじゃん。さてとーパパが留守の間は誰が指揮を取るのかなー、もちろんスコットだよ長男なんだから。そこへ割って入るジェフ。息子達が早くもルンルン気分でいるのを感じ取って機嫌が悪くなる。私がいるうちは私が決めるー、私が命令するー。はいはいそういうのを最後のあがきと言うのよ。見苦しい、私が私がって何で子供達に決めさせないのさ。アンタが口出さなくたって最終的にはスコットが指揮を取るに決まってるでしょーが。すったもんだのあげく、やっとこさ出発したジェフ。「中止するかと思ったよ」スコット達はノビノビしている。「僕らだけ残すのは初めてだもの」・・このバージルの言葉が決定的証拠ですよ、はじめてのおるすばん!でもカットされているのよね、ここ。カットするなー(お願い)。

スコットは早速ジョンを呼び出す。「どうしたスコットなぜ呼ぶ(このセリフ好き!)」だって他にすることないんだもーん。今のところ変わったことと言えば大西洋で国連海軍が演習していることくらいだ。しかし例によって新しい試み→失敗→災害を引き起こす・・となる。方程式みたいなものだ。原潜から降ろされた誘導魚雷は、原潜とつながっていないのに一緒に動く。クジラの子供じゃあるまいし、つながってないのに何で一緒に動くのかな。石油採掘用の海上ステーションの所長フランクは渋い顔だ。海軍のくそったれ、余計なことしやがって、何も起こらなけりゃいいが・・。一方ジェフはオーストラリアに着く。ぺネロープと会っても島のことが気になる。連絡を入れたくてうずうずしている。普通はぺネロープを見てうずうずするんじゃないの?「きっと皆寝ています」「スコットは起きてる」・・その通り、他のみんなは寝たけれどスコットは起きていた。責任感が強いからじゃなくて融通がきかないだけの話。ここまでは起きてるけどここから先は寝る。何か起きたらその時はその時だ・・という線引きができない。だからいつまでも起きてる。

さてここからは5号の様子・・国連海軍の誘導魚雷の誤爆で津波が起こった時には、海上ステーションに影響が出るんじゃないかと心配したけれど、おさまったようで本当によかった。今何時かな・・午前0時55分か・・もう真夜中だ。5号の時計は島の時間に合わせてある。一日中機械の音がしてるし、世界中の通信が聞こえるから昼も夜もあんまり関係ないって感じなんだけど、それでも時計を見て深夜だとわかるととたんに疲れを感じちゃう。立っているのも辛くて(今日は忙しかったからね)、だから椅子に掛けて寝る前のチェックをしているところさ。一日のうちで一番孤独を感じるのがこの時間帯なんだ。眠ってしまえば感じないですむけど・・。おや、島からの送信だ。きっとスコットだろう。やあ、スコット、静かで気が抜けちゃうよ・・スコットが用事もないのに何度も連絡してきても、僕はちっとも苦にならないよ。誰かと話すことがうれしいんだ。5号勤務も長いけど、最初の頃は僕も用もないのにやたらと島を呼び出していたよ。しまいにはパパに怒られたよ。「用事もないのに呼び出すな!」ってね。でも宇宙空間に一人というのは辛いものだよ。星だって一つで輝いているわけじゃない、仲間がたくさんいるじゃないか。それなのになぜ僕だけこんなところで一人でいるのだろう・・って悲しくなってくるんだ。宇宙飛行士失格だよね、こんなことでは。5号の仕事が軌道に乗ると、今度はアランと交代で勤務するようになったけど、アランは甘えん坊でさびしがりやだから、家に帰れるのがうれしい反面、彼が気の毒になってしまうんだ。だからパパに内緒でミンミンと無線通話できるよう細工をしたよ。通信の傍受についてはいろいろ誤解されているようだけど、5号の場合救難信号だけを選択して受信するようにしてある。そうしないと軍の機密とかそういうのまで受信してしまうからね。・・今夜はスコットも代理をまかされて落ち着かないんだろうな。眠ることもできなくて・・でも他にすることもないから僕に連絡してくるんだ。よくわかるんだ。・・でも、僕もそろそろ寝よう。何か軽い読み物でも持って・・。ここではぐっすり眠るためにナイトキャップを・・というわけにもいかないしね。じゃ、おやすみなさい。

・・そのジョンがたたき起こされたのは午前2時35分でした。トレーシー島がその時間帯だとすると、オーストラリアは同じ日の夜になるのかな。夜と言ってもまだ寝るには早い時刻・・だからぺネロープ達はくつろいで音楽を聞いている。そして大西洋は同じ日の午前中。三地点のうちではオーストラリアが一番時計が進んでいることになる。それにしても乱れ髪のジョン、はれぼったい顔つきのジョン、きちんとガウンを着ているジョン、5号へ飛んで行ってお世話したくなるジョン。でもジョンは誰かに世話される必要なんか毛筋ほども感じていないのよ。ある意味五人の中では一番自立しているの。王子様ジョンはいつも空の彼方・・関係ないけど「ジョン・ジョン・イン・ザ・スカイ」っていう映画あったよな。さてジョンにたたき起こされたスコット。寄り目になってるぞー。すぐに姿を現わすブレインズ。だからーブレインズは絶対夜中に起きてそこらへんウロウロしているんだってば。前にも書いたけどさ、午後1時に夕食なんておかしいよー。スコットが直面したのは出動するかどうかの決断。こういう時のブレインズは「(判断するのは)君の仕事なんだから」って冷たいよなあ。これがバージルだったら「出動した方がいいと思うな」と、それとなく決断をうながしてくれると思う。スコットが出動した方がいいんじゃないかと考えているのをちゃんと察してくれる。でもブレインズだと情報不足で明確な答が出せない時はそこで終わりにしてしまう。コンピューターと同じだよな。「情報不足、答えられません」でぴしゃり。相手が何を考えているかとか、何を言って欲しいかなんて正解を出すこととは無関係だからね。スコットの「パパだったらどうするかな・・」男だろ!自分で判断しなさいよ。判断したら実行しなさいよ。出動して正解だったかどうかなんて、現場を見るまでわからない。神様じゃないんだから。もし出動する必要がなかったとしても、しなかったことを後で悔やむよりマシでしょ。起きてきたゴードンとバージルはガウン姿。ゴードンは2号に乗ってもまだガウン姿だ。ここまで一言もセリフなし。無口なゴードン。彼らがちゃんとガウンのヒモまでしめているのは、そうしないとあやつりにくいからかな。「サンダーバード」には服をだらしなく引っかけた・・というシーンはほとんどないもんね。バージルもゴードンもすべすべお肌だぞ。スコットがすでにむさくるしくなり始めているってのに。ちなみに彼らはジェフがいなくなったのを記念して、寝る前には枕投げをしていておばあちゃんに怒られたのでした(ウソです)。

今回アランは1号を担当する。現場で指揮を取るのも初めて(おそらく)だけど、バージルもいるし何とかなるものだ。手際よく仕事をかたづけて、気分よく島に戻る。ところがそこへジェフの連絡が・・。さんざん怒られてさすがのスコットも「まいったな」、吹き替えだと「どうだいあのけんまく」と呆れ返った様子。バージルの「困ったもんだ、お気に召さないか」、吹き替えだと「ああ、すごいね」、この二人のやり取りがいい。特にバージルの「お気に召さないか」が好き。そうなのよ、ジェフは子供達だけでうまくことを運ぶのはお気に召さないのだ。置いてけぼりにされるのはいやなのだ。ジェフだってニュースで聞いた火柱のことが気になって一晩中眠れなかったのだ。出動して正解だったことは心の片隅で認めている。それでもスコットに当たってしまったのは、自分がその場にいられなかったからだ。つまりやつ当たりである。出動しなければしないでスコットはやっぱり怒られたと思う。長男は辛いよ。バージルやゴードンだったら怒られたって聞き流しちゃう。でもスコットはだめ。再び火柱が上がって、明らかに前より状況が悪化しているのに「とにかくこれは救助隊の仕事じゃないね」と要請を断ってしまう。「この2時間で人が変わったな!」とゴードン。あのねぇ・・何でこんな重要なシーン、カットするんですか。ゴードンのキツーイ皮肉がこのエピソードでも出ているのよ。「2時間前にパパに叱責されたからね」というスコットの言葉が情けない。アンタパパの言葉真摯に受け止めすぎ。他のエピソードでもいろいろカッコ悪いところ見せるスコットだけれど、一番ひどいのがこのシーンだと思う。ちょっとしかられると信念がぐらつくと言うか・・、それより彼には元々信念てあるのかしら。いいとか悪いとかではなくて、彼にはそういうところがあるという現実。「サンダーバード」って、親に反抗してまで○○するっていうのがないよなー。このエピソードなんか、留守をまかされたことによってスコットが一皮むけた大人の男に成長するという描き方もできたはず。最後の方ではよくやったとほめられているけど、スコット自身は別に成長していないのよね。やっぱりパパの代わりは僕にはムリだ・・みたいな感じで終わっちゃう。どちらかと言うとすばらしいメカとか特撮に比重がかかっていて、精神的成長とかそういうのは前面には出してない。家族みんなで笑ってメデタシメデタシ・・でしめくくる。物足りないと言えば物足りないんだけど、でもそのぶんいろいろ妄想したりしてね。ホントはスコットどう考えているのかしら・・とか何とかさ。それにしてもゴードンの一言、キツイです。

さてストーリーの後半について書く前に、もう一度冒頭シーンに戻ってみる。よーく見るといろんな発見があるのだ。起工式でのぺネロープ、ヘルメットがピンクである。ごていねいに「P」の字まで入っている。きっと特注品なのだろう。まわりは当然のことながら男ばっか。しかし彼らのかぶっているヘルメット、どう見たってゼリーの型だよな。ぺネロープをジープで送ってきたハリー卿、メガネもヘルメットもなしである。しかし走り去るFAB1を見送るミニチュアのハリー卿は黄色いヘルメットをかぶっているし、どうやらメガネもかけているような・・。ミニチュアながらちゃんとFAB1を目で追って、そちらに顔を回しているのが偉い!絵を描いているバージル、右手に絵筆を持っている。「オートレーサー」でアランを描いている時は左手に持っていた。たぶんどちらでも描けるのだろう。あるファンが書いているところによると、ジョンとゴードンは左利きらしい。ジョンの方はまだ確認していないが、ゴードンは確かに「ピラミッドの怪」では鉛筆だかペンだかを左手に持っている。7話ではビリヤードをするのにスコットとバージルは右手に、ゴードンは左手にキューを持っている。ただゴードンは銃を撃つ時には右手に持ってますよん。撮影する人やあやつる人の都合で、右利きにされたり左利きにされたりしているんじゃないの?という気もするが・・。農場で羊を数えているぺネロープの唇には口紅の塗り残しがある。羊の数をカウントする機械のけた数の矛盾(5けたしかない機械で20万頭を数えようとしている)は、よく知られたポカだ。パーカーがうるさく音楽を鳴らすのをたしなめるシーンではぺネロープのそばに置かれた飲み物に注目。何とストローまでピンクなのだ。てってー的にピンクにこだわっているのね。海底で最初の火柱が上がった時には、近くを泳いでいた魚がちゃんと逃げる。ジョンが起き上がった後(彼は目を覚ましてから起き上がるのではなくて、体を起こしながら目を開けている→どうしようもなくかわいい!)、画面はフランクの声が流れる機械をうつす。だがよく見ると画面の左側、ジョンの居室があるところで光がちらちらとせわしなく動く。つまりジョンはあわてて起き上がり、急いでガウンを着ているのだ。その行動で室内の明かりがさえぎられ、こちらからはちらちらとまたたいて見えるってわけ。光で見せる細かい描写・・感心してしまう。一回目の2号の出動シーンは、午前2時半過ぎにスコットが起こされたとして午前3時頃になると思われる。しかし昼間と同じ明るさだ。フィルムの使い回しだから当然なのだが、本当ならまだまわりはうす暗くて、格納庫の明かりが外へもれ出している・・っていうふうなシーンになるのだろうな。暁の出動シーンなんて想像しただけでもロマンチックー!最初の救助が終わってホッと一息ついてるシーン。ゴードンの前にあるのはどう見たってワイングラスだよな。アランが手にしているのもお酒の入ったグラスに見える。一仕事終わったし、軽く一杯やってこれから一眠りってことなんだろうか。それにくらべるとスコットは水を飲んでいるみたい。寝てなんかいられるか・・っていう感じだ。いずれにしても2時間後にはまた緊急事態になるんだけどさ。

さて後半・・ブレインズが次は火柱がステーションの下に出るかも・・と言っているのに、スコットは出動しなかった。すぐ出動して4号でミサイルを撃ち込み、岩盤のひび割れを止めていたら海上ステーションは崩壊せずにすんだかも。・・でもそれはあくまでも仮定の話。ステーションが崩壊するところは本当によくできていると思う。巨大な設備(1号とくらべるとその大きさがよくわかる)が炎につつまれ、崩れ落ちる。噴き上げる黒煙で空まで暗くなる。救助開始が遅れたために時間との戦いになる。何だか総天然色超スペクタクル映画を見ているような、そんな迫力を感じる。通信中の画面がゆれ、画像がかすみそうになる。ヘリポートから1号がすべり落ちそうになる。危ういところで発進させるアラン。彼もよくやっている。最初は3号とはかってが違うな・・とちょっととまどっていた。スコットには「まかしといて」と自信たっぷりに言ったけど、ヘリポートに着陸する時はちょっとドキドキした。「さあアラン、がんばれよ」と自分で自分をはげます。二回目の出動では1号の扱いにも少し慣れてきた。ステーションが崩れそうだから今度は1号で空から指揮を取るぞ。・・頼りなさそうなアランだけど、やる時はやるんです!今回のバージルはまたしてもかなり上からコンテナを落っことしていた。ああいうのは「落とした」じゃなくて「落っことした」だよな。バージルったらいくら急いでいるからって・・どうか「やわやわー」でお願いしますってば(土下座)!二回目の救助の時、最初は浮かんでいる2号の下にフタ(?)が開いたままの4番コンテナが浮いている。次にうつった時にはコンテナを回収したらしく、ちゃんとおなかにはめている。まあ海上はひどい状態だし、他にすることもないし・・。

海軍の連中はありきたりなタイプだ。新しいことに夢中になり、民間人には迷惑をかけ・・。「これで戦争のやり方が変わるぞ!」・・変わるべきはおまえ達の頭のなかみだろ、こら。ステーション所長フランクの気の強そうな顔。部下のディックの眉の下がったいつも泣きそうになっている顔。夜になるとディックの代わりに別の男が部署につく。交代できないフランクはたたんだ毛布を背に仮眠を取る。室内は明るいので顔を手でおおってしばしの休息。所長は辛いよ。「海軍は海で起こる危険を防ぐのが大事な役目なのに、反対に起こして回っているんだからな」・・この彼の言葉が印象的だ。どうやったら平和になるかではなくて、新兵器で戦争のやり方が変わることを喜んでいるんだもんね、あの連中。さてフランクとディックを乗せた潜水球が海底に沈んでしまった。4号の出番だぜい!「さあ、ベイビー、もっと速く切断しろ!」「どうなっているんだ、上の方は(崩れてるに決まってるじゃん)、ぺちゃんこになる」・・今回のゴードンかなりあせってます。上からいろんなもの降ってくるんだから作業は命がけ。降ってきたものが4号に当たるカランカランという音!今回一番危険な仕事をしたのはゴードンでした。しかしゴードンはいくら危険な状態でもちゃんと手順通りにやります。それが鉄則なんですね。相手を助け、自分も助かるための・・。前にも書いたけど、潜水球を磁石でくっつけて移動させようと奮闘する4号の描写、ドキドキします。胸キュンです。小さい体でがんばっていてけなげです。モタモタしているところがまた何とも言えません。バージルが声をかけても4号からの応答がない・・ってところがまたいいですな。大丈夫とわかっていてもハラハラしちゃいます。ねえ、バージル、こっちは今取り込み中だから応答なんかしちゃいられないんだ、わかるだろ!何とか救助に成功して海面に浮かび上がった4号。この後は2号が磁石でくっつけて航空母艦まで運ぶのだ。吊り上げられる潜水球をじっと見ているゴードンの表情がいい。私が26話で一番感動したのがこの時のゴードンの表情。顔は汗にまみれ、疲れがにじみ出ている。しかし難仕事をかたづけた時のホッとした感じ、充実感が漂っている。ゴードンの人形は25話のような謎めいた表情は浮かべていない。26話の人形から感じられるのは、無償で相手に尽くす博愛精神である。それはバージルもアランも同様なのだが、何しろ今回は彼が一番危険な仕事を担当したので、彼に一番それを感じてしまうのである。心が広く、忍耐強く、そして何よりも楽天的でお人好しでないとこんな仕事はできない。黙って潜水球を見ているほんの短いシーンなのに、いろいろ考えさせるものがある。それもこれも人形の出来がいいからだろう。新しいゴードンには人のよさを感じたが、古いゴードンだったらまたその表情に別のものを感じ取っただろうと思う。いろいろ想像してみるのも楽しい。いずれにしてもご苦労様でした、ゴードン。彼の仕事はまだ終わったわけではない。「2号が戻るのをここで待つ」・・そう、4号は2号がいないとどうしようもないのさ!さっきは時間との戦いだったけれど、これからはひたすら待つより他にないのさ!「ニューヨークの恐怖」でもそうだっただろ!この仕事には忍耐も必要なのさ!待ってる間何してるんですか、ゴードン。まわりは火の海なんじゃないの?ひび割れは止まったわけじゃないんでしょ?

イギリス、油田と聞けばすぐに思い浮かぶのは北海油田だ。発見されたのは1960年(天然ガスは1965年)、26話の放映は1966年の10月らしいが、石油採掘用海上ステーションのアイデアはこの北海油田発見から来ているのだろうか。「サンダーバード」の設定年代にはもう40ものステーションができて、ガスや石油を採掘しているわけだ。ただガスにしろ石油にしろ、本土にある基地とパイプラインで結ばなければならないのだが、26話にはそういう描写はなかったな。あれだけの災害が起きればパイプラインも損傷を受け、石油が流出してひどい海洋汚染を引き起こすと思う。ステーション崩壊の描写が今回のメインなので、そういうのは省略されているのだろうが、迫力満点の特撮シーンに感心しながらも、その点がチョイ心に引っかかりましたな。二次災害(海洋汚染、ガスが燃えることによる大気汚染)のことを考えれば、ジェフはスコットをしかることはできないはずだし、ジェフの叱責を真に受けたスコットが救助要請を断ったのも地球のためにはなりませんでしたな。でもジェフの考えとしては人命が絡んでいることが一番で、地球環境がどうのというだけでは出動理由にはならないんでしょうな。とにかく今回の災害の元凶である海軍は、責任を取って海の浄化に努めなさい!

さて今回のぺネロープ、気まぐれな思いつきはほどほどに・・と少しは身にしみたんでしょうかね。ジェフを迎えて何とかくつろがせようといろいろ試みたけどちっともうまくいかない。例えばパーカーがうるさく音楽を流す。いますよねえ、こういう人。自分さえよければまわりがどう思おうが無関心っていうタイプ。ぺネロープ・・んまぁパーカーったら、何度も注意したのにどうしてわからないのかしら。おじ様を何のためにここへお呼びしたと思っているのかしら。新しいネグリジェを見せるため・・いえいえそうじゃなくて・・。あとでヤキ入れてやるわ、覚悟なさい(ウソだぴょーん)。パーカー・・全くもう荷ほどきさせられたり荷造りさせられたり・・。コロコロ気が変わってそのたんびに振り回されるのはこっちなんですからね、いやんなっちまう。休暇にいらしたのなら家のことは息子さん達にまかせておけばいいものを、何かあるごとにじたばたするんだから。音楽がうるさいとおしかりを受けましたが、あたしゃ頭をカラッポにするために聞いているんです。いろいろ考えていたのでは休暇にはなりませんや。やっと一人になれたのでこれでゆっくり・・ああでも羊が一匹足りないんでしたっけ。上流階級の方は自分の欲しいものには金を惜しみませんが、その一方で財産管理には非常にシビアで、例え羊一匹でも数が足りないのはがまんできないんですな。捜しても見つからないようならどっかから調達して来ましょうかね。

スコット・・ぺネロープが来たってことは、帰る時誰かが送っていかなくちゃならないってことだよね。そうなるとボクがジェット機で送るわけ?じゃあそれに備えてボクはもう寝よーっと。それでなくたって寝不足でフラフラなんだもーん。あとはバージル達にまかせるよ。バージル・・何だって?ボク達だって一日に二回もここと大西洋を往復したんだよ。きのうは枕投げで盛り上がってロクに寝てないし、いくら人形だからって体が持たないよ。アラン・・ボク達もしかして飲酒運転しちゃったのかな。2時間間をおいているから仕事には支障なかったけど、パパに知れたら大変だ。バレないうちに寝ちゃおーっと。ゴードン・・今日は疲れたなー。台所に忍び込んで一杯引っかけてから寝るぞー。・・てなわけで皆早々に引きあげてしまい、残ったのはミンミンとおばあちゃん。何よせっかく私が来てるってのに。女どうしで話したってちっともおもしろくないわ・・とおかんむりのぺネロープなのでした。その頃5号ではジョンも疲れ果てて通信用マイクを握ったまま居眠りこいてました(けなげー)。大変だった一日の終わり・・元気なのは自分の居場所を奪い返したジェフだけでしたとさ。「ロード・オブ・ザ・トレーシーアイランド~ジェフの帰還」なのだ。