17 スパイにねらわれた原爆

今回は17話について書こうと思うんだけど、その前にちょっと、いやかなり寄り道・・。先週の金曜日の夕刊にデヴィッド・へミングスの訃報が載っていた。「ミーン・マシーン」からちょうど一年たって「リーグ・オブ・レジェンド」での彼を見たばかりだ。「少しはコネリーを見習いなさいよ、11も年下なのにコネリーよりも動くのが大変そうじゃないの」って見ながら思っていた。もちろん彼より太っている人はたくさんいるし、太っていたって長生きする人もたくさんいる。でも「ミーン・マシーン」を見た時にはホント心配になったのよ。だから亡くなったと知ってもやっぱり・・という感じなんだけどこんなに早くその日が来るとはね。62歳なんて若い、若すぎる、もったいない。少し前「サスペリア2」のDVDを入手した。この映画での彼もいいが、「ジャガーノート」でのチャーリーが気に入っている。暖かそうな白いセーター、美しい金髪、爆弾処理という危険な仕事をしているのにわりとのん気で明るい性格(大昔にテレビで見ただけなのでちょっと記憶はあいまい)。

何でこんなことを書くかというとゴードンを思い出してしまうのだ。白いセーター着ていることあるでしょ、18話とか。ゴードンがセーターを着るといかにも「海の男」という感じがする。美しい金髪でしょ。危ないことやってるわりにはのん気でしょ、7話とか。違うのはチャーリーは線を切っていたけどゴードンはつなげていて、チャーリーは死んじゃったけどゴードンは死ななかったということなの。

寄り道その2・・「UFO」のDVDのVol.1には入っていなかったエピソードで、私がとっても見たい・・と思っていたものの一つが「謎の発狂石」。Vol.2が発売されたので早速入手。「電撃スパイ作戦」のスチュアート・ダモンがゲスト出演しているのよね。出番はほんのちょっぴりなんだけど「電撃」の時と同じく中田氏の声なのがうれしい。私は中田氏の「特攻ギャリソン・ゴリラ」の時のアパッチの声が好きで・・。ブレンドン・ブーンが「ガンスモーク」にゲスト出演した時も(あれはホントいいエピソードです)声はちゃんと中田氏で・・。昔はこういうのも楽しみだった。○○の声は○○・・ってほぼ決まっていて。ダモンは黒髪だし顔の感じはスコットに似ているし、その上声が中田氏だし・・で、スコットが人間だったらこんな感じなのかな・・って思いながら見ていた。ここでのダモンは、わがままな俳優の役なので、もしスコットがうーんと感じの悪いヤツだったらこんな感じかなってことになるんだけど。ダモンは「電撃」の時もそうだけどちょっと変わり者の役が多い。だから長身でハンサムなのに人気はウィリアム・ゴーントの方がずっとあった。ハンサムなのに地味というのはスコットもそうだな。ちなみに最近発売された「謎の円盤UFO大全」の190ページの右下にはダモンの小さな写真が載っている。

さてスコットは今回もいいとこなし・・なんてよく日記に書いてるけど、彼って実りのない仕事の時も一生懸命やってる。15話では「大ワニはもうたくさんだ」なんて吐き捨てていたけど、そう言いたくなるのも無理はないかも。彼はたいてい一人で行動するからけっこう孤独かもね。15話で現場にかけつける時の2号の操縦席なんて、ゴードンやアランが立ったり座ったり思い思いの格好で、緊張したムードはゼロ。男三人がかわいらしくたむろしているという感じ。やさしくてしっかりしたお兄さんのバージルが中心にいて、ほのぼのとした家庭的なムード。まるでホームドラマだ。孤独という点ではスコットとジョンには共通点があるかもね。

寄り道その3・・中田氏がアパッチなら、宗近氏は「タイムトンネル」のトニー・ニューマンだ。私の持っている「外国TV映画大全集」に載っているジェームズ・ダーレンの写真を見ると、表情と言い、首の傾げ方と言いバージルにそっくりだ。何でこんなに?と不思議なほど似ている。そう言えばトニーの性格も熱血漢。バージルの声を聞いてると時々トニーの顔が目に浮かぶ。ただこの本には「サンダーバード」も「海底大戦争」も載っていない。なぜじゃー!

寄り道その4・・キネ旬社の「アメリカ映画作品全集」にはちゃんと「サンダーバード」と「サンダーバード6号」が載っている。「サンダーバード」の方には移動司令室に座るスコットのりりしい写真が・・。「SF人形劇の佳作」、「人形劇とは思えぬスリリングな場面を展開」ムフフ・・。ところが!「父親のジェフを隊長に子供のスコット、ヴァージル、アランを隊員としたトレイシー一家でなる国際救助隊が主人公。3人の息子は、万能ロケット”サンダーバード”の1号から3号に乗って活躍」・・っておいおいサンダーバードは3号で終わりかよ。かってに子供の数をへらすなー。ちゃんと映画見てから文章書いているのかこら!万能ロケットという言い方も変だ。鍋や包丁みたいでいやな響き。万能鍋、万能包丁、万能フライパン・・・。第一サンダーバードは万能ではない。もし万能なら宇宙も海底も、偵察も輸送もこれ一機でOKとなるはずでしょ。サンダーバードの特徴はその守備範囲、使用目的がはっきりしていることにある。

さて17話では二つの事件が起きる。一件目の成功に味をしめた犯人は、同じ手口で二件目の事件を起こす。「サンダーバード」のおもしろさは、窮地に陥った人をどうやって助け出すかにある。だから事件が起きたいきさつは少しくらいあいまいでもかまわないんだけど、それにしてもこの二つの事件はおかしいのよね。帰宅途中のプレスコットは、謎の男に腕輪型の爆弾をつけられてしまう。はずすためには自分が勤めているハドソンビルの記録課のキャビネットの中にあるカギを見つけなくてはならない。彼は必死でビルに戻り、男に言われた通りカギで腕輪をはずすと、キャビネットの中に入れる。時間が来て爆発が起こり、スパイに関する書類は灰になってしまう。男の企みはまんまと成功し、プレスコットはエレベーターごと地下に落下。自動消火装置はあらかじめ壊されており、そのままいけばプレスコットは助からず、犯人は彼だということで事件は終わるはずだった。犯人の計算が狂ったのは、頼んでもいないのに国際救助隊がかけつけたことだ。今回の出動理由は「新しい火災救助装備を試すチャンスだ」というジェフの言葉からも明らかなように、半分くらいは救助隊の方の都合である。ジェフは出動に慎重な時があるかと思えば、要請なしに出動することもあり、相当気分屋である。謎の男の正体は結局不明のままなのだが、この人形はうまくできていると思う。アイシャドーでもつけているかのような妙な顔つきで、あいまいでのっぺりした感じ。私はこの男は絶対仮面でもつけているのだろうな・・と思っている。夜だし、屋外だし、プレスコットは気がついていないけど。彼の「ビルまで50キロあるぜ」という言葉(字幕)はちょっと疑問。プレスコットは10分くらいでハドソンビルに着いているけど、猛スピードで飛ばしたとしても50キロは無理なのでは?男の言葉はジョークなのかな。ただここでのシートから花束がずり落ちる演出は、プレスコットのあせる気持ちをよく表わしていてうまいと思う。

さてそれではキャビネットの中にカギを置いたのは誰か、ということになる。カギを置くということは、そこまで行ったということだ。出入り自由、つまり内部の人間だということだ。そこまで行きながらその人物は、なぜ爆弾を置いてこなかったのだろう。爆弾を置けば話はすむことである。プレスコットなど使う必要はない。一つ考えられるとしたら、プレスコットを犯人に仕立て上げるためにこんなまわりくどい方法をとったのだろう。ただ爆発したのでは職員全員が調べられる。調べられては困る人物がいたのだ。二番目の事件では三人の男がスコットランドの城で指令が来るのを待っている。テーブルの上にはバグパイプなんぞが置いてあって、こういう(やらなくてもいいことをやっている)のは、(ムダなCGとは違って)見ていて楽しい。古い肖像画なども、何でうつすのかな・・という感じだが、ペネロープに似ているぞ・・なんて思ってみたり。「寒い」と文句を言うのもリアルでいい。リーダーから指令が入るが、ここでの疑問も一件目と同じである。警報システムは解除してあり、警備ロボットは無力化するよう光線銃を調節してあり、男達の腕につけた爆弾をはずすカギはプルトニウム貯蔵庫の前の箱に・・ってそこまでやったのなら自分で爆弾しかけりゃいいじゃんよ。わざわざ三人の男を雇う必要がどこにあるのよ。それとリーダーは仕事を終えた男達を(お金を払うために)待っている必要はないのよね。一番いいのは12時30分に爆発すると思わせておいて、もっと早く腕輪を爆発させちゃうこと。そうすれば実行犯三人の口をふさぐことができるし、お金を払わなくてすむし、自分は核爆発から少しでも遠くに逃げることができるし、正体を知られなくてすむ。お金を払うために律儀に待っているという設定はヘンだ。犯行が成功したかどうかは爆発の有無でわかるしね。まあ三人を連れて行った先で始末するつもりだったのかもしれないけど。12時30分にまだ離陸しないでいるのものんびりしすぎ。いずれにせよ、この件も内部の者の犯行ということになるね。保安システムを知っていて解除でき、貯蔵庫の前まで行ける者。どちらもあの謎の男が巧みに変装して出入りしていたのだと私は思う。彼のように悪事が成功してそのまま姿をくらましてしまい、その後は全く登場しないというのは非常に珍しいケースだ。

さて今度は救助する側から見てみる。今回登場した防火エレベーター。いったいどこから吊っているのだろう。エレベーターを10階分引き上げるのはかなり大変なことだ。7話でのファイアーフラッシュ号のパイロット達を救助するシーンを思い浮かべてしまったが、ああやって2号から吊っているのならまだしも・・。さて5号にはブレインズが来ていて、これならしばらくはさびしくないわね、ジョン!それにしてもあの後ろ姿!彼らの後ろ姿を見る度に思うのは髪の毛の多さ。すきまなくびっしり生えていて、スコットのように黒っぽい髪だと、それこそ頭が重そうに見える。そして背を向けている彼らの姿は、何となく無防備で、かわいらしくさえ見える。2話での自動テレスコープからの映像を見ているスコット達のなんか特にそう。でもジョンの後ろ姿から受ける印象はちょっと違っていて、かわいいとかじゃなくて何て美しい髪なんだろう・・って。あれが羊の毛?まばゆく高貴な輝きは感動的でさえある。同じ金髪でもアランのはモコモコした感じで、サラサラ感はない。ジョンのは指通りがよさそうだ。細くて絹のようでさわるとヒンヤリしていて・・。見ているだけでその手ざわりが伝わってくる。お宝映像というのはこういうのを言うんでしょうな。ゴードンの髪もなかなかいい。茶色と金髪の中間くらいで、輝いているようないないような、どっちつかずの明るさかげん、サラサラかげんがいい。まあいずれにしても前から見ても後ろから見ても、きちんとしていても乱れていても、六人(兄弟プラスブレインズ)の髪は胸キュンです。ペネロープやミンミンの髪を見ても何とも思わないのにね。それから二度目にジョンが出てきた時の「本当ですか、こりゃ大変だ」というセリフが好きだ。あの容姿の美しさ、優雅さ、高貴さで「こりゃ」なんて言います?もっとクールでエリートっぽいセリフを言うのが普通でしょ?料理で言うなら懐石料理かフランス料理みたいな。それをラーメンかカレーみたいな庶民的な雰囲気で「こりゃ」なんて言うのがいいわあ・・。桜井氏の声やしゃべり方は、ジョンの生真面目さや素朴な暖かさを感じさせてくれてとってもナイス。それにくらべると原語版の声はねえ・・ちょっと残念。

さてミンミン、ジェフのデスクに腰掛けているシーンでシュミーズが見えてますぞ。と言うか、これってわざと見せているんですか?昔ありませんでした?スカートのスソからシュミーズを見せるのか見せないのかという論争。アラン、ゴードン、ミンミンの三人がのんびり釣りをしているシーンは、ストーリーには無関係である。アランもゴードンも出動しないから。でもいちおうはああやって呼び戻されるのね。待機させられるってこと?このシーンはだから、カットされても影響はないんだけれど、残してくれてどうもありがとう!だって少しでもゴードンに登場して欲しいから。私はこの時のちょっと具合の悪そうなゴードンが好きだ。いや、別に私の目にはそう見えるというだけで、本当に具合が悪いわけではないんだろうけどさ。でもいつも元気いっぱいなはずの彼が大人しくしていると気になって、気になって・・。ところでこのシーン、まずアランの声で「のんびりするには釣りが一番だね」とあって、次にゴードンの声で「頭ん中までのんびりしちゃうぞ」となるのだが、実際にしゃべっているのはゴードン、アランの順である。人形の唇の動き、あるいは原語版を聞くとわかる。吹き替えのセリフがあまりにもアラン的、ゴードン的に訳されているので、すんなりと耳に入ってしまい、逆になっていることに今まで全く気がつかなかった。

さてこのエピソードに出てくる警備ロボット。全部で四体あることになっているが、あの点滅する番号のところだけ変えればいいから、きっと一体か二体を使い回し・・なんて想像するのも楽しい。番号も1、2、3、4・・ではなくて、5とか8とか17とかバラバラなのがそれっぽくていい。融通がきかなくて仕事熱心な5号君の首の振り方がかわいい。でもあんなのに抱きつかれた方は大変。それも3時間もね。肋骨が折れまっせ。バージルはどうやってロボットをはがしたんでしょう?救助に来たスコットのセリフがいい。どうせ間に合わないから逃げてくれ・・と悲観的なサウザンに「君を救助に来たんだ、実行するまでさ」、「救助隊は諦めない」くー何てクールで男らしいの!ジョンの「こりゃ」とはだいぶ違うぜ!それにしても何でこんないいシーンをカットするのさ。救助隊の本質をこれほど明確に表わしているシーンはめったにないのに。バージルの扉の一枚目を破ったところでの「頼むぞ、ベイビー」もよかった。バージルの「カモン、ベイビー」はゴードンと同じくメカに対してでしたな。レーザー切断車はコンテナから出てくる時には窓ガラス(?)が閉まっているけど、仕事を始めた時には開いている。巻き上げ式ですか?中に座っているバージルが糸であやつられていなくて、ただ立てかけてあるように見える時がある。まばたきをするように作ってある人形は別として、それ以外のはずっと目が開いたままだから、使われていなくてしまってある時の人形ってあんな感じなのかな・・とふと思った。あやつられていない時の魂の抜けたようなバージルを見て、一瞬ドキッとした。いくらカクカクしていたってやっぱり動いていた方がいいや。前に座ったスコットの足がいい。1号の操縦席での写真の中にも両足をきちんと揃えているのがあって、男らしいはずのスコットが何ともかわゆく見えてしまう。爆弾を三つ重ねていそいそと・・じゃない急いでその場を離れる時のスコットもやたらかわいい。あの手つき、表情が・・。人形では限界があるのか、人間の手も時々うつるが、毛むくじゃらだったりするといやだなーって思う。人形の手はツルツルだから、そっちに合わせて欲しいなーって思う。だからこの時のスコットの手にはホッ。捨てるのがほんの数秒遅れていたら、1号は吹っ飛ぶところだった。今回のスコットは人形もきれい(?)だったし、行動も勇敢で、とっても魅力的だった。一つ一つの表情、しぐさがさえていた。爆弾を捨てるために飛び立つ時の、ちょっと前かがみになって操作しているスコットが好き。

さて2065年になってもイギリス情報部はあんな感じなのかな。「ジョニー・イングリッシュ」で花形情報部員がコートをパッと投げて、コート掛けにきっちり引っかけるシーンがあった。イングリッシュはそれを見て、自分が情報部員になった時にマネをするんだけど、もちろん狙いははずれてコートは窓から外へ・・。帽子を投げるシーンを見てああ同じことやってる・・と思った。サウザンが万年筆をカチャカチャやるシーンも、イングリッシュが万年筆だかボールペンだかをカチャカチャやっていて、サウザンのは通信機だったけど、こちらは銃で、あわれ秘書は車椅子・・。そんな共通点が見ていてとても楽しかった。それにしてもラストでサウザンは身分が知られてしまったから引退・・なんて言っていたけど、今回の彼の行動はどう見てもドジすぎる。やむをえず引退したんじゃなくて、引退させられたんでしょ?