ストーン・カウンシル

ストーン・カウンシル

予告は何度か見たけど何となくオカルトっぽい。原作はジャン=クリストフ・グランジェ・・と言うことは「クリムゾン・リバー」や「エンパイア・オブ・ザ・ウルフ」の人だから、また荒っぽいストーリーなんだろうなあと予想がつく。でも半分くらいは進み方がゆっくりで、あれ?と拍子抜け。主演はモニカ・ベルッチだけど、今回はお色気を封印し、ショートカット、ノーメイク(チラシにはそう書いてある)、はいずり回ったりして文字通りの汚れ役。でもって進み方はゆっくりで、母と息子のベタベタシーンがやたら多いし、ローラにはもちろん男が寄ってくるが禁欲的な態度通すし・・。で、ベルッチか・・ウヒヒ・・なんて期待して見にくると大いに失望させられるわけ。後半舞台が突然イルクーツクに飛ぶのは「エンパイア」で突然パリからトルコへ飛ぶのと同じ。ラストがぐずぐずなのも同じ。ま、こちとら免疫できてますからたいていのことはOKよ。緻密なストーリーなんて期待していませんてば。冒頭男女が一人の老人を助け出そうとするが、殺されてしまう。女性は死の直前、自分の子供らしい写真に手をのばすが・・。その後すぐヒロインのローラが養子をもらうシーンになるので、冒頭の男女がこの養子の赤ん坊の両親なのかと私は思っていた。・・結論から言うとあの男女はローラの両親。私はこの映画は二回見た。何度も言うが展開がゆっくりなので(どれくらいゆっくりなのかはこれでもう三回も「ゆっくり」と書いていることでもわかるでしょ)、そんなに見逃していることもないように思えた。だから一回で出てきてもよかったのだが、思い直してもう一度見た。シネパトスだからそれができる。公開二週目(結局二週間しか上映しなかった)のレディス・デー。一回目は15人くらい、二回目は20人足らず。二回目はもう結末わかっているので、ああこれはこうなのだ、あれはああなのだと納得しながら見ていた。と同時にいろいろ思い違いしていたこともわかった。たいていの人は冒頭の男女が養子のリウ=サンの両親だと思い込んだまま帰ったことだろう。思い込んだからと言って支障があるわけでもないが、作り手がまぎらわしい描写をして、お客にわざと勘違いさせて喜んでいるようにも思えた(考えすぎ?)。原作は「石の公会議」だが邦訳はされていない。パンフレットもないので、感想を書く助けになるものがほとんどない。記憶が頼りだ。

ストーン・カウンシル2

さて、孤児になったローラだがシビル(カトリーヌ・ドヌーヴ)が後見人になってくれて、成長した今ではロシア語の通訳として働いている。シビルはある財団の長だが、そろそろ引退しようと思っている。ローラがリウ=サンを迎えることができたのはシビルのおかげ。彼女には別れた夫だか恋人だかのリュカがいる。別れた理由は不明。また、別れたにしてはリュカは未練たっぷりで、何かと口実を作っては近寄ってくる。リュカ役のサミ・ブアジラは「スズメバチ」に出ていた。ローラの方は息子と仕事のことで頭がいっぱい。生活に男が入り込むスキはない。クラリスという女性と同居しているが、彼女はスチュワーデスかな?七歳になったリウ=サンには、胸に不思議なアザができる。母子して何やら悪夢を見始めるが、描写は不十分である。そのうちローラは仕事で数日家をあけることになり、リウ=サンをシビルに預けることにする。リウ=サンはシビルに預けられるのがいやらしい。また、シビルは病気だ・・などと言ったりするが、ローラは気にとめない。見ていてだいたいの予想はつく。リウ=サンには不思議な能力があるのだ。シビルは何事もないように装ってはいるが、リウ=サンが言うからには病気なのだ。しかも悪性の・・。病気になった者が考えることは決まっている。モンゴルのある部族には伝説がある。100年に一度、監視者(ウォッチャー)という特別な治癒力を持つ人間が現われる。一方で、呪術によって動物に姿を変えられる能力を得た者がいる。監視者を殺すことができれば、その者は永遠の命を得る。ストーン・カウンシルというのはその秘密結社のことか儀式のことらしい。まあ何だかよくわからないが、そういうことらしい。さて30年ほど前、モンゴルで核事故が起き、そこで働いていた者のうち、何とか族の者は生き残ったのに、他の者は皆死んでしまった。その謎を解明するために研究チームが送り込まれる。もちろん何か軍事的に利用できないかという下心があってのことだろうが。そのチームはシビル、ローラの両親、今ローラ達がかかっている主治医などで構成されていた。彼らは結局謎の解明はせず、何とか財団を作り、孤児の養子縁組などをしているわけ。ローラには領事館だか大使館のセルゲイ(モーリッツ・ブライブトロイ)という男が近づいてくる。彼はこの事件の究明にかかわっているらしい。

ストーン・カウンシル3

さてシビルにリウ=サンを預け、車で戻るローラ。ところがリウ=サンはいつの間にか車にもぐり込んでいた。びっくりするローラ。その時突然ワシが車に向かって飛んできたため、運転を誤り横転。ローラは軽傷ですんだが、車から投げ出されたリウ=サンは昏睡状態になる。つきっきりで看病するローラ。その彼女の前に後ろに大きなヘビが・・(一匹でも巻きついているから前に後ろにってこと)。その頃病院の駐車場で主治医の惨殺死体が発見される。目撃者の話ではアジア系の男が犯人らしい。一回目は見ていてもワシとかヘビとかが現実なのか幻影なのか意味がよくわからない(終わり近くのクマのあたりではわかるけど)。でも!二回目はオッケーですよ。ヒゲの老人が何やら呪文唱えている。はは~ん、このじいさんがワシに変身したわけね。何で事故を起こさせたかっちゅーと、ローラを殺すため。リウ=サンに能力が現われ始めたのはアザでわかっている。ローラが心配して主治医に見せたから。つまりローラとリウ=サンはまわりの者みんなに監視されているの(彼らこそ監視者じゃん)。シビル、主治医、そして後でわかるけどリュカもクラリスもみーんな仲間。ローラは自分では全く気づいていないけどリウ=サンを育てさせられていたわけ。彼女が養子を迎えたのは不妊症だからだけど、本当に産めない体質なのか怪しいものだ。主治医が何か細工して彼女にそう思い込ませているだけかも。その上リュカも一味なら・・。まあ私のかってな思い込みですけど。赤ん坊を斡旋する施設で見かけた男(実は学者か何かでチームの一員)がワシに変身したのよ。リウ=サンが車に乗っていたのは彼らの手違い。リウ=サンは重体だけど、特殊な治癒能力があるからすぐに治る。邪魔なローラを消せ・・というので、今度は主治医がヘビに変身したのよ。でも主治医は途中で殺されちゃったので、ローラはまたまた命拾いしたわけ。実は事態を予測した祈祷師(冒頭助け出されそうになっていたおじいちゃん)が、リウ=サンを助けるため男をつかわしたの。この男は主治医と学者を殺すけど、その後警察につかまり、ケガが元で死んだらしい。まあとにかくよくわからないストーリーなので書いていても困るんだけどさ。殺人事件が起きたわけだから当然警察が捜査に乗り出す。その描写にしたってあいまいと言うか不完全と言うか。

ストーン・カウンシル4

じゃあこんなに詳しい(?)感想なぜ書くんだよ・・って思うかもしれないけど、そういうアホ映画だからこそ書きたくなるわけで。傑作だからって長い感想書けるわけでもないのよグフフ。あらら話がそれちまったぜ。さて、後半舞台は突然イルクーツクへ飛ぶ。リウ=サンはシビル達に誘拐されるけど、ローラには行き先わかるのよ都合よく。今では誰も近づかないという場所(冒頭の研究所みたいなところ)へ。危険な目に会うけど、彼女の危機を救ったのはセルゲイ。どうも正体のはっきりしないセルゲイだが、どうやら味方らしい。ついでにローラにほの字。この映画セルゲイとリュカともう一人刑事のネヴェス(ロレンツォ・バルドウッチ)が出てくるが、一回目はどれも同じ顔に見えて困った。三人とも年齢も体格も髪が黒くて短いのも一緒。何でこんな同じようなの出してくるのか不思議でしょうがない。一人くらい波打つ金髪の王子様にして私をうっとりさせてよ・・じゃない、区別つくようにしてよ。気のきかないキャスティングだぜ!主治医(ヘビじいさん)と学者(ワシじいさん)も似たような顔してるんだよな~。パーティで隅っこにいたじいさんは誰?ヘビじいさん?ワシじいさん?ネヴェスの相棒刑事殺されたけど何で?この相棒いい方?悪い方?ネヴェスは途中で出てこなくなるし、何が何だか・・。ある人が4時間ぐらいの超大作を2時間以下に切り詰めたのではないかって感想書いてたけど、ホントそんな感じ。実際はもっとネヴェス活躍したと思う。シビルはクマおばさん。ドヌーヴだからクマばあさんとはならない。多少ゆるんでいるけどいちおう美しさ保ってる。ワシは一瞬なので別として、ヘビにしろクマにしろCGだってバレバレなのでちっとも怖くない。「ジェヴォーダンの獣」と同じ。はいッ作り物でーす、アニメでーすって感じ。でもこの映画の場合本物っぽい必要はないの。実物じゃなくてシビル達の意思の力で作り出された幻影なのだから。でもそうは言っても、こういうアニメっぽいヘビやクマがこの映画をますます安っぽいものにしてるんだけどさ。さて・・ここまでは見せると言ってもガラス越しのシャワーシーンとかそういうのしか見せてくれなかったベルッチですけど・・お待たせしましたー脱いでくれますよ。そりゃお客さんをこのまま返したりするもんですかッ!

ストーン・カウンシル5

クモ男も海賊も300も置いといて、せっかくこっちを見にきてくれたって言うのに、そんな薄情なことできますかッ!ほらほらそこの寝てるオッサン目を覚ましなさい始まりますよ~。一度シャワーシーンで目が覚めたけど、その後また眠っちゃったんでしょトロトロした展開に・・。しかもこのシャワーシーン色っぽいと言うより肩のあたりががっしりしていて運動選手みたいだな・・と。私はそう思って意外だったんですけど、オッサン達は何で背中だけなんだよこっちを向けとか毒づいていたんでしょうなあ。さてなぜかここへきてローラは突然具合が悪くなるんですの。シリルは、あなたは被曝しているとか言うの。シビル自身30年前の核事故のせいで白血病か何かで余命いくばくもない。当時赤ん坊だったローラもこの時被曝したのかな。そして今になって発病。この研究所に来たせいで病気になったわけじゃないんでしょ?もしそうならリュカもセルゲイもリウ=サンも見張りもみーんな具合悪くなるはず。彼女は警察の取り調べの時、主治医とは血液検査をしてもらって以来とか言っていたから、将来発病する危険はあったのだ(彼女自身は知らないだろうが)。まああれこれあってセルゲイが助けを呼びに行っている間に、ローラは不思議な体験をする。意識を失って倒れているローラ、泣いているリウ=サンの前に、男が現われてどこかへ連れて行く。そこで祈祷師がイタチだかテンだか小さくてかわいらしい動物にローラの病気移して、喉を切って血を出し、その血をたき火に振りかけ・・。よくハリウッド映画で、エンドクレジットで「いかなる動物も虐待したり殺したりしてません」と断り書き出るけど、このシーン見てそれが目に浮かんだわ。今までベルッチ主演だと言うのにずーっと禁欲的で来て、ここで一気に・・となるわけだけど、ご開帳は上半身だけです。しかも蛍光灯とかで明るいんじゃなくてテントの中でたき火の明かりだけで、しかもローラは別に情欲にもだえているわけではなくて病に苦しんでいるんですの。でも暗くて不鮮明であるにもかかわらず、このシーンが観客にとってはおそらく一番印象的なのではないかと・・。さすがベルッチ!なのよ。前「ダニエラという女」の批評で、毎日新聞には「堂々たる美しさ」と書いてあったけど、彼女の特徴はまさにそれなの。

ストーン・カウンシル6

そこらへんの貧相で物欲しげなヌードとは違うの。豊満で威厳さえ漂う。それこそひれ伏したくなるような崇高ささえあるのだ。なかなかいませんぜこういう女性は・・。今回は譫妄状態で白目出してるけどそれでいてさえ・・。でもってこのシーンではお客は生唾飲み込んでりゃいいんだけど・・実は私は・・笑いをこらえていましたとさ。だってぇ・・祈祷師のじいちゃん素っ裸なんだもん。しかもわざわざボカシが入るのよごていねいに。キャハハ何で?入れなきゃ見えてるってわかんないのに。だって夜だしテントの中だしたき火だし、明るくないのよ暗いのよ。それに誰もじいちゃんの下半身なんか見てませんてば。ベルッチのヌードうつるの待ってるんだもん。ベルッチのヌードの方がよっぽどボカシ必要。でも上半身だからボカシは入らず、じいちゃんのは下半身だから入ると・・。まあ律儀な検閲ですこと!でも・・いくら考えてもここでじいちゃんが素っ裸である必要ないんですけどぉ。真面目なシーン(ヒロインが助かるかどうかの瀬戸際)なのに、今思い出しても笑いが止まらない。それにしても核事故という設定はともかく、被曝による病気が祈祷で簡単に治るというのはノーテンキもいいとこ。この映画に限らず向こうの映画って放射能の影響軽く描きすぎ。一夜明けて元気になってる(!)ローラ。地元の警察に報告するけど誰も信じないの。そういう老人がいたってのは事実だけど、もう30年も前の話だって言うの。昨夜のじいちゃんが本物なのか幻(幽霊?)なのか不明。リュカやクラリスなどまだ一味は残ってるし、ローラとリウ=サンの将来は決して明るくはないの。特にリウ=サンは、ローラには黙っているけどいろんなものが見えてるの。不思議な能力があるってのも考えものですな、そんなものない方が幸せ。まあこんな感じでぐずぐずのまま映画は終わる。ローラの病気が一回の祈祷で治るのなら、シビルもこのじいちゃんの前で素っ裸になってご祈祷してもらえばよかったのに。いやまあとにかくわけのわからんアホ映画だけど見てよかったわ。期待は裏切られなかった(期待ったってアホ度のですよ、ベルッチの脱ぎっぷりではありませんよ)。これからもこういうアホ映画どしどし見るぞ~。ベルッチはよかった。お化粧なしだとさすがにシワとかあるけど、それでもきれいだしね。