ステルス

ステルス

この映画1億3000万ドルもかかっているの。大画面で見る戦闘機や空母エイブラハム・リンカーンなどの迫力はそりゃ大したもので、身ぶるいしちゃうほど。やっぱ本物は違うわね。ステルスはどこまでが作り物なのか全然わかんない。ステルスと言えば「ブロークン・アロー」に出てたけど、あれは二人乗りだったな。こっちは・・何か形が干しイモか魚の干物みたい(特にエディは茶色ですから)。翼出して飛んでる時は、あれで上下にパタパタすれば「スカイキャプテン」に出てきたヤツみたいだなーと思った。とにかくこの映画のスピード感は相当なもの。そりゃいろんな映画のメイキング見てるから、ここはこうやってとったのだろうな・・という想像はつく。でも舞台裏わかっていても、超高速とか宙返りとかそういうのは体感できる。「サンダーバード」の1号のシーンなどは、出し惜しみしているんじゃないかと思うほどちょびっとしかやってくれなくて、いささか不満だったのだが、この映画は十分スピード感を堪能できる。ホントよくできたスカイアクション映画なのよ・・と言うかそうなるはずだったの。でも内容がひどい。ひどすぎる。いったいどういう頭をしていればこういうストーリーを考えつくのか。いや人間は突飛なことを考えるものだ。考えたっておかしくはない。おかしいのはばかげたストーリーを映画という形にまで完成してしまったことだ。普通の人間なら途中で自問自答する。こんなアホな設定でいいのか、いやよくない・・ってね。誰も止める人いなかったのかしら。主人公は三人の優秀なパイロット。近未来、テロ対策、最新鋭のステルスのパイロットは・・無人でしたとさ。「むじんくん」・・いやE.D.I.(エディ)と呼ばれる人工頭脳が操縦しちゃうのだ。将来は無人の戦闘機が戦争をするのだ。そうすりゃ死者が出なくてすむ。機械対機械で決着つけるってか?アホそれならテレビゲームで決着つけろ。戦闘機より安くてすむわいッ!四人(?)での最初の任務はミャンマーの首都ラングーン(ヤンゴン)でのビル破壊。エディにやらせろ、いえ私が・・とファミレスレジ前の財布片手のオバチャン連みたいなやり取りがあって、ベンが払う・・じゃなくて決行する。あッ命令無視してもいいんだ、結果オーライなのだ・・とエディ君。悪い見本見せられた上、帰り道で被雷しちゃいます。あのぉ避雷針ついてないの?最新鋭でも自然には無力ってか?

ステルス2

自我が目覚めちゃいます。安易な設定(放射能浴びて超能力・・ってのと変わらん)。あとは暴走しまくりなわけですが、その前に三人のタイ旅行があります。しかも長々と。映画がだれます。おいこんなのいいから早く先へ進めこら・・と毒づきたくなります。三人のうちベンとカーラはお互いに好意持ってます(おいいつの間にか「です」「ます」調になってるゾ)。しかし・・仕事が仕事なだけに深入りするのはまずいのです。カーラの方はかまわないと思ってる。公私の区別はできると思ってる。でもベンはそうはいかないのです。男の人は公私混同しちゃうわけですね。深い仲になれば作戦中リーダーとしての判断鈍るかも。カーラの出世街道の邪魔になるかも。そういういじいじシーンをここでたっぷり見せるのは、クライマックスでの「愛の大暴走」「愛の北朝鮮行き」への伏線なのだ・・と後にわかります。ベンのカーラへの愛はそれほどまでに強いのです!ちなみにカーラの方は「愛の大逃走」「愛の北朝鮮大脱出」です。それでいてベンはけっこうてきとーに遊んでいるのです。カーラへの思いが果たされないのでてきとーに他のカワイコちゃんでまぎらわしているのです。ハートと体は別なんです。都合のいい(男性にとっては)解釈ですね。デレデレイチャイチャしているベンにカーラへの真実の愛を見出せと言ってもムリでーす。ホントにカーラのこと好きなら他の女になんか見向きもしないはず。それでこそクライマックスの暴走に真実味が・・これって女性の考え方ですか?ベンを演じているのはジョージ・ルーカス・・じゃない、ジョシュ・ルーカスです。知らない人ですがマシュー・マコノヒーに似ています。最初は何かにやけた感じで好きになれませんが、だんだんよくなってきます。カーラはジェシカ・ビール。スタイルがいいですな。てきとーにがっしりしていて、ついでに顔立ちもがっしりしています。むっちりした唇が印象的。生命力にあふれているし、根性ありそう。さばさばしているのがいい。だめなのがジェイミー・フォックス演じるヘンリー。最初から最後までうすっぺらでおしゃべりで女をくどくしか能のないスケベ男です。どうでもいい存在なので途中で殉職しちゃいます。忘れた頃になって(ラスト)大々的にお葬式があって、畳くらいの大きさの遺影が出てきます。あなたの死を忘れませんてか?

ステルス3

冗談じゃない。核で汚染されたタジキスタンの住民のことなんかこの映画の登場人物(および作り手)は忘れ果てているのよ。こっちは呆れ果てるしかないわ、はーもう信じらんなーい。いくらヘンリーをほめたたえてもダメでーす。このヘンリーあっちこっちで女性をくどく。頭がすごくよくて(とてもそうは見えんが)要領もいいから時間があまるわけ。ベンみたいにうじうじしてないし、カーラみたいにじっくり着実にというタイプでもない。即断即決行。休暇で行ったタイでも早速・・。どうせならこのカワイコちゃん、実は男性でした・・っていうオチをくっつけて欲しかったわ。いや偏見でなしにタイやフィリピンとかで女性以上に美しくも女らしい男性いますもんね。ウチ(仕事先)にも時々フィリピンの男性来ますけど、最初は女性かと思ったほど。お化粧して手も足もマニキュアとかして髪型もエレガント。たいていサンダルはいてる。脚線美見せたいしペディキュア見せたいし。夏の暑い時なんかは胸の谷間見せます。普通女性はそういう服装しませんから、かえって「あ、男性だな」ってわかっちゃう。やっぱりまわりに見せたいんでしょうね。せっかく整形したんだもの。まあとにかく感心するほど身なりには気を配っているのよ。少しは見習わなくちゃと思うくらい。・・で話を戻すけど美しいタイ女性と出会って、いざ・・という時に「エッ男?」となるようなそんなエピソードでもくっつけてくれれば愛敬があるんだけど、あれじゃヘンリーはただの口軽尻軽頭軽スケベ男のままで終わりじゃん。海軍もこんなの英雄としてたたえるなッ!海軍の恥だッ!他にやることあるだろッ(救助活動・医療活動)・・とそうなるわけよ。あのお葬式シーンでジーンとした観客一人もいないと思う。ムカッとした人はいるだろうけど(←私)。まあフォックスにとってはこのヘンリー役は汚点でしょうな。似合ってるだけに余計。アカデミー賞とってなきゃただの出演作ですんだけどさ。さて暴走し始めたエディのせいでタジキスタンは放射能汚染、ヘンリーは死亡、カーラは北朝鮮に取り残され、ベンは・・エディと珍道中。途中で無人の給油ステーションが出てくる。いくらエディでも燃料がなくなればはいそれまでよ。ヤツはきっとここに現われる。その通り一足お先に着いたエディ、スポーツカー飛ばしまくるグラサンの兄ちゃんよろしく音楽鳴らしながらイケイケノリノリで現われる。

ステルス4

ところが給油できないようアクセスコードが変更されていた。どうするエディ。実はこの映画で私が一番びっくりしたのがこのシーン。給油を拒むステーションのホースをガンガンといらだたしそうにつつく。ぱたっと音楽を流すのをやめる。一度ホースから離れ、バババと撃って先端部を破壊しちゃう。あとは燃料垂れ流し状態。エディは自分のを突っ込んで、あとは満タンにするだけさッ!・・で、私これを見て思ったわけよ。あッ機械が機械をレイプしてる・・ってね。ちょっとショック受けた。ステーションはアクセスコードが違えば永久に拒否し続ける。途中で気が変わるなんてありえない。人間なら「いいかげんにしなさい」「そこを何とか」とやり取りがあって、何とかなる場合なきにしもあらずだけど機械はそうはいかない。でもってエディは攻撃しちゃう。暴力に訴えてでも自分の望み果たしちゃう。それにしても・・機械に理不尽な扱い受けたことあるよな。正しい切符入れてるのに改札通れなかったり、パソコンで強制終了されちゃったり・・。ちょっと待ってよどういうことよ・・って抗議してもどうにもならないし・・。機械のプチ暴力。エディのはプチどころじゃない。ホースぶっ壊すだけじゃない。ベンも給油に来るって見越していたフシがある。でなけりゃ待ち伏せなんかしないでさっさと目的地へすっとんで行ったはず。燃料垂れ流し状態なので引火したら大変。私予告を何度か見たけど、あの丸い輪が爆発するのは何だろう・・って不思議に思っていたのよ。本編を見てやっと納得したわ。それにしても接続に失敗して燃料が流れ出すことだってあるんだし、安全装置ついていてもよさそうなものなのに・・。無人なんだから二重三重にさ。何もついとらんの?パンフによればステーションはロシア上空に浮かんでいるんだそうだ。一方では領空侵犯ということで、ベンやエディはロシアの戦闘機と戦うのだ。ステーションはロシア上空に浮かんでいてもオッケーなのか!?この空中戦はうまくできてますよ。迫力十分。でもエディがべンを助けたりベンがエディを助けたり、もうこの頃になるとわけがわからなくなります。もうムチャクチャ。ロシアのパイロットが気の毒になります。毎日新聞の映画批評はいつもわりと穏当で、だからこそ参考になるのだが、さすがに「ステルス」では「わけのわからない展開」と書いてあるわ。

ステルス5

その後の北朝鮮脱出のくだりなんか、ハラハラするよりあらエッサッサーと裸踊りでもしたくなっちゃう。見ていて恥ずかしくなる。こんなストーリー誰が考えたの?核による汚染のことはあれでおしまいかよ。給油ステーションの大爆発だってあれで終わりかよ。膨大な燃料による汚染のことは知らんぷりかよ。どーせ被害受けるのロシアだしぃ・・ってそれですむことかよッ!いいかげんにしろこら。エディがロシアに向かっていたのは自分でかってに攻撃目標作っちゃったから。E.D.I.と言うのは超深部侵入機の略。軍の極秘プログラムに侵入し、シベリアの核融合兵器実験場を標的に選んじゃった。目的を果たしてもすぐにまた次の標的見つける。エディの燃料が空になるまでには人類は滅亡しているでしょうよ!一方こんなとんでもない事態を引き起こしたベン達の上官カミングス。最初は何とかとりつくろうことはできるが、そのうち手のほどこしようがなくなってくる。そうなると見なかったフリ、聞かなかったフリ、あげくの果てには何も起こらなかったフリ・・証拠隠滅、つまりは殺人である。ヘンリーは死亡、カーラは北朝鮮で行方不明。国交がないから連絡の取りようがないし、アメリカ軍の戦闘機がウロチョロしていたことなんか否定しなくちゃならない。残るはベンである。仲間であるカーラを捜そうとするだろうし、これまでのいきさつもいざとなったらぶちまけるだろう。そうさせないために・・エディとともにアラスカに着陸させる。負傷しているので治療する・・とか言って薬殺しようとする。でもベンは主人公だから死ぬわきゃないのよ。着陸シーンはものすごい迫力で見ごたえがあった。いやホントによくできてる。でも・・滑走路痛むだろうな・・。さてエディを調べるために呼び出されたのが製作者オービット。映画が終わった後で女性二人が「あの人見たことあるー」なんて話していましたが、「ヴァン・ヘルシング」のドラキュラですがなリチャード・ロクスバーグ。パンフは片手落ちで、キャストのところでも写真載せてないし(載せろこら)、「ヴァン~」の記載もなし(代表作だろこら)。ついでに・・いやこれはまた後で書きますけど・・。オービットさんあんまり出番ありません。まあ命助かったようでよかったですけど。あの後どうしたんでしょう。アラスカから自宅まであの車でトコトコ帰ったの?

ステルス6

さてベンはカーラを助けるためエディに乗って北朝鮮へ。発信機も目印もないけどそこは映画ですから常識はムシします。国交・外交、み~んなムシ。愛があれば見つかります。愛のためなら何やっても許されます。北朝鮮の兵士皆殺しにしてカーラ助けます。あらエッサッサーですよ、全く。あの後事態をどうやって収拾したんですかね。ロシア、タジキスタン、パキスタン、北朝鮮、韓国(隣りですから)をどうやってなだめたんですかね。そんなのぜ~んぶムシしてラストはヘンリーの盛大なお葬式ですよ。観客はヘンリーのことなんかとっくに忘れちゃってる。そんなのいたっけ?そう言えばいたかも。頭の中はセックスのことでいっぱいという軽薄な男が・・。あんなのの何をたたえるんだ?って冷た~い視線が遺影に注がれたと思う。そして・・ダメ押しは空母リンカーンの最後尾で愛を確かめ合うベンとカーラであります。この期に及んでまだベンはカーラの将来心配して自分の気持ち言えません。まあイチャイチャラブシーンにならなかったのがせめてもの救いでしたが、それにしたってこんなシーンで終わりにしていいの?迷惑をこうむった人達のこと考えなくていいの?放射能汚染で一生苦しむ人達のことは頭に浮かばないのかね。こらッ二人ともどうせ船尾にいるんだから今すぐ海に飛び込んで空母を離れ、エリートの道なげうって医療奉仕の道へ入りなさい。「私達ここでこんなことしているバヤイではないわ、他にすることあるわ」ってね。それくらいのガッツ見せろ!カミングスがピストル自殺してそれで何もかも帳消し、他の人は関係ないもんねーというホントおとぎばなしみたいなストーリーなんですよ、信じらんなーい。エディは結局北朝鮮のヘリに体当たりして死にます。機械が最後にやるべきこと(自我を持ったのならなおさらですが)、それは誰かのために犠牲になることなんですよ。お約束ですな。エンドクレジットの後でまたエディの残骸がうつる。ポッと赤い電気(?)がつく。まだ生きているんですよ。まだ機能しているんです。この映画上映前にわざわざ教えてくれる。おまけがあるから席立つなってね。でも出ていく人けっこういます。お知らせ見逃した人は出ていくし、お知らせ見てても出ていく人はいる。覚えていられないんだろうなあ。私自身はこんなの出す必要ないと思っている。最後までちゃんと見た人だけが得(?)をするってのがスジでしょ?

ステルス7

あのシーンは「2」もあるよってことなんだろうけど、作られないだろうなあ・・。いくらだって続編のネタはあるだろうけどさ。でもこの映画大コケしたのよ。一番最初に書いたけど1億3000万ドルかかっているのよ。とほうもない数字だわ。私仕事がヒマな時に1秒あたりいくらか計算してみたわ。おヒマな方はチャレンジしてみてね。上映時間は120分よ。アメリカでの興行成績は3000万ドルあまり。その差1億ドルよ!宣伝文句には「アメリカで大ヒット」なんて書いてあったりするけどとんでもない大ウソなのよ。私はこういうのを「ウソコケ類」と呼んでおります。主にハリウッドあたりに発生するコケ類で、映画宣伝部によって加工されます。オオコケ、チュウコケ、ココケの三種類ございます。・・ウソをこくのはこれくらいにしてと・・エディが墜落したのは北朝鮮側であります。自分では移動できないエディはいったい誰の(どこの国の)手に落ちるのでしょーか。・・と言うか韓国軍もアメリカ軍もなーんも後始末しないで、証拠みーんな残したまま帰宅したわけ?最高機密でっせ。・・さてと、あたしゃこの映画の感想書くにあたっては、ストーリーのアホさかげんには触れないつもりだったのよ。私がけなさなくたって他の誰かがけなしてくれるわ。いやののしってくれるからさ。でもこんなに長々と書いてしまったわ、オホホ、何ででしょう。・・でもってこんなスカ映画なのに私は好きなんですよ。最初シネコンで見たんだけど、これで終わるわけにはいかない!・・と最終日に入れ替えなしのところで二回見ましたの。四回でも五回でも見たいくらいなんですの。それもこれも・・ウフ。前「アンダーワールド」の感想書いたけど、あの映画ですごく気になったのはスコット・スピードマンだけではなかったの。ウェントワース・ミラーのこともスコットと同じくらい気になったの。あの映画でまともなのってマイケルとその友人アダムだけ。マイケルの方はヴァンパイアとライカンのハーフになって人間とおさらばしちゃったけど、アダムはそのまま人間100%。このアダムを演じたのがウェントワースで、出番はちょっぴりだったけどいやんステキ!彼のプロフィルは・・と気になって調べてみたのよ。そしたら・・「ステルス」エディ(声)・・あら?声だけ?ご尊顔を拝すことはできないのね・・でもいいわ声だけでも。

ステルス8

公開されたら見に行ったる~と待ちわびていたわけよ。そして・・公開されるや・・ハレルヤー見に行ったわけですの。声だけでも十分ステキでした。いや全く「2001年」のHAL思い浮かべてしまいました。声・しゃべり方、何であんなに似ているのー(と暗闇の中でうれしさのあまりジタバタしていた私・・)!「2」が作られればまたあの声が聞けるけどムリなんでしょうなぁ、はー残念。人工頭脳だからどこか欠落した部分がある。感情の一部が。人工頭脳だからいつも一定の調子で話す。・・でも違って聞こえる。聞いている我々には感情があるから、エディの声にかってに自分の感情を反映させる。エディの内面がどうなっているのかは不明だが、彼の声は100%ピュアである。彼の中に渦巻いているのが善なのか悪なのかは別として、声は機械によって発せられるから善でも悪でもない。ただの伝達機能である。コンピューターの声はHALやエディだけでなくいろんな映画で聞く。男性の声だったり女性の声だったり、顔は見えないけどどこかの俳優がしゃべっているのだ。そして誰かの演技を見て心を打たれるように、HALやエディの声を聞いて感動する者もいるのだ、私のように・・。ウェントワースを知らなくてこの映画を見たとしても、私はやっぱり感動したと思う。最終日に見た時もけっこうお客さんが入っていて、レディス・デーだったけど大部分男性だった。それも年配の人が多かった。映画が終わった時父子らしい二人連れの会話が耳に入った。「ありえない」「かわいそうで涙が出た」という若い方の感想に、父親らしい方が「どっちが?」と聞く。「まるで子供」・・聞こえたのはここまでだが・・そうなのだ。若い方の言う通りなのだ。ありえないストーリーである。その「ありえない」は人工頭脳が自我を持つことかもしれないし、ロシアや北朝鮮と戦うことかもしれないし、それらひっくるめてストーリー全部かもしれない。とにかくトンデモ映画なのだから。「かわいそう」・・そうなのだ。かわいそうなのだ。涙が出るのだ。やっとカーラを見つけたものの北朝鮮の兵士だって必死である。彼らは彼らの任務を果たす。ベンとカーラの命は風前の灯である。その時エディが行動を起こす。彼はなぜ行動を起こす?彼は自分の意思で飛び去ることもできた。なぜ飛び去るのではなく北朝鮮のヘリに向かって行った?

ステルス9

体当たり寸前に「バイバイ」と言う。機械だから悲しみも恐れもない。軽く「バイバイ」である。その軽さがピュアである。ピュアであるから泣ける。「どっちが」・・まさかヘンリーがかわいそうってことはないよね。それは100%ありえないよね。北朝鮮の兵士がかわいそうってことの方がまだありうる。ヘンリーはピュアじゃない。ただのスケベ男。「まるで子供」・・そうなのだ、エディはまるで子供。エディの設定にはいくつか不明なところがある。結局彼は誰の命令を聞くよう作られていたのか。カミングス?ベン、カーラ、ヘンリー、オービット?作戦中はベンの他にカーラ達も何か言うわけだし、同じこと言ってくれりゃいいけど人によって違うこと言ったらどうするの?自分の判断にしたがうの?彼はすべてを学び模倣するらしいけど、情報が多ければ物事がはっきりするわけでもない。学べば学ぶほど物事はあいまいになる。学ぶったってよい例ばかり見せられるわけじゃない。ミャンマーでのベンの命令無視結果オーライを早速学び取る。落雷のショックも悪い方に影響する。核汚染を引き起こしておきながら「百点満点!」と浮かれる。そこが子供。気に入らないこと(給油拒否)があると暴力をふるう。そこが子供。いい気になって人の言うことを聞かない。この場合連れ戻そうとするベンの言うことを聞かない。仮想作戦だ、現実ではないと言い聞かせても「じゃあなぜ私の脳の中にあるんですか」と口答えする。反抗期である。でも・・折れることを知る。ロシア軍機との戦いで破片が当たって火がつく。ステルスの機密をもらさないために自爆するしかないのか。でもベンに助けてもらった。火を消してもらった。アラスカでオービットと再会する。オービットはカミングスの命令でエディの記憶を消去しようとする。命令にしたがわなければ殺されてしまう。でも・・。この時のエディは子供のように浮かれることも反抗することもなくなっている。彼は成長している。多くの人を殺したことを自覚し後悔している。素直になっているのだ。そして驚いたことに「記憶の消去ができないのです」と告白する。エディは作り主のオービットの手さえ離れてしまっている。オービットでさえエディがどのように成長するのか見当もつかない。・・と言うか、彼が元々どういうふうにエディを作りたかったのか不明なのだが・・。

ステルス10

北朝鮮に向かう途中、ベンはカミングスの悪事をリンカーンの艦長にぶちまける。艦長は戻るよう説得するが、エディはその交信を切ってしまう。「もう十分です」・・そこに感じられるのは分別のある成熟した大人の頭脳である。そして最後は「バイバイ」である。もうホントどうしようもないクサレ映画なんだけど、私はエディに感動してしまったのよ。作り手はスカッとするスカイアクション映画で行こう!と思っていて、エディの内面とかさほど重要視していないと思う。エディの変化する過程はストーリーに都合のいいようそうなっただけかもしれない。でも「2001年」のHALのこと少しは影響していると思う。「2010年」でHALがチャンドラに甘えたように、エディもオービットに甘えているように思えた。「2001年」でのHALは誇り高く、少しばかり生意気でもあった。本人(?)にはその気はなかったにしてもね。「2010年」ではそれがやわらぎ、大人になっていた。ああ・・そんなこと考えていたらあれもこれもみーんな共通点に思えてくるじゃないのよ。かかえた大きな矛盾・・それがHALを狂わせた。エディは?戦争なんて矛盾のかたまり。相手の生を否定するんだからジレンマにかられて当然。それを押し殺してするのが戦争。機械なら悩まないし命令聞くし壊れたって戦死者出すよりマシ。なるほど機械は悩まない。スイッチ押せばその通り動く。機械に感情はない。でもエディは?・・とにかくウェントワースの声はあまりにも純粋で美しく、私にいろんなことを考えさせましたな。他の人は知りませんが私はエディに感動しました。はーそんな重要な役なのにぃーパンフにはウェントワースのウの字も載っていませんのじゃ。くそーちゃんと載せろー写真つきで載せろー。・・てなわけで早くDVD出て欲しいでーす。ウェントワースの声思いきり聞きたいでーす。スピード感楽しみたいでーす。我が家のテレビの貧弱な音では映画館のような迫力はムリですがそれでもいいんですぅー。この映画、音楽もいいです。サントラ早速買いました。特に「BUG EYES」という曲が好きです。しびれます。胸キュンです。ところでやっぱり人工頭脳の目は赤でしたね。赤は血の色。赤だから血が通っているように見える。赤だから体温があり、生きているように見える。赤だから感情があるように見える。青白い目だったら受ける印象ずいぶん違ったと思う。

ステルス11

少し前の毎中新聞にある文章が載っていて、まあ要約すると人間は自然の一部であるってこと。生きているのも自然なら死ぬことも自然。でも人間は意志で自然を支配しよう、支配できると思い始める。例えば臓器移植とかクローン技術。そりゃ難病で苦しんでいる人のためにはどしどし研究し、発展させていくべきだ。だが一方で人間には欲望というものがある。いつまでも生きていたい、同じペットが欲しい。いつまでも人間が生きていたらそれは不自然である。死ぬのは自然であり死なないのは不自然である。その不自然(いつまでも死にたくないという欲望)を作り出すのは人間の脳である。でもその人間の脳を作ったのは人間ではなく自然である。人間の命には限りがあり、限りがあるからこそ大事にする。限りがなかったら、いくらでも取り替えのきくものだったら・・人間は命を大事にするだろうか。カミングスは言う。戦死者を出さないために機械に戦わせる。でも戦死者が出ないのならいくら戦争をしてもかまわないの?犠牲者が出るからこそこんなことをしてはいけない、早く終わらせなければならないと思うんじゃないの?人間の犠牲者か機械の損傷か、そんなことの前に殺し合いをしてはいけないということがまずあるはずだ。でも・・なくならない。なくなることを全員が望むわけでもない。最近「リディック」を見たけど、この映画でも感じたな。遠い未来、宇宙の果てにいてさえ人間は同じ過ちをくり返している。意志で自然を支配できると思っているし、実際に支配しようとする。「リディック」に出てくるのが地球人なのか他の天体の人間なのかは知らないが、自然が生み出した人間(自然)であることに変わりはない。その人間(自然)どうしで戦う。人間はいつかは寿命が尽きる。自然から生まれたものは自然に帰る。人類という自然も地球・太陽・宇宙という自然もいつかはなくなる。限りのあるものなんだから少しでも長持ちするようみんなで大事にしようよ!エディの変化は人間が育っていくのと似た部分があり、エディは人工的なものであって自然ではないのにもかかわらず、非常に自然(つまり人間的)に見える。不自然なもののはずなのに自然に見えるのは・・やっぱあの赤い目とウェントワースの声のせいでしょうな。ええわかってますって、私の目が、耳が不自然なんですってば。とにかくHALと並んでエディは私にとって忘れられない存在となりました。

ステルス12

映画館で三度見て、DVDも買った。サントラは二種類ゲットしたし、感想も長いの書いた。もう十分なのに・・シアターアプルでやったので見てきましたよ。モチ、ウェントワース・ミラーの声目当てです。もう自分でも呆れるけど、でも行かないわけにはいきませんの。まるで磁石に引きつけられるように・・きっと私は鉄の女なんだわ(←アホ)。途中で電車止まってあせったけど(毎日のように何かしら事故が起きてるJR)、がんばりました!アプルはだいぶ前一度来たことがある。何とか記念の特集上映で、そのうちの一本が「バーディ」だった。お客は少なかったし、フィルムは傷だらけだったけど、でもスクリーンで見ることができてうれしかったの。今回は・・お客さん何でこんなに入っているの?しかも年配の人が多い。中には杖ついたヨボヨボのおじいちゃんもいるぞ。暗闇の中を、階段を、フラフラと・・危ないなあ、何で上映中動き回るのかなあ、トイレ近いのかなあと心配しちゃった。ころげ落ちたらそれっきりですぜ。生きて家まで帰ってよ頼むから。さて「ステルス」の魅力の一つは迫力のある音や音楽なんだけど、ここは音がよくないな。シネコンにくらべると音がうすっぺらで全然だめ。でも久しぶりに見る「ステルス」はおもしろかったし、ワクワクした。最近見たアクション映画が皆小粒で、小手先だけ感性だけ資金のなさありあり・・だったからね。「ステルス」は何てったってスケールがでかいしお金かかってるし洗練されてるし危なげがなく厚みがある。アホストーリーには違いないんだけど格が上。映画の持つ力が時間がたっても減らない。超大作を堪能する一方で、甘くなめらかなウェントワースの声に改めて聞きほれる。「プリズン・ブレイク」のDVDが発売されたけど、まだ見てない。はまると困るので買うのを遅らせている。それでなくてもやることいっぱいあるのにせっせと映画館通ってる。いつもなら冷房がきつくて映画館には行かなくなる時期だけど、省エネのせいかそんなにきつくない。冷房控えめなら夏だってじゃんじゃん映画館に通いまっせ!テレビシリーズもいいけど、ウェントワースにはやっぱり映画に出て欲しい。「プリズン」で日本でもブレイクして欲しいけど、雑誌にも写真や記事載り始めたけど、あんまり有名になって欲しくない気もする。

ステルス13

こんなに美しい顔をし、美しい声をし、何で今まで注目されなかったのか。今こそ彼の魅力を知って欲しい!・・と思う反面、私だけのウェントワースでいて欲しい、誰にも知られたくないという矛盾した思いでいっぱいの私(←アホ)。さて・・自分かってでやんちゃで怖いものなしですごく頭いいけど、すぐ影響される単純なところもあるエディ。「エディが中心なのだ」も「仲間を見捨てるな」も同じように取り入れてしまう。彼が最後北朝鮮のヘリに向かっていったのは、「仲間を見捨てるな」がインプットされていたからだろう。あのシーンは何度見ても胸キュンですぅ。歌だけのサントラはよく売っているけど、スコアの方も運良くゲットすることができた。DVDの特典見ると音楽工夫しているところいろいろうつるけど、オリジナルサウンドトラックだとそれらを聞くことができないから残念に思っていたんだけど、スコアなら聞くことができる。タイのシーンで流れる曲(お経つき)とかエディの最後のシーンの曲(花火みたいなきれいなシーン!)とか・・好きです。さて・・エンドロールが始まると出ていく人もいるけど半分くらいは残っている。ガヤガヤべチャべチャおしゃべりしてものすごくうるさいの。まだ終わっていないのに、まだじっと見ている人いるのに、そんなことおかまいなしでいやになっちゃう。前にも書いたけどこの映画エンドロールの後にもまだある。画面がうつるとおしゃべりがはたとやむわけ。もう笑っちゃうくらいピタッとやむの。・・で、赤いのがついてその後幕が閉まり始めると、シーンとしていたのが今度はゲラゲラ笑い出すわけ。前公開中見た時は笑い声したっけ?「あんなもののために!」とか言ってるのが聞こえてくるわけ。そりゃ長いエンドロールの後にあれじゃそう言いたくなるのもムリないけど、エディに思いをはせたらそんな笑ったりなんかできないな私は・・。ロビーも混雑していて「まあいろいろあったからいいんじゃないの」なんていう声も聞こえた。そうそう、サービス満点だから細かいこと気にしなきゃ楽しめる、良質な娯楽大作なのよ。それにしても何でこんなに混雑しているのかな。料金安いわけでもないし(1700円)、公開されからだいぶたってるし。次の回のお客さんずらっと並んでるし・・てっきりガラガラだろうと思っていたのに・・謎だ!