ステイ

ステイ

この映画はわかりにくい内容らしいってことしか前知識はなし。公開時見に行こうと思ったけど東京でしかやってなくて・・。そのうちこっちでもやるだろうと思っていたら来なくて・・。DVDをレンタルして見てみた。ウーム、ファーストシーンからちょっとわけわからんぞ。交通事故の現場みたいだが誰もいなくてライアン・ゴズリングが歩き出す。次にユアン・マクレガーがうつって・・。キャハッ、ユアンあんた精神科医ってガラじゃないでしょ。患者の方ならわかるけど。ミスキャストでしょウヒ。でも・・正直言うと私こういうユアン待っていたんですの。最近あんまり見かけないユアン。でもそれは私が「スターウォーズ」とか見ないからであって、ちゃんと出てはいるんだろうけどさ。私が待っていたのは憂いに沈むユアン。最初に彼を見たのは「ナイトウォッチ」だと思うけど、本格的に注目したのは「氷の接吻」から。ああいうキャラのユアンをもう一度見たい!とずーっと思っていたの。有能だけど内向的で現実の世界ではあまりうまく立ち回れない。人生に疲れたような悲しげな顔つき。沈んだ感じの日常生活。必ずしも不幸ってわけじゃないけどちょっと暗い。サム(ユアン)には自殺未遂経験のある元患者ライラ(ナオミ・ワッツ)という恋人がいる。うまくいっていないわけでもないのに楽しそうじゃない。何かはっきりしないけどいつも表情が暗い。ウッ!モロ私好みのユアン。ラッキーの再来!サムは時々妙な体験をする。何度も同じ体験をする。まわりの人間が妙な言葉をつぶやく。映像もおかしい。巻き戻して何度も同じもの見せたり。見た後でネットで調べたら主人公が「ハイド・アンド・シーク」や「シークレット・ウインドウ」と同じタイプなのではと思ってしまった・・とか書いてあって、そう思ったのは私だけじゃなかったのね・・とおかしかった。サムは自殺予告をする患者ヘンリー(ゴズリング)のことが気になる。なぜ自殺するのか。ヘンリーの言動は謎めいていてはっきりしない。ヘンリーがはっきりしないのはわかるけど(精神を病んでいるのだから)、医者であるサムの方がこれまた不安定なのはなぜなのか。見ていてヘンリーよりもサムの方が気にかかる。彼は正常なのだろうか。ヘンリーの自殺予告には彼が何か関係しているのでは?

ステイ2

彼自身には何も思いあたることがないのは、もしかして彼は二重人格で、片割れの方が何かやっているのでは?・・とかさ、あれこれ勘ぐっちゃった。さて、ゴズリングの方は「完全犯罪クラブ」で初めて見て、ニコラス・ケイジに似ているなあ・・と。感情の起伏が激しく危うい感じとか、いつも泣きそうな顔をしているところとか。今年はアカデミー賞にノミネートされたし、別の作品ではアンソニー・ホプキンスと共演していたし(そう言えば日本ではまだ公開されていないな)、まあ上り調子にあるようで・・。「ステイ」での彼はいかにも・・って感じ。思わせぶり、あいまい、悲劇的、女々しい、しめっぽい。はまり役だがくさい芝居なので時々鼻につく。普通ならヘンリーに感情移入して彼の運命案じるものだが、他の人は知らないが、私はぜ~んぜん。前にも書いたようにこういう役やって欲しいと願う、そのものずばりのユアンに会えたので、もううれしくてうれしくて。こんなユアン見たら彼の方が気になって。ゴズリングのヘンリーなんかどうでもよかったんですのウヒ。ユアンはミスキャストなんだろうけどそんなことはどうでもいいの。サムには幸せになって欲しい。ライラとじゃあんまりうまくいかないと思うよ・・なんて。その間にもストーリーはますますわけがわからなくなってくる。まるで地獄まで続いているような長い長い階段。突然流れ出す血。まるでホラー映画みたいになってくる。・・それにしてもヘンリーはいったい何なのさ。何で死にたいわけ?別に病気ってわけじゃない。お金に困っているわけじゃない。絵を学んでいるけど才能ないわけじゃない。恋人もいる。そんなに急いで死ななくたって寿命が来ればいやでも死ななくちゃならないのに。でもってこういう謎の数々がいっぱいにふくれ上がって、いったいどう始末つけるねん・・と思わせておいて・・ラスト、ばーっと真相明かすわけですの。その頃にはもう冒頭の交通事故の現場のことなんか忘れているけど、ここで一気に戻ってくるわけ。ここらへんは「ドニー・ダーコ」に似ている。つまり前にも同じような手法の映画見ているわけで、少しびっくりし、少し感心するものの、それ以上のものはない。本当はここでじわじわと感動がこみ上げてくるとか、そういう状態でなくちゃいけないんだろうけど。あッそうなんだ、「ドニー・ダーコ」と同じね・・ってそれで終わり。

ステイ3

まあ私が思ったのは・・同じ1秒でもある人にとっては短く、ある人にとっては長いということ。ありがたいことに私は1秒をとてつもなく長く感じたという経験はまだないけどね。交通事故の瞬間、すべてがスローモーションに見えたという話は聞いたことあるけど。今まで我々が見てきたことは、全部ヘンリーの頭の中でのこと。彼が一瞬のうちに物語を作り上げてしまったというのはまあわかる。ただ、その物語の中で自分が中心にいない部分が多いのはなぜ?この映画での中心はサムである。サムの物語であって、ヘンリーは時々カゲを落としているだけ。何で自分中心じゃないの?結局ラストは・・ヘンリーの運命に関しては悲しいと見るべきなのか、むなしいと見るべきなのか。ずっと見てきたことが無意味なものとわかるのは、あまりうれしくない。あの凝った映像は・・思わせぶりな演技は・・奇妙なくり返しは・・。でも・・私も負けずにくり返し言うけど、私好みのユアン見ることができたので失望はしません(きっぱり)!即DVD買って私のユアンを永久保存。憂いに満ちたユアン・・ウヒ。物語の中でサムが主人公になっている理由も、何度か見るとそのうち何となくわかってくる。とにかく今にも死にそうな自分じゃなくて、健康な誰かのことを考えたかったのよ。物語の主人公には今死ぬ危険のない人物据えて、少しでも自分の今の状況忘れようとしたんだと思う。でも自分が死にかけていることはわかるから、自殺願望の男ということで折り合いをつけたのよ。自殺は誰か止めてくれるかもしれないし、自分で思いとどまることもできる。交通事故で死ぬのとは違うのよ。ああ、でもヘンリーは死んでしまう。サムとライラに見守られながら・・。まあ見終わって、さんざん思わせぶりな描写しといて何だよ~って思う人もいるんだろうけど、私は別にぃ。物悲しいけどほのかに希望が感じられる終わり方はよかったと思う。ヘンリーを救うことはできなかったけど、サムとライラはこれが縁で知り合い、お互い好意をいだき、なぜか初対面とは思えなくて・・。いくつかの命が失われた現場だけど一つの出会いがあり・・。余韻のあるいいラストだった。