スタンドオフ

スタンドオフ

新味の全くない、いかにも低予算という感じの映画。登場人物は・・女の子とそのおばさん、その彼氏、神父と男一人、主人公の殺し屋と元軍人、その妻と息子、若い警官・・これで10人。あとは声だけの警官とワンコが一匹。舞台は野っぱらに立つ一軒家がほとんど、あとは墓地。地域限定の過疎映画。ある日、生きていくことに絶望して自殺を図ろうとしていたカーター(トーマス・ジェーン)のところへ、殺し屋(ローレンス・フィッシュバーン)に追われた少女バード(エラ・バレンタイン)が逃げ込んでくる。カーターは自殺も忘れ、会ったばかりの少女のために殺し屋と戦う。外部への通信手段はなく、弾は一発しかない。すご腕の殺し屋とどう立ち向かうのか。ラストは・・少女が死ぬことはありえないから、殺し屋が死ぬか、殺し屋とカーターどちらも死ぬかの二つしかない。殺し屋が生き残って改心するとは考えにくい。私がこれを見たのはモチ、ジェーンが出ているからだ。WOWOWのガイドブックを見ても、どっちが殺し屋なのかわからない。ジェーンが悪役だったらいやだなあと思いながら見ていたら・・フィッシュバーンが殺し屋だった(ああ、よかった)。墓地でクレイトンという男の葬式をやっている。彼がどういう人間で、なぜ死んだのかは不明。そこへ殺し屋が現われ、神父、ジェーン(バードのおば)、男(ボディガード?)を次々と殺す。死体と凶器を墓穴へ投げ込み、土を入れ始める。少し離れたところからそれらを目撃していたのがバード。カメラ好きの彼女は殺し屋の顔もうつしていた。殺し屋はマスクをしているが、殺す時にはそれを取って相手に顔をさらす。顔を見た者は殺すというのが彼のスタイル。何も知らず近づいてきたロジャー(ジェーンの彼氏)も殺す。その時、殺し屋はバードと、彼女が手にしているカメラに気づく。で、必死に逃げた少女が駆け込んだのがカーターの家。カーターの回想が時々入るので、そのうち彼の過去がわかってくる。元々は妻のマーラと息子サムとの三人暮らし。退役後農場をやっていたが、開発計画か何かのせいで立ちゆかなくなる。ある日、ビール飲んでぼーっとしている間に、大事な大事な息子が死んじゃった。

スタンドオフ2

犬と遊んでいて、けつまずいて転んだ拍子に頭を石にぶつけて即死したらしい。不慮の事故だけど、カーターは自分が目を離したばっかりに・・と酒びたりに。マーラも家を出てしまい、生きる気力なくしたカーターは、遺書を書いて、さあという時に少女の悲鳴を聞く。何事かとドアを開けると少女が飛び込んできて、追ってきた男が発砲。カーターの足に当たる。黒ずくめでマスクしてるし、こりゃどっちが悪者かは一目瞭然なので、二人して大急ぎで二階へ。階段を上がってこようとする男に一発お見舞いし、それは脇腹に当たる。相手も銃を持ってるとなると、殺し屋もうかつには上がっていけず、階段の下と上とでこう着状態に。カーターの方は弾はあと一発しかない。しかも至近距離でないと効果が出にくい散弾銃。電話は一階にあって、しかも不通。ケータイも一階に置いたまま。こりゃ困った。まわりは野っぱらで、異変に気づいて誰かが来てくれる当てもない。ただ、相手はこっちが弾一発しかないってのは知らない。まず電球を割って、階段にガラスの破片をばらまく。上がってきたら音がするように。でもこれって下りていく時も音がするってことで。相手が少女なので、殺し屋に狙われる理由聞いても知るまいと、ろくに聞きもしなかったな。はっきりしているのはバードが殺し屋の素顔を見、しかも撮影してしまったということ。他の映画と違い、何度も銃撃戦というわけにはいかない。カーターは撃ち損じたらおしまいだから。したがって銃の代わりに言葉の応酬となり、どうしても動きが少なくなる。どなるとフィッシュバーンはサミュエル・L・ジャクソンみたいになっちゃうし。片方は黙っていた方がメリハリが出て、かえって緊張感増すと思うけど。ただ、後で考えると、言葉の応酬にもそれなりの意味があったようで。例えばカーターはフィルムを厳重にくるんで、バードに言ってトイレのタンクに隠させる。普通ならそのことは殺し屋には黙ってるはずだが、カーターはしゃべる。何とおしゃべりな・・でも、実はしゃべることで殺し屋の行動を牽制したのだ。殺し屋は家ごと燃やせば片がつく・・と、火をつけようとしていたが、フィルムは水の中にあって、燃えずに残ると言われ、断念する。

スタンドオフ3

バレンタインは「赤毛のアン」に出ているらしい。演技は達者だが、幼いようでいて実年齢より上の女っぽさを見せる時もあり、そこらへんはやや余計な感じ。まあ死んだ息子と同じくらいの少年が助けを求めて・・じゃ、偶然にもほどがあるから少女にしたんだろうけど、私は男の子の方がよかったな。女の子にするにしても、カーターは息子しか育てたことがないのだから、どう接していいかわからず当惑するとか・・。さて、殺し屋は室内を物色し始める。カーターのことをよく知るためだ。家族三人でうつした写真、しかもカーターは軍服姿。まずいことに落ちていた遺書を見つけ、読まれちゃった!殺し屋はあまりの皮肉さに大笑いだ。言うこと聞けばこっちはさっさと出ていく。何しろカーターは殺し屋の素顔は見ていないのだから、殺す必要はないというわけ。でもそれを信じるほどカーターはおめでたくない。フィルムとバードを差し出しても、マスク取って顔を見せて、それから殺すに決まってる。殺し屋がいつまでもぐずぐずしているのは、失敗するなんてプライドが許さないからだ。彼がつかまっても、殺しの依頼人の素性がばれることはない。だから依頼人を守るためではないのだ。自分のためなのだ。助けを呼ぶこともしない。一匹狼だから仲間はいないのだ。これらは彼の足かせでもある。カーターより彼の方が重傷だから、本当はできるだけ遠くに逃げ、できるだけ早く医者に見てもらわなければならないのだ。途中で、こう着状態を破るため、警官のジェラルドが出てくる。パトロール中で、本部にいる無線係に小僧、小僧とからかわれ、いささか頭にきている。道に止めてある二台の車を見て不審に思う。墓地にはひとけがなく、棺が埋められたばかりらしい。時間的に、殺し屋が穴を全部埋めるヒマはなかったと思うが、そこらへんは無視される。ジェラルドは草むらに倒れているロジャーの死体には気がつかない。署に連絡しても、詳しいことは言わない。もう少し調べてから・・と慎重。と言うか、何か言ってからかわれるのがいやなんだろう。警官の登場で少し期待した我々も、ああこりゃだめだ・・と失望する。見るからに無能で、犠牲者タイプ。今自分がどこにいるかくらい言えよ!

スタンドオフ4

銃声を聞いてカーターの家に行くけど、玄関のドア越しに撃たれる。警戒心ゼロ。死んだかと思ったら生きていて、少女と交換に・・なんて言われるけど、カーターは応じない。腹を撃たれた上、トンカチで指をつぶされ、あげくの果ては・・。まあ気の毒ではあるけれど、このジェラルド君あまりにもお間抜けです。銃声がしてもあんまり警戒してない。射撃場があって、銃声なんか珍しくもないのか。連絡が途絶えても警察が動いた気配なし。神父さんだっていなくなってるし、夜になれば家人も心配するはずだが描かれない。無線係も、きっと声だけだろうな・・と思っていたらその通りだった。節約、節約。やがて夜になる。二階にいて発電機をいじれないから、このままだと電気が消えてしまう。真っ暗闇になったらまずいぞ。途中で殺し屋は屋根に上がって侵入しようとする。足音立てないよう裸足になって・・。その後はかなりイタイ思いをする。階段にまかれたガラスのせいでね・・「ダイ・ハード」みたい。いくら緊張していてもそのうちモーローとしてくる。殺し屋は出血と酒、カーターは大量の痛み止めと酒のせいで。赤い光が差して、おや?早くも夜明けかいな・・と思ったら。ここはなかなか凝ったうつし方。殺し屋が悪夢を見ているのかと思ったけど、違った。赤い光は車のライトで、何と殺し屋はカーターのケータイを利用してマーラをおびき出したのだ、頭いい!バードを引き渡すか、妻を見殺しにするか・・さあ、どうするカーター!ラストの方で散弾銃には弾が入っていなかったことがわかるが、あれってどういうことなのだろう。二発目はいつ撃ったんだ?最初は、あの殺し屋が階段を転げ落ちる時に撃ったんだと思ったけど、その後も銃構えてるし、てことは弾があるってことで。殺し屋が転げ落ちたのは、自分が発砲したはずみでか。決断を迫られたカーターは、銃をバードに持たせ、殺し屋が上がってきたら撃てと指示する。散弾銃だから、どれかは当たる。この展開は・・子供に銃を持たせるのは・・いくら相手が殺し屋でもまずいと思ったのは確か。でも、実は弾は入ってなくて。バードを下に行かせるわけにはいかないから、自分が手ぶらで下りていく。バードは当然下りていかないでと懇願するから、銃を持たせ、自分はこれがあると小さなナイフを見せる。殺し屋はナイフのことは知らないし、手ぶらだからすぐ撃つことはしないはず。油断させ、スキを見つけて・・。

スタンドオフ5

たとえ相討ちになっても、妻とバードが助かればいい。自分は息子のところへ行くのだ。弾を抜くところはうつらないが、たぶん間違ってバードやマーラに当たったらまずいし、子供に人殺しはさせたくなかったのだと思う。まあここらへんは私の妄想で、本当のところは不明だが。彼は今回のことは、巻き込まれたのではなく、何か意味があるのだと思っている。息子は助けられなかったけど、この少女を助けるためには力を尽くす。それで償いになるのではないかとか・・これも私の妄想だが。バードは両親を交通事故でなくし、今回おばもなくしたから、家族との縁の薄い子と言える。父親に言われた「失うものは何もない」という言葉を大事にしているような、ちょっと変わった子。で、この言葉はカーターにもしっくり来るのだ。現にこの世におさらばしようと思っていたわけだし。今後どうなるのだろう。ジェラルドの妻子のこと考えれば、ここにはいられないだろうな。カーターやバードの責任ではないけど。てなわけで、さほど出来がいいわけじゃないけど、私のようなジェーンのファンにとっては十分楽しめる映画だった。フィッシュバーンファンにとっても同様だろう。緊迫感があって楽しめたと書いてる人がいる一方、退屈で見ているのが苦痛という人も。「ドント・ブリーズ」と比較している人が多く、確かに共通点はあるものの、あちらにはあった途中の仰天するような新事実がこちらには皆無。緊迫感を楽しんだ人も、一回見ればそれで終わり。二度も、三度も見ようなどとは思うまい(ジェーンファンの私は見るけど!!)。ジェーンにはこういう・・不幸な過去を持つ孤独な一匹狼キャラが似合う。「パニッシャー」のようなキャラをずっと待ち望んでいた私にはうれしい作品。もう少し寡黙ならなおよろし。たくましい肉体美も相変わらず。私は変に人工的な筋肉美より、こういうタイプの方が好み。ほの暗い中で目を閉じ、生きているのか死んでいるのかはっきりしなかったカーター。美しい横顔を固唾をのんで見守ったのは、私だけではありますまい。マーラ役はジョアンナ・ダグラス、ロジャー役ジョン・テンチは「AVA エイリアンVS.エイリアン インベージョン」に出ていたらしい。あッ、トラックの運ちゃんね!