スペル

スペル

監督はサム・ライミ。のびのびと楽しんで作ったんだろうなあ。見る前からこういう映画は予想がつく。大きな音でびっくりさせ、不快な音で怖さをあおる。気持ちの悪いシーン、残酷なシーンはあるが、笑える感じで作ってある。一度すんで、やれやれとなるが、後で必ずもう一度くり返される。解決したように見えてラストで引っくり返り、尻切れトンボか次へ続くみたいにしてある。後味が悪い。これらの予想が全部当たる。私は後味が悪いのは嫌いだ。映画を見るのはスカッとしたいからであって、どよんとしたいからじゃない。銀行の融資係クリスティーン(アリソン・ローマン)は、ふとしたことから老婆に呪いをかけられる。占い師ラムに見てもらうと、三日間あれこれ悩まされたあげく、ラミアとか言う悪魔に魂を取られ、地獄に引きずり込まれてしまうらしい。呪いをかけられるくだりが、完全に逆恨みによるものなので、見ていてすっきりしない。なぜ彼女がこんな目に会わなくちゃならないのか。なぜジプシーの呪いと悪魔ラミアが結びつくのか。そもそもラミアとは何か。詳しいことはわからず、ろくな解決法もなく、彼女は助からない。アルコール依存症の母親、肥満との戦い、彼女の足を引っ張ろうとあれこれ汚い手を使う同僚・・彼女には同情すべき点が多々ある。あんな目に会って当然とは思えない。あの老婆を担当したのだって偶然だし、返済をのばしても結果は同じだったろう。どんなひどい状態になっても彼女を守ると決心している恋人クレイ(ジャスティン・ロング)の誠実さにはほろりとさせられるが、その彼の目の前で彼女は・・。他にデヴィッド・ペイマーが出ている。ラム役ディリープ・ラオはなかなかよかった。彼でなければ映画は(私にとって)かなりつまらなくなっただろう。つまりホラー映画にはブロンドのカワイコちゃんも必要だが、目の保養になる男優も必要なのだ。ロングも悪くないが、ちょっとのっぺりしていて美形とは言えない。ラオはインド系かアラブ系か知らんが、整った顔立ち。あまり力はないけど誠実で落ち着きがあり、好感が持てる。ローマンはかなり大変だったろう。でもこういう映画の常で、汚くなったりあちこちぶつかったりしても次の瞬間にはきれいになってる。ケガもしていない。顔に何かかかったり、口に突っ込まれたり吐き出したり、ありとあらゆることをされるが、あとをひかない。現実じゃそうはいかないと思うが。