サウンド・オブ・サンダー

サウンド・オブ・サンダー

タイムトラベルものと言えば「タイムライン」が記憶に新しい。「タイムマシン」のリメイクはテレビで見たけどおもしろくなかった。オリジナルの方がよっぽどマシ。「サウンド」の舞台は2055年の近未来。タイム・サファリ社の「6500万年前の恐竜ハンティング・ツアー」。たった5分かそこらの旅に、法外な料金といろんな制約がつくが、それにもかかわらず大人気。パンフでは六ヶ月待ち、字幕では確か六年待ちになっていたが、どっちにしろ希望者殺到。うーん、言っときますがこんなことありえませんぜ。6500万年後に行けるってんなら話は別ですが。普通の人間なら有史以前ではなく、歴史的な出来事に立ち会いたいと思うはず。それだったら大金払っても惜しくない。ところでこのツアー料金、原作では1万ドルになってる。原作が書かれた当時1ドルが日本円でいくらだったのか知らないが、私が子供の頃は長く360円だった。1万ドルなら360万円・・ですか。当時は百万長者なんていう言葉もあったし・・。さて・・こういう映画を見ていて私がいつも不思議に思うのは、キリストを登場させないこと。タイムマシンで過去へ行けるとしたら一番会ってみたいと思うのが生身のキリストでしょ。特に欧米人にとってはさ。でも避けているのよねー。今回はタイムトラベルの仕組みはあまり説明されておらず、虫食い穴を利用しているらしい。まあそれは別にいいです。よくないのは毎日のように6500万年を行ったり来たりしていること。一度粒子に分解されて再構築。「タイムライン」では、それが人体に悪影響与えるからそう何度もタイムトラベルはできないという設定。でもこの映画では何度でも平気なの。まあそれもいいとしましょうよ。よくないのはこの事業が営利目的で行なわれていること。社長のハットンにはタイムトラベルの知識はない。あるのは金儲けの知識、手腕、人を言いくるめる弁舌だけ。いろんな規則が設けられ、政府の役人によって厳しくチェックされている。いるけどそれは袖の下でどうにでもなる。ハットンに限らずお金大好き人間は、起こるかどうかわからないことに大金かけて防護策取るのは好きじゃない。袖の下の方が安くあがる。今回の事件はツアー客の一人が過去をほんのちょっと変えてしまったせいで起きた。持ち帰ってはいけないものを(自分では気づかずに)持ち帰ってしまった。

サウンド・オブ・サンダー2

ほんのささいな過去の変化だが、それが6500万年分となると大変な変化(になるかなあ?)。進化の波が押し寄せ、2055年は大混乱。人類の存続さえ危うい。でも・・過去に戻って原因取り除けば大丈夫。今回の事件は起こらなかったことになり、したがって人類は安泰。さんざん怖がらせておいて、最後は安心させ、はい始末はつけましたよ・・という感じで終わる。お客は何となく納得させられ、家路につくわけだが、でも頭の隅に引っかかるものがある。ホントに解決したの?今回の事件の原因は、ハットン達がバイオ・フィルターの設置だか使用だかを怠ったことにある。でもその前に、恐竜を撃つ銃が故障したというのがある。そしてその故障は、一人の不注意なアホ社員のせいなのだ。今回のことでタイムトラベルが中止になるのか存続するのか不明だが、人間がかかわっている以上うっかりミスはなくならない。十分注意してタイムトラベルを存続したとしても、いつかはミスが起き、同じことがくり返される。映画が終わってから「ゲームみたい」という声が聞こえたけど、確かにそう。原因・経過・結果・・と来るけど、非現実的でご都合主義。とにかく終わっちゃう、終わらせちゃう。恐怖感とか痛みとかそういうのが感じられない。あちらの世界の出来事。何があっても他人事でいられる。「タイムライン」だともうちょっと恐怖が身近。同じ人間でありながら、中世の人間は違うモラルで生きている・・話が通じない・・みたいな。ゲームみたいなストーリーなんだから突っ込み入れる必要もないんだけど、でもまあいくつか気になったことを書いておく。アパートで昆虫の大群(例によって「ハムナプトラ」風味)に襲われたソニアとトラヴィス。窓から飛び出したけど、七階から飛び降りたら死にますぜ普通。途中で木に引っかかって助かるけど、この木は進化の波で突如出現したもの。つまりさっきまでなかったもの。二人とも木があるなんて知らない。それでもためらいもせず飛び降りたんです。あのままでも部屋が爆発して命なかっただろうけど、それにしたって窓ではなく出口に向かうんじゃないの?普通は。他に、猛スピードで走っている車が、進化の波のせいで激しく横転するシーン。大事故なのに乗ってる人誰もケガしないのよ、ありえねー。生身の人間が行動しているというリアルさがないの。ホントゲーム感覚。

サウンド・オブ・サンダー3

セットが大がかりでCG使いまくりの超大作という雰囲気ありありなのに、どこか安っぽい。トラヴィスと妹のジェニーが町を歩くシーンなんか合成だよ合成。動く背景の前で歩くフリしている素人役者にしか見えない。コウモリの化け物みたいなのに追いかけられるシーンでは車が・・ミニカーですよ、子供のオモチャ。「サンダーバード」だってもちっとマシなのマシに走らせてますぜ。全編を通じてのちぐはぐ感は相当なもの。ストーリーが穴ボコだらけな上に画面がこれですからねえ・・。もっとも「サウンド・オブ・サンダー」という題名知った時から何じゃそりゃ感はあったのよ。こんな脱力するような萎えた題名つけたの誰だ・・ってね。やる気あるのかよ・・って感じ。そしたら原題からして「ア・サウンド・オブ・サンダー」で・・。せめて「タイム・ウエーブ~進化の波」とかさ。アルビン・トフラーみたいで偉そうに聞こえる。でもって主演が地味なエドワード・バーンズでしょ。どうせコケて二週間くらいで終わりだろう・・って踏んで、公開一週目に行ったのよ。そしたら・・ゴチャゴチャけっこう入っていて・・何だかうれしくなっちゃった。アメリカでは超大コケ(コケたじゃすまない、地面にめり込むくらいの超特大コケ)だけど、日本ではまずまずなんじゃないの?見ている時数ヶ所からいびきが聞こえてきてびっくり。実は予告の時すでに隣りから聞こえていたんだけどさ。・・二回目に数えてみたのよ。予告とCMで28本くらい。お台場も多かったけどここもねえ・・待たされる。予告とCMだけでなくウサギの人形アニメみたいなものも見せられるんですよ、冗談じゃねえ!隣りの「子ぎつねヘレン」でやってくれ!こんなの見るためにはるばる新宿まで来たんじゃねえ!早く本編やりやがれ!・・と、思わずガラが悪くなっちゃいましたけど、とにかく頼みますってば。わけわかんないの入れるのやめてください。さて・・原作は文庫で25ページほど。拍子抜けするほど短い。よくあそこまでふくらませたなーって感心したのも確か。完成するまでに紆余曲折があったらしく、製作費も5200万ドルにまでふくらんでいる。いちおう公開はしたものの、アメリカでの興行成績はたったの189万ドル。何かの間違いじゃないの?と思ったほど。作り手や出演者にとってはそれこそ汚点のような作品だけど、でもみんながんばってはいるのよ。

サウンド・オブ・サンダー4

監督は(最終的には)ピーター・ハイアムズ。何だかんだあったんだろうけど、まあ完成させて、いっぱい突っ込みどころはあるにしてもいちおう楽しめる作品に仕上げちゃった。緊迫感をあおるような音楽もよかったし。トラヴィス役がエドワード・バーンズで、私この名前聞くと「サンセット77」のクーキー思い出しちゃう。クーキー役やってたのエド・バーンズだったからね。こっちのバーンズは「ブロンド・ライフ」しか見ていないけど、かすれたような声と言い、ちょっとニヒルな顔つきと言い、とっつきにくそうで渋くて・・気になるわん。リチャード・ギアに似ているし。トラヴィスは絶滅した動物を何とか再生できないものかと思ってハットンに力を貸している。ハットンの金儲け主義には反対だし危惧もいだいているけど、研究のためには・・と思っている。真面目で誠実だけどお堅い一方ではなく、ツアーに参加した金持ち女性の相手もしちゃう。翌朝その女性が尋ねるわけ。引っ越してきたばかりなの?って。実際はもう二年も住んでいるんだけど、家の中はがらんとしていて生活臭がない。そこがよかった。トラヴィスは研究のことで頭がいっぱいで、それ以外のことには無関心なのだ。タイムトラベルを阻止しようとするソニア役がキャサリン・マコーマック。実は彼女こそがタイムマシンの生みの親(とてもそうは見えんが)。しかしずるがしこいハットンに横取りされてしまったのだ。それにしても・・マコーマックは老けちゃっていてびっくり。それこそタイムマシンで未来から来たみたい。まだ30過ぎたばっかだと言うのにシワシワギスギス老け老け。いくら化粧に無関心な(たぶん)科学者でも、もうちょっと・・。「娼婦ベロニカ」の頃の面影はどこに・・。ハットン役はベン・キングズレー。珍しく髪があるので、最初は誰かな・・って思っちゃった。今公開されている「ブラッドレイン」にも出ているし、作品選ばないって感じ。でもハットンがただの悪役・金の亡者に見えないのはキングズレーのおかげでもある。トラヴィスが何か言ってハットンがウッとなるようなシーンとか。細かい表情に味があって、さすがなの。てなわけで二回見て二回とも大いに楽しんで帰ってきたわけだけど、トラヴィスの今後が気になって仕方がないの。進化の波のせいで人類が滅亡しそうな未来から、過去を修正するために6500万年前に飛んだトラヴィス。

サウンド・オブ・サンダー5

彼が過去へ行っている間に最後の進化の波が押し寄せ、人類は別のものになってしまう。修正を終えて戻ってきたトラヴィスは、たった一人の旧人類。迎えてくれるソニアは化け物になってしまっている。それって・・悲しすぎる。それとも過去を修正したのだから何も起こらず、変化の起きてしまった方の世界は消滅するのか。それともパラレルワールドということで、両方とも存在するのか。そもそもトラヴィスはちゃんと未来へ戻れたのか。過去を修正した後消えてしまったけど、未来が消滅したのなら戻る場所もないわけで・・。もう一つ気になるのはラストの赤いホログラム。あれは未来から来たトラヴィスがジェニーに渡したもの。でもあれにうつっているのは銃が故障してあわてている一行であって、「過去の何かお持ち帰りシーン」ではない。お持ち帰りは別の場所で起こっているのだから。つまりあれを見ただけでは進化の波とか全然わからないのよ。それよりも未来のトラヴィスが現われた時ジェニーがうつしていたホログラムの方が事情がわかるかも。だってトラヴィスが二人うつっているかもしれないんだから。まあタイムトラベルに関しては、完璧な説明も描写もムリ。感想にしても書けば書くほど収拾がつかなくなるので、書きませんよー。ただ映画のラストはあれでは不充分で、せめてトラヴィスの運命くらいちゃんと描いて欲しかった。せっかく人類を救ったのに、消えた後は知らん・・では無責任すぎるぅ!さてと・・この映画新宿ピカデリーで見たんだけど、ここ5月14日で閉館になっちゃったの。ピカデリー2は「タイムトラベラー/きのうからの恋人」を見てブレンダンのファンになった思い出の館。別の新しいのができるらしいから嘆く必要もないのだが、それにしてもねえ・・。私は入れ替え制や指定席制は好きじゃない。好きな場所で好きな回数見られるのがいい。でもそういうところはだんだん少なくなってきているのよねー。閉館と言えば上野セントラルも14日で終わりだ。こちらは「陰陽師」とか「レッド・ドラゴン」を見たところ。トイレの個室の狭さが印象的だったな。チビの私でさえ身動きしにくい呆れるほどの狭さ。でもそれも今となってはいい思い出で・・。入れ替えなし、自由席というありがたい映画館は、近場では相鉄ムービルがある。いつまでもそうであって欲しいが、赤字だという新聞記事が・・心配ですぅ。