ザ・スナイパー(2006)

ザ・スナイパー(2006)

私の場合ジョン・キューザックを最初に見たのは「コン・エアー」なので、彼にはアクションスターというイメージがある。ロマコメで見ることが多いけど、その度に「こんなのいいから違う彼を見せて!」と思ってしまう。「アイデンティティー」はよかったわ~。「ザ・スナイパー」はWOWOWで何度もやったが、たいていは深夜。そのせいで見逃してばかり。今回やっと見ることができた。ワシントン州シダーバインに住む体育教師レイ(キューザック)。彼の悩みは息子クリス(ジェイミー・アンダーソン・・なかなかの美少年)の素行。今日も大麻で警察のお世話に。三日間の停学処分。反抗期のクリスだが、元はと言えば母親が病死し、さびしくてちょっといじけているだけ。我々から見ればかわいいものだ。しかしレイは生真面目な男で、この際何とかしなくちゃ・・親子のきずなを取り戻さなくちゃ・・とキャンプに行くことにする。行き先は前クリスが行ったことのある場所だから、彼が先導できる。自信がつき、少しは心を開いてくれるだろう。一方ワシントンD.C.ではある暗殺チームが集合していた。リーダーはカーデン(モーガン・フリーマン)。チームは五人だが、私から見るとやや多すぎるように思う。今回デイヴィスという新顔が加わったが、いかにもチームワークを乱しそうな生意気タイプ。またチームの一人ロイコは気が短く先走りするタイプ。他の二人ジョンソンとターナーは冷静で堅実なタイプなので、それで何とかバランスが取れるが、危なっかしいのが二人もいるチームで仕事するかね・・という気もする。まあそこは映画だからね。デイヴィス役コーリイ・ジョンソンは「ハムナプトラ」や「サウンド・オブ・サンダー」などでおなじみ。いかにも一癖ありげ。今回の標的はある富豪父子。息子の方は手際よくかたづけ、次は父親・・という時ハプニングが起きる。カーデンが交通事故に巻き込まれ、病院へ。意識を失っている間に、身分証明書が偽造で、昔政府だか軍だかの(秘密の)仕事をし、今は行方不明扱いのフランク・カーデンだとばれてしまう。彼の存在が公になっては困る上の連中は、抹殺を企む。その指令はFBIのマイルズ(アリス・クリーグ)からデイヴィスへ。ターナー達はカーデンがいないと礼金を受け取れないので、護送中の彼を救い出そうとする。しかしデイヴィスはどさくさにまぎれてカーデンを殺そうと思ってるわけ。ここらへんはひねってある。

ザ・スナイパー2

富豪親子が政府(大統領)の政策にあからさまに反対し、邪魔だから消すためチームが雇われる・・というのはわかる。しかしデイヴィスの存在がよくわからん。彼はあるメンバーの代わりに加わったのだが、そのメンバーは彼によって殺されたらしい。車の中に死体があったし(始末せず積んだままというのはおかしいが)。彼は途中からカーデンを狙い始めるが、なぜ彼にその指令が行くのか。彼がメンバーを殺してまでこのチームに加わった理由は何?さて、カーデン救出作戦は失敗する。どうも彼らのやり方は荒っぽく、ことを急ぎすぎる。有能には見えない。次々に人を殺すので当然目立ち、警察やFBIが動き始める。しかし捜査する側も一枚岩とは言えない。地元警察とFBIの衝突・・意地の張り合い、縄張り意識、相手を見下す態度・・おなじみの描写が続く。現実もこんな具合なのかな。車が川に転落し、流されているカーデンを救ったのは、通りがかったレイ親子だった。このままでは面倒なことになると危惧したカーデンは、かかわり合いになるなと忠告するが、明らかに護送中とわかる彼を見逃すわけにはいかない。ターナー達もレイ親子に気づく。彼らの運命はいかに・・。まあフリーマンなので完全な悪人ということにはならない。カーデンがやってることは悪事だが、彼自身はただの仕事だと思っている。さすがにクリスに聞かれた時は駆除という言い方をしていたが。彼は今まで失敗したことがなく、自信と誇りを持っている。どう見ても一人で仕事をこなすタイプで、あんなふうにチームを組んで・・というふうには見えない。チームにすればいろんなエピソードをくっつけることができ、変化に富んだ展開にできるが、彼が一匹狼で同じく一匹狼のデイヴィスにつけ狙われる・・という設定でもいっこうにかまわない。チームの息が合わず、失敗ばかりくり返すのにくらべれば、緊張感も高まったかも。カーデンやデイヴィスの背景・・つまり依頼人がはっきりしないまま終わるのもまずい。この映画の評価がさほど高くないのはもやもや感のせいだと思う。まあ私は別に退屈もせず見てましたけどね。もちろんフリーマンよりキューザックに注目。レイは真面目だけどどこと言ってすぐれたところがあるわけでもない。見た目はそこらの普通の父親。しかしなぜかとても頑固である。カーデンを助けたせいで困難に直面するが、安易に逃げたりしない。

ザ・スナイパー3

最初は見たのが後半の30分くらい。素人のはずなのにかなり思いきった行動取るなあという印象。相手に組みついたり銃を撃ったり。後日、録画しておいたのを最初から見て、レイが元警官だと知って・・それで納得がいった。教師になっても警官時代の経験は体に頭にしみついている。銃の扱い方、タイミングの取り方、度胸、正義感。カーデンはレイやクリスにいろいろ話しかける。相手の情報を引き出し、相手をよく知ると同時に弱点もつかみたい。仲間が追いつけるよう時間稼ぎもしたい。レイにはそれがわかっているので、自分達の情報は与えたくない。でもクリスにはそんなことはわからない。聞かれるとしゃべってしまうし、余計なことまでついポロリ。レイの知らぬ間に母親が亡くなったことまでしゃべってしまったらしい。父親についてしゃべる時にはつい得意げになっちゃったり・・。反抗はしていても本心では父親を慕っているのだ。クリスの素直さがわかるいいシーンだ。用心深くたやすく相手を信用しないレイだが、カーデンも同じ。仕事をやり遂げようとする頑固さも同じ。二人は似た者どうしだ。彼らにくらべると現役警官達(ウェインライト署長など)は、善人ではあるもののちょっとたががゆるんでいる。目つきの鋭いキューザックを見る度、こういう彼を待っていたのよ・・とウヒョホな私。でもたいていの人はフリーマンの方に注目するんだろうな。そりゃ私も川の中とか雨の中とか大変なシーンでは年なのに大丈夫?と心配しましたけど。現実的に考えるとカーデンはスナイパーとしては年を取りすぎ。カーデンよりずっと若いベケットだって目のかすみで苦労していたじゃん。マイルズ役クリーグはどこかで見たような・・と思ったら「サイレントヒル」のクリスタベラだった。冷酷で高慢ちきな女なのでラスト、カーデンがレイ親子に手を出すなとすごみをきかせるシーンでは溜飲が下がった。ま、マイルズも上からの命令でやってるんだけど、偉そうにふんぞり返っていて憎たらしいったらありゃしない。レイ達の逃避行に巻き込まれてしまう若いカップルのうちサンドラ役は「エバーアフター」に出ていたミーガン・ドッズ。サンドラは恋人のロクランとうまくいっておらず、仲を修復するきっかけになればとキャンプに来たものの、やっぱりだめと感じていたところ。ロクランが殺されてしまい、悲しむがさほど引きずらない。

ザ・スナイパー4

ロクランはくだらんやつだが、あっさり殺されてしまうのは気の毒。たいていの映画だとレイかクリスとの間に恋が芽生える。しかし今回サンドラはレイとクリスのちょうど中間の年齢(実際のドッズはキューザックと四つしか違わないが、この映画では20代に見える)。レイには若すぎ、クリスには年上すぎる。こういうどちらとも釣り合わない女性出してくるのは珍しいと思う。レイが男やもめという絶好の条件くっつけておきながら。ラストは家でのバーベキュー。客で大にぎわいの中にサンドラもいる。あらこのぶんだとレイといいムードになるのかしら。妻の死後女っけなしで暮らしているレイだけどこのままじゃ気の毒。サンドラは美人だが平凡な女性。地味なレイとは相性よさそう。クリスだって今回のことで少しは大人になり、母親を卒業し、サンドラを快く受け入れるのでは?そんなほんわかムードに水を差すようにラジオからニュースが・・。例の父親の方がクルーザー事故で死亡。でもレイにはそれがカーデンの仕業だとわかってる。一度は彼が暗殺を阻止したけど、結局カーデンは仕事をやり遂げたのだ。沈痛な表情は自分の無力さを感じているからか。警察もFBIも標的は大統領だと思い込んでいて、レイの忠告は無視された。彼はやれるだけのことはやったのだ。クリスとのきずなも深まったし、これからも家族を大事に堅実に暮らしていくことだろう。その生活にサンドラが加わるといいね!この映画の原題は「The Contract」で、「契約」という意味か。受けた仕事は必ずやり遂げるカーデン。しかし今回のことでは依頼人ちゃんとお金払ってくれるかな。父子暗殺とカーデン暗殺・・どちらも同じ依頼人からなんでしょ?まあとにかく私が思うに彼はこれを機に引退するのでは?もう年だし、チームは全滅しちゃったし、老後の貯えは十分なはずだし。一番利口なやり方は適当なところで足を洗い、自分達に汚い仕事させて自分は善人ぶってる連中からふんだくった金でゆうゆうと余生を楽しむこと。何たって生き残って寿命全うするのが、ふんぞり返っているおえら方への一番の仕返しなのよ。まあカーデンの今後に関する妄想はこれくらいにして・・キューザックよかったわ~。もう女とくっついたり離れたりの優柔不断キャラは卒業よ!サスペンスやアクションで活躍してね!