シスターズ

シスターズ

「悪魔のシスター」という映画があるのは知ってる。DVDも出ている。見たことはないけど。「28週後...」見にきて予告見て興味持って。私はどちらかと言うとイケメンに弱くて、それで見に行ったりすることが多く、女優さん目当てで・・ということはあんまりない。でもローズ・バーンとクロエ・セヴィニーには興味持ってる。クロエは必要とあらば何でもします・・って感じ。根性ありそう。さて、シアターN、お客は10人くらい。ここは一回しか見れないから見逃すことのないよう注意しながら見るわけだが、結論から言うとわかったようなわからないような。とにかく妙ちきりんな映画。予告を見た時はクロエは刑事役だと思ったの。殺人事件を捜査しているように見えて、これはぜひ見なくちゃ!・・と。そしたら違うの。クロエ扮するグレースは記者で、ラカン医師(スティーブン・レイ)が経営する小児診療所を(なぜか)しつこく取材している。ラカンには美しい助手アンジェリーク(ルー・ドワイヨン)がいて、二人は前は夫婦だったが、別れた後もラカンはアンジェリークを支配している。アンジェリークはボランティアで来ていたウォレス医師と知り合い、一夜を過ごすが翌朝彼は惨殺される。たまたまそれを目撃したグレースは警察に通報するが、目撃したのがラカンのオフィスに忍び込んでいた時なので、あまり強硬に主張することもできない。刑事二人は疑り深い上にだらだらしていてやる気がなく、その間にラカンは死体を隠してしまう。ウォレスを殺したのはアンジェリークか。それとも彼女と同居している双子の姉アナベルの仕業か。アンジェリークはなぜ発作を起こすのか。なぜラカンは彼女につきまとうのか。グレースは死体を見つけることができるのか。最初はわりといい感じで興味を持たせる。誰だって謎を提示されれば答を知りたい。しかし・・そのうちにありゃりゃ・・となる。最後の方でははあ?となる。終わるとこれで終わり?どういうこと?・・と、取り残される。わからない私がバカなのか・・と、もやもやしたまま家路につくこととなる。最初わりといい感じと言ってもルーがうつる度に私は脱力してました。パンフには美貌だのサラブレッド(父が「ポネット」の監督ジャック・ドワイヨン、母がジェーン・バーキン、姉がシャルロット・ゲンズブール)だのと書かれているけど、すごい顔してるでしょ彼女。顔中口みたいな。

シスターズ2

確かここで「口裂け女2」の予告見たんだと思うけど、ルーならCGなしでできる。演技の方もどうもしっくりこない。クロエの方は着実に積み上げるような演技していて引き込まれるんだけど、彼女は・・。うつる度にだらしのない口元だな・・と。どこが魅力的なんだろう、わざとらしい。確かにアンジェリーク役は難しい。エロチックで血なまぐさい。凶暴であり、はかなげであり、善良でもある。謎めいている。でもルーが出てくると謎うんぬんの前に口を閉じろ!・・とか。うつる度に誰かに似ているなあ・・って思うんだけど、そのうち気がついた。パカッと開いたしまりのない口、頑丈そうなあご・・ベン・アフレックだ!(ごめんね、ベン)まあ確かに容姿は個性的ですけどね。でも彼女からは伝わってくるものがなかった。苦悩も人格が変わった時の悪魔的な部分も。何かうわべだけ・・って感じで。さて、アンジェリークとウォレスが一夜を過ごすシーンは、いやに念入りに長々とうつす。普通もっと切りよく終わらせると思うが。ここだけ編集し忘れたって感じ?って言うかわざと編集してないみたいな、監督の趣味みたいな。アンジェリークがウォレスを誘ったのはラカンに対する当てつけ、反抗。束縛されるのにはあきあきしているから。もう別れたのだから何をしようと自由。しかしアンジェリークのアパートには監視カメラがたくさんつけられていて、ラカンのオフィスにつながってる。しかもオフィスはアパートと向かい合ったところにある(だからこそグレースはウォレスが殺されるところを目撃できたのだ)。何だ、こんな近くに住んでるの?・・と拍子抜け。しかもアンジェリークはカメラでうつされていることは知っている。ラカンの束縛がいやならなぜカメラを壊さない?なぜ遠くに引越さない?どうやら彼女は発作を鎮める薬が欠かせず、薬を持ってるラカンとは手が切れないらしい。反抗しても結局はラカンにすがらなければならないのだ。ただ、薬のことも発作のことも結局はよくわからない。やらしいシーン長々と見せるよりこういうのをちゃんと説明することの方が大事だと思うが。ウォレス役ダラス・ロバーツは知らない人だが、どこかヒース・レジャーに似ている。髪がちょっと危ない(額が広くなりつつある)が、誠実そうなやさしい感じ。あいまいで情に流されやすいタイプ。つまり、彼がドライなプレーボーイだったら、殺されずにすんだだろう。

シスターズ3

翌朝、まだアンジェリークが眠っている間に起きて、夕べは楽しかったぜベイビー、あばよ・・とか言ってさっさと帰ってしまえばよかったのだ。ところが前の晩、今日が私の誕生日なの・・なんて言われたものだから不幸そうな彼女を少しでも喜ばせてあげよう・・と誕生ケーキ買ってのこのこ戻ってきちゃった。そのやさしさが仇に・・。編み棒(アナベルは編み物が得意)でブスブスと・・。まあ出てきた時からわかってたんですけどね、あッこの人は犠牲者だ・・って。だから殺されるシーンもショッキングでも何でもない。いくらアナベルがどうの・・とにおわせても、アンジェリークが殺したってのは見え見えなんだから。そもそもウォレスがアンジェリークに引かれるとはとても思えないんだよな。トラブルかかえてるって一目でわかるし。かかわったら面倒なことになるってのも。そんなこんなで私にはルーはミスキャストに思える。じゃあ誰ならよかったのか・・って言われても思い浮かばないんだけどさ。パンフによればアンジェリーク役の女優捜しは難航し、ルーに決まったのは撮影開始数日前だったらしい。監督がルーを見て即座に決めた・・ってのもわかるよ。さて、クロエの方はルーとは違い何もかもこぢんまりとしている。しかし意志が強くて取材をあきらめないグレースなら真相突きとめるのでは・・と、期待させてくれる。その一方で彼女も何やら問題をかかえているらしいことが次第にわかってくる。ひっきりなしにタバコを吸い、睡眠もろくに取らず・・。そのうちポキッと折れてしまいそうな、そんな危うさを感じさせる。最初に謎を提示し、グレースがこれを着実に解いていくのなら、映画に対するたいていの不満は解消する。しかし映画はそれらを解決しないまま、説明しないまま終わってしまう。何やらトラウマをかかえたグレースは、同じく不幸なアンジェリークに親近感をいだいてしまう。そしてついには一体感をいだいてしまう。ミイラ取りがミイラに・・。ジャーナリストなら物事を冷静に分析しなきゃならないのに、自分まであっちの人間になってしまう。しかしあっちの人間になった方がグレースにとっては居心地がいいのだ。幸せなのだ。グレースが薬のせいでボーッとしてるとか、いつの間にかヘアスタイルなどが変わってるとか、ラカンが血まみれとか、ここらへんはクライマックスなんだろうけど、見ていてもさっぱりわかりませんの。

シスターズ4

パンフには例によって「衝撃的な結末」なんて書いてある。でも何が何だかわからないのでは衝撃もへったくれもありませんの。このパンフもなかみがうすくてありきたりのことしか書いてない。ちっとも映画を理解する助けになりませんの。最後のページなんか「回路」のリメイク「パルス」の宣伝。そうか、もう「シスターズ」のことなんかどうでもよくて、次のこと考えてるのね・・なんて思っちゃった。もっと目の前のことに焦点据えて、そうなのか・・とうならせるような解説読みたかったんですけどぉ・・。結局この映画何を言いたかったのかしら。グレースはアンジェリークの本当の姉妹ではないけれど、今は心は一つで、そうなったことによって精神の安定を得ることができた。アンジェリークも同様で、したがって彼女にはもうラカンは必要ない。したがって二人してラカンを殺しちゃった・・と、そういうことですか?でも思いませんでした?薬が必要になったらアンジェリークはどうするの?って。それとももう必要ないんですか?とにかく前半のサスペンス風味はうすれ、後半は見ているこっちも混乱してくる。ウォレスを殺したのがアンジェリークを支配しているアナベルだってのははっきりしている。しかしアナベル本人はすでに死亡している。人格だけが残っていて時々現われる。ここまではわかる。しかしなぜグレースが変わってしまうのか今いちはっきりしない。アナベルは死んでいなくて、実はグレースがアナベルなのか。グレースは記憶を失っていたけど、自分がアナベルだと思い出したのか。見ているとそういうふうに思えてしまう。ウォレスの死体は大型テレビに突っ込まれていたのを発見されたらしいが、そこらへんもはっきりしない。あのぐうたら刑事達は捜査に乗り出したのか。グレースを助けてくれていた親切な同僚はどうなったのか。殺されちゃったの?グレースのトラウマって?薬の正体は?ああんもうはっきりしないことばかり。不幸な女性二人が幸せになったけど、それは狂気の世界ででした。彼女達にとっては事件は解決したのだからあとのことはどうでもいいんですぅー。ま、そういうことですね?気の毒にクロエは撮影している間は「この映画はすばらしいものになる」と固く信じていたに違いないわ。それくらい彼女の演技はすばらしいの。映画の出来は何じゃこりゃだけど、彼女の演技を堪能できたのでまあいいわ。