ザ・セル

ザ・セル

これはR15指定になっていたけどどうしてだ?この映画よりもっとひどい描写の作品はいくらでもあるのにな・・。この映画の売りは映像美である。ダリの絵みたいな。遠くにある建物に子供が入っていくというのは、「ルパン三世」にもあったような。映画館で見ればきっと迫力満点なのだろうけど、テレビだとさほどそのユニークな映像美は伝わってこない。予告で何度も見せられたせいもあるだろう。見ていて何となく「マトリックス」思い出した。ストーリーとかが似ているのではなく、とり方が似ているような。ジェニファー・ロペスはすばらしいプロポーションと、今が頂点とも言いたくなるような美貌の持ち主だが、「ウェディング・プランナー」と同様、真面目で地味な役をやっている。深層意識下で奇抜な服を着、こってりと化粧をしても、それが自分のものになっているのはさすがだなあと思う。ストーリーそのものはありえないような設定(ああいう精神病の治療法があるとは思えない。意識の中へ入っていく治療者の意識はどうなるのか?人の頭の中に入って正常な状態を保つほど、ヒロインの性格は強靭だとは思えない)で、せっかくの目くるめくような映像美も、見ているこっちがのめり込めないので宝の持ち腐れと言うか。犯人によって閉じ込められ、溺れ死にさせられそうになる女性がかわいそうで、本当に危機一髪のところで助かって、ああよかった・・と胸をなでおろして、犯人が精神的に救われてどうのとか、死んだことによってやっと安らかになったとか、そっちの方がメインのはずなんだけど、もうどうでもよくなっちゃうのよね。できそこないの映画だとは思わないけど、一度見ればたくさんと言うか。被害者の女性達がかわいそうで、映像美はもっとじっくり楽しみたいのだが、見たくなくなってしまうのだ。ヴィンス・ヴォーンはなかなかステキ。・・以上はWOWOWで見て書いた感想。このシネマ日記を書き始める前だから、かなり前。その後DVDをレンタル。さらにその後中古DVDを買ったが、買ってしまうと安心するのか何年もほったらかし。今回久しぶりに見た。レンタルした時監督のコメンタリーが入っていて、ジュリア役の女優さんをけなしていたのが印象に残った。今回「犯罪心理捜査官」というビデオをロバート・ネッパー目当てでレンタルしたら、タラ・サバコフという人がすごく印象的で。彼女が「ザ・セル」でジュリアやってるようで。

ザ・セル2

それで、「え?出てたっけ?」と見直したわけ。WOWOWで見た時は「ミディアム」シリーズもまだ始まっていなかったから、ジェイク・ウェバー扮するラムジーは印象に残らなかった。前記の感想を見てわかる通り、印象に残ったのはノヴァック役ヴォーンの方。今回見て思ったけど、二人は対照的に描かれている。金髪をきっちりなでつけているラムジーと、黒いカールで、櫛を入れたこともないようなノヴァック。すっきり端正な顔立ちのラムジーと、目が鋭く野性的な顔立ちのノヴァック。慎重派と突進派。まあ印象に残るのはノヴァックの方だな。それでもレンタルして見た時は「あッ、ジョーが出てる!」とびっくりしたっけ。彼は他に「ドーン・オブ・ザ・デッド」「ヘイヴン 堕ちた楽園」に出ているが、見たことなし。「ヘイヴン」はシネパトスで予告を何度も見たけど、オーランド・ブルームには興味ないし。でもチラシは持ち帰って、後で見たらウェバーらしき人がうつっていたのよ。レンタルで見た時もう一つびっくりしたのがピーター・サースガード。ジュリアの恋人役で、セリフもほとんどなしのチョイ役。ノベライズだともっと出番多いのに・・誰だ削ったのは!(表へ出ろ!)役名がジョン・トレーシーというのが何とも・・(ぐにゅ・・あッ!溶けた)。他にプルイット・テイラー・ヴィンス、ディラン・ベイカー。さてこの映画を見たたいていの人は映像がどうのこうの・・と書くと思う。あるいは衣装やメイクがどうのこうの。でも私の場合、そういうのは確かにすごくて独創的だと思いつつも、目が行くのは人間の方。特にジュリアは閉じ込められたり溺れさせられそうになったりする役だから、何とか助かって欲しい、ノヴァックの努力がむくわれて欲しい・・と願う。キャサリン(ロペス)はと言うと、ノヴァックの熱意がさほど伝わっていなくて、何となく温度が低い。そりゃ彼女はエドワードという少年の治療に全力傾けていて、今は希望も失いかけ、疲労もたまっている。気持ちが沈んていて、「よしッ、やりましょう!」という気分じゃない。「お気の毒だとは思うけどぉ」とか一歩引いてる。ほとんどお義理で一回やって、すぐ戻ってきて「とても無理」とか言うの。これがまたほどよくカールした髪が顔にかかり、唇はつやつやぷりぷり。シャンプーと口紅のCM見せられてるみたい。キャサリンの苦悩が全然伝わってこない。どうですこの毛先までしっとりカール。

ザ・セル3

ぴかぴかぷりぷり誘う唇、これを使えばあなたも即ジェニロぺ!・・とか聞こえてきそう。もっと普通にやれよ。ジュリアの危機をまるで他人事みたいに考えてるようなキャサリンがどうも気に入らない。ノヴァックは時間がなくてあせっているはずだから、うじうじしているキャサリンにペース合わせるのもおかしい。かなりいらだっているはずだ。だからこそクライマックスで無事救出できてこちとらホッとするんですけどさ。だってあのペースじゃ間に合わないのもありに思えたから(コメンタリーによれば手遅れでジュリア死亡の線もあったそうで)。で、大いにハラハラする救出劇だけど、監督はサバコフのせいでひどい目に会ったらしく、さんざん恨み言言ってる。こんなに言う人も珍しい。たいていは(苦労させられても)コメンタリーの時には自制して表現を和らげる。ジュリア役は水泳が得意でないと難しいが、サバコフは泳げるとウソをついたのだそうな。しかもライフガードやってたとまで。それでこの役を獲得した。でも実際は泳げなくて、その時にはもう他のシーンとった後で変更がきかず、何たらかんたら。その反動か監督はもう一人の犠牲者アン役の人をすごくほめてたな。溺れたり死体だったりこちらも難役。死体の時息してるのわかったけど(ついつい見ちゃうのよね、アッ目が動いた脈が打ってるおなかが動いてる・・って)。これがフランスなら人形作って・・「クリムゾン・リバー」みたいに。そしてDVD特典に「死体の作り方」としておさめる。少年時代のカールやったジェイク・トーマスはとてもかわいい。「A.I.」に出ていたらしい。カール(ヴィンセント・ドノフリオ)は父親に虐待され、それが犯行の遠因になってる。キャサリンは職業柄(ジュリアより)カールを助けようとするけど、ノヴァックは違う。ジュリアの救出が何よりも大事で、カールに同情なんかしない。彼は元々検事。FBIに転身したのはある犯罪者がきっかけ。そいつも虐待受けていたが、彼よりもっとひどい虐待受けても生き物を傷つけない子もいる・・と話す。これってノヴァック自身のことかも。こういう想像の余地のある描写はいいと思う。コメンタリーによればキャサリンにも中絶という苦しい過去があって、それで子供の治療に執着するとか、カールの溺死と中絶(赤ん坊を流す)を引っかけているとか。まあいろいろ裏設定があるようだ。