セルフレス/覚醒した記憶

セルフレス/覚醒した記憶

こういう、なかみが入れ替わるというのはよくある。入れ替わって満足するということはなくて、必ず何のかのと文句つけ始める。手術してくれた側とか組織をぶっつぶしにかかる。その手術によって命が助かった人、あるいは薬等で命を長らえている人のことなんかおかまいなし。正義のためならとか、許せないとか言って・・。この映画でもダミアンはいったい何人殺したんだ?億万長者の建築家ダミアン(ベン・キングズレー)はガンで余命いくばくもない。ふとしたことから・・後でそれは彼の様子を見かねた友人マーティンが力を貸してくれたのだとわかるが・・頭のなかみだけそっくり健康な体に移植する手術があると知り、試してみることに。2億5000万払ったらしいから、よほどの金持ちでないと無理なようだ。オルブライトの説明によると、ラボで培養された空の器・・人体に頭脳を移し、エディという名前で生きていくことに。新しい体に慣れると、しばらくの間はスポーツやセックスなど大いに楽しむ。世間的にはすでにダミアンは病死したことになっている。副作用が出るので、拒絶反応を抑制する薬を飲むが、飲み忘れると幻覚が出る。空の器のはずなのになぜ?オルブライトの説明も今いち納得できない。こらこらじいちゃんよ、培養されてできた人体なんてあるわけないだろうが。要するに新品を買ったつもりが中古だったってこと。肉体は実はマークという青年のもので、薬をちゃんと飲まないと彼の記憶が蘇ってしまうのだ。手術の仕組みとかは不明。蛇が脱皮するように、次々に新しい肉体に。じゃあ題名も「脱皮人間」にすりゃよかったのに。見ていて感じるのは、手術をする側とされる側との意志の疎通の欠如。まあ受ける側は助かりたい一心で深く考えずに契約する。手術する方は何かあっても非合法的なことやってるので表沙汰にできない。契約違反とか声を上げられない。だから都合が悪くなると始末する。途中で、オルブライトが実はこの理論を提唱したジェンセン博士その人だとわかる。自分で実験して若い肉体に移っていたのだ。本物のオルブライトとのいきさつは不明。科学的な部分のほとんどは省略・・と言うか無視され、エディが・・ダミアンが・・ああ、ややこしい!・・マークだった頃の家族との再会に比重をかける。

セルフレス/覚醒した記憶2

マークは元特殊部隊兵士で、だから武器の扱いも慣れていて、人を撃つのもためらわない。娘のアナは病気で歩けないが、手術をすれば治る。で、手術費用を捻出するため、肉体を提供したのか。ずいぶん単純なやっちゃ。とにかく2時間近くあるのに、説明不足の部分が多すぎ。と言うか、説明する気もないんだろう。SFじゃないんです、家族の愛を描いた高尚なヒューマンドラマなんざますってか?おまけに薬を飲まないでいると元のマークの人格に戻ってしまうという都合のよさ。こうなりゃ結末は一つしかない。ダミアンが自分の死を受け入れて、体をマークに返すのだ。それだけじゃない、自分の財産をプレゼントするのだ。カリブ海で悠々自適の生活をどうぞ。まさかそこまでハッピーエンドにはしないよね、あら、なってたわ。マーク役はライアン・レイノルズ。妻マディ役はナタリー・マルティネス。「デス・レース」に出ていたらしい。マディみたいなのを奥さんにするとけっこう大変。「どういうこと」「何なの」「話して」・・もう全部ほじくり出さなきゃ気がすまないってタイプ。マークが肉体提供したのはそのせいか(違うって!)。オルブライト役の人は誰かしらってず~っと思ってた。エンドクレジットでやっとわかった。マシュー・グードだ。あらまあ・・。何しろ一番最初に彼を見たのが「ルック・アウト/見張り」だったもんで。ちょいと色男でずるい小悪党っていうイメージが私の中で定着してしまったもんで。そのせいで他の映画で彼を見ると、いつもびっくりするわけ。うわ~何てステキなの・・って。今回もそう。メガネが似合ってるわ~、クールで冷静で冷めてるわ~っておんなじことですけど。あんまりステキなので悪役に思いにくいんだけど、作り手もわかっていて(←?)、拉致したマディは次の依頼人の器に、娘の方は臓器を利用なんて言わせて、この冷血動物め~と見ている人全員を敵に回させるのです。ジェンセンには妻がいるんだけど、アルツハイマーなので手術はしない。すぐれた知能が死によって損なわれるのを防ぐのが元々の目的。そのわりにはダミアンは建築のけの字も思い出さなかったけど。私がいいなと思ったのは、マーティンの死んだはずの息子トニーが器を変えて生きていること。世間的には死んだことになってるから表に出せない。ここが十分ホラーでした。