スキャナー 記憶のカケラをよむ男

スキャナー 記憶のカケラをよむ男

この映画のことは全く知らない。公開されてたことも知らなかった。お目当てはもちろん野村萬斎氏。「陰陽師」での熱狂ぶりはどこへやら、テレビに出ていても映画に出ていてもスルー。ごめんね、移り気で。今回は特殊能力の持ち主らしいから見る気になったのよ。以前マイティーズというお笑いコンビをやっていた仙石(野村氏)。彼にはものに残された思念を読み取る特殊能力があって、それが売りだったが、人の裏の部分・・醜い部分を感じ取ることに疲れ、コンビを解消する。相棒の丸山(宮迫博之氏)は借金取りに追われ、社長(高畑淳子さん)にクビにされかける。そこへ仕事を頼みにきたのが亜美(杉咲花さん)。ピアノの先生雪絵(木村文乃さん)の行方を捜して欲しい。雪絵はなぜか仙石の能力を本物と信じていた。で、マンションの管理人としてひっそり暮らしていた仙石が引っ張り出される。そのうち雪絵の失踪と二人の男性の殺人事件が関係していることがわかり、警察も乗り出す。ストーリーはなかなかいいと思う。何より現代の一般人としての野村氏を見ることができるのがうれしい。すごい能力を持っていて、何事にもとらわれず自由自在にふるまう晴明タイプのキャラをつい期待してしまうが、こちらは拘束だらけ。でもそれはそれでよかった。もちろんそのうち限界が見えてくる。一部の人は演技がへただ。雪絵と忍(ちすんさん)の区別がつかない。お涙ちょうだいの部分が長すぎる。位置関係や時間が不自然だ。それと日本人は男と女の強い結びつきを描くのが苦手だ。だから今作のように妹を思う兄の強い気持ちとかそっちの方へ逃げる。なまなましさを避け、ピュアなものを強調する。いくらピュアでも殺人は殺人なのだが。犯人が〇〇だったというのは反則だし、△△していたというのも意外と言うより呆れる。よかったのは雪絵が仙石の能力を信じていた理由がわかるところ。清掃員として働いていた彼は忘れ物や落とし物を見つけることも多く、思念を手がかりに持ち主にこっそり返してあげていたと。母親の形見を届けてくれた彼を雪絵が目撃、後でテレビに出ている彼を見て、あの時の人だと・・。社長に拾われたのもそれ・・落とし物を届けにいったのが縁。そこらへんの・・人の善意と言うか、そういうのが心にしみた。11歳で発見される前の、仙石の過去が全くわからないという設定もいい。