ソルト

ソルト

夏休みで(←?)子供向けの映画が多いせいか、一般映画はすぐ夕方、夜間に押しやられてしまう。公開されてすぐ見に行けばいいことなんだけどね。日曜夕方、お客は16人くらいか。アンジェリーナ・ジョリーは大した人だと思う。走り、飛び、殴り殴られ、撃ち撃たれ。その一方で恋する乙女全開、かと思えば必要とあらば男を悩殺。女が見てもいい女。魅力全開、絶好調。二年前・・北朝鮮でスパイ容疑でつかまり、拷問されるソルト(ジョリー)。もう助かる見込みはないんだけど、捕虜交換で思いがけなく生還。表向きはリンク石油の社員・・実はCIAの工作員。CIAは彼女を見捨てるつもりだったけど、恋人のマイク(アウグスト・ディール)が救出しようと奔走。これ以上騒がれてはまずいので仕方なく・・ということらしい。その後二人は結婚し、幸せな日々を送る。今日は結婚記念日・・という日、オルロフ(ダニエル・オルブリフスキー)という亡命希望のロシア人が現われる。彼が提供した情報は・・CIA内部にロシアのスパイ・・それも子供の頃から訓練された筋金入り・・が入り込んでいること、アメリカ副大統領の葬儀に出席するため訪れるロシア大統領の命を狙っていること、そのスパイの名前がソルトであること。ここで発車ベルが鳴り響き、ノンストップアクションがスタートする。カーチェイス、銃撃戦、爆発、逃亡劇、裏切りまた裏切り、どんでん返しに核戦争の危機。あれよあれよといろいろ見せられ、乗せられる。終わってから思い返すと、いや、見ている最中でもおかしいなあ・・と思うこといっぱい。オルロフがわざわざCIAに現われてソルトを窮地に陥れる必要があるのか。ソルトが騒動起こせばCIAはそれにかかりきりになるから、暗殺はやりやすくなる。彼女はCIAの目を引きつけるおとり?いやいや彼女はちっともおとりじゃない。追っ手を振り切り暗殺に向かう。CIAには○○(同じくスパイでソルトも存在を知らない)も入り込んでいて、みんなの目はソルトに向いているから暗殺に専念しやすいはずだが、やらない。わざと成功の確率低い方法取ってるとしか思えない。最初は濡れ衣着せられ、それを晴らそうと・・つまり暗殺を阻止し、真犯人を見つけ出そうと行動しているかに見えるソルトだが、何とロシア大統領を暗殺してしまう。ではオルロフが言ったことは事実で、彼女は今までネコをかぶっていたのか。

ソルト2

そのオルロフだが、証言した後CIA職員を殺し、逃亡する。つまり彼の証言はあまり信用できないということだが、それでもCIAは彼を捜すよりソルトばかり追いかけるのである。同僚テッド(リーヴ・シュレイバー)は、何かの間違いだ・・とソルトに同情的だが、防諜部ピーボディ(キウェテル・イジョフォー)は頭から犯人扱い。ふいに現われた情報提供者なんてCIAをかく乱するためのおとりでは・・と疑ってかかるべきなのに、ソルトを追え追えと頭に血を上らせ、騒ぎ立て・・。高速道路では大混乱を引き起こす。ソルトが気にしているのはマイクの安否。こういう事件が起きるとまず狙われるのは家族。追っ手を振り切って自宅へ戻ったソルトだが、夫の姿はなし。まあこの時点ではマイクが敵の回し者ということもありうるわけで。見ている我々は何を信じたらいいのかわからない。その後ソルトの前歴が明らかになり、大統領が殺され(これは後でくつがえる)、移送中にまたまた逃走、オルロフと落ち合う。よくやったとほめられ、次の指令を受ける。暗殺のせいで米ロ関係は険悪になっている。オルロフは旧ソ連の情報部の生き残りのような存在で、アメリカをやっつけろ、今のロシアもつぶせ・・ということらしい。ちょっと現実味に欠ける。それはそれとして、ソルトが困難をくぐり抜けてきたのはたった一つ、マイクを助けるため。やっと再会し、やれうれしやと思ったら、あっという間に殺されてしまった。彼女の目の前で・・。オルロフらにすれば、ソルトが結婚しているのは任務の邪魔。それと彼女の忠誠心を確かめるためもあったろう。呆然とするソルトだが、表情には出さず、耐え忍ぶ。そしてまわりを油断させといて・・一気に爆発である。次の任務にかかれば、もうオルロフらとの接触はない。彼らと、次にソルトが組む相手とは何のやり取りもしないのだ。つまりオルロフらがここで全滅しても・・というわけで、おんどれらあたいのだいじなまいくをよくもよくもよくも~!ぶっころしたるみなごろしにしたるしねしねしね~おもいしったか~!・・と、こうなるわけですの。この映画はなるほどノンストップアクションや知恵をしぼってのだまし合い、駆け引きが売りなわけだが、その一方で今時珍しいくらいの純愛も描かれていて、私をほろりとさせるのである。

ソルト3

ソルトとマイクが出会ったのは植物園みたいなところ。花が咲き、蝶が飛ぶ。その中での信じられないくらい美しいソルト。マイクはクモの研究してる学者。クモの巣に引っかかったのはソルト?マイク?いやいやお互い相手のとりこになったんですよ。その後北朝鮮での出来事があって(彼が北朝鮮にも出入りできる著名な学者だったから近づいたのかな)、ソルトは自分の身分を明かすが、マイクは危険を承知で彼女と結婚。多くは描かれないが、二人の生活が愛に満ちたものだということは伝わってくる。それが今ではすべて失われてしまった。ソルトの仲間で今はNATO軍にいるシュナイダーが次の仕事の手引きをする。大統領の近くで騒ぎを起こし、自分は撃たれて死ぬ。こんな任務でもやり遂げるほど訓練は完璧で・・と言うか、洗脳か。ソルト自身洗脳されていた。CIAに入り、オルロフからの指令を待ち続け・・。でも、マイクと出会ったことで彼女は変わった。彼の愛が彼女を変えた。大統領達は地下へ避難。それが○○の目的だった。シークレット・サービスや国防長官(アンドレ・ブラウアー)らを皆殺し。狙いは大統領に核のボタン押させること。今回の大統領はかなりのヘボ。ロシアの不穏な動き報告されるとすぐ報復持ち出すほど短絡的。○○はミサイルの目標をテヘランに設定。そうすりゃ世界中大混乱。止められるか!ソルト。どんな映画でも結局はヒーロー、ヒロインに共感できるかどうか。車から車へ飛び移り、走る地下鉄から飛び降り、エレベーターシャフトの中をひらりひらりと・・こんなのはスーパーウーマンすぎる。一方脇腹から血が出ているのに生理用ナプキンを押し当てたりするのはよかった。ところでタクシーの中では何をやっていたのかな?自宅でササッと身支度するのもよかった。緊急の場合に備え、普段から身を隠す用意を怠らず、現金も必ず身につけているのだろう。こういう部分は(スパイでなくても)見習いたいところだ。当然「2」を意識したラストだが、あたしゃてっきりエンドロールの後、近所に預けたペットの犬引き取りに来るのでは・・と思っていたんですけど・・なかったな。マイク役ディールは知らない人だが、ダークな世界とは無縁の、ソルトの人生が変わってしまったのも納得の純粋さ、清らかさ。私にとってはこの映画・・純愛映画です!!