シアトル猟奇殺人捜査

シアトル猟奇殺人捜査

これはネットでたまたま感想読んで・・。マイケル・パレの刑事物なら見てもいいかな・・と。吹き替え版だけどビデオがあったので早速レンタル。いつものことだがセリフは聞き取りづらい。製作・監督・脚本ウーヴェ・ボル・・オヨヨ「ブラッドレイン」「アローン・イン・ザ・ダーク」の人ですか。これ聞いただけで内容想像つくわ~変な期待しないで見よう。ストーリーがつながらなくても不思議に思っちゃいけない。それがウーヴェ・ボルなのさッ!そう言えばパレ君「ブラッドレイン2」「アローン・イン・ザ・ダーク2」両方に出ているんだよな仕事ないのかな。原題は「サンクティモニー」。「神聖であること」「神聖ぶること」という意味らしい。「すぐそこサンクス」「サンデーモーニングティー」ってことですね?(違うって!)ビデオの題名はその点わかりやすいよなあ「シアトル猟奇殺人事件」!・・えッ、違う?あら「殺人捜査」だわ。何でわざわざ捜査?そうさねえ・・。きっとみんな事件で覚えているわよ・・ってそんなにメジャーな作品じゃないか。シアトルでは今連続殺人事件が起きている。犠牲者15人のうち、最初の六人は目をえぐられ、次の六人は耳を切り落とされ、最近の三人は舌を切られている。こういう犯人は変に几帳面だから、あと三人舌を切られるだろう。手がかりは全くと言っていいほどなく、レナート(パレ)、ドロシーの両刑事は、警部(エリック・ロバーツ)に尻をたたかれている。ぐずぐずしているとFBIが捜査に乗り出し、事件を持っていかれてしまう(その方が楽でいいじゃん・・なんて思っちゃいけないようだ)。レナートの妻サラは出産間近。しかしレナートは心の準備ができてないだの整理がつかないだのぶちぶち言って、現実と向き合おうとしない。この事件がかたづいたら・・などと言うが、例えかたづいても次の事件かかえ込むわけで、仕事が逃げ口上になってる。そりゃ奥さんだって怒るわな。自分は大きなおなかかかえていて、その現実から逃れることはできない。女性はいやでも現実と向かい合わなくちゃならないが、男性は・・。体がどうにかなるわけじゃない、頭の中だけ。だから準備だの整理だのと言ってられるのだ。でもまあそうやって衝突はするものの、レナートは奥さん愛してるし、サラはサラで刑事と結婚した以上ある程度のことは辛抱しなくちゃと思っている。なかなかの賢夫人。

シアトル猟奇殺人捜査2

ちなみにIMDbではサラではなく、スーザンになっている。演じているキャサリン・オクセンバーグはキャスパー・ヴァン・ディーンの奥さんらしい。さて、パレ主演となればラブシーンあっても不思議じゃないが、この映画ではなし。その代わりヌード見せる・・って言っても後ろ姿だけど。サラは写真サークルに入っていて、予定していたヌードモデルにキャンセルされて困っていて、それでレナートにピンチヒッター頼むわけ。会員は女性ばっかで、大喜びでシャッター切りまくる。笑えるシーンだが、レナートは刑事、こんな写真(もちろん後ろ姿ではなく前からとってる)とられて大丈夫なのかなあ。頼むサラもおかしいよな、まあ頭に血が上っていたのだろう(自慢の亭主見せびらかしたい)。レナートは・・こういうのは準備も整理もすぐできるってか?株投資家のトム(ディーン)が出てきて、彼は見かけとは裏腹になかみは異常なので、それと対比させるためかな。明るくカラッとしたレナートのヌードシーンと、サディストじみたトムの性癖。殺人犯はトムだというのはあんまり隠していないので、推理の楽しみはない。ちょっとレナートに暗いところや病的なところくっつけ、もしかしたら彼が・・なんて引っくり返りそうに思わせたりするが、何ということもなく通り過ぎてしまう。レナートとトムには共通点があり、そのせいでレナートはトムに反発し、トムの方はシンパシーを感じて近づいていく・・そんなふうに思わせたい作り手のそぶりは感じる(が成功していない)。平面的な推理物にとどまらない、ストーリーの厚み、深さを(例えどんな作品でも)いちおうは期待して見る。他の人はけなしているけど、もしかしたら私にとっては掘り出し物、拾い物かも・・って。でも一方でボル君だからそんなのありえないってのもある。まあ今回は「ブラッド」と違って現代物だし、「アローン」のような怪物が出てくるわけでもない。そのせいで意外とまともに作ってあるな・・という印象。他の推理物にくらべてすぐれているところはないが、見るに堪えないってわけでもない。まあ「処刑特急」という超々クズ映画を見てしまったせいもある。あれを超えるのは難しいと思うよ、ボル君でもね。こうなるだろうな・・と思ってるとホントにそうなっちゃうので、どうしても気分は冷めるが、興味は持続し、最後まで見てしまう(「処刑」は見てるの拷問だったぜ)。

シアトル猟奇殺人捜査3

さてトムだけど若くてハンサムで仕事に成功し、大金持ち。イヴという美しい婚約者もいる。でも心の中は暗黒が支配し、冷静に悪事を働くけど、一方では破滅を望んでいる。複雑な性格だけど、ストーリーに都合よく作り上げられたキャラだとも言える。これこれこういうわけでこういう性格が形成された・・なんていうんじゃない。うん、取りあえず冷酷なサディストにしといて、クライマックスになったらマジギレさせよう・・って感じ。ディーンは美形だからどんな表情していたってきれい。深みなんか、裏の苦悩なんかにじみ出てなくたって平気。仮面のような美しさ・・よし、これでいこう!2001年の製作なので、パレのハンサムぶりにはちょっとかげりが出てきている。くたびれた感じ。その点ディーンは10歳近く若いから目は澄んでるしお肌つるつる。顔が角張りすぎてるし、背が低めで顔が大きいから、全身うつすとあまり格好はよくない。クライマックスでの二丁拳銃なんか笑っちゃう。しかもず~っとスローモーションだし。ボル君絶対ジョン・ウー気取り。最初の方では犠牲者弓矢で殺されていたような。それが銃になって。犠牲者の数もレナートやドロシーは18人と予想したけど、18というのは666から来ているんだろうな。16人目が少女で、17人目がドロシー?それとも彼女は18人目?17人目は娼婦と書いてる人がいるけど、私は気がつかなかった(見逃したか、忘れたか)。その後大量虐殺になってるから18という数字も結局どうでもいいような・・。ここらへんもボル君らしい。若きエリートが裏では・・というのは「アメリカン・サイコ」風味。クラブの地下でのスナッフフィルム撮影は「8MM」風味。何だか寄せ鍋・・いや、寄せ集めになってきたなあ。あの撮影は結局何だったんだろう。レナートは情報屋から、よからぬ見世物やってると聞き、調べに来るが空振り。トムは直前まで見物していたから、この二人そうとは気づかずニアミスしてたかも。この時のレナートの捜査はいいかげん。ガセネタと決めつけ、後でフォローもしていない。連続殺人をかかえているから、気乗りしないのも無理ないけど。ここを通り過ぎちゃうのは・・つまりあの女性は本当に撃たれて死んだのか、それともすべては撮影用の演技なのかあいまいにしておくのは、ボル君の意向でしょう。真偽は見る者の想像にまかせよう・・じゃ~ん!無責任だなあ。

シアトル猟奇殺人捜査4

見世物のためだけに人を殺していたのでは供給が追いつかないし、(死体の)後始末も大変。第一見物料取ってた?てなわけで私はあれはただのマニア向け映画の撮影だと思うんですけど、どうなんでしょう。ネットでの感想だと本当に殺してると解釈している人もいるが、共通しているのは(描写が)長すぎるってこと。あまりストーリーに関係ないことに力を入れすぎるってのは、特にデビュー作に多いよな。「恐怖のメロディ」のジャズコンサートとか。私はレナートの、俳優に対する態度に呆れた。乱暴だし高圧的。どうも彼の仕事ぶりってぱっとしないんだよなあ・・この時に限らずいつも。16人目の被害者の第一発見者として現われたトム。彼に会ったレナートはとたんにぴんとくる。こいつ絶対怪しい!でも聴取の席で熱くなるなど暴走ぎみ。自分から立場悪くしている。どうしてこんなレナートが無能に見えるような描写するのかな。この時だけでなく彼はあんまり敏腕刑事には見えず、それが映画全体をおおっており、映画の質を落としている。ボル君は気にしちゃいないだろうけど、見る者は正直だからIMDbのユーザー評価は2.9だったりする(あはは)。それをちょっとばかし救っているのがロバーツ。最初は結果を出せとせっつくだけの無能な上司に見えるが、単なる憎まれ役、さげすむべきキャラというわけでもないことがわかってくる。熱くなりがちなレナートにくらべりゃ冷静だし、押さえるべきところはちゃんと押さえている。全体的にアホらしい映画ではあるが、彼のおかげである程度は引き締まった。トムはドロシーを見た時から引きつけられる。イヴに婚約解消を申し出たのも、ドロシーに興味が移ったからだろう。もっとも興味と言っても恋愛感情ではなく、次の獲物に最適!ってことなんだけど。それまでの獲物の基準がどこにあるのかは不明。行きあたりばったりか?ドロシーもトムにはうさんくさいものを感じるが、反発一本槍のレナートと違って、まずは確かな証拠を・・と思っている。それには自分が女性であることが有利に働くと思っている。彼に近づき、親しく話してみれば何か感じるはずだ。彼が犯人なら、私はそのきざしを見逃したりしない。レナートは強く止めるが、彼女は聞かない。この流れははっきり言ってすごくおかしい。

シアトル猟奇殺人捜査5

トムに関する念入りな調査やってないし(やっていればイヴとの婚約解消とか怪しげなクラブ・・それもレナートが行ったばかりの!・・に出入りしているとか、何かしら浮かび上がってくるはず)、安易に近づきすぎ。自分に自信持ちすぎ。いざという時の用心しなさすぎ。そのせいで彼女は殺されるが、自業自得という感じ。まあとにかく彼女の行動は刑事にしてはおかしく、見てる人皆首を傾げたと思う。さてイヴだが、もうすぐ挙式だというのにトムの様子がおかしい。気づきながらも何となくやり過ごしている。いきなり解消を言い渡された時はとまどうが、トムに言いたい放題言われても今いちぴんとこないようだ。トムの仕事仲間二人も、彼にあからさまに侮辱されても、当惑はするものの怒り出すわけでもない。冗談だろう、もののたとえだろう・・と解釈している。善人だからと言うより、鈍感だからだろう。そりゃ若くてハンサムで大金持ちの彼が血に飢えた殺人鬼、心がねじ曲がった異常者だなんて誰も思わない。成功して人生に飽いてちょっとばかりシニカルになってる、悪ぶってる・・そう思っているのだ。トムにすれば自分が本音言っても相手は気づいてくれない。誰もわかっちゃくれないんだ~となる。まるでだだっこだ。イヴはショックは受けたものの、後日婚約解消パーティを開くから・・と招待状寄こす。これからは友達でいましょう・・こんなのはトムにとってはちゃんちゃらおかしいことで。偽善もいいとこで。彼は破滅へ向かってのカウントダウンを自ら演出する。自分からわざわざレナートの前に現われたのはつかまえて欲しいからだ。つかまるにしてもその前にいろいろやってからでなければだめで、ドロシーを近づけさせてみたり、レナートの家庭を探ってみたり。仕事の方も株を操作し、最終的に一文無しになるよう仕組む。まわりの者にも損害与える。テレビのインタビュー番組で過激なことを言うが、ここでも司会者は冗談、もののたとえだと思っている。局で生放送殺人やってのけた後はパーティ会場へ。そこでも大量殺人。イヴも友人も皆殺し。このパーティ会場へつながっていく展開はよかったと思う。イヴはトムが糾弾したように、愛情ではなくお金に目がくらんで結婚する気になったのだろうが、それにしたって気の毒である。トムの態度に怒って二度と会わないような性格なら死なずにすんだかもしれない。友人達も気の毒にとんだとばっちりだ。

シアトル猟奇殺人捜査6

テレビ局での事件・・誰も気づかなかったのか。彼がテレビに出ることは何人かは知っていただろうに。2001年なら、ビジネスマンならケータイ持ってるだろうに誰もメールを・・まあいいけど。レナートは危機一髪のところでサラを助け出す。・・と言うか、トムがサラの命が助かるような中途はんぱなしかけするはずないと思うが。首吊り状態だからサラは死んじゃうはずだが・・まあいいけど。トムに話を戻すと、非常にうすっぺらなキャラ設定だし、ディーンはほとんど無表情である。それにもかかわらず映画で印象に残るのはトムである。彼は犯罪者としての特徴をばっちり備えている。演出が好き・・つまり出たがり、見栄っ張り、ナルシスト。つかまえて欲しい反面うまく切り抜けられるぞという自信・・つまりうぬぼれや。非常に自分かって・・まわりは自分をわかってくれないと不満をいだくが、彼の方こそ人の痛みも暖かさも理解できない。パーティ会場を惨劇の間に変えた彼は、レナートがかけつけたことを知ると、二丁拳銃の弾倉を抜く。レナートはそんなこと知らないから、トムが撃とうとするのを見て射殺する。倒れたトムは満足そうで、笑みすら浮かべているようだ。やりたいことはみんなやったし、大勢の命を奪ってやったが、償いをする必要もない。いや、償いをするのはレナートの方なのだ。頭のいい自分と違って彼は無能だから、ドロシーもイヴもおそらく妻も救うことはできなかった。彼は犯人である自分を罰することすらできない。後で弾倉がからなのを知った彼はさぞ驚くことだろう。無抵抗同然の相手を撃ち殺したのだから。自分は死ぬけどレナートよりは優位なのだ。あいつを誘導してやったのだから。あいつはまんまと罠に引っかかったのだから。そう考えれば(←?)おのずと笑みも浮かぶというもの。死ぬにしても他人に最大の苦悩(妻と赤ん坊、相棒の死)与えてからでなければ承知しないのだ。どこまで根性悪なのだろう!映画はトムの死で終わるので、レナートの今後は不明。まあ準備だの整理だのはもう言わないと思うけど。てなわけで何ということもないけど、それなりに楽しめた。ただエンドロールでの悲しげなメロディーが場違いで・・こんなおセンチな曲似合いませんてば。ロックがんがんの方が・・。トムの秘書ティナ役の人は「レプリカント」で娼婦やってた人。あとは知らない人ばかりだったな。