サイレントノイズ

サイレントノイズ

マイケル・キートンは、最初に見たのが「パシフィック・ハイツ」だったせいで、どうも異常男というイメージ持ってしまった。「バットマン」も一本くらいは見ているはずなのだが、印象に残っていない。今回はそういうわけで、キートン目当てでもないし、内容よくわからないし(紹介記事読んでも意味わからん)、やってるとこ少ないし(2館)で、本来なら見ないで通り過ぎるはずだった。一年くらいたってからWOWOWあたりで見るとか、7泊8日になってからレンタルするとか。でも・・あるんですよ、何となくそそられる作品てのが・・。「パイレーツ」とか「X-MEN」とか、そういうメジャーなのとは全く別な、隅っこにつつましくちょこんといて、控えめにおいでおいでをしているような作品。そういうのに私の食指は動くわけです。そういうのが年に数本必ずあって、見てみるとこれがけっこう当たりだったりして。そういうのがうれしいわけです。「小さな幸せ」ってとこですかウヒ。平日で一回目は15人足らず、二回目は15人あまりってとこでしょうか。入れ替えなしだから途中で入ってくる人もいて、だから最終的にはもうちょっと多かったかも。お客はほとんどが男性。さて主人公ジョナサン(キートン)は建築士。この映画の翌日「もしも昨日が選べたら」を見たけど、主人公はやっぱり建築士だった。「ファイヤーウォール」でも主人公の奥さん建築士だったし、はやりなのかな(まさか)。最初は彼の環境がよくわからない。奥さんがいて子供がいて、それでいてママが迎えにとか言ってる。そのうち関係がわかってくる。ジョナサンは一度離婚し、売れっ子作家アンナと再婚したのだ。マイキーは前妻との間にできた子供。ジョナサンは再婚して間もないようで、朝っぱらからベタベタイチャイチャ。どうもアンナは妊娠したようで、ジョナサンは大喜び。ベタベタに拍車がかかるのもムリない。マイキーは両親の家を数日ごとに往復しているようだ。アンナとも仲がいいし、ジョナサンと前妻、前妻とアンナとの間もうまくいってる(たぶん)。もうすぐアンナの新著が出るし、自分の仕事も順調、幸せいっぱいだったのに・・。突然の不幸が彼を襲う。まずアンナの車が見つかり、何週間かたって遺体が見つかる。結局事故死ということで処理されるが、ジョナサンは悲しみからなかなか立ち直れない。

サイレントノイズ2

引越しをし、仕事に打ち込むことで気をまぎらわせようと努めるが、不思議な出来事が起きる。壊れているはずのアンナの携帯から着信が入るのだ。気になったジョナサンはレイモンドという男を訪ねる。彼はEVP(電磁音声伝達現象)を研究しており、以前(まだアンナの遺体が発見される前)アンナからの伝言を伝えにきた男。もちろんその時のジョナサンは相手にしなかったが、もしアンナと交信できるのなら・・姿を見ることができるのなら・・。てなわけで、前半はひたすら愛妻を失った中年男の悲しみの描写。それとモニターにかじりつく描写。怪現象は起こるもののまだあいまいで、ホラー映画らしい怖さはほとんどない。「コーリング」や「プロフェシー」のようなメソメソジメジメムード。そりゃ中年になってくたびれてきて、額もハゲ上がってる。それでも若い嫁さんもらってがんばって(何を?)、子供ができたぞバンザーイ!と有頂天になったのもつかの間、あっという間にやもめのジョナサン(あれ?どこかで聞いたような)ですよ。そりゃなかなか立ち直れませんわな。奥さん恋しい・・と部屋で一人うなだれて男泣きですよ。できることなら後ろからそっと忍び寄ってナイフでブスリ・・もとい、そっと近寄って肩でもたたいてなぐさめてあげたい!そこへ登場するのがぶよぶよたぽたぽの肥満男レイモンド。アンタEVP研究するのもいいけどちっとはやせなきゃ。E(えらく)V(ヴォリュームがあって)P(パンパン)になってるぜ!彼はすぐ何者かに殺されるんだけど、殺されなくたって心臓マヒで遠からず命落としたと思う。死亡原因は脂肪です・・なんちゃって。ジョナサンがレイモンド訪れると、ちょうどそこに居合わせたのがサラ。亡くなったフィアンセと交信ができて、うれしさに涙ぐんでいる。見ている方(私)は、まだEVPに疑問持ってる。でもサラの様子を見ると本当らしく思える。サラは抑制のきいたおだやかな人柄で、トリックにだまされたり、(レイモンドとぐるになって)ジョナサンをだますようなタイプには見えない。EVPやレイモンドを信用してもいいように思える。それでいてジョナサンに何か起こる時、いつもレイモンドは席をはずしているので、裏で何かインチキをやっているのではないかという疑いも捨てきれない。その後レイモンドが殺されたことで、インチキじゃないってはっきりわかるんだけどね。

サイレントノイズ3

EVPのことはよくわからない。録音したり録画したり、とにかく記録する。とっている時はわからなくて、再生して初めて見えたり聞こえたりする。もちろん何の収穫もないことの方がほとんど。とほうもなく時間がかかり、もどかしくもじれったい。見えたり聞こえたりしても意味がわからない。アンナがうつるとは限らない。のめり込むと生活がそれでいっぱいになってしまう。目や耳が疲労でおかしくなり、頭痛やら肩こりやら睡眠不足やらで体調崩すと思う。だからジョナサンは大変なんだけど、映画見ているこっちも大変なのよ。テレビのいわゆる砂嵐状態画面ずっと見させられるから。よく見えないし聞こえない。字幕のおかげで何言ってるのかはわかるけど、そうでなきゃ・・。見ていて疲れるので、もっとはっきりしたの出せ!って心の中で文句言ってた。あんまり簡単にはっきり見えたり聞こえたりしたのではリアルじゃないけど、かと言って雑音や砂嵐ばっかでストーリーが進まないのも困るのよ。まあはっきりしないものは、見方によってはどうとでも受け取れる。悲しみのあまりジョナサンの頭が狂い始めているのかもしれない。実は全部夢でした妄想でした・・ってね、よくあるでしょ、そういうの。あるいは録音録画をしなければ、妙な現象もそのうちおさまり、ジョナサンは普通の生活送れたかもしれない。アンナの霊はそのうち伝達をあきらめたかもしれないし、遠くに引っ越せばついてこられないかもしれない。まあそれだと映画にならないので、ジョナサンは録音録画を続けるんだけどさ。さて・・二回見たわけだが、一回目はかなりドキドキした。二回目はそんなでもないかなーと思ったらやっぱりドキドキした。一回目はストーリーわからず見ていて、どうなるんだろう・・とドキドキし、二回目はうつっていることの意味とかセリフの意味わかった上でドキドキする。例えばサラのアパートのベランダからジョナサンが下を覗き込む。数時間後、サラはそこから転落するのだ。例えば倉庫の中、誘拐されたメアリーを捜し回っている時、ジョナサンは下を覗き込む。数分後彼はそこに転落するのだ。「あの女は我々のものだ」という何者かのセリフの、「あの女」とは誰のことなのか。一回目にはわからないけど二回目にはわかる。ああやっぱり謎解きものは二回見なくちゃだめだわ!一回だとわからないこと、見落としていることいっぱいあるもの。

サイレントノイズ4

さてジョナサンはモニターに囲まれ、食事もいいかげん、仕事は手につかず、その上マイキーまでほったらかし。気持ちはわかるけど幼い息子のこと少しは考えろっての。死んだ者より生きてる者優先しろこら。このマイキー、別にぐずりもせず大人しくしているのが哀れ。電子機器梱包していたプチプチ(正式名称知らん)を体に巻きつけているのが胸キュン。パパがかまってくれなくてさびしいけど、でもがまんして、プチプチをつぶしているのがけなげ。そんなマイキーにすまないと思いつつ、ますますジョナサンはモニターにのめり込む。あせりやいらだちから霊媒に見てもらったりする。霊媒師は危険を感じ、EVPの害を説いてやめさせようとするが、ジョナサンは聞かない(聞いたら映画が終わってしまうから聞くわきゃないのよ)。サラの場合のようにEVPは癒しになることもあるが、世の中(?)いい霊ばかりとは限らない。EVPの一部は悪霊のものだというデータもある。・・で、後半はだんだん悪霊のカゲが差してきて、ジョナサンやサラに危険が迫り、ワクワクドキドキゾクゾクヒヤヒヤするわけである。いやホントマジで怖いんですよ。体がこわばって、見終わった時には体の節々が痛かったくらい。血がどぴゅーとか、内臓びろーんとか、昆虫ワサワサだったら怖くない。あらクランベリージュース、あら豚レバー、あらハムナプトラ・・ともう慣れっこ。でもそういう見慣れたものじゃない。テレビの砂嵐画面にうつる三人の人影(それもジョナサンが見ていない時にうつる)、背後をスッと横切る黒いカゲ、静かに火花を散らす電柱、立てておいたはずなのにころころところがっている花びん。極めつけはベランダの手すりに立っているサラ。微笑みさえ浮かべているようで・・そのまま転落し・・。直接的間接的な悪霊の仕業の数々。その一方で、この映画では悪霊とは無関係に思える怖さも描かれる。ジョナサンが仕事で依頼主と一緒にエレベーターに乗っていると、突然停止し、電気も消える。依頼主は工事費を吊り上げる気だなとか何とか言いがかりをつけ始める。ジョナサンがなだめても聞かない。その態度の豹変ぶりが怖い。それでいて電気がつき、エレベーターが動き始めるとすぐに元に戻るのだ。閉所恐怖症なのか、暗闇恐怖症なのか、はたまた二重人格なのか。こういう人とは一緒にいたくない。

サイレントノイズ5

あるいは、事故を起こした車から赤ん坊を助け出したジョナサンが、赤ん坊を助けることができたのは、母親にEVPで呼ばれたからだと父親に伝えようとすると、父親の態度が突然変わるところ。そりゃジョナサンだってレイモンドには最初同じ態度を取った。悪霊を寄せつけないためには、これくらいきっぱりした態度取らなきゃならないことも、見ている我々にはわかっている。それでも父親の態度の変化は怖い。天使のような赤ん坊を抱いていながら汚い言葉を吐くのが怖い。悪霊も怖いが、人間も怖い(そう言えば悪霊だって元は人間だ)。ある人達の目から見れば、今この瞬間にも、我々のまわりには霊がいっぱい漂っているのだろう。ありがたいことに、たいていの人にはそれがわからないから普通に暮らすことができる。でも見えないから聞こえないからって存在していないとは決めつけられない。要は信じるか信じないかだ。信じるにしても近づくか近づかないかだ。霊媒師の忠告は「コンスタンティン」思い出させた。こっちが向こうの世界を覗けば、向こうもこっちを見つけるのだ。霊に接触するには注意や自制が必要だが、たいていは会いたい聞きたいが先に立ち、つい度を越してしまうのだ。レイモンドのように経験積んだ者ですら悪霊の餌食になることもある。アンナ恋しさに目がくらんでいるジョナサンのようなお人好しは危ないもいいとこ。ジョナサンとサラは、レイモンドが残した記録を調べ、画面にうつった人達が、生前レイモンドを訪ねていたことを知る。不思議なことに、画面にうつったり声が聞こえたりした時点では、その人達はまだ生きていたのだ。ではアンナはこれらの人達の未来(死)を自分に見せたのだろうか。自分にこの人達を助けさせたいのだろうか。まあここらへんは正直言ってジョナサンの思い込みの激しさが目について、展開がいささか強引に思える。つじつまの合わない部分や、関係がありそうでいて話に出てこない部分もある。例えばアンナの新著の意味深なタイトルや、アンナが(ジョナサンではなく)レイモンドに交信してきたところを見ると、アンナは生前レイモンドと面識があったらしく思えるのに、そういうのが問題にされないとか。でも・・だからこそここらあたりからホラー映画らしい怖さが増して来始めるのだ。そのうちに何とビデオにはサラがうつり・・。あのーこういうのってジャパニーズホラーでもあったんでしょ?

サイレントノイズ6

あたしゃジャパニーズホラーは一本も見てないのでよく知りませんけど。ホラ言わんこっちゃない、やめときゃいいのに深入りするから呼ばなくてもいい悪運引き寄せちゃった。と言ってもサラは別に何にもしていなくて、ジョナサンがほじくり返すからそのとばっちり受けるはめになったのよ。真実の追究は時にはまわりに迷惑もたらすってこと。アンナはもちろんいい霊だから人助けするためにジョナサンに画像見せているのかもしれない。そのおかげで母親は助けられなかったけど赤ん坊救い出すことはできた。今またメアリーという女性が行方不明になって世間で騒がれているけど、彼女もうつった。うつったからにはまだ生きているはず。アンナは自分にメアリーを助けさせたいに違いない。・・でもってクライマックスになだれ込むわけだが、この部分はドキドキするもののちょっとやり方がまずい。アンナやレイモンドを殺したり、メアリーを誘拐監禁したのは人間の仕業・・つまり真犯人が現われるというのは別にかまわない。全部が全部悪霊の仕業というのはムリ。悪霊にだってできることとできないことがあるもん。真犯人もEVPにのめり込んだ一人。ジョナサンと同じく電子機器に囲まれ、モニターし続けている。ジョナサンだって一歩間違えれば犯人と同じ道たどる。取りつかれ、あやつられ、殺人犯す。悪霊喜ばせるためなら何でもする。事故死だと思われていたアンナは実際は殺されたのだ。映画では車の発見場所から5キロ上流で遺体が見つかったことになってる。でも普通は下流に流されるんじゃないの?その時点で本当に事故死?という疑問起きそうなものだが。それはさておき、アンナはジョナサンに真実知って欲しくて(他殺であること、今また自分と同じ犠牲者が出そうなこと)ジョナサンを導いたように見える。でも本当にそうなのかな。クライマックスはメチャクチャで、わけわからん映像でごまかしている。だからぁ・・悪霊をはっきり形にして見せちゃだめなんだってば。ここらへん「ブギーマン」のクライマックスと似ている。あっちもひどかったけどこっちもひどい。黒いカゲでいるうちは怖いけど、はっきりさせるとCG、作り物、アニメ・・ってわかっちゃうから怖さがうすれる。やたら目まぐるしく、1秒の間に何カットも入れ・・。前にも書いたけど速すぎて見えないんじゃ怖がりようがないんだってば。

サイレントノイズ7

てなわけでクライマックスは最高の見せ場・・じゃなくて、最低の汚点でーす。白状しちゃいますと、ジョナサンは死んじゃいます。白状じゃなくてネタばらしですけど。そりゃ悪霊相手に戦って勝てるわきゃないんです。仕方ないんです。やっぱ安倍晴明あたりに助っ人に来てもらわないと。「あめつちに きよらかす」とかさ、うちわで(違うって!)あおいでもらわないと。でもって、話を戻すと、悪霊としては死人が増えれば増えるほどうれしいわけ。商売繁盛ってことで。ビデオでいろいろ見せてジョナサンを駆けずり回らせることもできるし、メアリーをエサにここ(犯人のアジトである倉庫)へおびき寄せることもできる。メアリーはゲットできなかったけど、ジョナサンは命落としたし、犯人は警察に射殺された。考えようによっては、アンナはむしろ悪霊にあやつられていたようにも見える。アンナが交信しなければジョナサンは死なずにすんだ。レイモンドやサラも巻き込まれなくてすんだかもしれない。アンナは自分の仇討って欲しかっただろうけど、そんなことをすればジョナサンの命が危うくなることはわかっているはず。わかっていて巻き込んだのか。彼が命落とせばあの世で一緒になれるからね。どうも見ていてアンナの霊はジョナサンの安全のことちっとも考えていないように思える。むしろ危ない目に会わせている。スパッとはっきりしたことを言わずジョナサンを惑わしてばっか。○○が犯人よ、気をつけて!・・とかさ、せっかく現われたんならそれくらい言えこら。わけのわからんことばっか言いやがって。まあ霊にどの程度自分の意思があるのか知らんけどさ。とにかくアンナが何考えてジョナサンに接触していたのか、あるいは悪霊にあやつられていたのか、あるいはすべてのことひっくるめて悪霊がジョナサンの命狙って、アンナのフリをしてたぶらかしていたのか、そこらへんは不明ですよ。何たってジョナサン死んじゃうので、もうどーでもいいんでーす。真相わかったってジョナサン生き返るわけじゃない。しかし!どーでもよくないのがサラ。アパートのベランダから転落したけど、悪霊の仕業だなんて誰も信じるわけない。フィアンセの死以来精神的に不安定で、発作的に自殺をはかったとか。あるいは眠るために飲んだ薬の副作用で、自分でも気づかないうちに誤って飛び降りちゃったとか。日本でも風邪薬の副作用でそういう事故あったし。

サイレントノイズ8

あるいは動機は不明だがジョナサンが突き落とした・・とかさ。そういう理解できる理由くっつけて処理される。命はとりとめたものの、車椅子生活になってしまったサラ。転落して顔とかぐちゃぐちゃになるはずなのに全然。事故からジョナサンの葬儀までそんなに日にちたってないから、あんなふうに出歩けるはずないのだが・・まあいいか。葬儀が終わって、参列者がいなくなって、道の真ん中に彼女一人ですよ。どうして誰も手を貸さないの?そりゃ車椅子は一人でも操作できるんだろうけど、言っときますけど道の真ん中ですぜ。ほらほら何かよぎりましたぜ黒いカゲが・・。雨雲ならいいですけどね。あのビデオにうつって、その通り死ぬところだったけど今こうして生きてる。でもすべてが終わったの?悪霊は彼女から手を引いたの?引いたってなぜわかるの?・・と言うわけで見ていて不安になる。車が来て、あっという間にはね飛ばされるのでは?はね飛ばされなくても一生車椅子生活だなんて、生きのびて幸せだったのかどうか。・・で、これで映画終わりかと思ったらまた砂嵐画面。どこのテレビにうつっているのか不明だが、ぼんやりした人影はジョナサン?実は葬儀の直後、ジョナサンは早速マイキーにコンタクトしてきたんですよ。カーラジオ通じて「マイキーごめんな、ごめんなマイキー」ってあやまるわけ。母親とその再婚相手は、信じられない現象にびっくりするんだけど、マイキーはすんなり受け入れる。何しろパパがアンナに会おうとしてモニターにかじりついているところさんざん見ているからね。ここらへんはさすがに悪霊とは何の関係もない、ジョナサンの心からのメッセージなので、見ていて胸がじわーんとするわけ。でも母親はブチッとスイッチ切っちゃうんです。三人が同時に経験したのだから夢でも何でもない現実の出来事。ジョナサンの霊の存在も別に否定はしない。でもメッセージ受け取って、そこで接触は終わりにする。どんなに心残りでも心を鬼にして断って、それ以上は近づかないことが大事なの。子供のマイキーにはそのかげんはわからないから、交信を断ち、霊から遠ざけるのは母親の仕事。それを越えてしまったからジョナサンは命落としたんだし。一見冷たいように見える母親の行動だけど、目からは涙が流れていていいシーンだ。

サイレントノイズ9

亡くなった人に会いたいという気持ちは誰にでもあるものだが、がまんすることも大事だと思う。思い出を大事にし、いつまでも忘れずにいてあげること、先に逝った人のぶんまでしっかり生きることが後に残った者の勤めだと思う。さて・・自分から命を縮めてしまったジョナサンだが、一回目はそんな彼の運命の悲惨さ、アンハッピーエンドが気にくわなかった。でも二回目・・ラストで彼の隣りにいるのがアンナだとわかって・・つまりジョナサンはやっとアンナと一緒になれて、今とても幸せなのだとわかって・・もしかしてハッピーエンド?・・と気づいたわけ。現世に生きるだけが幸せとは限らない。あの世で幸せということもあるんだ・・。それでやっと心が軽くなりましたの。惜しむらくはアンナ役のチャンドラ・ウェスト・・顔中口みたいな感じで、歯ブラシか歯列矯正のCMでもやったら?と思った。うつる度に口や歯が気になって・・もっと別の人の方がよかった。前妻役のサラ・ストレンジの方がよっぽど美人。サラ役のデボラ・カーラ・アンガーは、地味で物静かな感じ。よくある浮わついたホラー映画にならずにすんだのは彼女のおかげ。パンフ見るまで「サイレントヒル」に出ていた人だってこと気がつかなかった。キートンは「コーリング」のケヴィン・コスナーのようでもあり、「プロフェシー」のリチャード・ギアのようでもあり、「シックス・センス」のブルース・ウィリスのようでもあった。奥さん恋しいくたびれ中年男の悲哀と、非力な人間でありながらも悪霊と戦うけなげさ、他人に親切にしたいというお人好しぶりなどがよかった。内容的には上に書いた映画の他に、「エコーズ」とか「ザ・サイト」と似ているところがある。ただえげつなく怖がらせるのではなく、ほんのり物悲しい雰囲気を感じさせるところがいい。エンドロールで流れる歌もよかったし、お客さんは少なかったけど、見て損のない映画ですよ。ところでこの映画の原題は「ホワイトノイズ」。このままの方がだんぜんいいのに、何でわざわざ「サイレントノイズ」にしたのかな。「サイレントヒル」と混同されるようわざとまぎらわしいのにしたのかな。ネットで「サイレントノイズ」を検索すると「サイレントヒル」も上がってくるから、その逆もアリで思惑通りかも。