新死亡遊戯・七人のカンフー

新死亡遊戯・七人のカンフー

これが作られたのは1975年、ブルース・リーの「死亡遊戯」より前だ。てっきりリーの遺作だと勘違いした人や、リー関係なら何でもいいやというマニアなどが見に行ったのだろう。香港なら何でもありだ。だまされる方が悪い。日本での公開は1977年の9月か。そうかもう40年たったのか。私はこれをどこで見たんだろう。記憶がない。「ブルース・リーを探せ!」の方は確か休みの日早起きして、はるばる大宮まで見に行ったんだと思う。併映はかの有名な「ゾンビ」。他に横須賀まで見に行ったこともあったっけ。「サイレントフルート」だったかな。違ったかな。今思えばちゃんと日付と館名を記録しておけばよかったと悔やんでいる。どこかの映画館では後ろの席でズーズーすする音がして・・お客がインスタントラーメンを食べていたのだった。ああ懐かしい!東京や横浜の、人の集まるところでしか上映されてないという映画はよくあるけど、あの頃は大宮とか横須賀とか、中央から少し離れたところでしかやっていない映画があったのだよ。「新死亡遊戯」はテレビではやったんだろうか。とにかくDVDが出るまで、ずっと幻の映画だった。パンフレットもなかったと思う。あれば買っていたはずだから。ヤクオフではプレスが出品されている。何が書かれているのやら。私が持っているのはチラシ一枚・・手に入ったのはそれだけ。あと、カンディの歌う「キング・オブ・カンフー」が何かのLPに収録されていて、それは持ってる。DVDを買ってもすぐには見ない。一度冒頭の数分を見たけど、すぐにやめた。よっぽど気合を入れて、時間のある時に、一人でいる時に見なきゃだめだ。で、今回やっと見た。主演のブルース・リィこと何宗道は好きな俳優さん。ブルース・リーのそっくりさんはたくさんいたけど、彼と、タン・ロンが一番好き。残念ながらタン・ロンの方は数年前亡くなったようで。まだ若いのに。リィは「Gメン75」にも数回出ていて、とにかくカッコよかった。あと、輸入ビデオで見た「続・精武門」もよかった。さて、「新死亡遊戯」を見てびっくりしたんだけど、私が記憶しているシーンがない!DVDは86分だが、他の資料だと96分になってる。10分も短いのだ!

新死亡遊戯・七人のカンフー2

映画館で見た時は、確か女性が主人公を襲うシーンがあったはずだ。平均台をやっていた女性が・・。平均台というのがちょっと目新しいだけで、大して強くもなく、すぐやられちゃったんだと思うが。ネットによれば日本やアメリカで公開されたのと、北京語版の二種類あるらしい。DVDは後者で、したがってあの「キング・オブ・カンフー」もなし。どこかで聞いたようなイージーリスニングが流れ、冒頭から腰砕けとなる。ストーリーは・・ちゃんと筋の通ったものを期待してはいけない。こんな映画が公開されたこと自体信じられないのだが、考えてみれば「キイハンター」とか無茶苦茶な内容のがテレビで堂々と放映されていたではないか。家族揃って毎週見ていたではないか(心の中ではこんなのおかしいぞと思いつつ)。さて主人公は・・名前は何だろう・・それに、主人公に思えて実は違うんだけど。だから仮主人公と書いとくか。仮主人公君はスポーツ万能である。ハードルに体操、トランポリン、それともちろんカンフー。遠くからとか後ろ向きとか、明らかに別人がやっているけど、うつし方がまたへたくそで。なぜか襲われたりするが、実はこれ映画会社の者が彼を試していたのだった。映画を完成させたいから代役を、君ならブルース・リーの後継者にとか何とか。で、誰の代役かというとチューという俳優で、これもリィ。仮主人公君はチューにそっくりなので、目をつけられたわけ。仮主人公君は一ヶ月後に結婚式を挙げることになっている。撮影に入れば式を延期せざるをえず、承諾するかどうか迷う。しかし婚約者は仕事を受けるよう勧める。で、引き受けるのだが、撮影に入る前にとり上がっている部分を見て、どういう感じかつかんで欲しいと監督に言われて、試写室へ。見ている我々は当然試写は数分で、その後はチューの代役を仮主人公君が勤めて・・なんて思ってる。ところが・・このまま最後まで行ってしまうのだ!だから我々は仮主人公君ではなく、チュー(の演じているハンションというキャラ)をずっと最後まで見させられるわけだ。代役もへったくれもなく、仮主人公君と婚約者を出してきた意味も全くなくなってしまうのだ。

新死亡遊戯・七人のカンフー3

撮影が終わって、監督とチュー、仮主人公君と婚約者が映画の出来映えを見ているのだというのなら話はわかる。とにかくこれ以降は映画の中の話だ(ややこしい)。夜、一人の男が暴漢に刺される。偶然それを目撃したのがハンション。瀕死の男に妻への伝言を頼まれ、その妻には息子のところへ荷物を届けるよう頼まれ。しかし尾行されてるし話にも不自然なところがあるので、ひとまず自宅へ。居合わせた兄リーカイと箱を開けてみると札束がぎっしり。実はさっき刺された男は、自分の代わりにハンションに荷物を届けさせようと一芝居打ったのだ。暴漢や妻もぐる。堅物のハンションに比べると、リーカイは女に弱く、恋人ダイダイに丸め込まれ、金を持ち逃げされてしまう。このダイダイがまたお化粧バッチリのタヌキ顔で、どことなくベティ・ティンペイ風。結局ダイダイはどこへ行ったのか不明。したがって金も戻らない。この金をめぐってあれこれあるのだが、書けば書くほど矛盾が生じるので、やり過ごした方が健康のためにはいい。その場の思いつきで作っているらしく、モタモタフラフラ。出演者の演技もひどい。学芸会並み。はっきりしているのはクライマックスで主人公が塔で敵と戦うことだけ。全編そこへ行くまでの繋ぎだから、居眠りしていてもオーケー。タヌキが出てきたと思ったら、次はふくれっつらのわがまま娘だ。いいトシこいて遊び相手が欲しいよ~と駄々をこねる。幼稚園児じゃあるまいし。どこやらの会社の会長ウェイは娘に甘く、ルーピンに相手をさせる。彼女は秘書か?でも秘書は他にもいるみたいだし。彼女はハンションの恋人・・つまりヒロインだってのに、腫れぼったい目をしたブス。見るまで忘れていたけど思い出した。映画館で見た時、びっくりし、呆れたんだよな。何でこんなの出してくるんだ?って。でも・・顔はブサイクだけど、ルーピンはまともな女性。休日に呼び出されてバカ娘の相手させられてもいやな顔しないで務めるし、真面目でしっかりしていてたぶん仕事でも有能。顔じゃないのだ、気立てがいいからハンションは彼女を選んだのだ。

新死亡遊戯・七人のカンフー4

そう弁護したくなるほど他の女性みんな性悪。ハンションをだましたニセ妻、金を持ち逃げするダイダイ、金持ちのわがまま娘、ろくなのいない。ところで途中で恋人役の女性が替わったと書いてる人がいて。でも・・替わってません。たぶん最初に出てくる仮主人公君の婚約者と混同してるんだと思う。たぶんこの頃になると見ている人はハンションイコールチューではなく、仮主人公君だと錯覚しているはず。会長ウェイは見るからにうさんくさい。だから正体が明かされても誰も驚かない。例の金はウェイのもの。でも誰に届けるつもりだったのだろう。途中でフィリピンのK氏とやらに奪われないよう、一芝居打ってハンションを巻き込んだんじゃなかったのか。そのうちウェイはK氏と手を組んでるし、何が何やらわからん。ウェイの手下と戦うハンションが途中で別人になっていたこともあったな。サングラスでごまかしていたけどバレバレ。ウェイは第一班がやられても第二班が・・と言っていたけど、ハンションにも第二班がいたらしい!まあとにかく見ていてもお尻がムズムズするような。ハンションが鼻の脇をこする度にムズムズ。腕組みして考え込むのにムズムズ。歩き回るのにムズムズ。ハンションだけじゃない、他の出演者も同様。突然笑い出すし。間の持たせ方がとにかく平凡、単調、へたくそ。途中でハンションは例のトラックスーツに着替える。なぜ着替えたんだろう。もちろんブルース・リーが着ていたからだ!いよいよ七星塔で戦うのだ。やっとクライマックスなのだ。ルーピンは人質にされてしまった。彼が行かないと彼女は塔のてっぺんから突き落とされてしまうのだ。各階ごとにいる相手をみんな倒せば彼女は解放されるのだ。いや、K氏達は悪党だからそんな約束守るとは思えんが。リーカイもつかまっているらしいが、後でつかまっていないことがわかる。リーカイも不思議なやつだ。作り手のその時の気分であっちにやられたりこっちにやられたりする。と言うか、見ている我々はリーカイが行方不明になっていようが現われようが全然気にしないのだが。

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作り手が考えてるのは、とにかく本家より先に作って公開しちゃえということのみ。つじつまもへったくれもなし。さて、題名では「七人のカンフー」だが、塔の一階は二人だから八人のカンフーじゃないの?まあこの二人は何てこともなし。二階は日本刀男。ハンションには瞬間移動という超能力があるらしく、そのうちコメディーになってしまうので、映画館で見ていた者はたぶん椅子からずり落ちる。三階は韓国のミスター・キング。この人はわりとまともな動き。演じているサン・マオ(山茅)はよく見かけた人。1977年に口論が元で刺殺されたらしい。まだ若いのにねえ。四階は毛むくじゃらのパンツいっちょう男。汗だくだしうなってばかりだし、たぶん映画館で見ていた女性全員引くと思う。私がこの映画を見て覚えていたことの一つが、ハンションがこの熊男を見て浮かべる表情。嫌悪を感じたという表情。熊男がやってるのはサンボか。五階はターバン巻いててインド人みたいだが、使うのはなぜかヌンチャク。最初はいいのだが、体の急所を攻撃されると突然弱くなるのが残念。演じている人は大柄で、彫りの深いなかなかの美男子だ。六階はモハメッド・アリみたいな黒人ボクサー。若くてノリノリだが、パンチだけなのですぐやられる。モハメッド・アリと言うよりソンナノ・アリ?って感じ。階が多いわりにはみんな弱いので、ハンションはさほどダメージも受けないまま最上階へ。ここでの相手は鞭を使うK氏だ。演じているロン・フェイ(龍飛)もよく見かけた人。さて・・アクションは確かに野暮ったいし、単調だ。うつし方も細切れにするなど余計なことをしている。変なうつし方をしている時はたいてい代役だ。でもまあ様々な欠点も、ブルース・リーと比べるからであって、彼のような完成度を期待してはいけないのだと悟れば(←?)これはこれでおもしろい。これよりもっとひどい映画だってたくさんあるのだから。とは言えラストにまたあのイージーリスニングが流れると、思わずつきひざをしてしまう私なのであった。あの「キング・オブ・カンフー」が使われていれば、印象もだいぶよくなったはずなのだが・・。