ザ・マーダー

ザ・マーダー

こういうのって私好み。いかにも・・って感じで。劇場では未公開らしい。そうだろうなあ・・以前だったらシネパトスあたりでやってくれたはず。でももうなくなっちゃったし。WOWOWでやったらしいが、気がつかなかった(私としたことが!)。「午後のロードショー」あたりでやるには最適の内容だが、BSジャパンで夜中と言うか夜明けと言うか、とにかく誰も見ていなさそうな時間帯に放映。吹き替えだったのがちょっと残念だが、やってくれただけで感謝。93分だからカットもされてないだろう。録画する気になったのはレイ・リオッタが出ているから。刑事役で連続殺人物と来れば見ないわけにはいかない。どうせ名作でも傑作でもないだろう(迷作か欠作だろう)が、ちょこっとでもいいところがあればそれでいい。流れとしては「スリー・リバーズ」系。昔関係した女性が次々に殺される・・やたら川が出てくる・・。刑事ジャック(リオッタ)はシェフのアナ(ジゼル・フラガ)と結婚して八年になる。冒頭の二人のやり取りはとても夫婦には思えず、ジャックがアナを口説いてる段階にしか見えない。ここでちょっとつまずく。で、女性が殺されたという知らせが入る。冒頭女性の水死体がうつるので、それかな・・と思ったら別の死体。検事局に勤めていたというサラ。そのうち水死体の方・・エリーも見つかる。さらにマッサージやってるサンリー。連続殺人なのでFBIも来る。手口の似た事件が他でも起きていて、犠牲になったのはメアリーとローラ。FBIの行動分析官ヴコヴィッチ役はお久しぶりのクリスチャン・スレイター。おっそろしく嫌なヤツだけど、何だか憎めない。何だかんだあるけど、いちおう仕事はちゃんとやってるし。被害者全員ジャックと関係があって、最初は犯人ではないかと疑われるけど、メアリーとローラの件のおかげでシロとなる。何しろジャックはこの町から全然出ていないのだから。その間には彼の母親も死亡。事故死と思われたが、ジャックは母も殺されたのでは・・とあせる。しかし結婚指輪がちゃんとあったので一安心。埋葬するけど、後で掘り返すはめに。母の体内から別の指輪が見つかって、やっぱり同じ犯人の仕業だ・・となる。そこらへんの・・事故か殺人かはっきりせず、二転三転するところはよかった。

ザ・マーダー2

そりゃあ不慮の事故の方が殺人よりはマシ。で、その見つかった指輪ってのが、18歳のジャックが16歳のレベッカに贈ったもので。何でこれが母親の中から出てくるんだ?でもこれがそもそもの始まり。レベッカに子供ができるけど、ジャックはお金を渡して堕ろすよう頼む。でも彼女は信心深いタイプ。堕ろさずに産んだのが・・。最初の経験でそうなれば少しは慎重になるだろうに、ジャックは40で身を固めるまでにかなりアソんだようで。捜査のために過去の女をリストアップしろってことになるけど、100人はいるというのでみんな呆れる。その連中にしたって私は〇人とか〇〇人とかさらっと言うし、アナまでが逆上してべらべらと・・。こういうのは女性の方がはっきり言うようで・・。と言うか、女性の方がよく覚えているんだろう。ジャックはそのほとんどが酒に酔った勢い。一夜限りとかそういう感じ。そのうちレベッカのバラバラ死体が。それとなぜかリンカーンという男性まで。さすがにジャックも彼には覚えがない。なぜなんだとか、いつまでこんなことがとか、あせったり苦悩したりするんだけど、見ているこっちはおかしくてしょうがない。コワモテのリオッタがすっごいプレイボーイ?サイコキラーと野獣刑事リオッタの一騎打ちとか、犠牲者と見えたリオッタが実はサイコキラーだったとか、そういうの期待して見ているとアレレ?となる。女性にやさしくしたり泣いたりすると、違うんじゃないの?と思ってしまう。ガオーウオードゥリャーって吠えるのがリオッタでしょ?例えばこういう事件起きたらジャックが手がけた過去の事件洗い直すとかするものだが、やってなかったな。そんなヒマないくらい立て続けに事件起きるんだけどさ。誰が犯人かと推理する必要もない。早い段階で出てきて顔も見せる。ジョンてのが犯人なんだけど、レベッカが子供を・・となった時点で、彼がその時の子だなってわかってしまう。動機も復讐以外ないでしょ。自分を、生まれる以前に抹殺しようとした男。父親への思慕が憎しみに変わり・・。レベッカのことはよくわからない。盲人と結婚したこと。精神の安定を欠き、入退院をくり返していたことくらい。ジョンは神学校へ入ったけど、狂信的な考えに取り憑かれたらしい。レベッカが自分の罪を悔やむあまり、ジョンをおかしくしちゃったとか、そういうのじゃないのかな。

ザ・マーダー3

あの時ジャックがちゃんと現実と向き合って、レベッカに対し責任を取るとかしていれば。でも18歳の若造には家庭を持つなんて想像もつかない。町から出ていってもらって、病院で処置してもらって、何もなかったことにしたかったんだろう。と言うか、実際にはまわりの大人がそういうふうに手配したんだろうけど。それでいてジャックは嫌われるのが嫌だから指輪なんか贈って。レベッカが欲しいのは指輪じゃないのに!ジョン役はマイケル・ロドリック。この人ヴィンス・ヴォーンにそっくりだ。1970年生まれとあるから年齢も同じだ。ジョンは30歳という設定だが、ロドリックは40過ぎ。でも若く見える。調べてみたら「メンタリスト」の「バラ色のメガネ」のゲイブ役の人。あの時もちょっと気になったんだよな。今回のジョンは異常な性格だけど、普段はもちろん正常に見える。それもかなりの好青年に。そこはよかったと思う。聖書からの引用が多いのは、なじみがないからわかりにくかった。日本なら「因果応報!」とか四文字ですんじゃうけど。犠牲者の中に男性もというのはそれなりの理由があってのことなんだけど、たぶん見ている人は戦慄しておののくんじゃなくて、笑いをこらえるのにおののくんだろう。ふるふる・・って。このリンカーン、実はアナの浮気相手なんですな。ここはちょっと意外だった。いくら捜査のためにリストを・・となっても、ジャックはジェニーのことは隠していた。何しろ彼女は同僚刑事で、今も一緒に捜査している。彼女と浮気したのはアナと結婚してすぐ。それを知ったアナはお返しとばかりに自分も浮気。まあ今回残念だったのはアナにあまり好感持てないこと。シェフで店のオーナーだから責任感が強い。いくらジャックが危険が迫っていると嘆願しても聞かない。仕事を休むくらいなら殺された方がマシらしい。誰も知らないはずの愛人達を、犯人はなぜ知っているのだ?とジャックは不思議がるが、アナからすればちゃんちゃらおかしい。男は愚かにも自分はうまく隠していると思い込んでる。でも女にはわかるのだ。恋してる女ならなおのこと。女は他の女の痕跡・気配がないかいつも気を配る。話をしながら目線がちょっとあっちに向いたとか、話してる声のトーンが違うとか。それとすぐ行動を起こす。何かおかしいと感じたらすぐあとをつける。

ザ・マーダー4

で、女は殺される前に他の・・次の女のことをジョンに話す。そうやって芋づる式に・・。で、アナだけど見ているこっちは全然心配なんかしない。だって彼女産婦人科訪ねていた。妊娠したに決まってる。どんなにののしり合っていても、おなかに子供が・・と言えば・・。このおなかが目に入らぬか、ひかえ~い!!ってなもんよ。ジャックはたちまち白旗降参ポツダム宣言受諾サンフランシスコ講和条約締結大政奉還廃藩置県(何のこっちゃ)。で、べたべたでれでれイチャイチャ幸せの絶頂。その頃ジェニーはジョンの手にかかって・・。私から見るとアナよりジェニーの方が好感度大。寄ってくる男はさえないやつばっか。今でもジャックのこと好きだけど、彼の方はもうそんな気なし。ジェニーにはいい男見つけて幸せになって欲しい・・って今になってもレベッカの時と同じ。おんなごころのわからんやっちゃ。で、ジェニーのまわりにやたら出没し、アタックしてくるのがジョン。年もちょうどいいし、見てくれもいい。真面目で大人しそう。こんな時でなかったら出会えてラッキー、私にもやっと運が向いてきたみたい・・となるところ。でも、いちおう刑事だから疑ってかかる。裏がないが慎重に。でもどこか中途半端。真剣に調べるとこまでいかない。心のどこかでは自分とジャックのことは誰も知らないはず、私は大丈夫、刑事だし他の女性みたいに素人じゃない。ここらへんは「シアトル猟奇殺人捜査」と同じ。まああっちにくらべりゃジェニーは慎重だけど、やられちゃったのでは何にもならない。彼女には助かって欲しかったな。アナはやられてもいいから(おいおい)。で、ずうずうしくって嫌味ったらしくて感じ悪いヴコヴィッチだけど、ジェニーの死体見てショック受けたようで。そりゃあ刑事までやられたんだからショックだろうけど、彼らしくない。もっとふてぶてしくて動じないはず。ああいうふうになるのなら、それまでの展開に工夫が欲しかった気も。つまりお互い反発ばっかりしていたけど、一緒に仕事するうちに変わってきたとか。口が悪いのはそうやって・・そういう方法でもいいから一緒にいたかったんだ・・みたいな。そうすりゃこっちもそうだったのか、意外と純なヤツだったのね、気の毒に・・ってことになるのに。

ザ・マーダー5

ジャックはジェニーの紹介でジョンと顔を合わせるんだけど、何も感じなかったようだ。あれだけたくさんの女性と関係を持っていながら、自分に子供がいるなんて夢にも思っていない。ジョンにはレベッカの面影も自分に似たところもなかったのか。ジョンも初めて真正面から父親と向き合って、でも何も感じていなさそうなのを見てどう思ったのかな。クライマックスのあたりはよくわからない。こういう映画にはよくあるけど、わざとわかりにくくする。難解で凝った作りにするとグレードアップするって勘違いしている。見てる方はあの女誰?アナ?生きてるの?死んでるの?ジャックがあわあわしているのを見てももどかしいだけ。結局アナは殺されず、赤ん坊も無事に生まれ・・。ジョンがごちゃごちゃ言ってたのは何だったんだろう。後でネットで調べてやっと流れがわかるって・・そういうのって映画としてまずいでしょ。見ていてわかるように何でしないの?ジョンはアナを殺すのを思いとどまったらしい。赤ん坊が生まれ、ジャックがその子を見る度に自分のことを思い出させたい。ジャックが自分にしたことを思い出させたい。でもそういうジョンの思いを生かすのなら赤ん坊の瞳が黒じゃまずいでしょ。ジョンのようなブルーだかグリーンだかグレーだか、とにかく薄くて透き通った色でないと。あれじゃあ見る度にアナと同じ黒い瞳だ、ジョンとは全然違う・・ってそういうふうにしか思わない。でもあの赤ん坊はものすごくかわいかったけど。車のトランクに入っていたのは途中で出てきた赤い服の女性アニーだろう。でも、アナでなくてよかった、死んだのがアニーでよかったなんてとてもじゃないけど思えないんですけど。幸せな夫婦と赤ん坊うつして終わりにされても困るんですけど。結局は助かったもん勝ち、殺され損。てなわけで真面目に作ってるわりにははずしてると言うか・・妙な映画。でも私にはこれで十分なんですけどね。ジェニー役サラ・アン・シュルツは「ザ・クリーナー 消された殺人」に出ていたらしい。ジャックのボス、ラングレー部長役ヴィング・レイムズもよかった。どんな時もジャックの味方で、心の温かい人物。