ザ・メイカー

ザ・メイカー

これはなぜかまだDVD化されてない。マシュー・モディンのファンなので、一時彼の出ているビデオやパンフを集めまくったが、これもその一つ。入手して一回見て、それっきり。たぶん10年くらいはたってるだろう。月日のたつのは早い。見た印象はさほど悪くなかった。ちょっと意外な結末。ジョナサン・リース・マイヤーズの出世作「ベルベット・ゴールドマイン」は見ていない。この作品が公開されたのは「ベルベット」効果か。パンフはジョナサンの写真ばっか。書いてあるのも彼のことばかり。と言うか、このパンフ内容薄い。映画もジョナサン中心。モディンやメアリー=ルイーズ・パーカー、マイケル・マドセンなど手堅い俳優も出ているが、みんなジョナサンの引き立て役。ジョナサン扮するジョシュが18歳なのはいいとして、当時38歳くらいのモディンが28歳で、軽く30越してるパーカーが25歳の役。こらこらみんなして何年齢詐称してるんだよッ!二人ともどう見たって20代には見えないだろッ!ちなみにモディンとマドセンは一つしか違わない。映画を見ていても全然わからないが、パンフの表紙の写真でのジョナサンの顔には、赤いものがポツポツと・・。ニキビか吹き出物か、若いから仕方ないやね。ジョシュは18歳の高校生。サイモン、アイク、ベラと四人で接着剤とかマリファナとか、郵便物盗んだり悪さもするけど、頭はよく、大学に合格して養父母を喜ばせる。郵便物はなかみを読んだり、お金を抜いたりした後、またポストに詰め込んでいたな。もちろん手袋とかはしていない。お金はたとえ少額でも教会に寄付しようと懸命にためたものだろうに・・何てばちあたりな。後でサイモンが幻覚剤でフラフラになっているシーンが出てくるが、何で自分を大切にしないのだろう。ジョシュにとってベラは何でも話せる相手だ。最初に見た時は、二人の関係がよくわからなかった。ジョシュは年上の警官エミリー(パーカー)に恋している。ベラはジョシュに恋しているけど、彼はその気持ちに気づいていないのだと思っていたら・・。ベラは嫉妬も何もなし。そのうち彼女はレズだとわかる。だから二人の間にあるのは純粋な友情で、恋愛感情はなし。

ザ・メイカー2

ジョシュは悪夢を見て、ベラに電話をかけたりする。夜中に起こされてもベラは怒らず、話を聞いてくれる。それでジョシュは気がすんで、また眠りにつくのだ。ベラのようなタイプは珍しいと思う。友達であると同時に妹のようでもあり、姉のようでも、母親のようでもある。何でも受け止めてくれるのだ。演じているフェアルーザ・バークは「D.N.A.」や「ウォーターボーイ」に出ていた人。今はどうしているのかな。ユニークで好感の持てるベラだが、残念ながら後半は出てこない。ジョシュの誕生日に、兄のウォルター(モディン)が突然現われる。二人の両親は交通事故で死亡。当時2歳のジョシュも車に乗っていたが、助かった。その後里子に出され、今の養父母に育てられたわけだが、10歳上のウォルターは18歳で家を出、音信不通。ジョシュは兄がいなくなったことにショックを受ける。ようやく兄がいないことに慣れたところなのに・・。反発と一緒に、外の世界を見てきた兄への興味もある。二つの相反する感情に揺れ動く美少年を、これでもかとばかりに見せる。「まだ悪夢を見るか」・・ではウォルターは自分が悪夢に悩まされていることを知っているのだ。夢の中に出てくる光景・・音、声は断片的で、意味がわからない。意味があるのかどうかもわからない。ある時ウォルターはジョシュを廃工場のようなところへ連れていく。両親の死は交通事故なんかじゃない。父は犯罪者で組織に金を渡すのを拒み、母と共に惨殺された。2歳のジョシュはその場にいて、意味はわからないまま記憶していたのだ。事件のことは新聞にも載っていて、ウォルターは切り抜きをジョシュに見せる。養父母はこのことをジョシュには伝えていなかった。たぶんジョシュは自分の元の姓も知らず、事故死したという話を疑いもせず受け入れていたのだろう。ウォルターはジョシュを連れ出し、自分の仕事を手伝わせようとする。なぜジョシュが同行するのかよくわからない。反発していても心のどこかでは兄に引かれているのか。学校のことは全然出てこないが、彼はたぶん全く問題のない優秀な生徒と思われているのではないか。

ザ・メイカー3

最初の方で「本を読んでレポートを書くのは苦にならない」というセリフがある。普通の生徒ならメンドクセーとかワケワカンネとかなる行為も、ジョシュは苦もなくできる。記憶力ばつぐんだし、自分をその状況に合わせることができるのだ。そうやって普段の生活態度をきちんとしておけば、ラスト近くのような状況に陥った時も、疑われることがない。たぶんエミリーが思い込んだように、他の人も皆ジョシュは事件に巻き込まれた被害者だと思い込むだろう。話を戻して、ウォルターの仕事って何だろう。自分では「運送と保管」と言っているが。冒頭シーンではメキシコから戻ってきたような印象。ずっとメキシコにいて、ヤクの密輸や売買に関係していたのかなと思っていると、仲間のフェリス(ジェシー・ボレゴ)と兄弟の三人で引っ越し業者に化け、家財道具を盗んで故買屋スカニー(マドセン)にそっくり売ったり、病院に乗り込んで移植用の心臓盗んだり。変装せず素顔さらしてるし、手袋してない時あるしで、見ていても首を傾げてしまう。フェリスはウォルターに格闘技術を教えたらしい。周囲に目を配れとか、何でも武器にしろとか、先手を取って優位に立てとか、ジョシュにいろいろ言うので、これらのことが後で役に立つのかな・・と思ったりしたが、そうでもなかったな。ジョシュはフェリスの教えのおかげと言うより、自分が元々持ってる素質のおかげで窮地を切り抜けたように思える。フェリスはりっぱなこと言うから、常に油断なく落ち着き払っているのかなと思えばそうでもなく。トラックのトラブルで警官が近寄ってきたりすると、もう落ち着きをなくすなど気が小さい。これじゃあ彼に偉そうなこと言わせた意味がない。ボレゴはどこかで見たような・・調べてみたら「コン・エアー」に出ていた人。さて、ジョシュは何とかエミリーに近づこうとするのだが・・。何もこんな口元がでろんとした年上の女性にほれなくても・・。エミリーと相棒のあとをつけて行くと、献血をやっていて、ジョシュも血を提供するはめに。エミリーと相棒が話している麻薬絡みの件は、後でフェリスも話していて。献血の後でジュースを飲もうとしてモタモタしていると、その不器用さを見かねたエミリーがサッとフィルムをはがすとか何かしてくれて、ストロー差して手渡してくれる。

ザ・メイカー4

そのエミリーのしぐさや表情が自然でいい。まさかこの少年が自分に熱を上げてるとは思いもしない。次に会った時は夜で、一時停止をしなかった、アルコールの検査をすると、車を止められる。その時のジョシュは酒は飲んでいなかったけど、ルートビア・・炭酸飲料のせいでオシッコが漏れそう。と言って立小便したら犯罪になるし。これにはエミリーも困って、立小便の方は見なかったことにしてパトカーで行っちゃった。ここも何だか微笑ましいムード。次は酒場でダンスに誘って、奇妙ではあるけれど魅力的な言葉を放つ。読書量豊富で記憶力ばつぐんだから次々に言葉が出てくる。でもエミリーは相棒に呼ばれて、いいムードもおしまい。引っ越しの時くすねた根付をプレゼントしようとしたけど受け取ってくれなかった。英語でも根付と発音していたな。後で酒場に忘れたでしょと家まで持ってきてくれたエミリー。目が覚めたら部屋の中にエミリーがいたのでジョシュはびっくり。彼女が言うには高校の時、ウォルターに夢中だったらしい。この時のジョシュは困惑し、どう見たって恥じらう乙女。酒場ではカッコよくふるまえたのに~。エミリーも困って早々に帰っちゃった。いやホント女性客がターゲットってのがありありですな。さて、ウォルターは父親が犯罪者だったように自分も犯罪者になった、ジョシュも同じ血が流れているのだから自分と同じく犯罪者になるべきだと思ってる。だから弟を連れ出し、手伝わせる。内気なように見えてジョシュには図太いところがある。彼は状況をうまく仕切る者・・主役になれる。はあ~ザ・メイカーって主役ってことなのね。あたしゃ何を作るのかいなと思っていたけど。それにしてもウォルターの考え方はちょっとおかしい。普通血を分けた弟なら、自分は悪に染まったけど弟だけはそうさせたくない・・となるはずでしょ?何で引きずり込むのかいな。おかげでウォルターの行動に説得力がなくなってしまった。それに仕事にしてもあまり手際がいいとも思えないし。ジョシュは大学へ行って平凡な日々を送るか、兄を手伝って刺激的な日々を送るか、選択を迫られる。

ザ・メイカー5

この頃にはよき相談相手だったベラはいない。レズであることがばれ、親に更生施設に入れられてしまった。ジョシュは結局兄を手伝うことにし、病院へ。ウォルター達が何を盗もうとしてるのかはわからない。それが心臓だと知って彼は驚く。いくら何でも・・。この後あれこれあるのだが、撃ち合いなどは何がどうなってるのか全然わからない。三人の他にルビコンという男も加わっているが、彼は以前サービスエリアでジョシュに絡んできた男達の一人か?どうもよくわからない。ところでパンフには結末まで全部書いてある。普通なら少しはぼやかすだろうに、珍しい。ジョシュはメキシコのことが頭をよぎるなど悪の道に入りそうな感じに書いてあるけど、私はそう思わない。彼は大学に進んで、世間一般の人間と変わらないようにふるまうと思う。少なくとも当分の間は。ウォルターが身をもって示したように、この仕事は失敗したらそれっきりなのだ。そんなことがわからないほどジョシュは愚かではないはずだ。・・てなわけで、見る前はジョナサンのことなんか全然興味なかった。でも終わってみれば、印象に残っているのはジョナサンの美しく、しかもどこかうつろなまなざし。お目当てはモディンのはずだったのにぃ~28歳?うそ~ん、ムリムリで終わり。いや、彼もステキでしたけどさ、すべてがジョナサン盛り立て大作戦で遂行されているからさ、勝ち目はないのよ。ちなみにIMDbとか見るとDVDカバー写真などは全部モディンが真ん中で、主役扱いどす。この種の映画ではあんまり主役の美形盛り立てすぎると、かえって反感わくものだけど、ジョナサンにはあんまりそういうもの感じない。変に大人ぶってラブシーン入れるとか、酒やクスリに溺れるとか余計なことしてないのがいい。どこかふらふらして頼りないけど、いざとなると思いきった行動取れる・・それでいいのだ。美しさはたまたまそうであったというだけで、性格や行動には関係ない。他の美少年がこの役を演じていたらここまで強い印象受けたかどうか。ジョナサンだからこそここまで強い印象残せた、私はそう思っている。全体的には中途半端な感じで、平凡な出来。犯罪映画のような青春映画のような・・。悪夢絡みでもっとミステリータッチになるかと思ったらそうでもないし。でもジョナサンの魅力満載の貴重な一本。DVD出してください!