地獄の捜査線

地獄の捜査線

今はDVDが主流だから中古ビデオは安いよ~。これもその一つ。買ったのは私じゃなく父。「地獄の」とついてることからでもわかるけどチャック・ノリス主演。チャック・ノリスならおもしろいだろうって買ったわけ。なかみを見ると主演じゃないってわかるけど、まあいいや。彼はいったいいくつなのかな。最近では「ドッジボール」にちょこっと出ていたな。まあノリスが出ているだけならよっぽど暇を持てあましているのでもない限り見ませんけど、ある時何気なくカバーを見たら・・ん?見たような顔が・・ええーッ、エディ・シブリアン?ウッソー・・と、びっくらこいたんですの。1998年製作になってる。彼こんな前から出ていたの?「地獄の捜査線」の彼が出ているから「ザ・ケイヴ」が邦題「地獄の変異」になったんじゃないよね。地獄めぐり・・じゃない、地獄つながりで・・んなわけないか。そう!あの彼ですよ、彼の若き日のお姿が拝めるんですよ。そりゃ今でも若いですけどさ。今より甘い顔立ち。クリストファー・ジョージに似ているのは同じだけど、若い頃の彼ってホアキン・フェニックスにも似ている。目、鼻、口、首が太いところ。アクション映画にぴったりのたくましい体つき。スイートタフガイってとこでしょうか(何じゃそりゃ)。見始めてすぐ「ん?」という感じ。子供時代のパートがえらく長い。普通ならさっさと成長後の主人公見せるものだが。それと画面が時々暗くなる。・・ってことはテレビムービー?「ザ・サイト」もそうだったけど、テレビ用のってCM入れるから時々画面が暗くなるのよね。子供のけなげなパートが長くて、出てくる悪党どももさほど憎たらしくない。中には愛敬のあるのもいて。ラブシーンもないし、人は殺されるけど全体的にはソフトな感じ。まあ、なまぬるいってことだけどさ。主人公ローガン(成長してからはシブリアン)は、マフィアのボス、タルゴーノに両親と妹を殺されてしまう。地方検事の父親はボスを逮捕しようとしていたが、向こうは先手を打って三人の殺し屋を送り込んできたのだ。ローガンには危険を予知する能力があって何とか助かるが、殺し屋の顔を見たことはFBI捜査官ダウニングにも黙っている。彼は自分で復讐するつもりなのだ。

地獄の捜査線2

ひとりぼっちになったローガンは、伯父のジェイク(ノリス)に引き取られる。ジェイクは妻をなくし、妻の父ベンと一緒に牧場をやっている。最初は沈んでいたローガンだが、ジェイクが軍の英雄で武道の達人だと知ると、自分も強くなりたい・・と特訓を受ける。で、成長して(やっとシブリアン登場)、レンジャー部隊に入り、ほいほい勲功を立て、ジェイクと同じ勲章もらってほいほい除隊してしまう。いよいよ復讐に取りかかる。まあ大したストーリーではない。余計なものくっつけてる(予知能力。しかもジェイクにも同じ能力が!)。寄り道せず(ローガンの初恋とか学校生活とかそういうの全然なし。武道だけ!)、ずんずん行くのはいいが、スムーズに行きすぎ。つまり武術はめきめき上達し、軍隊では難しい任務ほいほいこなし、ピンチも予知能力があるから大丈夫・・見ていてばかばかしい。しかも父親の遺産があるから大金持ち。まるでブルース・ウェインだ。彼はFBIに協力するのではなく、チンピラを装って組織にもぐり込み、殺し屋の一人メルカドに気に入られ、ついにはボスのタルゴーノに信用される。復讐としては古風なやり方。しかし見ていて身元調査もろくにせず、自分達の仲間に入れるか?とか、すぐに殺人やらせるか?とか思ってしまう。もっともっと(警察のスパイではないかと)疑い、用心するはずだが・・。だから見ていても底が浅いと言うか安っぽいと言うか、要するにそこらへんによくある二流三流のアクション映画。これで出演者がへたくそだったり、長々と余計なラブシーンや残酷ないたぶりシーンがあったりするともう最悪・・ってなるんだけど、この映画はそういうのなし。悲壮がってるわりにはお気楽で、しかも健全。それと私の場合ストーリーがつまらなくてもシブリアンが登場してからは彼を見ているだけでいいんだしぃ。ローガンは若くて健康でハンサムで大金持ち。過去を捨てていくらでも豊かで気ままな生活送れる状況にある。「倒せば必ず倒される」、人を殺せば「二度と元の生活には戻れない」・・ジェイクはこう諭す。暴力に暴力で対抗すれば、今回は自分が勝っても次は自分が倒されるかもしれない。また個人的に復讐すれば今度は彼が殺人犯として追われることになる。

地獄の捜査線3

また財産を管理し、着実に増やしてくれていた後見人(?)は、一生働かなくても暮らしていける・・と喜ぶローガンに、「生きることの意味は働いてこそ得られる」と言う。ローガンのまわりにはこういう堅実な人間がいて忠告してくれる。それでも彼は前に進むのだ。「本当の男」になるために。たいていの映画だと苦悩する主人公は何か(お酒や女性)に逃げ道求めるが、そういうのはなし。いたって健全。酒場に行けば女性はハンサムな彼にポーッとなって、熱い視線投げかけてくるけど、それ以上の描写はなし。これってテレビ用だから?ノリスが脚本にかかわっているから?そういう方面より動物(馬とか犬)との交流や、絶望感と戦っている少年に目をとめるとか、そっちの方に話を持っていく。ホテルの隣室に泊まっている少年ジェシーに、ローガンはあの時のひとりぼっちになってしまった自分を重ねてしまう。少年とその母親は夫(ジェシーにとっては継父)のDVに悩んでいた。少年は自分を鍛えることで生きる指針を見出そうとする。ローガンがジェイクに導いてもらったように、今度はローガンがジェシーを導くのだ。もちろん他人の家庭に首を突っ込むつもりはないが、女子供が暴力をふるわれているとなれば話は別だ。ローガンは母子を逃がし(もちろん彼は大金持ちだから二人を助けてあげるのは簡単だ)、飲んだくれの父親をこらしめる。こらしめるにしてもそのシーンは見せないし、気のきいたジョークでしめくくる。マフィアの一味でも人懐こくて気のいい用心棒二人は殺さないでおく。まあとにかくなまぬるいけどどこか健全で、私はこういうの好きですよ。例えうそっぽくてもね。ノリスは途中から出てこなくなるけど、ラスト、ローガンを助けるため再登場する。別に出てこんでも・・。ボスの車に足から突っ込んでガラスぶち破るという荒ワザ見せる。別に見せんでも・・。できればジェイクには人は殺さないでいて欲しかったが・・。いくら弟の仇でもね。殺したら彼もローガンと同類ってことになる。でも追われるのはもちろんローガンの方だけ。続きもありそうなラストだけど次はなかったようで・・。人には導いてくれる師が必要で、それは循環していくものなのだ(ジェイクからローガンへ、ローガンからジェシーへ)・・そんなノリスのメッセージが感じられる内容だった。