ザ・グリード

ザ・グリード

テレビで何度も放映された(たぶん)。くだらないけどしっかり作ってあって、何度見ても楽しめる。かなりグロテスクだけど作りに愛敬があって、後味も悪くない。カットされてても吹き替えでも画質悪くてもどうせBだから・・と、寛大になれる。見なきゃ見ないですんじゃうけど、中古ビデオ売場にあったりすると、こんなのが一本あってもいいかな~と、ついつい手に取ってしまう、そんな映画。似たようなタイプとして「ファントム」や「ヴァイラス」がある。町中の人間が、船の乗客・乗組員が・・謎の生物に・・ドロドロ・ネチョネチョ・ベトベト・ニョロニョロ。あの!スティーヴン・ソマーズが「ハムナプトラ」の前にとった映画(としてのみ知られる映画・・そんなもったいない!)。数字だけ見るとアメリカではかなりコケたような。これでよく次に「ハム」のような大作とらせてもらえたなあ・・。嵐の夜、海上を疾走するボロ船(密輸船らしい)。操縦する船長フィネガン。こき使われているレイラとパントゥーチ。フィネガンはどこから見ても食い詰め者。体格はいいしハンサムだし腕はいいし、(ことなかれ主義・長いものには巻かれろ主義だが)いちおう分別・度胸もある。でもきっと借金まみれ。おそらくはギャンブル狂。このボロ船だって抵当に入っているだろう。首が回らなくなって困っている時にこの話が来たんだと思う。それでよく考えもせずオッケーって言っちゃったんだと思う。思う・・なんて書いてるのはみんな私の想像だから。この映画は背景の説明なし。いきなり始まってる。でも考えてみりゃそんなのいらない。フィネガンの過去は、ハンサムだけどどこか間の抜けた顔見りゃわかる。四角い顔、大柄な体格、楽天的な性格・・「ハム」のリックと同じじゃん!どうして「ハム」もトリート・ウィリアムズにしなかったのかな。リックにはもっと若さが必要で、それでブレンダンになったのかな。ブレンダンはトリートよりも砂漠が似合うのは確か。レイラは韓国系か。男まさり。フィネガンの前であっけらかんと着替えちゃったりする。テレビ放映時は確か裸の胸見えたはずだが、私が買ったワイド版では画面の上下が切れてるのでうつらない。男性諸君中古ビデオを買う時はワイド版は避けましょうネ。パントゥーチ役はケヴィン・J・オコナー。この映画で一番すばらしいのは彼。フィネガンより豪華客船よりハデな爆発よりモンスターより印象に残る。

ザ・グリード2

怪物は確かに大きい。気持ち悪い。でも終わってから思い出せる?タコだったっけ、ミミズだったっけ、エイリアンにも似ていたし・・。実際は深海生物という設定。専門家でもないキャントンが怪物の正体について説明するシーンは明らかに唐突。まあパントゥーチについてはまた後で書きますねウフ。嵐の中、処女航海中の豪華客船アルゴノーティカ号。船主キャントン役はアンソニー・ヒールドだ。レクターの伝記を書いて大儲けしたのか(違うって!)。こりゃ何かあるぞ。航海が無事に終わるとは思えない。それにしてもヒールドってニック・ノルティに似てますな。迫力のない小型ノルティ。外の嵐など知らぬげに、船内はパーティで盛り上がる。太鼓たたく集団とか剣道着姿のとか、日本人らしいのもちらほら。その時船に何かが衝突する。・・まあ今回久しぶりに見たわけだが、怪物がはっきり姿を現わすまでが意外と長い。しかも描写はありきたり。音とか変形する壁とか引きずり回される犠牲者とか。乗客達が襲われ、食われたであろうシーンはほとんど見せない。ビデオカバーには「90分で3000人!」とか「食って食って食いまくる」とか印刷されてるけど全然。それにしても「TVチャンピオン」の大食い選手権みたいな宣伝文だな。お客の中に一癖ありげな美女がいる。見かけはいかにもゴージャスだが実際は・・。彼女の狙いは金庫室。何しろ客は大金持ちばっか。ファムケ・ヤンセンが美しくも憎めない女泥棒トリリアンをのびのびと演じている。誰が生き残るか見当のつきにくい顔ぶれだが、フィネガンと彼女は確実に生き残るだろう。さて、何も知らず近づくフィネガンの船。客の正体は傭兵。武器はたくさん、魚雷まで。実は彼らはキャントンとぐる。客船を魚雷で沈め、保険金をがっぽりいただこうという魂胆。さすがに人命を奪うつもりはなく、銃で脅して救命ボートに移して・・。しかし船内には人影はなく、まるで幽霊船のよう。乗船した一行が一人また一人と減っていくところとか、途中で生き残りと合流するところが「ヴァイラス」と似てますな。両方に出ているのがクリフ・カーティス。T・レイ役のトレヴァー・ゴダードはちょっとコリン・ファレル似。すぐ切れる危ないタイプで、こういう人が後まで生き残るとおもしろくなるんだけど、すぐやられちゃう。ゴダードは格闘家みたいな感じだが、薬の飲みすぎか何かで早死にしてしまったようだ。

ザ・グリード3

黒人が二人いて、一人は「ブラッド・ダイヤモンド」「コンスタンティン」などのジャイモン・フンスー。もう一人は「ファントム」などのクリフトン・パウエル。他にジェイソン・フレミング。最近では不精ヒゲとか生やしてバッチイおじさんになってるけど、この頃はまだいちおう美青年。やっぱり海が舞台のホラー「ビロウ」では生き残っていたけど、こちらは・・。怪物に半分溶かされたビリー(クリント・カーティス)のシーンは見るに耐えないが、こんなシーンあったっけ?見た覚えないんだけど。とにかく次から次へと人が死ぬので、お約束とは言えちょっと空しい。生き残る方は生き残る方で運がよすぎるしね。傭兵達のボス、ハノーバー役ウェス・ステューディはインディアンの血を引いていてわりと知られた人らしい。「ダンス・ウィズ・ウルブズ」とか・・私は見てないけど。「ニュー・ワールド」にも出ていたらしい。こういう白人でも黒人でもない人で、ちゃんとしたキャラ与えられていて、しかもそれを演じきっているというのは珍しいんじゃないの?いや、つまりハリウッド映画に(ハリウッド映画以外でもだけど)出てくる東洋人っぽいキャラって、わりといいかげんな扱い受けているでしょ。ものの考え方とか行動がうすっぺらで奥行きがない。どういう性格なのか、なぜそういう行動を取るのかはっきりしない。どうせ何考えてるかわからない連中だから、背景の説明なんて不要だと言わんばかり。演じている人もこれまた表情やしゃべり方が硬かったりぎこちなかったり単調だったり素人くさかったり。でもウェスは違う。どことなく「燃えよドラゴン」のハン思い出す。肝が据わっていて用心深くて、悪人なんだけどそれなりの筋は通す・・みたいな。ちょっぴり尊敬できる・・みたいな。だから彼には生き残って欲しかったな。怪物のことは書いてもしょうがないから省く。今見ると合成とかうまくいっていないシーンもたくさんあるが、それは別にいいと思う。次の「ハム」では格段に進歩していたし。特撮が少しくらい粗っぽくても、出演者がいい演技してりゃそれで帳消しになる。ここでまたケヴィンの話になるけど、この映画での笑いの大部分は彼が一手に引き受けている。どっかの黒人俳優みたいに早口でまくしたてたり、目玉ギョロギョロさせたり、体くねらせたりとか、そういうハデハデな動きはいっさいなし。

ザ・グリード4

本人は真面目にやってるつもりなのに妙におかしい。ホントもう絶妙な演技。彼に主役は似合わない。ちょこちょこ脇で出ていて、それぞれ手堅い演技見せる。「ペギー・スーの結婚」の頃は美少年風。髪ふさふさのナイーブな文学青年。バイク乗ってる。トム・クルーズやマット・ディロンと肩並べてもおかしくない。クールでニヒルで・・。それがここでは早くも髪が赤信号なのか、額が広くなり髪はロング、帽子かぶってる。きょときょとして落ち着きがなくあの美少年はどこへ・・。でもソマーズ監督のうまいところは、時々はっとするほど美しいケヴィンをちゃんと見せてくれること。そう、彼うつし方によっては(この頃はまだ)美しく見えるんですよ。例えばレイラ失って悲しみにくれつつも、仕事にはげむシーン。美しく澄んだ瞳に宿る清らかな涙、きれいな横顔。だから彼が姿消すと我々はがっくりする。で、そうやっといてラスト再び登場。生きていたんだよかった!・・とうれしくなるわけ。孤島にたどり着いたフィネガンとトリリアン。二人きりのはずがパントゥーチがお邪魔虫。孤島も何やら怪しげな雰囲気で、何だか続編も作れそうな楽しいラストだ。でも結局作られなかったな。ヒットしなかったから?ケヴィンは「ハム」にも出ていて、せこさを絵に描いたような小悪党ベニをやるんだけど、最後死んでしまう(直接は見せないけど)。悪行のむくいと言えばそれまでなんだけど、ベニのようなキャラは生かしておいて、続編で使えばよかったのに。彼が再登場すればお客が喜ぶこと請合い。それにしてもパントゥーチ、ストーリーには全然関係ないけどなぜかピーナッツ取り出して、一つしかないらしくて、しかもそれを水にポチョンと落としてしまう。それがおかしい。「イパネマの娘」が耳にこびりついてなぜか口ずさんでしまう。それがおかしい。怪物よりハデな爆発より銃撃戦より・・印象に残るのはパントゥーチのおかしな行動!私にとってはケヴィンとクリント・ハワードの二人は、出てると主役そっちのけで目が行ってしまう脇役の双璧ですな。ケヴィンは最近では「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」に出てるらしい。ポール・ダノ君も出ているので見たいんだけどこっちではやっていない。クリントの方は「デビルスピーク」のビデオが出てないかと今日も中古売場をさまよったけどなかった。「ザ・グリード」はあったんだけどねえ。